真・恋姫†無双〜江東の白虎〜 第弐章 8節〜一刀、別れの調べ〜
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この小説は、北郷一刀、呉の主要キャラほぼ全てと華陀に

 

いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。

 

その点を踏まえて、お読みください。

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一刀が呉を離れて、十ヶ月が経った頃。

 

「……ふむ、なるほど……」

 

凱は、庭の木陰で一刀が呉を離れる前に、

 

一刀自身が孫氏を新しい解釈を用いて書いた本、『虎之巻』を読んでいた。

 

『虎之巻』は、一刀が学の余り無いものにも、分かりやすいように注釈や、

 

絵師による絵本風のイラストなどを加え、子供が読んでも余り退屈しないように、

 

あまり深くない程度の内容を十八編に纏めた入門書の様なもの。

 

今の孫家軍は、この書を正式に入門書として採用しており、隊長格以上や武将に昇格する者達は、

 

最低限この書と孫氏を読み、内容を理解していないといけない。

 

入門書であるが、従来とは視点を変えた内容が書かれているため、文官達にも人気が高く親しまれている。

 

凱は、軍師程賢くなく、一刀程氣の扱いには長けていない。

 

今の自分に秀でる物は医学しか無いと思っている。

 

だからせめて、幾ら有っても困らない知恵、智謀、知識を貪欲に欲した。

 

彼が帰ってきたときに、自分が足を引っ張らぬように。

 

「こんな所で何をしているんだ、凱?」

 

其処に、我が軍筆頭軍師、周公瑾こと冥琳がやって来た。

 

「ん? 冥琳か。 俺は、仕事が片付いたから、アイツの書いた本を読んでいるだけだ」

 

「ああ、一刀が解釈した孫氏か」

 

実に興味深かったと言って、腕組みをして頷く。

 

表情からして、本当に読んでて飽きなかったのだろう。

 

「ああ。 少しでも、戦場でアイツの足を引っ張らないようにしないといけないからな」

 

そう言って又書を読むのに没頭する。

 

「そうか、がんばってな」

 

そう言って、冥琳は読書の邪魔にならぬように、その場を離れた。

 

「(武では、祭殿と同等に強いくせに、足を引っ張るわけが無いじゃない。 凱は、本当に医者なのか?)」

 

思っている事を胸に閉まったまま。

 

後には凱の、唸る声だけが聞こえた。

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彼女達と旅をして来て十ヶ月。

 

一刀達は、最大級の危機に陥っていた。

 

「一刀殿……」

 

「ああ……。 俺の方でも確認した。 でもまさか、此処までとはねぇ……」

 

一刀達は、物凄く困った状態に成っていた。

 

「そもそも、星ちゃんに任せたのが、最大の失策ではないですかぁ?」

 

あのマイペースな風ですら、辛辣な表情をしてそう言う。

 

「うぅ……。 すまぬ……」

 

原因の星は、床で正座をさせられ、腿に重しを乗せられている。

 

流石に反省しているのか、罰を甘んじて受け俯いている。

 

「はぁ……如何しようか、『路銀』……」

 

本当に困ったと言った感じに一刀が呟いた。

 

事の発端は、星に路銀袋を任せ、3人は其々街を見てまわるなどした事が始まりだった。

 

最低限の買い物をして宿に、三人で行き戻ってみれば、メンマの壷を抱いている星が居た。

 

そしてその傍らには、ぺちゃんこになっている路銀袋があった。

 

幸い泊まる宿に金を払った後だったので、今晩の寝床が無いわけではないが、次からの寝床はもう無い。

 

とりあえず、どこかで今日一日働き路銀を稼ぐ事になった。

 

稟と風と星は酒家での給仕をする事になった。

 

一刀も何かしようと、部屋を出たところで有るものに眼が行った。

 

「女将さん、それ使われていないなら貸してくれねえ?」

 

「え、これかい? いいけど、結構手入れしてないからボロボロだよ?」

 

そう言って飾ってあった「四胡」を一刀に渡す。

 

手にとって見ると、思っていたほどボロボロではなく、少し手入れをすれば佳い音を奏でられそうであった。

 

「ありがと、女将さん」

 

そう言って、その場で手入れを始めた。

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所変わって、三人が働く店は中々繁盛していた。

 

「店長! 三番さん青椒肉絲1、炸醤麺1です!」

 

「ありがとうございました〜」

 

「老酒とメンマ御待たせしました」

 

主に男どもが大半の割合をしめているが、

 

店が繁盛すると言う事はそれだけ給金が増え、路銀が増えると言う事。

 

「ぐぅ」

 

「寝るな!!」

 

「おおぅ? 余りの暇さに眠気が来てしまいましたぁ」

 

だが流石にその流れが何時までも続くわけではなく、ピークを過ぎると暇になる。

 

と、其処に

 

「ん? 何の騒ぎだ?」

 

「人が沢山集まってますね」

 

星と稟が店の外の或る一角に、人だかりが出来ているのを見つけた。

 

そして、中心に居るであろう人物が偶々人だかりが分かれて見えた。

 

「お兄さん?」

 

「のようだな」

 

「四胡を持っているということは、何か奏でるのでしょうか?」

 

眼を瞑り、軽く深呼吸をする一刀の姿を遠目から見る三人。

 

「…… (冥琳、俺に力を貸してくれ。)」

 

脳裏に自分に音楽を教えた幼馴染の顔を思い描く。

 

 

 

〜某所〜

 

「(キュリィーンッ!!!) っ!? 一刀?」

 

「急に如何したの冥琳?」

 

「いや、今一刀に助力を求められた気がした」

 

「は?」

 

と言っていた天才軍師が居たとか無いとか。

 

 

閑話休題

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そして

 

♪♪〜♪〜〜♪〜♪♪〜〜♪〜♪

 

一刀は奏でる。

 

♪♪〜♪〜〜♪♪〜♪〜〜♪♪♪〜〜♪♪〜〜♪

 

始めは、静かに緩やかに優しく。

 

♪♪♪〜〜♪♪♪〜〜♪♪〜♪〜♪♪〜♪〜♪♪♪〜♪

 

時に激しく、時に弾むように奏でる。

 

♪♪〜♪〜〜♪♪♪〜〜♪♪〜♪〜〜♪♪♪〜〜♪♪♪〜〜♪

 

たった1つの四胡がまるで街全体の音を奪ったかのように響き渡る。

 

♪♪♪〜〜♪♪〜♪〜〜♪♪♪〜〜♪〜……。

 

そしてまた始めのように優しい緩やかな調子に戻り、静かに奏で終える。

 

 

一瞬の静寂の後、

 

 

パチパチパチっ!!!

 

「―――っ!!!」

 

巻き起こる拍手喝采。

 

そして、乱れ飛ぶお金。

 

「こ、是ほどとは……」

 

「……凄い」

 

「う〜ん。 困りましたねぇ。 寝る間も惜しんで、聞き入ってしまいました〜」

 

三人が絶賛するのも無理は無い。

 

何せ一刀は音楽でも天才の冥琳に鍛え上げられたのだから。

 

一刀の四胡公演は大成功で幕を閉じたかに見えたが、

 

「よう、兄ちゃん。 大分儲かった見てえじゃねえか?」

 

「チョットばっかし俺たちに、譲っちゃくれねえか?」

 

人の物を横取りするやからと言うのは、何処にでも居るものだ。

 

そんな二人に、取り巻きの人々は一刀を心配するも、

 

「えっと……うん。 是で又暫くは大丈夫だろ」

 

そう言って銭を拾い終えた後、後ろの路地に消えた。

 

無視されたのに気がついた二人は、怒りの形相を顔に貼り付け後を追った。

 

そして、その後直ぐ

 

バチンっ!!!!

 

と、路地裏から大きく何かを弾く音が響いた。

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結果的に言うと、路銀稼ぎはとんでもない大成功だった。

 

理由としては、一刀が近隣の邑などに行って荒稼ぎしまくった為、

 

前にあった路銀の倍ほどに膨れ上がっていた。

 

「いくら路銀が無いからと、こんなに荒稼ぎする必要は無いのでは?」

 

「良いんだよ。 旅に金は幾ら有っても良いんだ」

 

「そうですねぇ。 無駄遣いをしなければですがぁ〜」

 

「ふ、風」

 

と、そんな話をしながら宿に戻り各自部屋に戻って就寝した。

 

その翌日一刀は或る噂を聞きつけ、朝食を食いながら考えていた。

 

『黄色い頭巾をかぶった盗賊集団』

 

その特徴は一刀の知る限りでは、間違いなく黄巾党だ。

 

「(ようやく『呉』の復活の『起爆剤』が出てきたか。

 

なるほど約1年ってのは、この乱が起こるまでは俺は隠れなきゃいけなかった訳ね。)」

 

「どうなされた一刀殿?」

 

朝食の焼き魚を、箸でつつきながら星はぼうっとしている一刀に声をかけた。

 

「ん? いや、そろそろ俺も郷(くに)に戻ろうかなっとな」

 

「っ!?」

 

「えっ!?」

 

「……ぐぅ」

 

其々、三人三色の反応を返してくれる。

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とりあえず、風が狸寝入りしているので起こす事に。

 

「風、今すぐに起きるのと、俺のデコピンで起きるのどっちがいい?」

 

「……お兄さんのデコピンを貰ったら、風の頭は壊れてしまうのですよぉ。

 

其れよりも、かなり唐突ですねぇ?」

 

「……切欠は何なのですか?」

 

自分から起きた風にすこし気分の良さそうな表情をして、稟が一刀に聞く。

 

「切欠は、今噂になっている、『黄色い頭巾の盗賊集団』だ。

 

何れは大陸を巻き込んだ、大乱になると俺は思ったんだよ」

 

その一刀の言葉に、全員が鋭い視線を一刀に向ける。

 

「だから、今から故郷に戻って戦い、名を上げよう……と?」

 

「いや」

 

バンッ!

 

「何故です!! 貴方ほどの力が有れば、多くの民を護れるというのに!!」

 

一刀が、稟の言った事を否定すると、星が卓を叩き激昂する。

 

対する一刀は、星に落ち着くように促していた。

 

「落ち着け、話しは最後まで聞け、俺が否定したのは名を上げるという部分だけだ。

 

戦う事を否定したわけじゃない」

 

「は?」

 

「……如何いうことです?」

 

「もったいぶらずに教えてくださいよ〜」

 

一刀の武を持ってすれば、将軍職を手にするのは容易い事なのではなかろうかと、疑問に思う星達。

 

そんな三人に確信とも言える一言を伝える。

 

「俺の名前に、『江東』をつけたら疑問は氷解するぜ」

 

そう言って、いつの間にか朝食を平らげていた一刀は店を出た。

 

「……はっ!」

 

余りの衝撃の事実に、固まっていた三人が一刀を追う様に店を出たが、外の何処にも居なかった。

 

その事に三人ともやられたと言う表情をして言う。

 

「一刀殿が本当にあの『江東の白虎』だとは……」

 

「薄々そうではないかとは思ってはいたが……道理で、私が手も足も出ないはずだ」

 

「『名を上げる事に否定する』名は既に売れまくってますから、納得ですねぇ」

 

三人は、行き成り消えた一刀に納得のいかない表情をしながらも、仕方ないかと言った心持だった。

 

そして、同時に思う。

 

何時かこの旅で貰った恩を返そうと。

説明
ちわっす!
タンデムです!
今回、長かった旅編にようやく、終わりを告げる事が出来ました!
一刀の四胡の演奏ですが、
一応冥琳の幼馴染だし覚えさせられててもおかしくないかなぁと思い、
書かせていただきました。

では、本編どうぞ
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コメント
譲れのところの思いつき(坪に入ってて)「よし、あげよう」…と坪を上げて、ガン!…なんて(弥生流)
虎の巻・・・語源となった六韜を思い出すな・・・(きまお)
相変わらず自分の事を良く分かってない凱ですな^^; なんて頼りに為る冥琳w(深緑)
P7確信→核心じゃないか?(RevolutionT1115)
冥琳ww(RevolutionT1115)
いよいよ再会か!?ワクワクします!(readman )
ひょっとして呉の新顔はカダ?(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
冥琳にわろたw(たかやん)
タグ
真・恋姫†無双 江東の白虎 一刀転生 旅人三人組 にゅ〜たいぷ? 

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