魏√after 久遠の月日の中で 4
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時間は少し遡る…………

一刀が成都を離れた次の日。

 

 

 

「桃香様!」

 

「はわわっ!!」

 

「愛紗ちゃん!?そんなに慌ててどうしたの!?」

 

桃香と朱里が二人で執務室政務に励んでいると、愛紗が慌てた様子で入ってきた。

 

「これをご覧になってください!!」

 

「これは……?」

 

「何やら『ぼうるぺん』と言うのですが、これが凄いのです!見てください、こうやって……」

 

「わっ!すっごーい!!文字が書けてるよ朱里ちゃん!!」

 

「ふ、不思議ですー……そのぼうるぺんは何処で手に入れたんですか?」

 

「今日城に訪れた商人が珍しい物と城へ謙譲したんだ。その者は昨日街で買い取ったと言ってたぞ」

 

「街で……?」

 

「成都にそんなお店は無いと思うのですが……」

 

「何やら若い男が数本売りに出していたらしい。商人の話だと、その男は昨日のうちにここを離れたそうだ」

 

「……そうですか。愛紗ちゃん、その商人を初めにぼうるぺんを売っていた男の情報を集めてください。それと魏と呉に伝達の用意を」

 

「分かった。そちらのぼうるぺんはどうする?」

 

「壊してしまっては大変なので、重要物として保管して置きます」

 

「えー……私使いたいなぁ」

 

「あはは……ご容赦ください……」

 

愛紗が部屋から出て行き。再び政務を再開する。

朱里はボールペンを見つめていた。

 

(こんなもの、真桜さんの発明品でも見た事がありません。これを持っていた男とは一体……)

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一刀が許昌入りした当日、華琳は休暇を利用し自室で本を読んでいた。

そこへ風が訪れる。休暇という事もあり、申し訳なさそうに風は口を開いた。

 

「休暇中申し訳ありません。どうしても華琳様にご報告したい事がございましてー」

 

「かまわないわ。何かしら」

 

「蜀との国境付近を根城としていた少数の野盗達が、先日捕まったとの報告が参りましたー」

 

「あら?吉報ね。華雄が働いてくれたのかしら」

 

首を横に振る風。

 

「いえ、それがー……庶民の格好をした一人の若い男だったらしいのですよ」

 

「庶民……?そこの野盗は精鋭で、私達が派遣した兵も煮え湯を飲まされていたそうじゃない」

 

「はいー。ですから、その男についてなのですが……いかがなさいますか?」

 

「野盗を送り出した際、その男は何と?」

 

「何も言わずにさっさと退散したそうです。そのお陰で名前はおろか容姿もよく分からないらしいのです」

 

「そう……もし今が乱世なら、その男は勝手に名を上げていた事でしょう。でも今は違う。平和な世の中にその様な才のあるものが埋もれてしまうのは黙っていられないわ。すぐに調べを進めなさい」

 

「了解しましたー」

 

頭を下げ風は部屋を後にする。

華琳は再び、視線を本へと戻した。

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「あなたは……」

 

見覚えのある姿。

彼女は確か…………華雄さん!!

 

反董卓連合の時に遠目だが見た事がある。

水関前で関羽と一騎打ちに出た猛将だ。

 

 

とてつもない威圧感。対峙しているだけでも嫌な汗が浮かんでくる。

これが本物の武将……

 

「いくぞ!!」

 

一気に距離を詰められ斧が振り下ろされる。

急いで腰に挿していた一心を掴み振るう。

 

「ぐぉおお!!!」

 

鈍い音と共に圧し掛かる重量。

柄と刀背に手を添え何とか持ちこたえる。

まともに受けたら数合と持たない!

力を抜き斧を受け流す。

地に叩きつけられた斧。轟音と共に砂煙を巻き上げる。

 

一撃で勝負が付くと思ったのだろうか。華雄さんは呆然と俺の顔を見ていた。

その隙に距離をとる。

 

「ちょっと待ってくれ!寝るのを邪魔したのは謝る!!だから武器を……」

 

「貴様も武人なのだろう?武器を抜いたからには責任を持て!!」

 

「それはあなたが急に襲い掛かってきて……ってうわぁ!!!」

 

再び凄まじい速度で接近してきた。

薙ぎ、突き、蹴り、明らかに片手間では扱えない大斧で連撃を繰り出してくる。

数も多いが一撃の重さが半端無い。斧相手に立ち回ったことの無い俺には荷が重い。

丁寧に捌いて行くが、腕が痺れて来た。こうなったら……

 

「らぁ!!」

 

渾身の力で一撃を振るう。確かな手ごたえと同時に大斧が宙を舞った。

よし、これで……ッッ!!

 

「ふっ!!」

 

「んなっ!……かはっ!!」

 

腹に鋭い衝撃が走る。体が宙に浮いていた。

地面を数回バウンドし、大木に叩きつけられる。

全身の痛みに意識を失いかけるが、何とか繋ぎとめた。

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俺は今何をされた?

華雄さんの武器を弾き飛ばしたのは解った。だがその後……

 

「…………なんつー馬鹿力だよ……」

 

一瞬の油断が生んだ隙。その間に華雄さんは大斧に眼も暮れず懐に入り、俺の腹に拳を叩き込んだのだ。

鍛えていなかったら確実に死んでいた。激しい嘔吐感を鎮め、荒く呼吸を繰り返す。

 

「しまった……殺してしまったか?」

 

斧を拾い華雄さんが近づいてくる。

冷静に状況判断を終えた俺は、だんだんと腹が立っていた。

何で大声を上げただけで殺されかけなくちゃならないんだ。

そもそも気持ち良く泣かせてくれたっていいじゃないか。こっちは五年越しの想いが潰えたんだぞ?

こっちの事情なんて知らないだろうけど、それを言うなら俺だってそっちの事情だって知らなかったんだ。

全身が痛い。でも心は反対に、怒りからか高ぶって気持ち良い。

氣を全身に巡らせ、立ち上がる。

 

「な……貴様、まだ立てるのか!?」

 

驚く華雄さんを無視し、ずっと握ったままだった一心を構える。

 

……絶対勝ってやる!!

 

足に溜めた氣を爆発させる。

見る見るうちに華雄さんとの距離を詰め、間合いに入った。

 

後手に回っちゃどうしようもない。相手に反撃の隙を与えずに絶え間なく打ち込む。

何十合打ち合っただろうか。華雄さんの動きが鈍くなってきた。

やはり大斧を自由に振り回すには多くの体力を消耗するらしい。大斧を持つ腕は小刻みに震えていた。

 

「ぐっ……まだだぁああああ!!!」

 

苦し紛れに斧を大振り。俺と距離を開けたかったのだろう。

その孤影をしゃがんで躱し、振り切った斧を上に打ち上げた。腕を完全に痺れさせる。

間髪居れずに足払い。倒れこんだ華雄さんの首筋に、一心を添える。

 

「……俺の勝ちです。華雄さん」

 

「その様だな……ん?貴様、どうして私の名を…………っておい!大丈夫か!?」

 

勝ち宣言した瞬間体から力が抜けてしまう。

一心を手放し、俺はその場に倒れこんだ。

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「ほら、飲め」

 

「ありがとう」

 

華雄さんから渡された水を一気に飲み干す。

火照った体が急速に冷えていった。

 

あの後意識を失った俺だが、すぐに意識を取り戻した。

全身の痛みがぶり返してくるが、骨に問題はなさそうなので安心した。

 

「その……いきなりすまなかった。寝起きはどうも機嫌が優れなくてな」

 

「もういいよ、迷惑をかけたのは事実だし」

 

気分じゃなくて機嫌ですか……

しかし俺は内心華雄さんに感謝していた。

先程の戦いのお陰で、いろいろとすっきりしていたのだ。

行き場の無い気持ちを戦いで発散する事ができた。

 

「しかし何故貴様は私の名を……いや、まずは貴様の名を教えてくれ。いつまでも貴様では呼びにくい」

 

「そっか……えっと俺の名前は…………」

 

……ここで北郷の名前をだしていいのだろうか。

止めて置こう。俺はもう天の御使いではないのだ。

 

「俺の名前は一刀。華雄さんを知っているのは、昔反董卓連合で兵として戦に参加していたからね」

 

「一刀か。ふむ、なるほどな」

 

「今度は俺の番ね。華雄さんはあの戦から行方が知れないって聞いてたけど……何があったの?」

 

「あぁ、あの後は呂布についていったんだが……道に迷ってしまってな。それから袁術達と行動してたんだが、色々あって捕まってしまった」

 

道に迷ってって……華雄さんって実は天然なのか……?

 

「平和な世の中といっても、まだまだ野盗やらが出回っている。曹操に頼まれて、私はそいつらを捕まえながら旅をしているんだ」

 

武を鍛えるのにもちょうどいいしな。と言って華雄さんは笑みを浮かべた。

この人、生粋の武人なんだなぁ……

 

「一刀はどうしてこんなところで奇声を上げていたんだ?」

 

「あー……それについては触れないでもらいたいかなぁ」

 

「言いたくないのなら別に良いが……」

 

と、華雄さんは欠伸を噛み締めた。

 

「すまんがもう寝させてもらう、一刀との戦いで疲れてしまったしな」

 

木を背にして眼を閉じる。すると、五秒も経たないうちに寝息をかき始めた。

ってここで寝ちゃったよ!

 

「一応俺も男なんだけどなぁ……って言ってもこの状態じゃ何もできないか」

 

少し動くだけで全身が軋む。もっとも、万全の状態でもあの華雄さんの寝込みを襲う何てことはできないだろう。

重くなった瞼を閉じる。明日からどうしようか、そんな事を考えるまもなく俺は意識を手放した。

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あとがき

 

 

 

どうもふぉんです。華雄のキャラがつかめず齷齪しております……

 

一刀さんの行動が、良いか悪いか少しの事件に発展しそうですね。これから何が起こるんでしょうか?

 

短いあとがきですが眠いのでこれにて、また次回作で会いましょう。

説明
魏√after 久遠の月日の中で 4になります。
前作の番外編から見ていただくと幸いです。

それではどうぞ。
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コメント
誤字報告p1城へ謙譲→城へ献上 かな? 一刀も自分で自分の証を残していってる事に気がついてないのがなんともw 勘違いに何時気がついて、尚且つその時の反応が今から非常に楽しみだ^^(深緑)
次回に期待。(チャイ)
1p:描けてる → 書けてる? 一刀が戻ってきている事に、誰が最初に気づくのかな・・・。次回も楽しみです。(Nyao)
5年たって精神力が鍛えられても、信じていたものが(自分の中では)裏切られたとなっちゃ無理ってぇもんですよねえ そしてほんとつよいですなおいw(よーぜふ)
華雄と朱里の情報で誰か気づくのかな?これからどうなるか楽しみです!!(Lune)
さて一刀はこれからどうするんですかねぇ?(poyy)
みんな一刀だときずかないんだろうな姿を見ないと(VVV計画の被験者)
もし華雄から一刀の名が伝わってもそこまで強くなっているとは思っていないだろうからきずかないよなぁ 続き待ってます(neko)
一刀の精神面での成長は無いのか・・・5年もたったのに(´・ω・`)   更新乙です♪    次も期待してます。(アラトリ)
誤解をとかないと・・・(rin)
NTRフェチとしては興奮せざるおえない(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
魏・蜀の包囲網が一刀を先に捕らえられるか、ですよねw何にせよ勘違いを解かない事には・・・ (村主7)
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真・恋姫無双 一刀 華琳  華雄 愛紗 桃香 朱里 

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