真・恋姫†無双〜江東の白虎〜第弐章 9節〜一刀、復活!!〜
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この小説は、北郷一刀、呉の主要キャラほぼ全てと華陀に

 

いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。

 

その点を踏まえて、お読みください。

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一刀が、三人娘と別れを告げたその日から半月。

 

「申し上げます!!」

 

「何ごと?」

 

雪蓮達の館に駆け込んできた兵が、ある報告を持ってきた。

 

それは一刀が予期した通り、黄巾の動乱が大陸全土に響き渡り、

 

阿鼻叫喚の時代となったということだった。

 

現代で言う『黄巾の乱』である。

 

今ここに乱世の時代が産声をあげた。

 

そして、その知らせと共に袁術から、雪蓮への召喚命令がくだった。

 

召還命令の内容は、漢王朝より黄巾党討伐命令。

 

だが裏を返せば、其れは漢王朝の弱体化といったものが見え隠れしてくる物だった。

 

今正に孫呉復活の時代が幕をあげようとしていた。

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「どうぞ、冥琳様、凱」

 

「うむ……ん、腕を上げたな廿楽」

 

「ああ茶葉は同じなのに、前より香りが良くなってるわ」

 

雪蓮が袁術の元に行っている間に、凱達居残り組みは軍議を執り行っていた。

 

「祭様、お代わりいりますか?」

 

「うむ。 貰おうかの」

 

「あ、夕陽ちゃん私も頂戴」

 

「あ、はい! 少々お待ちください」

 

と言っても、傍から見たら皆で茶会をしているようにしか見えんが。

 

「なぁ、今更思ったんだが何で医者である俺が、軍議に呼ばれてるんだ?」

 

一刀が去るまでは、軍議に出席など考えられ無かったのだが、

 

何時の間にか自分も出席する事になってしまっていた。

 

そんな凱の質問を聞いて、冥琳はこいつは何を言っているんだ? と言う感じの顔をして言った。

 

「何を今さら。 おまえは、医師長兼、孫江隊の副将(待遇は中級の将と同じ)なんだぞ?」

 

「そうなのか!?」

 

「御主、知らんかったのか?」

 

「え、ええ」

 

知らぬ間に、自分の地位が高くなっている事に、驚きまくっている凱だが、結羽が補足説明をつける。

 

「知らないのも無理は無いわ。 一刀君が凱君に隠れて影でやっていたのだから。

 

自分が居なくなったときの為にね」

 

確かに、一刀なら自分に隠れてその位出来て当たり前か、と思ってしまう。

 

「それに、今の孫呉は将不足なのは、凱にもわかるだろう。

 

おまえのような、優秀な人材を捨て置く訳が無いだろう」

 

「……そうだよな。 分かった、自分で何か気付いたことがあったら、言う事にするよ」

 

「今はそれで、充分よ」

 

まだまだ勉強が足りないなと思う凱だった。

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そう言えばと、凱は周りを見回す。

 

「雪蓮殿と美蓮殿は何処に?」

 

「袁術に呼ばれて、袁術の本城に行っておるらしいぞ」

 

「でも十中八九、今話題の黄巾党討伐だと思いますけどねぇ」

 

穏の言葉を聞いて、凱は此処に蒼里が居ない事に気付く。

 

彼女も、呉軍の軍師としているのだから此処に居ないのは少しおかしいと思ったが、

 

会話を思い出してある事に行き着く。

 

「なるほど、此処に蒼里が居ないのは、彼女が戦の準備をしているからなんだな」

 

凱がそう言うと、冥琳が感心した顔で深く頷いた。

 

「うむ。 その通りだ。

 

準備が出来次第、我々は此処を出て途中で、美蓮様達と合流する事になっている」

 

と、そんな話をしていると凱は、此方に近づいて来る気配を感じた。

 

気配の方に視線を向けると、えっちらおっちら頑張って此方に来ている蒼里の姿が見えた。

 

「うんしょ、うんしょ……!」

 

ボインボイン!

 

彼女の身長に不釣合いな大山のせいで歩きずらいであろう事は、容易に分かった。

 

だが、そんな彼女もいざとなったら、

 

弓を持ち素早く動き敵と戦うのだから、本当に人は見た目では判断できない。

 

「お、おしょくなりました! 兵糧のちゅみ込み、部隊編しぇいその他諸々整いました!」

 

兵糧は殆どが、瑞穂の私財だが館を離れるときに、

 

冥琳に『是を使ってください。』と蔵の鍵を渡していたのだ。

 

御蔭で兵糧のは、問題無い。

 

続いて兵だが、是も一度没落したはずの国である呉なのだが、多くの志願兵が集まっていた。

 

理由は言わずもがな、一刀の影響だ。

 

この志願兵の多くが、街のスラムに住む少し柄の悪い連中なのだが、

 

彼らもこの国、呉を護る為に、立ち上がったのだ。

 

是もひとえに、一刀の人徳と言えよう。

 

「うむ! ご苦労じゃった。 冥琳」

 

「はい。 是より我等は、此処を出て黄巾党討伐に向かう。

 

向かう者は、途中で合流する美蓮様、雪蓮。 此処からは祭殿、私、そして凱だ。

 

母上、蒼里、穏は残りの兵とともに、我等の家を護っていてくれ。 では、解散!」

 

「「「「応っ!(はいでしゅっ!)」」」」

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一報その頃、美蓮と雪蓮は袁術から任を頼まれていた。

 

穏が予測した通り、内容は黄巾党討伐だった。

 

「うむ! では行ってくるのじゃ!」

 

小さい身体をそらし、雪蓮に命令した。

 

「はいはい」

 

対する雪蓮は、孫呉を奪った憎い相手。

 

極力視界に入れまいと、殆ど会話も聞き流していた。

 

「……」

 

その様子を美蓮は、黙って見つめていた。

 

そして暫くして、美蓮と雪蓮が部屋を出て行く。

 

二人が出ていくと、袁術はさっきとは違い、俯き加減で王座にへたり込む様に座った。

 

「美羽お嬢様、もう行きましたよ? 美羽お嬢様?」

 

「……」

 

彼女達が出て行くと、側近の張勲が袁術に話しかけるも彼女は伏せたままだった。

 

不思議に思い、張勲は彼女の顔を覗きこむ。

 

「うっぅ……ひっく……」

 

ぽつぽつ……

 

と、袁術の太もも辺りの服を握っている手に、雫が一粒零れ落ちる。

 

袁術は、泣いていたのだ。

 

「妾は……妾は、もうこんな事嫌じゃぁぁっ!!

 

のぅ、七乃。 なぜじゃ、なぜ妾はこのような目に遭うのじゃ?

 

ただ妾は、母様の友を、美蓮様を、救いたかっただけじゃぁ! あ゛あぁぁぁっ!!!!」

 

「美羽お嬢様……」

 

それからは、関を切ったかのように泣き出すのは、容易に想像できた。

 

本当の袁術は、美羽と言う少女は、名家である事を誇りにはしているが、鼻に掛けるような下品な娘ではない。

 

美羽は優しく、下々の者達まで思いやる事の出来る少女なのだ。

 

元々の孫呉に送った書状は、同盟の書状を美羽が自ら書き、孫呉の危機を脱するまで支える心算でいた。

 

だが、現実には彼女の母君、袁逢が死してから、

 

好き勝手していた文官の韓胤(かんいん)に彼女の書いた書状は破り捨てられ、

 

全く違う傘下に入れと言う文に差し替えて、韓胤の部下が孫呉に届けたと言うのが真相だ。

 

それを美羽が韓胤達に問い詰めると、今度は煩わしいとばかりに彼女の命を狙わんと、

 

韓暹(かんせん)が自分の部下達に命じて、脅しのために袁術暗殺を企てた。

 

幸いその事は早期発見でき、張勲率いる袁術の親衛隊達によって暗殺は防がれたが、

 

罪を追及された韓暹は、暗殺の罪を実行した部下に擦り付け、

 

トカゲの尻尾切りとばかりにその場で実行犯全員の首を斬った。

 

そして、この事から美羽は『常に自分の命は部下に狙われている』と言う事実を知ってしまった。

 

だから、彼女は自身の身を護る為、名家である事を鼻にかける阿呆な少女を、

 

張勲はその阿呆な少女に尽くす馬鹿な将を、孫家に属する者達の前では常に演じざるを得なくなったのだ。

 

この事実に、美蓮や結羽、祭は気がついていた。

 

彼女達も、袁逢と面識があったため、袁術の表情が作り物であるのが容易に分かった。

 

だが、当の雪蓮は憎しみによって眼が曇っており、その事実に気がつかない。

 

王として成長してもらう為に、美蓮はあえて何も言わぬ事にしているのだが、

 

日に日に、美羽の威張り散らしている姿が、無理して表情を作り笑っている姿が痛々しくてならなかった。

 

「あぁぁあぁぁぁっ!!! あ゛あぁぁああぁああぁっ!!」

 

「今は、私が傍に居ます。 美羽お嬢様」

 

城内の一室に、少女の悲しい叫びが響き渡ったのだった。

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準備を追えた凱達は4000の兵を引き連れ、館を出発し雪蓮達との合流地点に居た。

 

「このあたりで合流なのか?」

 

凱の左手には、白く美しい籠手『白虎覇爪』が装備されていた。

 

戦のときに、凱がお守りの様に何時もつけているのだ。

 

「ああ、そろそろ着く筈だが……ふっ。 噂をすれば何とやら」

 

そう言った冥琳の目線の先には、紅い孫の旗を翻した2000ほどの軍が此方に来ていた。

 

「ごめ〜ん」

 

「遅くなったわ」

 

勿論、その軍は雪蓮と美蓮率いる軍だ。

 

「じゃ、行きましょう」

 

「……なぁ、何で周々がここに居るんだ?」

 

「ぐるぅ…… (悪いか……。)」

 

そして、何故か合流した雪蓮達の部隊には、一刀の騎馬ならぬ騎虎である周々が鎧をつけた姿でそこに居た。

 

「一応、この子も呉武の立派な象徴だからね。

 

小蓮の所からつれてきたのよ。 ま、そんな事はいいから行きましょ」

 

と無事、雪蓮と合流した凱達は、早速黄巾党本隊の討伐に出発した。

 

斥候の話では、相手は5000程度である事が分かった。

 

此方の兵数が凡そ6000なので、数の利が其処まであるとは言いがたいが、

 

賊上がりや元農民風情が相手では、ハッキリ言って呉の軍勢には手も足も出無いだろう。

 

しかも、5000の内2500が元孫江隊なので、略(ほぼ)無傷で勝つ事も可能ではなかろうかと凱は思った。

 

戦場が近づくたびに、我らが王と元王がにやりと笑い合う。

 

「ふふ……ゾクゾクしてきた。 早く着かないかしらねぇ……」

 

「流石私の子ね、私もよ雪蓮。 後どの位かしら……ふふふ」

 

と、物騒極まりない事を宣う。

 

その様子に、冥琳がそろって溜息をする。

 

やはり彼女と彼女の母が、一番の苦労性なのかもしれない。

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その様子に、苦笑しながら凱が二人に言う。

 

「今からそんなに興奮して、如何する? 着いたときに疲れたじゃ済まされないぞ?」

 

そう言った凱の顔を、二人は眼をギラギラした獣の様な瞳をむけた。

 

「ええ凱、言いたい事は分かるわ。 でもね、あの子が去って今日で丁度1年なのよ?!」

 

「その1年前に、一刀が孫呉復活の狼煙が云々って言っていたのよ? 興奮しないわけが無いわ!」

 

そして、興奮した面持ちでそう言った。

 

その目を見て、凱は溜息をついて、

 

「(二人と戦に行くときは、今度から鎮静薬を持ってくるか。)」

 

と結構物騒な事を、考えていた。

 

そんな事をしている所に、両手をパンパンと叩いて、冥琳が注目を皆に促す。

 

「勢いづくのはいい事よ。 それに黄巾党如き、勘を取り戻す程度の相手。

 

人々の記憶に深く刻まれる圧倒的勝利をもって、名声を広めましょう」

 

その眼は鋭く、軍師周瑜になっていた。

 

「ふむ、圧倒的勝利とな……。 ならば、少数被害での大勝じゃな」

 

「そうですね」

 

祭、冥琳の話を聞き、意見を総合する凱。

 

と、ある言葉が口から漏れた。

 

「深く刻まれる……少数被害での殲滅……火計?」

 

「っ?!」

 

と呟いた、凱を冥琳は驚きと感心の入り混じった表情で見て、こう言った。

 

「ほう……凱、お前やるではないか。 とても今まで兵法書を読んで、頭から煙を出していた者とは思えんぞ?」

 

「え? っと言う事は、俺の策を採用か?」

 

「うむ」

 

そう言うや否や、冥琳は各部隊に指示をしだす。

 

偶々、自身の頭の中身が漏れた呟きが採用されて、

 

少し戸惑うが冥琳が人を誉めると言う事は中々無いので、素直に受け取っておくことにする。

 

正直な所、医師である凱としては、人を殺す策を提案してしまった事に、何とも言えない気持ちになる。

 

だが、後悔はして無い、……いや、してはならない。

 

自分がとった行動故の結果なのだから。

 

それで、多くの仲間の命が救われるのだから。

 

「では、是にて軍議を終わりにする。 各自、奮励努力せよっ!!」

 

「「「「応!!」」」」

 

雪蓮の号令が響き、凱ははっとして返事をする。

 

そして、自分も持ち場に行こうとしたその矢先、周々が此方に近づいてきた。

 

「? 如何したんだ周々?」

 

「ガブッ!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

そして、何と行き成り凱の着けていた白虎覇爪に噛み付いた。

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是には、流石に凱も周りも焦った。

 

「しゅ、周々!?」

 

「止めなさい! 周々!!」

 

「ええい! 止めぬか、周々!!」

 

「くっ! 私の腕力ではどうにもならん!」

 

「放せって、おい!!」

 

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「「「「「あ゛っ!!!」」」」」

 

そして、取れてしまった白虎覇爪を咥えて、戦の前だというのに何処かに走り去ってしまった。

 

その奇妙な行動に、凱は首をかしげた。

 

「あ、危なかった〜……」

 

「にしても何であの子は、行き成り凱に噛み付いたのかしら?」

 

「其れも、一刀の形見どっか持ってちゃうし!」

 

「帰って来たら、灸をすえてやる必要があるのう」

 

「はぁ、今居らぬ奴の事を考えるより戦の事を考えよう」

 

と、其々が周々の行動に眉を潜ませるが、今は戦の前余計な考え事は控える事にした。

 

だが、この周々が最強の援軍とともに戻ってくる事を、この時はまだ知る由も無かった。

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SIDE一刀

 

 

「ん?」

 

森の中を歩いていたは一刀、自身に向かってまっすぐに近づいて来る氣を感じた。

 

其れも懐かしい、者の氣が茂みを掻き分け姿を現した。

 

ガサガサ!

 

「……!」

 

「周々!」

 

茂みから姿を現したのは、自分の騎虎の周々。

 

周々は、一刀の姿を見つけるや否や、一刀に圧し掛かり顔中を舐めまくった。

 

ぺろぺろ

 

「ぶは! ちょ、周々!」

 

「……♪」

 

鎧を着けている姿、を見るにどうやら抜け出して来たようだ。

 

一頻り、嘗め回して満足したのか

 

「ぷはっ! おまえ態々(わざわざ)俺を迎えに来る為に、抜け出して来たのか?」

 

「…… (コクリ)」

 

言葉が伝わったのか、首を縦に一回ふる。

 

その事実に、一刀は仕方ないと溜息をつきながら、嬉しそうににやりと笑みを浮かべた。

 

そして、周々の咥えている籠手を左手につけ、持っていた右手の籠手も装備して周々に跨る。

 

「おしっ! 行くぞ、周々っ!!」

 

「――!!」

 

そして、久々に一刀を乗せた周々は、来た道を軽やかに全速力で駆けた。

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〜本陣〜

 

その頃、凱達は黄巾党と対峙していた。

 

もうまもなく、先鋒同士がぶつかる頃だ。

 

「ねぇ、何で私たち前に出させてくんないの〜?」

 

「そうだ、そうだ〜」

 

「ダメです! どこに最前線に立つ王と元王で現親衛隊長が居ますか!!」

 

だが、雪蓮と美蓮は、戦線に立たせてもらえないでいた。

 

王と元王である彼女等が戦線に立てば、間違い無く士気は上がるだろうが、万が一という事もある。

 

という理由で、冥琳が号令をかけた後、二人を本陣に居残りにさせたのだが、全く落ち着きが無い。

 

二人に説教でもしようとした瞬間――――。

 

 

ガァァァァァオォォォォォンっ!!!!!!

 

 

「「「!!!」」」

 

戦場に懐かしい獅子の如き咆哮が響いた。

 

「っ!!」

 

「っ!?」

 

突如戦場に響き渡った、咆哮と共に、敵先鋒が光の奔流に吹き飛ばされる。

 

その光景に敵味方関係なく動きを止めた。

 

そして、凱と祭は光の奔流が出てきた方に視線を向けると、

 

「ふぅ……」

 

「ぐるぅ……」

 

居た、見間違えようのないその姿。

 

そして、凱と祭の元までやって来た。

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「……わりい、遅れた」

 

そして、一刀はまるで待ち合わせに遅刻したような軽い感じににやりと笑ってそう宣った。

 

だが、まるで一刀の笑顔は、こう言っているようだった。

 

待たせて悪かった――――。

 

「ふっ……いや、最高の時機だ」

 

だから、凱もあわせて、にやりと笑って軽い言葉で、自身の思いを伝える。

 

待ちわびたぞ、と――――。

 

今度は、祭の顔を見る。

 

「……1年見ねえ間に、さらに美人になったな、祭姉ちゃん」

 

と、そう言った一刀の頬に、祭が震える手で触れる。

 

「一刀様? ほ、本当にお帰りにっ?!」

 

ぽすっ

 

そして、壊れそうな物にでも触るように、優しく触れるその手を一刀は掴み、片腕で祭を引き寄せて抱きしめた。

 

「遅くなってゴメンな、祭姉ちゃん。 悪いが、今は是で我慢してくれ。 後で、たっぷり相手するから」

 

久しぶりに触れる一刀の温もりに、祭は感じた。

 

ああ、本物だ――と。

 

「……う、うむ! 帰ったら、美蓮殿と、結……羽殿とぉ……儂の、三人で搾り、取ってやる、わい……!」

 

「おおぅ、其れは怖い♪」

 

一刀は涙ぐんでいる祭にそう言った後、兵達に向き、見知った顔の兵に伝令を頼む。

 

「おい、本陣に伝えろ。 『旗が一本足んねえぞ。』ってな」

 

彼は、一刀と凱が初期に鍛え上げた古参の兵の一人だった。

 

「りょ、了解だ!! 旦那っ!!」

 

そう兵が言って本陣に走った瞬間、

 

「――――っ!!!!」

 

鬨の声が上がったかのように、兵たちが歓声を上げた。

 

その様子に、右手を上げて、一刀は声を上げる。

 

「おめえ等! 俺が居ねえからって、怠けて無かっただろうな!!!」

 

「応っ!!!!」

 

中々良い返事をした兵に、ニヤリと口元を釣り上げ黄巾党の方に向く。

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黄巾党は、自分達の方を向いた人物から溢れ出る覇気に中てられた。

 

「態々、ご丁寧に待っててくれて、ありがとうよ」

 

そう言って、一刀は籠手に氣を溜める。

 

だが正確にはちがう、一刀の咆哮に乗せられた覇気を浴び、足が竦んで動けなかっただけなのだ。

 

そして白銀に輝く白虎覇爪をみて、黄巾党の一部、元々山賊江賊だった者達が一歩後退する。

 

「だけど、残念だったな。 俺は、手前等が相手にしてきた村人達みたいに……優しくねえぞ?」

 

ゴウッ!!!!!

 

瞬間、噴出す闘氣と殺気と覇気。

 

彼の闘氣と覇気は味方の士気を大幅に上げ、殺気は敵の戦意を限りなく削いで行く。

 

気の弱い者に至っては、己の死を幻視するほどだ。

 

「我が名! 孫っ! 江っ! 王虎っ!! 江東の白虎、此処に復活っ!!!!」

 

「――――っ!!!!!」

 

一刀が、高らかに名乗りを上げそれに呼応するように、兵たちも雄叫びを上げ、ゆっくり黄巾党に向かっていく。

 

その様子は、ハッキリ言えば異様。

 

ただ雄叫びを上げているだけなのに、敵が後退して行くのだから。

 

そして、最後の言葉を一刀が放った。

 

「火の如く、敵を蹂躙せよ!!! ガァァァォォォォンッ!!!!!!」

 

「ガァァァァォォォンっ!!!!」

 

「――――っ!!!!!!」

 

その言葉と咆哮とともに、全部隊が突撃を開始した。

 

一刀は、手ごろな敵の頭を鷲掴みにして、

 

「おりゃぁぁぁっ!!!」

 

「ぎゃぁぁっ!!!!」

 

「た、たすけてーーっ!!!!」

 

振り回し、投げ飛ばし、叩きつける。

 

掴むだけではなく、氣を纏ったその拳と足で殴る蹴るなど、目の前の敵を思う存分蹂躙していった。

 

それは一刀だけではない。

 

「雄おぉぉぉぉぉっ!!」

 

「な、何だこいつらうわぁーー!?」

 

「うおぁぁっ!?」

 

一刀の部隊、孫江隊は攻撃を極めた部隊だ。

 

剣の攻撃が止められたら、盾で殴り、腹を蹴り、時には頭突きだってする。

 

攻撃するのに、得物のみでは、タカが知れる。

 

獲物の無いときは、頼れるのは己の身体のみ。

 

それを信念とし、無手の心得もあるのだ。

 

それに、手合わせで防御の方は自然と身につくので、護りもとんでもない。

 

現に、この乱闘で負傷者は居るものの、死者が出ていない事が何よりの証拠といえる。

 

まぁ、相手が黄巾党と言う農民崩れと、賊の寄せ集めみたいな物だからと言うのも有るが、それでもとんでもない。

 

そして終に、余りにも苛烈極まりない侵攻に、敵陣がとうとう自分の陣地に後退するそぶりを見せた。

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〜本陣〜

 

 

先ほど、先陣から伝令が、来た。

 

急いで来たのか、息は切れ切れだった。

 

「先陣、より、伝令! 只、今、ご帰還、された、孫江様、が……旦那が!

 

『旗が、一本足りない』、との、事ですっ!!」

 

ただ、その表情は物凄く晴れやかだった。

 

その伝令の報告に、雪蓮は涙を眼にため俯き、冥琳は口元を押さえ号泣寸前。

 

兵達まで、歓喜の雄叫びを上げる始末。

 

そんな様子を見て、美蓮はしょうがないと思いながら、部下達に命令を出す。

 

「喜ぶのは、後にしなさい!

 

孫堅隊、孫策隊、周瑜隊は、火矢の用意! 残りは、『白虎の旗』の用意を急ぎなさい!!」

 

その美蓮の声に、自分の世界から戻って来たのか、雪蓮と冥琳がハッとした顔で美蓮に向き直る。

 

「泣いてもいいけど、泣くならあいつの前じゃないとね?」

 

「グスっ……そうね」

 

「グスっ……はぃ、グスっ」

 

居住まいを直す二人の下に、火矢の準備が整った事が届く。

 

冥琳は戦場を見て、全部隊に命令を出す。

 

「良し、全軍構え!! ……てぇーっ!!!」

 

ヒュヒュヒュッ!!!!

 

敵が陣に戻る素振りを見せ始めたので、約三割が入りきったところで火矢を放ち敵陣を焼き払う。

 

敵陣が炎に包まれるのを見た雪蓮は、自分の隊の先頭に立ち、

 

「今こそ、敵を殲滅する好機!! 皆の者、我に続けぇぇーっ!!!!!」

 

泣きっ面に蜂とばかりに、敵に最後の追い討ちをかける。

 

そして、雪蓮が突撃して半刻、鬨の声が戦場に木霊し、ある一本の旗が立つ。

 

封印されていた、『純白の孫の御旗』が闇夜を切り裂くが如く――――。

 

今此処に江東の白虎が完全復活したのだ。

説明
ちわっす!
タンデムです!
Ya---Ha---!!!
終に江東の白虎復活だじぇ!!!
長かった、此処まで来るのに本っっっ当に! 長かったぁ〜。
どのように復活してくるのか……

では、それでは本編どうぞ!
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コメント
美羽や七乃達は御輿状態ですか・・・雪蓮の曇りが気になりますね。(深緑)
うおおお!(readman )
一刀かっこよすぎww(リンドウ)
かっこよすぎるwww凱のスペックぱねえっすwww(btbam)
一刀かっこよすぎるw(たかやん)
タグ
真・恋姫†無双 江東の白虎 一刀転生 華陀  オリキャラ 復活! 

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