真・恋姫無双 恋姫恋慕〜あの日の君に〜 No. 0 
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「ふふっ。それじゃあ一刀、今日はもうお休みね。」

 

「ああお休み蓮華。また明日。」

 

「ええ、また明日。」

 

蓮華の部屋で焚かれているのか、うっすらと匂ってくる華やかな香りに後ろ髪を引かれつつも俺は

部屋から出てきれいな満月が昇っている空を見上げる。

 

俺、北郷一刀がこの不思議な三国志の世界に降り立って早5年。

 

戦乱の時代は終わりを告げ二権分割の計によって蜀と呉によるこの「世界」の統治が行われてい

る。

 

今それは、五胡の襲撃を退けたことによって一段落が過ぎ、平和への道を歩んでいた。

 

そう、この「世界」だけは・・・。

 

「ッグ―――――――――――――ハッ!」

 

と、この「世界」について考えながら満月を眺めていた俺を急に襲う足元が急になくなってしまう

ような喪失感。

 

もうこれで何回目だろうか・・・。

 

せめてみんなにばれないようにとうまく隠してきたが、もう限界のようだ。

 

「北郷ッ・・・!」

 

「ゼハァ、ゼハァ・・・。グッ・・・思春か・・・。」

 

思春に助けてもらうのが、もうお決まりになってしまっている。

 

だってこの体がまるで自分の物じゃないみたいに動いてくれないからな・・・。

 

「しゃべるな・・・!部屋に連れて行ってやる!」

 

「ははっ・・・。ごめんよ、迷惑かけッグ―――――!」

 

「しゃべるなと言っているだろうが!!」

 

ひょいっと俺の体を思春は背に担ぎ、急ぎ足で俺の部屋に向かってくれる。

 

 

 

 

 

何故俺がこんなことになっているかを説明したい。

 

ほんの二週間前、思春と町に警邏に出かけたときのことだ。

 

いつものムスッとした態度を前面に押し出して俺の後ろを歩く思春。

 

・・・思春サン、殺気ヲオサメテクダサイ。膝カラ倒レテシマイソウデス・・・。

 

確かに蓮華に、この頃思春とまた距離が開いたっぽい、って言ったのが俺で、そうそれじゃあ思春

にあなたと警邏に行くように言っといてあげる、と言わせてしまったのが俺だとしても

 

この殺気はやりすぎなのでは・・・?

 

「おお御遣い様、おはようごぜえます。」

 

「ああ、おはようおやっさん。・・・ねぇおやっさん?何か感じない?」

 

「?いえ、あっしには何も・・・。」

 

「そっか、それじゃあまた!」

 

元気に手を振ってくれるおやっさんに、またこちらも元気に手を振り返す。

 

・・・あれ?思春サン、殺気ハ?

 

ちらっと振り返るとそこには・・・

 

「・・・・・・・・・(ギンッ!)」

 

キャー!まるで矢で打ち抜かれたような感触がー!もしかして思春サン、俺限定ですかーー!!さ

っきから耳のそばでチリーンって鈴の音がするんですけど!!

 

「その身に鎧を纏おうとも、心の弱さまでは守れんのだ!」ってあんた違うでしょ!確かに登場す

るたびにチリ―ンって音してて赤いけどさ!著作権、ダメ、ゼッタイ!

 

っと怒気が胸胸・・・じゃなくて、胸がドキドキしっぱなしの警邏の時間を過ごしていると。

 

なぜだろうか・・・なんかあっちの方へ行かなきゃならない気がして・・・。

 

「思春。道を変更してこっちに行こう。」

 

「むっ・・・北郷、そっちは正規の巡回路ではないぞ。」

 

「だから変更だって言ったじゃないか。こっちに行かないとダメなんだ。・・・勘だけ

ど・・・。」

 

「・・・勘か。・・・・・・解った。」

 

いつもなら市街地を抜け南門までいくルートだったが、・・・雪蓮風に言うと、「勘」が俺を突き

動かした。

 

行き先はと言えば、まだきちんと区画整理されていない流浪街、俗に言う「難民街」と言うところ

だった。

 

その難民街の裏路地を「勘」に導かれるまま歩き続け、そして何もない広場のような所に出た。

 

否―――そこには老人が一人、机と椅子を出し座っていた。

 

さっきとは違う感じで胸がドキドキしてくる。まるで行くんじゃないと訴えかけてくるよう

に・・・。

 

そして老人がこちらに気づき、無表情のまま言葉を投げかけてくる。

 

「北郷・・・一刀じゃな?」

 

「!・・・はい。あなたは?」

 

「わしの名は管略。五年程前に似非占い師と言われとった男じゃよ。」

 

衝撃が俺を襲った。この老人があの管略だと言うことに驚いた。

 

「それは・・・何故このような所にいるのですか?」

 

「それは北郷。おぬしに天命を伝えるためじゃよ。」

 

「なん・・・だって?天命?俺はこの世界に来て呉の天下統一の手伝いをすることがこの「外史」

の、この「世界」の天命じゃないのか!?」

 

「「それ」も天命じゃったのだが、この「外史」と言う物はなかなかひねくれとってな。自分の願

いが叶ったらまた違う願いを持ち出すのじゃ。」

 

「?・・・おい北郷。「外史」やら何やらはいったいどういうことなのだ?」

 

「ごめん思春。後で丁寧に説明するから待ってて。・・・解った管略。それじゃあ新しい天命とや

らを、教えてくれ・・・。」

 

「あい、解った。」

 

ううん、と咳払いをして天命を口に出していく管略。

 

「心して聞けよ、北郷。

 

      『天より舞い降りし使いはその使命を果たした。が、その羽は下界に触れ汚れてしま

い、空を自由に渡ることができぬようになった。

 

              道を閉ざされたものの末路は一つ。終末へとただ歩むばかり。だが

天の使いは天でなければ生きてはゆけぬものである。』」

 

「使命を果たした・・・戻ることはできなかった・・・それは終末へと・・・天でしか生きていけ

ない・・・!まさか!」

 

「そうじゃ、おぬしは近い内にこの「世界」、「外史」から消えてしまうことになるだろう。」

 

「ック・・・!なぜ!どうして!おれがこの「世界」から消えてしまわなければならないんだ!」

 

「考えてみるのじゃ。なぜこの「外史」に呼ばれたのかを。」

 

「・・・この世界は蜀の介入があるとはいえ実質呉が取り仕切っている・・・。なら呉が大陸制覇

を成し遂げたといっても過言ではない・・・。だからか?だから俺は消えなくちゃならないの

か!?」

 

「そうじゃ。お前の「天命」は既に成された。だからこの「世界」にはもう必要ないのじゃ。」

 

「ッグ――――――――!!」

 

「北郷ッ!!」

 

必要ない。そう聞かされてからすぐにこの喪失感に襲われた。まるで自分という存在がなくなって

しまうような、なんともいえない感じ。

 

だがそれは、紛れもなくこの世界によるものだということがわかった。

 

「貴様ァ!北郷になにをしたぁぁ!」

 

「ほほっ、何もしとらんよ。むしろしてしまったのは北郷じゃな。」

 

「なに・・・?」

 

「この世の理を捻じ曲げてしまったのじゃからな。・・・魏が大陸制覇を果たすというの。」

 

「な、何をいっているのだ貴様ァ!大陸を制したのは我ら孫呉ではないか!」

 

不信げに一瞬顔を歪ませて、さっき以上の怒気で怒鳴る思春。

 

それはそうだろう。自分の国である孫呉が滅ぼした相手国、魏が天下を取る「はずであった」と言

われたのだから。

 

でもそれは俺には良く解る事だ。このめちゃくちゃな三国志の世界で俺は「呉」を選んでしまった

のだから、仕方がないのだけれど・・・。

 

「クハァ、ふぅふぅ・・・管略、一つ聞きたい。・・・もう、どうしようもないのか?」

 

「もうだめだ。遅い早いは関係ない。なぜなら呉が勝っても負けてもおぬしは天へ帰る運命だった

のだから。」

 

「そうか・・・。もう一つ聞きたいんだが、・・・この「世界」はどうなるんだ?俺が消えてから

も続くのか?」

 

「残るじゃろうて。「天」はなかなかにこの国を好ましく思っているからの。」

 

「ははっ、そうか・・・安心したよ・・・。」

 

「北郷ッ・・・!?」

 

何を言っているんだ、見たいな顔でこっちを見ないでよ、思春。

 

俺は元の世界に戻るだけ。そして君たちはこのままこの「世界」で暮らしていけるんだから、何も

心配することないだろう?

 

だけどさ・・・。

 

「蓮華様や他の者はどうするのだ!貴様が居なくなるのは勝手だが、残していく者の事を考えてみ

ろ!!」

 

「解ってるさっ!!」

 

「解っていないっ!!」

 

ああ、解っているんだ思春。だからそんな泣きそうな顔で怒らないで。

 

でも、どうすればいいって言うんだ。正直「これ」には抗えそうもない・・・。まるで激流に身を

賭した木の葉のように、揉みくちゃにされて渦の中へと落ちていく様な、そんな感覚。

 

「・・・わしも悪鬼ではないのだ。お前の憂いを一つ断ってやろう。」

 

「・・・?何を教えてくれるんだ?」

 

「お前の横の居る女子(おなご)にはな、お前の種が宿っておる。つまりお前の子を孕んでおるの

じゃ。」

 

「「・・・はっ?」」

 

「他にもお前と近しいものにも種が宿っておるのじゃ。」

 

「なっ、それは本当か!?」

 

「わしはお前を予言したものだぞ。嘘は付くまい。」

 

俺の子供。昔、雪蓮と約束した孫呉に天の血を交じわせ、孫呉1000年の基盤とする約束。果た

せてよかったと言う安堵感と共に、愛している人たちが自分の子供を孕んだと言う、

 

云わば夢のような感覚と、我が子が生まれてくるときにはもうこの地に居ないという絶望感が交じ

り合って体の中をめちゃくちゃに走り回った。

 

なぜ、何故今になってそんなことを・・・!!

 

「くそっ!くそっくそっくそっ!なんで、なんでなんだよ管略!なんで「天」って奴はこんなにお

れを嫌っているんだ・・・。」

 

「知らん。「天命」をこの地に流すことがわしの使命なれば、理由なんぞは重要なことではない

わ。」

 

「くそっ!!!!!」

 

ダン!と四つんばいになって拳を地に振り下ろす。

 

ダメだ、また流される。意識が薄れてゆく・・・。

 

「思春・・・。俺は・・・ここに居るのか・・・?」

 

「ああ!お前はここに、私のそばに居るぞ!北郷!」

 

「そっ・・・か・・・。あり・・・がとう・・・、思春・・・。」

 

そこでその日の記憶は無くなってしまっている。

 

 

 

 

 

目を覚まし、窓から見える満月をぼぅっとしたまま見上げる。俺は・・・。

 

「お前はここに居るぞ、北郷・・・。」

 

「思春・・・。」

 

隣に思春が居た。手を握っていてくれた。名前を呼んでくれた。

 

俺はまだここに居る。まだ居ることができる。

 

・・・それは無理だろうなぁ。もう寝ることもできないし、目をつぶって、気が付いたら朝になっ

ている。そもそも目をつぶることも怖い。

 

そのまま目を開けたらそこは浅草だった、見たいなことになりかねないからな・・・。

 

思春はそんな俺を心配して夜に手を握っていてくれるようになった。

 

手を握られていると安心することができる。そのまま寝ることもできる。でも思春に迷惑をかけら

れないから三日に一度ぐらいのペースで手を握ってもらっている。

 

・・・でも、もうそれも必要無くなってしまうけど。

 

「思春・・・。」

 

「なんだ・・・北郷。」

 

「おれさぁ・・・もう無理みたいだ。」

 

「ッ!そんなことは無い!お前は私の横に居るんだ!消えやしないさ!」

 

「・・・ははっ、ありがとう思春。でもさぁ・・・見てみてよ、俺の手。」

 

俺の手だけじゃない、俺の体は真夜中を通過するとき一刻ほど透きとおってしまう。

 

今がちょうどそのときのようだ。

 

「・・・っ!何を言う!今私が握ってやっているではないかっ!透けてなんかいやしないぞ!透け

てなん、っあ!!」

 

ふっ、っと今体に送っている「氣」を弱めてみる。すると・・・。

 

「あっ、あっ・・・北郷っ、北郷っ北郷っ北郷っ!!」

 

ああ、泣かないで思春。まだなんだから。まだ伝えたいことがあるんだから。

 

でも、ほら・・・すり抜けてしまうのだ。俺の手は。まるで幽霊にように。

 

体に違和感を初めて感じたときに、体を思春に診て貰って解ったのだが、俺の「氣」の上を何やら

黒い「氣」が覆っていたらしい。

 

そのときに思春に「氣」の使い方を教えてもらったのだ。この黒い「氣」が「世界」からの攻撃だ

ったら、それを防げばいいのではないかと。

 

だが「世界」の「氣」の進行速度は凄まじかった。一日で腕、また一日で足、と各部分を侵略し蹂

躙する。

 

喪失感に悩まされながらも、なんとか「氣」を習得したが、その時点で正常な部分は心臓と頭だけ

だった。

 

今は何とか押し返そうとしていたのだが、もう力が湧いてこない・・・。

 

「思春・・・、聞いて欲しいことがあるんだ・・・。」

 

「――――――ック、なんだ・・・北郷・・・?」

 

「城を出てすぐ・・・にある宝石店があるだろう・・・?」

 

「ああ・・・。」

 

「そこに・・・指輪を頼んでいるんだ・・・。」

 

「指輪・・・?」

 

「そう、指輪。・・・天ではね、結婚するときにはこの、左手の薬指に指輪をはめるんだ・・・。

でね、俺が消えてしまった後・・・それをみんなに渡して欲しいんだ・・・。」

 

「馬鹿を言うなっ!私から渡してなんになると言うのだ!お前が渡さなければ意味が無いだろ

う!?」

 

「・・・ああ、解ってるよ思春。明日出来上がるようだからね、今日居なくなってしまったら渡せ

ないだろう?だから今・・・。」

 

「お前は明日も生きるんだ!ここに居るんだ!どこにも行きやしないっ!呉と共に生きるんだ!」

 

ああ、ほら泣かないでったら、思春。そうだね・・・弱気になっていたかもしれない・・・。

 

指輪は俺が渡す。そして・・・。

 

「愛しているよ・・・思春。もう寝るよ・・・明日に響いたらいけないからね・・・。手を握っていてくれるかい?」

 

「ああっ、手なんかいくらでも握ってやる・・・。ゆっくり休めよ・・・北郷・・・。」

 

「ああ・・・お休み・・・思春・・・。」

 

この日の記憶はここまで。

-2ページ-

改めて自分で書いてみると作家さんってすげー、って思う。

 

見てくれた人に感謝!さて次はどうしよう・・・。こう考えるのも楽しいものだなぁ〜、と思う

 

OTIKAでした。・・・OTIKAって何かわかる?

説明
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コメント
ナデシコネタとは懐かしい・・・しかし大好きな私は何も問題無い!と言うよりもっとお願いします!みたいなw 恋姫達は皆可愛く優しいですが、思春も情の深い優しい娘ですからね〜・・・続きが楽しみです!これからも頑張って下さい^^b(深緑)
BX2さん)はい、頑張りたいと思います。ヨロシク!(otika)
ハッピーエンドをまってます。(BX2)
長い猫 さん)恋姫も好きですよね?www(otika)
ナデシコ好きですよ^^(長い猫)
乾坤一擲 さん)うぬぅ、面白く出来るのか・・・。(otika)
うむぅ、面白そうな予感。(乾坤一擲)
赤トンボ さん)いいですよね〜プラモ見てるだけで映画が頭の中で放送されますよ〜(otika)
320i さん)泣かせねーよ!!・・・更新お待ちくださ〜い(otika)
ロンギヌス さん)確認しました。いや〜恥ずかしいですねぇ〜次回からはきちんと確認しますありがとうございます(otika)
イタズラ小僧 さん)どうでしょうかねぇ〜SADになるかHAPPYになるかは貴方に懸かっている・・・みたいな!(笑)(otika)
茂夫 さん)一言・・・ブラックサレナは お・れ・の・嫁ww(otika)
nameneko さん)コメントありがとうございます!面白いだなんて・・・ぽっ(otika)
砂のお城 さん)思春好きーな私と気が合いそうですね(笑)(otika)
おお〜こうゆうの好きです。 ブラックサレナのプラモ、家にあります(笑)(赤トンボ)
外史における理不尽さですか・・・  誤字報告:雪蓮が雪華になってます(ロンギヌス)
SADみたいですけど、最後はHAPPYになりそうな予感。次に期待です!(イタズラ小僧)
黒アキトですかな?ブラックサレナは私の嫁ですww(茂夫)
OTIKAってナデシコじゃないですか?(ゲスト)
この外史は一刀に対してかなりイジワルですね。けど、読んでておもしろかったんで次の更新待ってます。(VVV計画の被験者)
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