『舞い踊る季節の中で』 第79話
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真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第79話 〜 山中に舞う狩人達 〜

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

  (今後順次公開)

  最近の悩み:明命に翡翠と、そういう仲になった事に、倫理的に罪悪感はあるが、何の後悔も無い。

        二人の事は大切だし、かけがえのない存在だ。

        まぁそんな訳で、今まで義姉とか、義妹とか、恩人とか言って、色々耐えてきた事も、も

        う無いだろう、そう思っていた。

        うん、俺の考えが浅はかだっだ。 二人と結ばれた事で逆に抑えが利かなくなってきた。

        二人は二人で、俺に甘えるように体を預けてくるし、それこそ今までとは別の意味で、俺

        の理性を攻撃してくる。 二人が雰囲気を楽しんでいると言うのに、その二人の香りや、

        服の布越しにある彼女達の柔らかさが、余計気になようになった。

        ぶっちゃけ、押し倒したくなる。 だがいかんぞ北郷一刀、幾ら何でも、それではまるで、

        二人の身体が目的のようだ。 二人は俺との雰囲気を楽しんでいる時にそれは不味い。

        って、翡翠? 何で人が耐えているのに、貴方はそこで人の胸を指で悪戯するんですか!?

        それに、『あの時一刀君は、どう思っていたんですか?』『う゛っ』あの、そ・その困る。

        人が折角耐えているのに、あの時の事を思い出させるのは止めてくれ、しかも口に出せって

        どんな羞恥プレイですか!? くっ、逃げようにも、膝の上には明命が、右腕は翡翠がしっ

        かりと腕をからませている。 『一刀さんは、その、私の寝相で悩んでいたそうですが…』

        って、明命まで、そんな顔を近づけて、そう言う事を聞くのは止めてくれませんか!

        

        『 か・かんべんしてくれーーーーーっ! 』

        

        ……うぅっうっ、結局、・・・・・・言わされてしまった(涙  俺のイメージが……、

        

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一刀視点:

 

 

フォンッ!

 

空気を切り裂く音と共に、俺の頭上を、矛が通り過ぎる。

落した重心を戻す前に、通り過ぎた矛は、その軌跡を最小の円を描きながら、より速度を増して戻ってくる。

 

(うん、突き、払い、巻きの三つの基本技が凄い次元で身に付けている。 ……でも)

 

戻って来た矛を、俺は鉄扇で更に押すようにして、その軌道を逸らしてやる。

 

「くっ、 なら、これでどうやっ!」

 

上に矛の軌道を逸らされた彼女は、前より大きくさせられた弧を描きながら、

もう一度俺を横から払わんとする。

 

槍の一番の利点は相手を寄せ付けず倒す事。

その主な攻撃手段は突きだが、一対一の場合は、横払いの方が有効だ。

突きは点だが、払いは線になり、より多くの空間を使っての攻撃は、

相手が格上だとしても、その一手を封じ込めやすい。

 

無論彼女程の腕になれば、突き一つとっても一級品で、多くの武将の肝を冷やす事が出来だろう。

下手に対峙すれば、気が付いたら眉間に彼女の矛が刺さっていたと言う事もあると思う。

でも、いま彼女が相手にしているのは、俺だ。

 

より力の入った矛を、俺は、

焦るあまり、力を入れ過ぎているため、やや槍のしなりを活かしきれていない彼女の攻撃を、

彼女の更に余分に入った力を利用するように、矛の軌跡を加速させながら逸らしてやる。

次は…、

 

ザッ

 

自分より上に対する常套手段では、駄目だと踏み切った彼女は、

その勢いを利用して、体を反転させながら、石突で、間を詰める俺に突き込もうとする。

良い判断だ。

相手が俺でなければね。

 

がっ!

 

その攻撃を前もって見ていた俺は、彼女の矛が力が乗り切る前に、その石突は俺の伸ばした鉄扇によって、

その勢いを一瞬だけ緩ます事が出来る。 そう、その一瞬で十分っ、

俺はそのまま鉄扇を寝かすようにして、突きだされる矛の軌跡を逸らしながら、

そのまま鉄扇の要の部分で、彼女の持ち手を打ちつつ、逆手に持ったもう一つの鉄扇を、畳んだまま彼女の喉元につきつけてやる。

 

「そこまでじゃっ」

 

黄蓋の制止の声で、俺は小さく息を吐きながら、鉄扇を袖の下にしまい込む。

 

「あーーー、また負けてもうた」

 

そう言って彼女、霞は緊張のためか、そう動いていないにもかかわらず、顔を汗だらけにして、地面に座り込んだ。

 

「今日は、これで三戦三敗や、しかもええ所無しって、ウチ自身失くすわ」

「間違いなく、霞は虎牢関の時より、腕を上げているよ。 俺が保証する」

 

色々あって、今まで延ばしてきた霞との仕合、

結果は霞の言った通りだが、俺としては気持ち的にそう楽ではない。

とにかくこの世界の将の身体能力は、化け物じみている。

その相手の力を逆手に取ったりと、上手くやってはいるが、

一歩間違えて、彼女達の本気の攻撃をまともに喰らえば、

ごく普通の人間である俺に耐えられるわけはない。

 

 

 

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「しっかし、ほんま戦いにくいで、

 恋は明らかにウチより強いって分かるけど、一刀は全然分からへんから、よけい深みに嵌まってまう」

「それって、もしかして呂布の事?」

「そうや、 一刀も一応見ているんやろ。

 どうや、一刀から見て天下無双と言われた恋の実力は?」

 

霞の言葉に、俺はあの時あった二人の少女を思い出す。

薄い緑色の長い髪の少女と、朱い髪の少女を、

そしてあの時感じた感覚、あれは多分……、

 

「強いね、強さだけなら、間違いなく天下無双だと思うよ」

 

でも、あれは……、それだけじゃない、

あのままだと、あの娘は……、

 

「どうや、戦ってみたいと思わへんか?」

「思わないよ。 前にも言ったけど、俺は武人じゃない。

 悪いけど、そう言う趣味は無いよ」

 

俺は霞の言葉に、あの娘の事を考えるのを止める。

今考えても仕方ない事だから。

 

「さてと、約束通り仕合したんだから、俺の所の調練を手伝ってくれよ」

「まぁ、一刀の所の人数が増えた所で、そう手間はかからへんけど、一刀がサボりだなんて珍しいやんか」

「別にサボるわけじゃないよ。 朱然達小隊長格の娘達には、少しやってもらいたい事があるんだ」

 

俺は霞にそう言って、黄蓋の後をついて行く。

 

 

 

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横を歩きながら、

 

「明命に狩りの趣味があるとは知らなかったけど、部下数人連れて来いって、そんな大がかりな物なの?」

「まあのぉ、あやつの武はともかく、狩りの腕では、ワシですら歯がたたぬ。

 おぬしも一度目にしておくと良いと思うてな、孫呉が誇る周幼平の本領をな」

 

挑発染みた、それでいて悪戯っぽい表情のくせに、これが少しも嫌味に見えない。

このあたりは大人の女の魅力と言うのかな、何にしろこういう蠱惑に満ちた雰囲気は非常によくない。

俺は、慌てて思考を別の方向に向ける。

 

「そう言えば朱然達が、いつもなら言わなくても着いてきたがるのに、明命の狩りだと知ったとたん、

 丁奉達に押し付けていたけど、以前何かあったの?」

「くっくっくっ、それはあとの楽しみにとっとくとよい

 ほれっ、あまり、あやつらを待たせては気の毒じゃ、少し急ぐぞぇ」

 

黄蓋は、俺の質問には結局答えず、

その問いすら楽しいとばかりに笑いながら、先を急かすように歩みを速める。

 

 

 

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ザザッ

 

「此方異常ありません」

「異常があっても、隊列を崩さ無い様にしてくれよ。

 小隊から切り離されたら、君達じゃ手も足も出ない相手だからね」

 

俺は律儀に報告して来る丁奉に、注意を飛ばす。

狩りって、こう言う事ね………まぁ確かに此方の方が明命らしいけど……、

俺は溜息を吐きながら、四半刻前の事を思い出す。

 

「狩りは狩りでもマンハントな訳ね……そりゃ、明命の実力を知っている朱然は逃げる訳だよな」

「はぁ、『まんはんと』ですか?」

「いや、天の言葉だから気にしないでくれ」

 

俺は律儀に聞き直してくる明命に、言葉を返しながら俺は碌な説明もせずに、俺を引っ張り出してきた張本人を睨み付けてみる……んだけど、

 

「くっくっくっ、『部下を数人連れて来い』と言った時点気が付くと思ったのじゃが、

 おぬしにしては察しが悪くて、正直拍子抜けじゃったわ」

 

と、あっさり笑い返されてしまう。

いやぁ、まあそうなんだけど、普段から仕事さぼって酒を飲んでいる黄蓋に言われたから、言葉通りに受け取ってしまったんだけど、まぁそれを言ったら、きっと怒るんだろうなぁ……、

まぁ拗ねると考えれば、可愛いと言えば可愛いんだけど、それだけですまないのが黄蓋なんだよな……、

 

「で、明命と思春の二人を捕獲するのが、勝利条件でいいんだね?」

「そうじゃ、だが逆に制限時間内に捕獲できなかったり、全滅させられたら、此方の負けじゃ」

 

黄蓋さんの言葉に、俺は周りを見渡すと俺、明命、思春、黄蓋、陸遜の他、このゲームに駆り出された百名程の兵隊さん達、……山狩りでもできそうなんですけど(汗

 

「あぁ、北郷さん甞めてはいけませんよ〜、前回は明命ちゃんだけでも此方は全滅だったんですから〜」

 

俺の様子から、陸遜はそんな自慢にならない事で忠告して来る。

兵士達だけなら、それも在りかもしれないが、この二人が指揮を取って、一方的と言うのも凄いなぁ。

陸遜はともかく、単純な強さで言えば、黄蓋の方が明命よりかなり上だ。

それに狩りと言う言葉からして、そういう性質の訓練だと言うのは分かる。

……まさに明命達の格好通り、忍びそのものだよな、これって、

 

とまぁ、そう言う事があって、隊を幾つかに分け、その内十名程を俺が直接指揮を執っている訳だけど、

はっきり言って芳しくない。

辺りから目減りして行く気配が、二人の狩りの異常性を際立てていた。

それに、何なんだあの罰は?(汗

 

始まってそうそう、後ろの方で倒れる気配と共に倒れていた兵士2人、

そこには

 

『一番にやられました。てへっ』

『……無様な』

 

と顔いっぱいに書かれていた。

しかも、『まぁ墨なら』とつぶやく俺に黄蓋は、

 

『あまいぞ北郷、その墨は特性で、しばらくは洗っても取れないと言う代物だ。

 落書きされた顔で町を通り、城まで戻らねばならんのだぞ? しかも仲間に負けてだ。

 その墨が消えるまでの数日間の屈辱は、おぬしが想像する以上の物だと思え』

 

だそうだ。

 

 

 

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まぁ確かに、そんな墨で落書きされた顔で、町を練り歩きたくはないわな。

その上、今回は何故か突然参加した思春に、対抗して人数を倍以上にしたらしいけど

……これはどう考えても失策だよな。

まぁ確かに、普通はローラー作戦で山狩りするのが一番効率が良いから、

陸遜の対策も間違えでは無いんだが、……あの二人相手に、一般兵が敵う訳ない。

むしろ人数を減らして、的を絞らせた方が正解だ。

でもまぁ、それはあくまで、この二人を相手に訓練をした場合に限る。

実際であれば、人数を減らした事によって相手の工作員に逃げられたら意味は無いから、

陸遜の言う通りするしかないんだろうけど、……想定する相手のレベル設定が高すぎませんか?

 

ガサッ

 

「そこかっ」

 

あっ馬鹿、

 

ドサッ

 

『先走っちゃいました』

『……雑魚』

 

二人の態と出した草の音に、俺の命令を無視して突っ込んだ二人が、其処に倒れていた。

 

ドサッ

 

『……注意力散漫』

 

と二人を見ているうちに、道で待機していた筈の部下がまた一人倒された。

……これで三人か、何にしろ律儀な内容の落書きだ。

それはともかく、一瞬でこれを書く二人の腕に、俺は別の意味で恐怖した。

俺は二人の本気を知ると言う名目で、部下が全滅するまで手出ししてはいけないルールだから、

密集体型で隊列を乱すなとしか言いようがない。

 

『こちらを倒すのは素手である事』

『一定時間以上、同じ場に留まってはいけない』

『相手を無力化させる場合は、相手の不意を突く事』

『戦闘が目的ではない』

 

と言う彼女達に掛けられた制限的にも、彼女達の一方的な独壇場って言う訳でもない筈だけど、

それだけ、二人の腕が凄いと言う事なんだろうな。

気配の消し方からしても、二人の腕が最初の頃より上がっているのがよく分かる。

特に明命は、例の呼吸の意味のもう一つの意味を理解してきているのか、

気配の消し方が思春に比べても段違いだ。

平常時の俺だと、数メートル以内に来ないともう察知できないな。

それにさっきからの手並みを見る限り、武そのものは思春が上でも、

こう言う事では明命の独壇場となっているのがよく分かる。

たしかに、明命の実力を低く見ていたな、これは……、

 

そうこうしているうちに、人の命令を無視して、孤立した隙に倒されていく部下達、

まぁ、二人がいる方向とか教えても良かったんだけど、……少しこう言う事に対しても訓練した方が良いかもしれないな、警戒に対する思考が出来ていない。

とにかく、こう言うのは、必要以上に怯えたり、考え過ぎちゃ駄目なんだ。

 

あーあっ、あんな手に引っ掛かるなんて、丁奉の奴、朱然からいったい何を学んでいるやら…、

俺が目を向けた先には、罠にかかり、木の上に逆さ吊りにされた上、しっかり気絶させられ、

 

『筋肉馬鹿です』

『……愚か者め』

 

と、しっかり書かれていた。 しかも一人だけ二つも書かれている。

少し哀れと思いつつ、残り二人を残して、二人の気配が離れて行く。

やっぱり俺はメインデッシュにするつもりか、

俺は残った部下に、元の地点に戻るように言い、足を進める。

 

 

 

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あっさりやられる気は無いが、捕まったとしたら、

思春辺りは、『へらへら男』とか『軟弱者』辺りだろうけど、

明命は……うん何故か碌でもない事の気がする。

そうして元の合流場所に戻ると、其処では一人、ビクビクしながら、辺りを見回している陸遜が居た。

 

「あっ! 北郷さん」

「陸遜一人か?」

「はい、後は皆やられてしまいました」

「とりあえず、此処にいるのは不味い、とにかく遮蔽物のない所に出よう」

「は、はい」

「くっ、穏、北郷、お前達四名だけか」

 

木々の中から、音を出して現れたのは、息を切らしている黄蓋だった。

 

「ワシの所もワシを残して全滅じゃ、途中腹を括って、仕掛けたんじゃが、

 遮蔽物が多い上、明命がすばしっこくてな、最期には矢が尽きてしまった。

 その上、一緒に明命を追っていた筈の残りの兵は、その隙に思春に全てやられてしまった」

「あ〜、陽動に引っ掛かっちゃったんですね。

 明命ちゃん、思春様と組んだ事で、戦術の幅が広がっちゃってますね〜」

「うむっ、思春の参戦を認めたのは、やはり失敗じゃったな、もはや手が付けられん」

 

悔しがる二人だけど、もう後の祭り、

兵を扱う事に関しては、俺はもちろんの事、思春や明命より上の二人がこれでは、

とりあえず兵を使って二人を捕獲する、なんて真似は出来るはずもなく、

とにかく、このまま此処にいても埒が明かないからと、

近くの河原に向けて歩き出したんだけど

 

ドサッ

 

と後ろを歩いていた陸遜が、後ろ手に縛られ昏倒しており、その大きな胸元に、

 

『存在価値は巨乳のみ』

 

と、書かれていた。

そして、

 

ちりーん

 

「くっ、思春かっ! ぐっ」

 

どさっ

 

思春の鈴の音を陽動に引っ掛かった黄蓋が、気配を消した明命に気絶させられ、

同じくその胸元に大きく、

 

『乳に栄養が行きすぎ』

 

……これ絶対明命だよな。

筆跡も同じだし、……巨乳を敵視しているようだ。

 

「ひ・ひがんでる……!?」

「違います!」

 

俺の漏らした言葉に、明命が姿を見せずに大声で答えてくれる。

……やっぱ気にしてるんだ。

ちょうど手のひらサイズで、あれはあれで良いと思うんだけど……、

そんなに気にしているなら、今度パットでも作ってあげようかなぁ。

 

ドサッ

ドサッ

 

更に二つの倒れる音に、

言俺は溜息を吐きながら、

 

「しょうがない、流石に落書きされるのは嫌だから、そろそろ本気出すかな」

 

 

 

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明命視点:

 

 

「ひ・ひがんでる……!?」

「違います!」

 

一刀さんの言葉に、私はつい幼平から明命に戻り、声を出して否定してしまいます。

幸い、それが陽動となって、注意が逸れた兵二人を思春様が気絶させます。

いけません。 今は訓練中とは言え、本気でやらなければいけない時です。

ましてや、相手は一刀さんです。

私は、再び感情を殺し、幼平へと意識を切り替えます。

 

(先程の一刀さんの言葉、後できちんと話し合う必要がありますね)

 

このまま時間まで逃げ廻れば、一刀さんしか残っていない以上、私達の勝ちですが、せっかくの機会です。

工作員としての私の力が、一刀さんに何処まで通用するか試させてもらいます。

私達の気配は、一刀さんにはおそらく知られています。

まともに向かって言っても通用しないでしょう。

ですから、罠を多く仕掛けた場所まで、一刀さんを誘導すれば、勝機はあるはずです。

 

「しょうがない、流石に落書きされるのは嫌だから、そろそろ本気出すかな」

 

一刀さんはそう言って、木の前に立つと、

懐から普通の扇子を二つ出し、

それを大きく、円を描くように左右から胸元に持って行き、

扇子で自分を隠すようにすると、

 

えっ……、

 

一刀さんが、消えた?

……はっ、いけません。

 

どさっ

ちりん

 

気が付いた時には遅く、

鈴の音と共に思春様が地面に倒れ、

点穴されたのでしょうか、意識があるものの動けないでいるようです。

 

いけない、このままでは私も

 

私は素早くそう判断して、その場を急いで離れます。

一刀さんの身に付けている『 北郷流 裏舞踊 』は、

『 北郷流 』が時代の影に生きていた時期に生まれたと言っていました。

ならば、当然そう言った技を身に付けていてもおかしくありません。

それに以前美羽の所にも潜り込んだと、翡翠様から聞いてはいましたが、

これ程の技を身に付けているとは……、私はまだ一刀さんを甘く見ていました。

 

 

 

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私は、必死に逃げます。

幾ら一刀さんの技が凄くても、一刀さんの身体能力は一般兵と変わりません。

私が全力で逃げれば、一刀さんは追いついて来れないはずです。

まさか狩る側から、狩られる側に回るなんて、………こんなこと数年ぶりです。

 

「はぁー、はぁーっ」

 

大分走った後、私はかなり上流の河原に出ます。

全力で走ったため、息は上がり、喉がカラカラです。

 

ぱしゃ

ごくごくっ

 

川の水で顔を洗いながら、喉を潤し、

 

「はぁー、此処までこれば」

「気を抜くのは、まだ早いよ」

 

とん

 

えっ?

 

いる筈のない人の声に、

聞こえるはずのない声に、

背中を叩かれる感触に、

私は心臓が止まりそうになる思いと共に、

驚きの声を挙げますが、その声すら出す事が出来ませんでした。

この場を跳び去ろうにも、手足が動きません。

思春様がやられたのは、これだったんですね。

私の視界には、私の後ろから廻り込む様に、前に回る一刀さんが映し出されています。

 

「いったいどうして? って顔だね

 確かに、まともにやったら、明命には追いつけないけど、逃げた方向は分かったからね」

 

だとしても、あれだけ離したのにどうして?

 

「それなりに気を付けて逃げていたようだけど、

 人間安心しようと、こういう所では道や水のある所に出たがるんだ。

 特に心を乱した状態だとね。 むろんまったく逆の場合もあるけど、

 どうせ、逃げ回られたら時間切れで俺達の負けだから、

 賭けに出て、道沿いに走って、先回りさせてもらった」

 

はぁぅ……、失敗してしまいました。

 

 

 

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一刀さんに解穴してもらい、祭様の所に戻ると、

 

「ああ〜、北郷さん落書きされていないです。 流石ですねぇ」

「くぅ、賭けはワシの負けか」

「ふふ〜、祭様、約束通り、私の所の部隊の調練お願いしますね♪」

「ああ、分かった分かった。 半月ばかり面倒見てやるわぃ」

「ええ〜〜っ、ずっとじゃないんですかっ」

「当たり前じゃ、それでは任務放棄じゃろう。 公瑾の目もある。それ以上は誤魔化せぬ。

 それとも穏は、ワシが『 任務を嫌がった穏に、賭けに負けてやらされた 』と説明しても良いのかぇ?」

「うぅぅ〜〜〜〜〜っ……、仕方ありません、それでお願いいたします。 くすんっ」

 

……人を肴に賭けをしていたようです。

一刀さんはその間に、そんな二人に苦笑しながら、思春様に解穴を施していました。

そして、そんな一刀さんに祭様が思春様が持っておられた墨と筆を渡し、

う゛っ……そうでした、それが待っていました。

 

「ほれ、敗者には敗者の罰を与えねばな」

「いや、別に無理にやらなくても」

「なんじゃ、おぬしは明命達に情けを掛けるのか? わしらをこんな目に合わせたと言うのに」

「いや、女の娘の顔に落書きするなんて、最低な事出来ないって言ってるだけだよ」

「別に顔である必要はないぞ、ワシと穏の様に、身体の何処かに大きく書けば良い」

 

一刀さんは、優しいので、躊躇われているようです。

ですが、これは訓練の一つです。

負けは負けでそれなりの罰を受けるべきです。

ですから、

 

「一刀さん、私の事は気にしないで書いてください」

「えっ? 明命」

「構いません、祭様達だけ書かれて、負けた私が書かれないのは不公平です」

「……そうだな、北郷、遠慮する必要はない」

「ちょ、思春まで」

「一刀さん、遠慮なく『 貧乳 』でも『 ぺたんこ 』でも好きな言葉を書いてください」

「流石にそれは別の問題引き起こしそうだから、遠慮させてもらう。(後で絶対拗ねられそうだし)

 と言うか明命、ちなみに俺が捕まっていたら、どう書くつもりだったの?」

 

一刀さんの言葉に、私は少し頬を赤らめ

 

「えーと、その『 売約済み 』とか、『 私専用 』とかを……」

「……あー……それはそれで恥ずかしいな……」

「そ・そう言う訳で、その遠慮なくどうぞ」

 

そう言うのですが、一刀さんは一向に書く素振りを見せる事無く、

大きく溜息を吐いてから、

 

「要は数日間、晒し者になるような状態になればいいんだろ?」

「まぁそうだが」

「じゃあ二人を捕まえたのは俺だから、その方法は俺に任せて貰う。 それで良いよな」

「おぬしの言っておる事ももっともじゃが、

 甘いおぬしの事じゃ、中途半端な事をされては他への示しもつかん、いったいどんな方法じゃ?」

 

祭様のその言葉に、一刀さんは、穏さんとここから少し離れた所に行き、

やがて、

 

「わはははっはっ、それは面白そうじゃ」

「確かに見ものですねぇ〜♪」

「そう言う訳で、明命は明日から三日間と言う事で良いよね」

「ああ、それで構わぬ。 なに策殿達にはワシの方から話しておこう」

「きっと、積極的に協力してくれますよぉ〜♪」

 

……一刀さん、いったい私達に何をするつもりですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

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あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第79話 〜 山中に舞う狩人達 〜 を此処にお送りしました。

 

前回のシリアス(?)な話しから一転して、日常を描いてみました。

元ネタは、原作の『明命の本気』から取ってきております。

作中、色々種まきもしていますが、賢明な読者の方はある程度先の展開も読めておると思いますが、どう言った演出がされているのかをお楽しみくださればと思っています。

さて、次回はこの続きと、別の日常を描く予定です

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 

 

 

 

PS:最近スランプです。もう一つの話が、なかなか旨く纏まらない…もう五回以上全部書き直しています。

  もうしばらくお待ちください。

説明
『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

かねてより霞に申し込まれていた仕合、
水関以降、磨き続けた霞の武が一刀に届くのか……、
そして、祭に問答無用に付き合わされた先にあるものは……

拙い文ですが、面白いと思ってくれた方、一言でもコメントをいただけたら僥倖です。
※登場人物の口調が可笑しい所が在る事を御了承ください。
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コメント
なんだろう?一刀の裏舞踊の扇子の仕様といい、気配遮断の技術といい、長髪高校生で極O流の使い手の世界を思い出してしまった・・・^^; それはさて置き、明命も大胆な事書こうとしてたんですな〜可愛いやんかw・・・思春は何を書く気だったのか気になる^^;(深緑)
フィーメ様、明命はお猫様を抜いても可愛いと思いますよ。(うたまる)
ここは原作にもありましたね、楽しく読ませてもらいました。明命可愛いな。(フィーメ)
ジョージ様、チート一刀ならではの逆マンハント楽しんでいただけたでしょうか? 次回は別の意味で楽しんでいただけると思います(うたまる)
な〜る、まさかの逆マンハントときましたかwwwww確かにここの一刀なら造作もないかwwwww さて・・・・楽しませて下さいよ、うたまるさん?wwwww(峠崎丈二)
よしお。 様、コメント有難うございます。 よしお。 様が言われた所も気に入っていますが、 私的には『違います』 と明命が速攻でツッコミ入れる場面の方が気に入っています♪(うたまる)
明命の「売約済み」「私専用」というのが個人的にグーでしたw可愛いよー明命w(よしお)
U_1様、さすがに一晩で新作を作るのは無理かと(w(うたまる)
GLIDE様、ホントに、ナニするつもりでしょうね?(違w(うたまる)
天覧の傍観者様、初コメありがとうございます。 これからも御声援のほどよろしくお願いいたします(うたまる)
samidare様、毎日着せ替えは・・・・・・さすがに思春が我慢の限界を突破するかと(汗(うたまる)
アボリア様、ありがとうございます。 通算100作品とは言われるまで気付きませんでした。 これも皆様の応援のおかげです(うたまる)
jackry様、まぁ大体皆様の想像通りだと思いますよ♪(うたまる)
さては、新しい衣装ですね?お猫様ですか?(U_1)
ホントに何するつもりだよww(GLIDE)
初です。にゃはははははははははははは!逆マンハントですか明命さんと思春さんにはいささか気の毒ですが『例の衣装』でも着せればかなりの羞恥をさらせるのではないのかと思ってしまった私は心がひねくれているんですかねぇ。うp乙です。これからの一刀の活躍を期待しつつ、次回作の投稿をお待ちしております。(天覧の傍観者)
どんな罰だか気になるところです。 何かの服を着せるなら三日間一日づつかえて色々楽しむという手もww(samidare)
次回が楽しみな幕引きですね 罰がどのようなものか、とても気になりますw あと、通算投稿作品百作品達成おめでとうございますw(アボリア)
アレン★ゼロ様、誤字報告ありがとうございます。さっそく修正いたしました(うたまる)
hokuhin様、いえいえ、これで、明命の服を着ている時と、来ていない時の差の説明が付く訳ですよぉ(マテw(うたまる)
potyapotya様、 思春が買っていたら、多分文中通り、『軟弱者』とかそう言ったあたりだと思います(うたまる)
闇羽様、皆さんメイド服が好きなんですねぇ(w それとも、萌将伝でそう言うシーンがあるんですかね(うたまる)
nayuki78様、凄いテンションですねぇ♪ 次回の更新をお楽しみにして下さりありがとうございます(うたまる)
mokiti1976-2010様、文中の説明不足だなと今少し反省していますが、思春は、たまたま近くにいたため、真っ先にやられた事になっているんですよぉ(うたまる)
320i様、まぁ最初の段階であれだけの武を見せるチート一刀ですので(うたまる)
紫炎様、とりあえず、孫呉の日常をお楽しみください(うたまる)
瓜月様、暴走してます(w 稟と共に、飛距離を競走できそうですねぇ(w(うたまる)
poyy様、 テンション高いですねぇ(w 冥土長辺りなら似合いそうな気もしますね(うたまる)
はりまえ様、思春にメイドさせたら、原作の一刀なら、冥土に送られそうですよねぇ……(うたまる)
ロンギヌス様、えーと、コスプレである事は既に決定事項なんですか(汗(うたまる)
血染めの黒猫様、心待ちにしてくださりありがとうございます。(うたまる)
kurei様、其処は名前では無く「私」と言う所に、秘密があるんですよぉ(w ちなみに、萌将伝はまだやっていないので、そちらのネタは知りません(うたまる)
-『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-  となってますが前話(78話)から-群雄割拠編-になったのでは? 戻ったの?(アレン★ゼロ)
明命にパットだと!一刀君それは死亡フラグじゃないのかw(hokuhin)
思春が勝っていたらなんて書いたんだろう?(potyapotya)
俺はあえてメイド服を選ぶぜ!(闇羽)
( ゚∀゚)o彡°冥途 ( ゚∀゚)o彡°冥途 ( ゚∀゚)o彡°冥土(nayuki78)
本気出した途端に明命と思春を瞬殺とは(殺してない、殺してない)マジ半端ねぇ〜〜!しかしどのような罰を与えるのかトテモキニナリマス。(mokiti1976-2010)
ふむ、何をするつもりなのでしょう?楽しみですね(紫炎)
メイド!!メイド!!メイド!!メイド!!(poyy)
勝者には美酒を、敗者には屈辱を。この罰はいったい何なのかな?1日冥土(何となく)とか?(黄昏☆ハリマエ)
ネコミミ? メイド? どんと来い!?(ロンギヌス)
更新お疲れ様です。二人に下される罰が一体どのようなものなのか楽しみです。(血染めの黒猫)
明命よ、「私専用」なんて書いたら翡翠に怒られるぞw晒し物というとやっぱり萌将伝でお馴染のあれでしょうか?・・・次回も楽しみです!・・・全然関係ないですが「霞専用」と書くと早口で読むと一刀が3倍速くなりそうでした!Σ( ̄д ̄ )(kurei)
砂のお城様、…チート精嚢これが言いたくての前振りですかな(笑 チート性能と言っても所詮個人技ですので、それと一刀も苦手な分野はありますよ。 兵の指揮能力は、他の能力に比べたら低いですね。(うたまる)
砂のお城様、誤字報告ありがとうございます。 さっそく修正いたしました……公瑾は辞書登録の段階で間違えていました(汗(うたまる)
紫電様、はい一刀のはあくまで舞いですので、相手の行動に合わせてと言う所からのチート能力です(ぉ(うたまる)
アオオニ様、有難う御座いますさっそく修正いたしました(うたまる)
よーぜふ様、 思春にメイド服も良いですねぇ♪(うたまる)
タイトルが78話になっていますよ。79話のはずでは?(アオオニ)
思春!思春!メイド服!!期待(ぇw あれは、周りの環境に気をなじませて気配をどうかさせるって感じですかね?それにしても明命もなかなか大胆なことするつもりだったんだなぁw  悩み・・・なやみwにやにやww(よーぜふ)
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