恋姫無双 〜天帝の花〜 12話
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「早く決着つけなさいよ」

 

 董卓連合を前日に控え、曹操たちは最終調整を行っていた。

 そうはいっても、準備等はすでに終わっているので武官たちの手合わせを観戦しているといったところだ。

 

「そう不満を漏らさないの」

「ですが、華琳さま。結果が分る試合を見てもなにもおもしろくありません」

 

 華琳をはじめ、桂花、春蘭、秋欄を傍に置き目の前では栄花と凪が城の庭をせましと走り回っている。

 

「そうかしら。あの凪に素手で立ち向かう者がいるなんて私はそれなりに楽しんでいるわよ」

「そうだぞ、桂花。武人が戦っているのだ、おとなしく見ていろ」

「うむ。私も姉者の意見に賛成だ」

「うぅ」

 

 なによ、なによ。

 栄花、栄花って、結局は男じゃない。

 まぁ、あの凪に自分の得物をもたずに同じく素手で戦っているのは単純にすごいことだとおもうけど、得

物をもたずにして戦って何の意味があるのよ。

 鍛錬といえばそれだけかもしれないけど、扱える得物で戦わなくちゃ結局は意味がないじゃない。

 凪に素手で立ち向かう?

 自己満足も甚だしいわ。

 これだから、男は馬鹿だから嫌いなのよ。

 桂花は、興味もない試合を眺めていた。

 

 

「それにしても、あの子もがんばるじゃない」

「はい、華琳さま。凪とあそこまで戦えるとは私も驚いています。私ではあそこまでいくかわからないもの

です」

「あら、春蘭にしては弱気なことをいうのね」

「私が七星餓狼を手にしていれば負けませんが、素手となると・・・・・・わからないものです」

 

 いつになく春蘭は真剣な眼差しを注いでいた。

 武人として高ぶっているのだろうか。

 

「なるほどね。秋蘭はどうみる?」

「私も姉者と同じ意見です、華琳さま。弓兵として最悪の事を考え武術も嗜んでおりますが、餓狼爪がなけ

れば凪には適わないでしょ」

 

 秋欄も姉と同様な考えで試合を見ていたが、どこか思いげな顔をしていた。

 

「元・主人が恋しいのかしら秋蘭」

 

 どこか意地悪そうな声音だった。

 

「いえ、華琳さま。“あのお方”らしいと思っていただけです」

「ふーん、随分ともったいぶるじゃない。秋蘭」

「そういわないの、桂花」

「でも、華琳さま。私だけが知らないなんて悲しいです」

 

 口ではそういっているが、元から試合に興味がない桂花にとっては話していたほうが楽しいのだろう。

 

「だそうよ。秋蘭」

「はぁ・・・・・・だが、栄花についてだぞ。桂花は知る必要はあるのか」

「いいじゃないの、減るもんじゃないんだし」

「わかったよ」

 

 秋蘭はため息を吐きながら話した。

 

「私が元・栄花のお世話役であることは知っているな」

「えぇ、最近聞いたけれども、華琳さまには春蘭であの男にはあなたでしょ」

「そうだ、だが困った事に全く口を聞いてくれなくてな」

「いまでも、そうでしょ。流星といるときでも、無言の時間が多いし、良く秋蘭も流星もやっていたわね」

「そうだな、だがとても優しかった」

 

 秋蘭の言葉に、ありえない、という顔をする桂花。

 

「はぁー、信じられないわ。あの男が周りの事なんて考えるわけないじゃない」

「その通りだ。なにをするにも一人でやってしまうものだから、私の立場はなかった・・・・・・だが、ある事が

きっかけで栄花の側を離れないといったのだ」

 

 “ある事”について知りたがったが口を挟むべきではないと桂花は思った。

 

「それからだ、相変わらず一人でやることには変わらないが私の事を案ずるようになられた」

「とりあえず、秋蘭のおかげであの男が更正するのはわかったけれども、それと凪との試合に何の関係があ

るの?」

「栄花は常に自身の一歩上の姿を見せてくれる」

「なによ、それ。それじゃぁ、秋蘭よりもあの男のほうが智も武も一歩上だったというの?」

「その通りだ」

「信じられないわね、この前では弓なんて全然扱えなかったじゃない。その話を聞いてあの男は自分よりも

下の人間に偉そうに稽古しているぐらいにしか見えないわ」

「・・・・・・」

 

 弓が使えないというのもどうせ日ごろの怠慢のせいでしょうね、と桂花の言葉に反応することもなく秋蘭

は二人の試合を眺めていた。

 

 

「さすがは栄花さま。こうも攻撃を簡単に受けきられてしまっては私は精進が足りぬようです」

「あまり自分を過小評価すぎるのも考えものだぞ」

「しかし、私には栄花さまは随分と余裕があるように見えます」

「そう見えるのならば、我の演技も大したものだ」

 

 凪は、呼吸をするたびに息が乱れ額には粒の汗がいくつも浮かんでいた。

 それに対して栄花は、いつものように眼を閉じ腕を組み悠然と立っていた。

 だが心臓は激しく動き、必死に酸素を求めている。

 少しでも相手を見れば、眩暈がおき倒れそうになる。

 それをなんとか栄花は約、半刻ほど保っていた。

 同じ無手で氣を扱うことが出来る凪とできない栄花では、この結果に陥る事になるのは必然の出来事だっ

た。

 いくら結果がわかっているとはいえ、ここまで長く続く事になっているのは彼の不屈の精神にほかならな

いだろう。

 

「ならば・・・・・・いきます!」

 

 ぐっ、と身体を閉じ込めるようにする凪。

 あの姿は一度だけ見たことがある。

 

「猛虎蹴撃!」

 

 熱量を体の一部分に貯め一気に外気へ放つ氣弾。

 視覚で確認できるほど、大きな氣だった。

 栄花は体を動かす事ができずに呆然と立っていた。

 ただ。

 

「猛虎蹴撃・・・・・・己を犠牲にするか」

 

 厭らしく笑みを作り飲み込まれていった。

 もし彼女がその顔を見たらなんというのだろうか。

 おそらくこういうだろう。

 

 “この道化師”と同じく薄く笑いながら蝶のようにひらひらと栄花をみたに違いない。

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「御使い様、一ついかがですか?」

「じゃぁ、一個もらおうかな」

 

 片手に桃をかじりながら、一刀は街の雰囲気を楽しんでいた。

 やっぱり、賑わっていないとつまらないよなー。

 そんなことを思いながら一齧り。

 んっ?! あのお尻は。

 

「あら? 一刀じゃない。どうしたのこんなところで」

「見ての通り、ぶらぶらしていただけだよ」

「はぁー、あなたを見ているとたまに私たちがしている事が場違いに思うわ」

「全くもってその通りです。蓮華さま」

「ひどいなー。これでも、精一杯がんばっているつもりだよ」

「ふん、どの口が」

「相変わらず、思春は手厳しい」

 

 そのような事をいいながら一緒に歩いていく三人。

 そういえば、思春って性格変わったなー。

 いや、違うな。

 なんていうんだろう、丸くなったという感じが。

 そんなことを思いながら、思春をじっと見つめる。

 足、合格。

 腰、いうまでもなく合格。

 胸、うん、もう少し頑張れ。

 顔、殺気!

 

「ふんっ!」

「おわぁっ」

「ちっ、外したか」

「何しているの! 思春!」

「そうだよ、も少しで首が空を舞いそうだったよ」

「蓮華さま。こやつは――」

 

 耳打ちをする思春に次第に蓮華の眼が冷たくなる。

 まるで俗物を見るような感じがする。

 

「はぁー、一刀って本当にそのことしか頭にないのね」

「失礼だな。なんていうんだろ、思春っておとなしくなった気がしない?」

「えっ? んー、私はやわらかくなったという感じがするけど」

「それだ、それ! いやー、それがずっと気になっていて」

「どうでもいいことを」

 

 そのような事をいいながら、蓮華の横にいる思春の口元は笑っていた。

 一刀たちの言うとおり思春は少し優しくなっていた。

 街をあるけば、恐れられていた彼女だったが最近では街の人々からも声を掛ける者がいる。

 もしかしたら、彼に会ってから変わったのかもしれない。

 

「どうでもよくないわ、思春。あなたが人々と話しているところを見た時は、嬉しかったわ」

「そ、そうですか」

「うんうん、できれば俺に対してももう少し優しくして――」

「ちっ」

「また、舌打ち?! 思春さん、厳しくありません?」

「ならば精進しろ」

「いまの自分自身、全否定ですか」

「当たり前だ」

 

 そのやり取りをみながら蓮華は笑みを浮かべる。

 うんうん。

 やっぱり、女の子は笑顔が一番だね。

 

「あっ、蓮華たちはお昼まだ?」

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「やっぱり、一刀の料理はおいしいわね」

「寮で一人暮らしをしていれば、嫌でも身につくものだよ」

「ふーん、これもふわふわしておいしいわ」

「蓮華はわかってくれるか、このふわふわさを実現するために三ヶ月同じ料理を食べたからね」

「うっ、三ヶ月も・・・・・・想像したくないわね」

 

 蓮華は感想をいいながら目の前にある料理を食し、思春は黙々と食べていた。

 今日のお昼の一覧はこんなものだ。

 天津飯。

 茶蒸し。

 オムライス。

 

「お前は、この料理以外に作れるものはないのか」

「くっ、思春はこの料理に文句でもあるのか」

「なくわないが、卵だけというのはどうもな。それに天津飯とおむらいすという物の区別がつかん」

「あっ、それは私も思ったわ」

「ちくしょう、デミグラソースさえあれば完璧なのに」

 

 まぁさ、卵料理だけで飽きるって及川にもいわれたけどさ。

 しょうがないじゃん。

 じいちゃん家、農家だったから新鮮なおいしい卵食べれるんだよ。

 この幸せは都会の人にはわからないね。

 あれ? そういえば、家から学園まで近いのに何で寮暮らしなんてしてたんだ?

 まぁ、いいか。

 おい、それよりも思春さん。

 天津飯よりもオムライスのほうが、進み具合が大変いいですね。

 おいしいならおいしいとはっきりいいなさい。

 あっ、おかわりですか。

 はいはい、わかりました。

 

「それにしても、一刀。料理の腕だけは上達するわね」

「うっ・・・・・・人がきにしていることを。だってさ、みんな面倒臭がって料理してくれないじゃん。それに毎

夜のように陽蓮さんと祭さんのつまみを作っていれば嫌でも――」

「わ、わかったわよ。あなたの苦労を認めるわ」

 

 認めるよりも手伝って欲しいよね。

 それにしても、蓮華はいい娘だな。

 ちゃんと見てくれるから天の御使い様も嬉しいです。

 それに比べ――

 

「・・・・・・何を見ている」

「お味のほうがどうかなー、なんて思ったりして」

「普通だ」

「あいですか」

 

 なんとしてもおいしいと絶対に言わせてやる。

 栄花さん、あなたの気持ちが少し分かりました。

 いつも真剣にメンマについて語っていたときを、馬鹿にしてごめんなさい。

 口に出していってませんでしたが、心の中では正直どうよ? と思っていました。

 でも、もうそんなことはしません。

 同じく食の道を歩むものとして頑張りましょう。

 おかしいな、こんなにやる気になっているのに悲しいのは何でだろう。

 

「ねぇ、思春。一刀が空に向かって拳を突き上げてすごい気合ね」

「蓮華さま、北郷の目をみてください。どうしようもないことを考えているだけです」

「そうね、一刀だからね」

「はい、北郷だからです」

 

 一刀を見る思春の眼はいつもより優しかった。

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「おっ、一刀。時間通りじゃな」

「祭さんこそ早いですね。待たせましたか?」

「いや、わしも主とそう変わらん」

 

 昼食を食べ終え、午後は鍛錬の時間となっていた。

 目の前にいる人物は、黄蓋で真名を祭という。

 栄花の師でもあり、本人の事情により年齢は伏せるが老体となったいまでも氣を使い少しの間ぐらいは現

役並の動きができるという。

 それに、氣を使わなくても思春と明命の二人を相手に苦戦した事はなく彼女の実力は不明だ。

 堅殿と策殿には、敵わないといっているがその二人も規格外の人物なのでなんともいえない。

 

「それでは、お願いします」

「ははは、挨拶などいらん。どこからでも参られ」

「では」

 

 一刀が持つ得物は木刀に対し、祭は無手。

 本来ならば、彼女は弓兵であるので弓を使うのが妥当なのだが、先ほどもいったように呉の上位の実力者

である二人を相手にしても無手であるので、一刀にとっては相手がどのような武装をしていようとも不利な

ことには変わりがない。

 先手を取ったのは一刀の突き。

 

「おぉ、少しは迷いがなく良い動きをするようになった」

「そりゃ、毎日のように祭さんたちと一緒にいればこうなりますよ」

「それでは、我らが化け物のような言い草ではないか」

「だったら一本ぐらい当たってくださいよ」

「右も左もわからぬ若僧に負けてしまっては、堅殿に怒られてしまうわ」

 

 一刀の攻撃は当たらなかった。

 いや、この場合は当たらないといったほうが適切だろう。

 彼女の言うとおり、一刀は殺すことに慣れるほど場数を踏んでいないことに対して祭は若かりし頃から十

数年以上も戦場を生き抜いてきた英雄である。

 赤子が大人に勝つことは無謀な話である。

 

「ふむ。どれ苦手ではあるが、わしもこれを使おう」

「えっ、蔡さん。いくら苦手って言っても木刀だよ?! ただでさえ結果は明白なのにそれはないよ」

「えぇい、ごちゃごちゃと言うではない。男ならそれぐらい気合でもたせろ」

「無茶いうなー」

 

 黄蓋―祭は考える。

 目の前にいる青年―北郷一刀は武人として、武を試みる者としてはあまりにも才がないと感じた。

 彼の剣筋は不思議で面白味があったが、所詮それだけの話だった。

 知識をもっていたとしても、それを扱う人間、物、技術がないのだから。

 少し前までは、蓮華と武を競っていたと聞くが今では差がつき話しにならない。

 もちろん、一刀が実力不足という事だが。

 だが、どうであろう。時間が過ぎていっても彼は得物を落さず立っているではないか。

 突き、避けられる。

 薙ぎ払い、受け流される。

 

 祭は考える。

 もしかしたら、彼は自身で攻めるよりも守るのが得意なのではないだろうか。

 そう考えれば筋が通る。

 だが、守りに入ったら反撃されることはないはずだ。

 おかしなことが一つあるはずだ。

 彼はこちらの攻撃をどう対処した?

 避ける、単純な攻撃は全てそれで対処した。

 受ける、そのそぶりは一度もなかった。

 なら最後は一つだけだ、彼は受け流している。

 

 祭は身震いした。

 受けながされるということは、予測し対処することだ。

 これは経験と技量が共に高くなくてはできないことだ。

 北郷一刀が蓮華さまに及ばない?

 おかしなことをいうな、下手したら思春と同等かそれ以上だ。

 残念なのが自身が弓兵であり、一刀に対応する得物がないことだ。

 汗を額にいっぱいに浮かべる一刀を見る。

 

 息も荒く呼吸することが苦しそうだ。

 天の御使いか、知識だけではなく武までもちあわせていようとは。

 人生長生きするものだ。

 警戒するべきは、やはり栄花か。

 もし、一刀の素質見抜――あやつは、見抜いていたに違いない。

 全く孫呉が天下統一するには、簡単にさせてくれないらしい。

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「ありがとうございました」

「・・・・・・・・・」

 

 青空の下に声と共に一つの試合が終わりを告げる。

 地に立つのは凪で伏せているのは栄花であった。

 

「男なんだから仕方ないじゃない。ただ厄介なのは華琳さまの直系の弟君ってところなのよね。これでは、華琳

さまの名まで傷つくかもしれないわ。いっそう、このまま降格させちゃえばいいのよ」

「あやつにも、何か事情があるのだろ」

「あら秋欄。元ご主人を庇うの? あいつは男なのよ! それに無表情で何考えているか分らないし! そ

れに兵士はいらない?! 力もないくせに・・・・・・誰があげるもんですか!」

「そう気を起たんでくれ」

 

 流星と流流と季衣に運ばれながら栄花に対して桂花は言葉を投げそれを秋欄がそれを静めていた。

 その光景を華琳は見つめていた。

 ふーん、相変わらず何を考えているか分らないわね。

 

「それにしても、兄さんには失望やな。あそこまで一方的にやられてしまうなんてうちよりも弱いとちゃう

んか」

「真桜ちゃん、それはいいすぎなの」

 

 それに部下には馬鹿にされる始末。

 はぁー、ただでさえ頭痛がひどいのにやめてほしいわ。

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 私はいまとある男を監視している。

 全身を黒に染め上げ髪は長く体格は細身に近いので後姿をみれば女に見えないことはない。

 当たり前のことだが、正面から見れば男だということがわかる。

 だが、その微妙な姿のおかげで恥ずかしい思いをさせられたのでこうして復讐するために見張ってい

る。

 男の真名は栄花というらしい。

 名を教えずに真名を教えるというふざけた行為に激怒したが、あの男は真名を真名と思わず名を真名

として捕らえているらしい。

 あまりにもおかしな言動で固まったのは私だけではないはずだ。

 とりあえず、馬鹿は放っておくことにする。

 考えるだけ無駄だ。

 

 そして驚くことに、奴は曹操さまの双子の姉弟だという。

 許せない!

 なにが許せないって存在自体がだ。

 曹操さまと共に学び生活するなんて万死に値する。

 さらに、あの男は全く学もなければ武もない。

 これでは曹操さまのお顔に泥をつけてしまう。

 凪から聞いた話しによれば、一度戦場で負けたことがあるという・・・・・・馬鹿馬鹿しいにも程がある。

 

 あの男は先ほどの模擬戦で手も足も出ずに惨敗したではないか、それに初めて出遭った時は凪が苦しくも

勝利したらしい。

 話しを聞いた感じでは、あの男が逃げたように思える。

 それから導き出されるとするなら、実力を隠しているのかそれともただ弱いだけなのか。

 前者だとしても、凪と同等ぐらいだろうと推測する。

 あの春欄が“ん? あぁ、凪と比べれば凪のほうが強いな。うん。”

 と、言っていた。

 あんな奴でも我が軍においての武の一番が言うのであるから違いないだろう。

 

 なら、桂花。

 あの男のことを危険視することはないはずだ。

 いくら男だといっても曹操さまの無能な弟として捕らえればいいはずだ。

 いや、あの男はそのような奴ではない。

 軍師の立場としては、あってはならないことだが私の勘がそう言っている。

 屈辱だ。

 判断材料は他にもたくさん揃い、結果を見れば無能な男として結論がいえるはずなのに、私の中では決し

てそうならない。

 勘に頼ってしまう私が甚だしい。

 だから、なんとしてもお前の素顔を暴いてやる。

 だから。

 この時の私の顔は、邪な笑みで満ち溢れていたに違いない。

 

「おぉ! 平気か? 兄ちゃん?」

「大丈夫ですか、兄様?」

「すぐにお茶を用意いたしますね」

 

 どうやら、凪との試合の時に気を失ってしまったようだ。

 それにしても、彼女の成長ぶりは目に見張るものがある。

 真面目な努力家と聞いたが、限界を知らない程の早さを感じる。

 

「兄ちゃん聞いているの?!」

「兄様?!」

「あぁ、すまない。みてのとおり、油断してしまったようだ」

 

 それからは彼女たちにはきつくお灸を据えられてしまった。

 主に流流はきつくだった。

 兄的な存在に憧れていたのか、良く懐いてくれる。

 もしかしたら、家族と離れる寂しさもあるかもしれないが。

 普通に話せることができて安心したのか、彼女たちは調練があるといって部屋を出て行ってしまった。

 

「流星、五胡の調査はどのようになっている」

「大喬さまの報告によれば、なんでも疫病が広がり深刻だといただいております」

「疫病だと? そのような事が起きる場所ではないはずだぞ」

「それが、なんでも大きな地震が起きたときに発生したと」

 

 地震――数ヶ月前に起きた大陸全土を揺るがした天災。

 天の御使いである北郷一刀がこの世に降り立った時ではないかと栄花は考える。

 確か雪蓮の話しでは、白い光と共に落ちたといっていたな。

 どれくらいの規模だが想像はできないが、地面が大きく陥没するほどの大きさだったらしい。

 

「その病は治療できるものなのか」

「はい、書によりますと華佗という医師がいるそうです」

「華佗――数年前に姉上の頭痛を治しにきた者と名前が一緒だな。完治にはいたらなかったらしいが、姉上

が呼びつけるほどの者なのだから腕は悪くないだろう」

「はい。それと、小喬からは一緒にいる左慈という男がそれなりの武をもっているそうです」

「ほう。あの、小喬が人を褒めるということはかなりできる者らしいな」

「私もそう思います」

 

「ところで流星、連合の戦はこちらに分があるとおもうか」

「私の考えでは短期決戦でなければ、負けだと思います」

「そうだな、あちらには多くの猛将が控えておるしな、それに対して我らは数では圧倒的に多いもの、連携

がうまくかみ合わないことも、なによりも食料がもつかどうかが心配だな」

「その通りです、数ある部隊はいづれ乱れるものであり筆頭すべきお方が」

「嬢であれば、なおさらか」

「はい、袁家の方々が手綱を持つことは無理だと思います」

「ふむ・・・・・・楽しみであるな」

「楽しみですか?」

「問題は数多くあるが、なによりも英雄の資質をもつものが必ず集まるのだ。このことを考えれば、連合に

参加する意味は十分ある」

「そして、手柄を立てればこの先のことを考えれば有利に物事が運ぶ」

「そのとおりだ、流星。あぁ、本当に楽しみだ」

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お久しぶりです、夜星です。

連合に入るまでに随分と時間がかかった感じがします・・・・・・・とりあえずがんばっていきたいとおもいます。どうしても一刀視点にしてしまうと、のほほん的な日常しか思い浮かびません・・・・・・これは重症でしょうか?とりあえず、次は連合戦! 連合のアイドル(華雄)には暴れまわっていただきましょう。やっべぇ、連合負けそう。。

それでは、次の機会にお会いいたしましょう。

説明
2,3月に一度更新になっていますね・・・ようやく次から連合戦がはじめられます。相変わらず今回も話が進みません。
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コメント
ぶちとまと様:コメントありがとございます。一気に読んでくださるとは幸いです。ラノベという魔物から逃げつつ早くに上げられるように努力しますのでよろしくお願いします(夜星)
いっきに読んだけど楽しいねー 続きを早めにお願いします(ぷちとまと)
拾参拾伍拾様:誤字ありがとうございます。修正しました(夜星)
4pにある「蔡さんこそ早いですね。待たせましたか?」⇒「祭さんこそ早いですね。待たせましたか?」(拾参拾伍拾)
O-kawa様:誤字報告ありがとうございます。修正しました(夜星)
5p、「弟君ところなのよね」→「弟君ってところなのよね」(O-kawa)
1p、「城の庭がせましと」→「城の庭を狭しと」の方が良いかと(O-kawa)
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