体育祭にて
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 相手チームの棒を間一髪、先に倒すことに成功した俺たちは、意気揚々とクラスのところに引き上げてきた。光がすぐに俺のところに駆けつけてくる。

「すっごくがんばったね! 最高だったよ」

「や、やめろよ、恥ずかしい」

 なんて言ったものの、俺は嬉しかった。光のほめ言葉って、本当に響くよなあ。

「あ、私そろそろ次のリレーの準備しないと。君はあと何に出るの?」

「えーと、借り物競走……なんかかっこ悪いなあ」

 小学校みたいだよな。でも、光はにっこり笑った。

「そんなことないよ。がんばって。じゃあね!」

 光は軽快に走っていった。光がいるなら、リレーはもううちのクラスがもらったようなもんだな。

「よう」

 ぼうっとしていた俺に、匠の奴が声をかけてきた。

「なんだよ、匠」

「お前、借り物競走出るんだったよな? 俺もだけど」

「ん、まあ」

 匠は一人うなずくと言った。

「お前さあ、第三レースに出ろよ。最後のやつ」

「どうして?」

「さあね」

 匠は明後日の方に視線を反らしてどこかへ行ってしまった。なんなんだ?……まあ、いいか。そろそろリレーが始まるな。

 女子リレーのわがクラスは第三走者まで三番手だったが、アンカーの光の驚異的な追い上げで、見事優勝した。

「光、お疲れ様。すごかったじゃん!」

 俺が言うと、光はVサインを作って笑った。

「ありがとう! 君のおかげだよ!」

「俺、何もしてないって」

「ううん……とっても力になったよ」

 光はぽっと顔を赤くした。走ったあとだからかな?……なんかかわいいな。ん、やばい。

「もうそろそろ借り物競走だ」

「そうなんだ。がんばってね!」

「うん。がんばるさあ」

 中途半端な沖縄弁で返事をして、俺は借り物競走第三レースの待機場所へ行った。しかし、なんで匠は第三を俺に回したんだろう?

 第一レースが始まった。加奈先生からおにぎり三個を借りた匠は見事優勝した。さすが、すばしっこい奴。

 第二レースの純は、足こそ速かったが、きんちゃく袋を水無月さんから借りるのに手間取り、三位に終わった。純な奴。

 さあ、俺の出番だ。

「えー、第三レースは、物でなく人を探してもらいます」

 実行委員がメガホン越しに言った。ふーむ。面倒と言えば面倒かもしれないな。乾いた銃声。俺は駆け出した。机に並ぶ封筒。どれに行くべきだろう? そのとき、匠の大きな声がした。

「右から二つ目だよ! グズ!」

 グズは余計だが、反射的に匠の言ったのを取ってしまった。一度取ったらそれに決めるのがルール。俺は封筒を開けた。

「……匠の奴」

 いい奴なんだか何なんだか。俺はともかく、全力で一人の女の子の前に走った。

「はあ、はあ、光?」

「どうしたの?」

 光はきょとんとしている。俺は息を整えた。

「光、一緒に来てくれよ」

「え。いいけど……何て書いてあるの?『陸上部員』?」

「いいから」

「う、うん」

 俺はどさくさまぎれに光の手を取った。

「あ……」

「は、早く行こう、光。負けちゃう」

「うん!」

 俺と光は駆けた。途中から逆に光にひきずられてるみたいになったが。ともかく俺たちは一番でゴールにたどりついた。

「はあ、はあ、はい」

 借りたものが妥当かどうか決める判定員は華澄先生だ。華澄先生は俺の渡した紙を見て、光を見るとくすっと笑った。

「合格よ。これ以上無い合格。優勝!」

 1と書いた旗を渡された。光が飛び上がる。

「やったー! やったね!」

 何だか俺より喜んでるぞ。

「ああ。光のおかげだよ」

「ううん……あ、そうだ、あれ、何て書いてあったの?」

 う、まあ、当然聞くよな。俺は無理に笑顔を作ってみせた。

「え、いいじゃん。合格だったんだし」

「えーっ、気になるよ……ヘンなことじゃないよね?」

 光はちょっぴり不安そうな視線を向けた。確かに、これじゃ、本人に言ったら気を悪くしそうだから黙ってるみたいに見えるかな? でもなあ。ちょっと言うの恥ずかしいよなあ……

「違うって。もういいだろ。優勝を喜ぼうよ」

 我ながら強引だ。光は口をとがらせた。

「ええーっ?」

 ……匠の野郎、『すごくかわいい女の子』なんて紙、いつのまに混ぜたんだ?

「教えてよう。ねえったら!」

 

 

説明
なぜか秋にこんなものを置いてみる。
内容スカスカだけどひかりん可愛い話でよろしくお願いします。
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