真・恋姫†無双 記憶の旅 15
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「ええ、初めまして。 もう一人の私」

 

目の前にいる「私」。

夢でも見ているのかしらね。

ずっと寝台の上で寝転がっていたからあながち間違いではないかもしれない。

 

「もう一人の私ねぇ。 あなたは妖の類か何かかしら?」

 

「そう言われても仕方が無いけど、この私にそんな態度を取ったら教えてあげないわよ?」

 

「何ですって?」

 

「知りたいのでしょう? 北郷一刀の真実。いえ、今は織田信長かしらね?まったく大逸れた名前を名乗ったものね」

 

「私」を名乗るこいつは真相を知ってる?

 

「聞きたいか聞きたくないかさっさと言って頂戴。私はあいつらの借りを返す機会を見逃してまでここに来たんだから。何も言わないなら私は行ってしまうわよ?」

 

「・・・わかったわ。聞きましょう」

 

このままじゃ何も進まない。

それに何となくだけど目の前の「私」が嘘を言うように見えない。いえ、こいつが本当に「私」であり曹孟徳ならつまらない嘘などつく筈がない。

 

「さすが「私」ね。 判断が早くて結構」

 

「いいから早く言って頂戴」

 

「そうね・・・まずは今の北郷一刀はあなたにはどう映るかしら?」

 

「おかしいの一言に尽きるわね。私達を遠ざけてまるで他人と接するかのような扱いだったわ。それに天和達に至っては名前を聞いてもまったく反応を示さなかった」

 

「今例を上げた名前は誰のことかしら?」

 

「あら、「私」なのに知らないの?張角のことよ」

 

「張角って言ったら黄巾の乱の首謀者の張角かしら?」

 

「ええ、その通りよ」

 

「へぇ、こっちの「私」は張角を部下に従えているのねぇ。奇妙な気分だわ」

 

「私」が驚きの声を上げる。

 

「そんなこと今はどうでもいいわ。話を続けて頂戴」

 

「そう焦らないの。 で、話を戻すとその張角の真名を言ったって今の北郷一刀には反応しろって言うのは無理な話だわ」

 

「・・・どういう事?」

 

「今の私の話を返せば北郷一刀は張角という名前には反応し真名には反応しない。つまり知識として張角という名前なら知っている。これだけ言えば「私」なら話は見えてくるんじゃない?」

 

つまり名前だけは知っているということよね。

 

 

・・・名前だけ? それってまるで私達が最初に一刀と出会った時と同じだわ。

 

「・・・まさか一刀は」

 

「答えに到達したみたいね。 そう、今の北郷一刀にあなた達と過ごした記憶がないわ。私も聞いただけでくわしくは分からないけど彼はあなた自身の物語が終端を迎え一度元の世界に帰った時、ここでの思い出を世界に根こそぎ奪われてしまったらしいわ」

 

・・・そういう事だったのね。だが一刀の態度にはまだ納得がいかない部分が多い。

 

「記憶がないことは分かったわ。でもそれが私を拒絶した理由にはならないわ」

 

「そうねぇ、例えば劇で一度役を演じきった役者がまた舞台に立つ。これっておかしいことじゃない? あなたがもしその劇の監督ならどうするかしら?」

 

「無理矢理でも舞台から下ろそうとするわ」

 

「そういうこと。あなたと北郷一刀が別れるという結末で終わった物語で北郷一刀はまたその舞台に立つという矛盾を犯している。そしてその矛盾の最たるものは始まりと同じ曹孟徳と北郷一刀が手を取り合うという行動よ。この禁忌を犯せばこの世界によって北郷一刀は存在を末梢されてしまうわ。だから北郷一刀は決してあなたに心を開こうとはしなかった」

 

次から次へと入る非現実的な情報に頭は混乱しそうになる。

だがこれだけはわかる。 一刀はずっと苦しんでいたのね・・・。

 

「健気なものと思わない? あのヘタレで女垂らしな北郷一刀が三国をたった一人で歩き回り世界に自分の存在を認めさせようとしたのよ。 記憶が無いってことはあなたは彼にとって何の思い入れも無いに等しいのにそれでも彼は信じて突き進んだ。すべてあなたの為によ、曹孟徳」

 

「ええ、そうね。 バカよ・・・本当にバカよね」

 

この言葉は一刀に対してではない、自分に対してだ。

自分の不甲斐なさに苛立ちが止まらない。 

真実に辿り着けなかったことじゃない。それ以前に一刀の苦しさをまったく理解出来なかった。

それどころか自分はそんな重荷を背負った一刀に甘えようしてしまった。

 

自分に対する怒りに震えているといつの間にか私は目の前まで来た「私」に手を握られていた。

 

「世界に一番嫌われても、泣いてるあなたをを突き放してまで彼は今もなおボロボロになりながら戦っているわ。それなのにまさか「私」であるあなたがただ指を咥えて待ってる、とは言わないわよね?」

 

一瞬言葉に呆気を取られてしまったがすぐにいつも通りの自分に戻る。

そうよ、その通りよ。

 

「当たり前じゃない。私は曹孟徳、三国の覇者よ。私の大切な部下が苦しんでる時に待ってるだけですって?そんなこと世界が許しても私自身が許さないわ」

 

「よろしい。それでこそ「私」よ」

 

「私」が笑顔でそう言う。

 

「で、具体的にどうすればいいのかしら?そこまで背を押すなら何かあるのでしょう?」

 

「あなたが直接手を貸すことは出来ないわ。そうすれば北郷一刀は消えてしまうからね。あなたに出来ることは祈ることよ。それだけでいい。世界に訴えるの。この世界には北郷一刀が必要だってね」

 

拍子抜けね。ただ祈るだけですって?

そう、もっと、もっと力となる何かは・・・・・あるわ。

 

「それだけじゃ物足りないわね」

 

「あら、何か思いついたのかしら?」

 

「ええ。 やることが決まったから私はもう行くわ」

 

私は両頬を叩いて顔を引き締めて扉に向かう。

 

「なら私もそろそろあちらに向かおうかしら。 あ、そうそう、よかったらあなたのその服くれないかしら? なかなか気に入ったわ」

 

「・・・そこに何着か入ってるから好きになさい」

 

世界が一刀を認めないですって?

これほど馬鹿げた話は無い。それを今から証明してみせるわ。

私は天和達がこれから始める舞台へ向かった。

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はぁ!!」

 

「甘いわ!!」

 

愛紗と左慈の攻防が続く。

そしてその間にもどんどん俺の存在が消えて体が透けていっている。

戦いを見てると突然後ろから声を掛けられた。

 

「あら、まだ死んでないようね、北郷一刀」

 

「・・・曹操!? 何で此処に!?」

 

「落ち着きなさい。私はあなたの知ってる曹孟徳ではないわ」

 

「・・・ああ、そうか、君がもう一人来てるってほうの・・・」

 

「そういうこと」

 

確かに言われてみれば服装が小川で別れた時の曹操と少しだけ違う。

 

「曹操ちゃん、自分に会って一体何してたの?」

 

貂蝉が曹操に質問する。

 

「別に。 ただあんまり情けない自分を見てると腹が立ったからちょっと助言してきただけよ。それと北郷一刀。安心なさい、もう一人の私が何か思いついたみたいよ」

 

「何か?」

 

「ええ、何かよ。 期待して待ってなさい。さて、私も加勢しようかしらね」

 

曹操は大鎌を携えて二人の攻防に入っていく。

 

くっ、あそこに参加出来ない自分が不甲斐ない。

せめて、せめて体が動いてくれればいいのだが戦いのダメージと体が消えていってるせいで上手く動かすことが出来ない。

 

「あらん?」

 

「こ、これは・・・・!?」

 

突然俺の体が輝き始めた。

それと同時に銅鏡の光も反応している。

 

一体何が起こってるんだ?

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〜一刀の異変少し前の魏の張三姉妹の舞台〜

 

「「「ほわわわぁぁぁぁぁぁ!!」」」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「「「ほわわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・あれ?いつもの合言葉は?」

 

「みんな、歌の前に聞いて欲しいことがあるの!!」

 

天和が先に沈黙を切った。

 

「みんな、天の御使いの北郷一刀は知ってるわよね?」

 

地和も後に続く。

 

「みんな知ってると思うけど今の平和は一刀さんが尽力してくれたから存在している」

 

人和も観衆に訴えかける。

 

「彼がいなければこの世界に平和は訪れなかったかもしれない。それにね、詳しいことは言えないけど私達一刀がいなかったら今頃この舞台で歌うことが出来なかったかもしれない」

 

「でも世界はそんな一刀を除け者にしようとしている。それに一刀から私達と過ごした思い出を、魏の人達と過ごした思い出を奪った。平和を、魏を愛してこんなに素晴らしい世界に変えてくれたのに・・・!! そんなこと許せないよね!!」

 

「みんなお願い。世界に届けて!! 私達には天の御使い北郷一刀が必要だって!! ここには彼を待ってる人達が大勢いるって!! 彼の居場所はここにあるんだって!!」

 

張三姉妹は涙を流して観衆に訴えかける。観衆はポカンとしたままだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおぉぉぉ!!よくわからんがその通りだ!!」

 

「帰ってきてくれー御使い様〜!!」 「除け者なんて俺は認めないぞ〜!!」

 

「俺は何時でも店開いて待ってやるからさっさと顔見せやがれ〜!!」

 

「あんたの意匠の服を待ってる奴らが何人もいるんだ!! だから早く戻ってきてくれ!!」

 

       「北郷隊長〜!!私達はあなたに一生付いて行きます!!」

 

「世界なんてクソくらえだ!! 俺達が必要としてんだ!!天和ちゃん達が言う通りならそんなこと許せる筈がねぇ!!」

 

観衆に火がついて様々な場所に声が広がった。

 

それは観客席に留まらず街へ、店の中へ、小さな民家の中からも叫び声がする。

 

 

 

 

「隊長〜〜!! 早く帰って来ぃな!!」 「私達は隊長・・・一刀様をお慕いしております!」

 

「また一緒に街をまわるの〜!!」

 

三羽烏が天に向かって叫ぶ。

 

「兄ちゃ〜〜ん!! 僕達まだまだ兄ちゃんから離れたくないよ!!」

 

「兄様!! また私の料理を美味しいって言って食べてください!!」

 

季衣と流琉も想いの丈を空にぶつける。

 

「一刀殿は私の鼻血を治してくださると仰ってました!!だから一刀殿を私から一刀殿を取り上げるのは許しません!!」

 

「あの人を風から取り上げるのは神が許してもこの風が許しません〜」

 

稟も叫び風も叫ぶ(?)

 

「フン、全身精液男がいなくなっても私は何とも思わないけどねぇ、あいつがいなくなると華琳様が悲しむのよ!! そのせいで私が華琳様に愛される時間が減っちゃったじゃない!!だから勝手に華琳様の下から引き離すなんて許せないわ!!」

 

「世界だかなんだか知らんけどアンタのせいで一刀がウチとの約束忘れた言うなら容赦せぇへんで!!」

 

桂花と霞も空に向かって思いっ切り啖呵を切る。

 

「北郷ぉぉぉ!! さっさと帰って来ないと地の果てまで追い掛けてその首叩き切るぞ〜!!」

 

「だ、そうだ。 北郷、さっさと帰って来ないと酷い目にあうぞ? だから北郷、早く帰って来い!! そしてまた一緒に姉者にご飯でも振舞おうじゃないか!!」

 

春蘭は大剣を天に掲げ叫び秋蘭も弓を掲げて叫ぶ。

 

「桃香、雪連、あなた達も一緒に祈ってくれないかしら?ほら、織田信長って男に世話になったでしょう? あいつが北郷一刀だったのよ」

 

「ええ!? あの時の旅人さんが!? だったら私達も全力で祈っちゃうよ!!」

 

「やっぱりそうだったのね。いいわ、亞莎と蓮華がお世話になったもの。私達呉も全力で祈ってあげるわ」

 

呉と蜀の人達も空に言葉を投げかける。

 

「世界ってやつはこの光景を見ているでしょうね。 わかった?これがここに住む人達の想い。一刀を除け者ですって?笑わせないで!! それに一刀は私のものよ。勝手に私から取り上げるなんて許さないわ。 だからさっさと一刀に記憶を戻して私の一刀を返しなさい!!」

 

天に覇王の、そして一人の男を愛する少女としての叫びが響いた。

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体が熱い。

それにたくさんの人の想いがどんどん俺の心に入ってくるのを感じる。

 

「へぇ、流石「私」ね。 よく分からないけど何か面白いことしてくれたみたいじゃない」

 

「流石ご主人様ねぇん。たくさんの人達がご主人様を支えている。たとえ世界が否定してもご主人様の存在はこの世界にいるみんなが肯定してくれている」

 

よく見ると透けていた体が元に戻ってきている。それどころ力が、勇気が湧いてくる。

行かなくちゃ。みんなの想いが俺の背を押してくれているんだ。

それに応えなくちゃな。

 

「二人共、今までありがとう。 だけど決着は俺が付けるよ」

 

「しかし、お体は大丈夫なのですか?」

 

愛紗が俺の体を気遣ってくれる。

 

「ああ、大丈夫。 それにここで行かなきゃ男のプライドに関わる」

 

「・・・しかし」

 

「愛紗、こいつに何言っても無駄よ。だから私達は下がるわよ」

 

「・・・わかった。 ではご主人様、お気をつけて」

 

俺は二人にもう一度礼を言ってから左慈に向かう。

 

「ふん、いくら体が元に戻ったとしてもそんなボロボロの体で勝てると思っているのか?」

 

「はは、今のお前の台詞なんて言うか知ってるか? そういうのは死亡フラグって言うんだよ」

 

「ちっ、減らず口を!!」

 

左慈が俺に向かって爆進してくる。

 

・・・チャンスは一度だけだ。俺は右手に力を篭める。

 

「はぁぁ!!」

 

左慈が俺の顔に向かって蹴りを放つ。

 

俺は蹴りを受け流して左慈のバランスを一気に崩しにかかる。

・・・今だ!!

 

「頭に血を昇らせ過ぎなんだよ、このDQN仙人がぁ!!」

 

渾身の一撃が左慈の頬に入った。

そのまま左慈は吹き飛び動かなくなる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・・」

 

「今ですご主人様!! 早く銅鏡の元に!!」

 

「・・・・ああ!!」

 

俺は直ぐに銅鏡の元に向かう。

 

「くっ・・・・させるか、北郷一刀ぉぉ!!」

 

左慈がさっきの一撃を食らったのが嘘みたいなスピードで追い掛けてくる。

 

「させるか!! この関雲長、意地でも貴様を通さぬ!!」

 

「決着はもうさっきの一撃で着いたってことにしてさっさと下がりなさい、下郎!!」

 

愛紗と曹操が左慈の行く手を阻んでくれた。

 

「于吉!! そいつを止めろぉぉ!!」

 

「それが出来ない相談ですよ左慈。私はただ傍観するのみ」

 

「クソがぁぁ!!」

 

俺は銅鏡に向かってラストスパートを掛ける。

 

 

 

「さっさと俺の存在を認めやがれええぇぇ!!」

 

俺の手が銅鏡に触れた。

すると突然銅鏡が花の蕾みの形に変わりそれが花開くと光の洪水となって俺達を飲み込んだ。

 

 

 

 

「大樹の枝は実を宿しそしてそれが種となり独立し、芽吹き蕾みとなり、そして花開く」

 

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「これは・・・何が起こってるの?」

 

街にいる全員が空に向かって叫んでいたら夜の闇を照らすように光の雨が私達に降り注ぎ始めた。

 

「おお・・・・・奇跡だ!! これはきっと御使い様の奇跡だ!!」

 

「めでたい! 今日の祭りは本当にめでたい!!」

 

民衆が歓声を上げる。

 

「・・・一刀?」

 

私は小さく何処にいるか分からない一刀に向かって声を発した。

 

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光の洪水に飲み込まれて目を瞑り、しばらくしてから目を開くとそこは真っ白で何も無い空間だった。

 

周囲を見渡すと貂蝉と卑弥呼、愛紗に曹操がいた。それに左慈と于吉、それに気を失っている華佗もいる。

 

「お疲れ様、ご主人様。よくやってくれたわん。これでこの外史は完全に独立し、やがて正史のような存在になっていくでしょう。それにご主人様もあの世界に存在を認められたわ」

 

「ああ、それはわかったけど。 ここは一体何なんだ貂蝉?」

 

「ここは外史と外史を結ぶ境界線。ここもいずれ完全に繋がりが途絶えるわ。その前に左慈ちゃん、于吉ちゃん」

 

「・・・・何だ? 俺をあざ笑いたいのか?」

 

「もう、そんなツンケンしないの。あなた達はもう自分の役目に苦しまなくていいわ。これからはそっち世界で自分だけの人生を歩んで頂戴」

 

「何を勝手なことを!! ・・・っ!?」

 

左慈が貂蝉に飛びかかろうとしたが貂蝉と左慈の間に見えない壁のようなものがあって貂蝉のところまで行くことが出来ないようだ。

 

「勝手なことしやがって!! じゃあ貴様はどうする気なんだ貂蝉!?」

 

左慈は見えない壁を何度も叩いて叫ぶ。

 

「私は愛紗ちゃんと曹操ちゃんを元いた外史に送らないといけないもの。それにね、左慈ちゃん。私は肯定する者。私はこの役目を好きでやってるの。だから左慈ちゃんは何も気にする必要はないわ」

 

「じゃあ俺は・・・俺は・・・これからなんのために生きていくんだ?」

 

左慈がその場に崩れ落ちる。

 

「では短い間であったが元気でな。あとだぁりんにもよろしく言っておいてくれ」

 

「ああ、ありがとうな、卑弥呼」

 

俺は卑弥呼に深く頭を下げる。

 

「ご主人様」

 

「ん? 何だい愛紗?」

 

「もしよろしかったらそっちの世界にいる私を気にかけてやってください。ご主人様への愛を知らないなんて人生の半分は損してますからね」

 

「はは、まあ本人によるけど心に留め置いておくよ」

 

俺は頬を掻きながらそう言った。

 

「じゃあ北郷一刀、元気でやりなさいよ。あとそっちにいる「私」の手をあまり煩わせないこと」

 

曹操も言葉を送ってくれる。

 

「ああ、出来るだけ善処するさ」

 

「よろしい。 じゃあそろそろ行くわよ。私は家に帰って見たい番組があるのよ」

 

え? 番組って え? 三国時代の方ですよね曹操さん?

 

「じゃあね、ご主人様。 あなたの記憶は成都付近の森にあるわ。そこですべてが終わり、新しいスタートが始まるわ」

 

貂蝉がそう言い終えると同時に貂蝉達が眩い光に包まれる。

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気付くと俺は再び神殿に立っていた。

 

まわりにはまだ気を失っている華佗に左慈と于吉の三人。

 

「さて、じゃあ成都に向かおうかな」

 

まずここを下山しないとなぁ。

ああ、大変な作業になりそうだ。

 

「・・・・・・お待ちを、北郷一刀」

 

于吉が俺に言葉を掛けると同時に空間に裂け目が出来た。

 

「そこを使えば一気にあなたの記憶のある森に行けます」

 

「・・・于吉!! 何の真似だ!!」

 

左慈が叫ぶ。

 

「何故でしょうかね。私も肯定してみたくなったんですよ。この世界の行く末を」

 

「・・・ありがとう」

 

俺は于吉に一礼してから空間の裂け目に入った。

 

 

 

 

 

 

「さて、これからどうしますか、左慈?」

 

「・・・知らん」

 

「ふむ、では私達も気ままに旅でもしてみましょうかねぇ。今までこんな気分になったことなんてなかったですし」

 

「・・・勝手にしろ」

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〜何処かの外史〜

「お帰り、愛紗、華琳」

 

「ただいま戻りました、ご主人様」

 

「いやだからさ、もうご主人様ってのやめてくれよ。ご近所さんに勘違いされるだろ?」

 

「すいません、つい癖で」

 

「数十人の女の子大量にはべらせてる時点でもう近所のことなんて考えても意味ないでしょうに。それより一刀、番組変えるわよ」

 

「あっ、今いいところなのに!?」

 

「あら、この大企業の社長にして時期総理大臣の席が約束されたこの曹孟徳に何か意見でも?」

 

「・・・・すいません」

 

「よろしい」

 

「そういやあっちの俺はどうだった?やっぱり俺と変わらないのかな?」

 

「あちらの世界のご主人様はそれはもう逞しかったですよ。こちらのご主人様も見習って欲しいぐらいに」

 

「そっか、俺も見てみたかったなぁもう一人の自分ってやつに」

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空間の裂け目から抜けるとそこは夢で見た風景だった。

違うとすれば満月がもう出かかっている朝日によって見えづらくなってるぐらいだ。

 

そして俺の目の前には高校生時代の聖フランチェスカの制服を来た自分が立っていた。

 

今見ているのは幻覚かもしれない。

だが俺の目には間違い無く映っている。

 

「・・・おかえり、俺の記憶よ」

 

俺は立っている昔の俺にひとつになるよう体を重ねる。

 

 

 

北郷!!  北郷。     兄ちゃん!    隊長・・・。  隊長!  隊長!!

 

    兄様!    お兄さん。   一刀殿。   一刀!!

 

一刀!  一刀! 一刀さん。   精液男!! 

 

 

               「一刀」

 

 

頭の中にたくさんの思い出が一気に溢れる。これがここにいた俺と、そして皆なんだ。

 

「うっ・・・・・うっ・・・・・・・」

 

涙が止まらない。俺は、こんなに大切なモノを失ってたのか。

俺はその場に倒れこむ。もう疲労の限界が来たのだろう。体もボロボロだ。

 

「あぁ、そういえばここに来てからロクに休んでなかったなぁ。もうヘトヘトだぁ・・・・・」

 

俺はそのまま眠ることにした。

ちょっと休んだらすぐに戻って華琳に謝らないとなぁ。

首、刎ねられなければいいけど。

 

〜続く〜

 

説明
真・恋姫†無双 記憶の旅 15です。

ふう、ユーザー登録して一月経たない内に最終回しそうだな。
人間は
  妄想すれば
    無敵なり(キリッ
たくろうの心の俳句なり。
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コメント
元々慕われていた一刀とはいえ、しっかりと皆に認めさせた覇王華琳様、一国一城を纏め率いる立場になり、また為っていくトップな華琳様・・・流石だ^^・・・現代で恋姫を侍らせる一刀・・・周りの嫉妬パワーが凄そう^^;(深緑)
華琳様が総理大臣か〜日本に革命が起こるぞ!(サイト)
しかし華琳たちが来たのはかっこよかったですね!公式でパラレルがありなこの作品ならではって感じがします。(鬼間聡)
発破かけにいった甲斐があったな華琳さま・・・最後の〆も楽しみにしてます。(hokuhin)
ツンデレ左慈さん?w てか旧華琳さん・・・なじみすぎw(よーぜふ)
DQN仙人に不覚にも吹いてしまった……w(十狼佐)
無印ハーレム後の愛紗と華琳だったのかwww早く華琳の元に戻れw(おやっと?)
よかったぁーーーー!やっぱり、物語はめでたしめでたしで終わってほしいですよね!・・・さて、これより制裁タイム入りますね。華佗早く戻ってきて!!!(BX2)
もうひとりの華琳がすごい地位にいたww(きの)
ご指摘ありがとうございます。 ちょっと書き殴りすぎてミスったなぁ(たくろう)
4pはたぶん、『大樹の枝は身を宿し』→『大樹の枝は実を宿し』ではないですか? うん、やっぱり物語りはハッピーエンドでないと!(FALANDIA)
5p勝手のことしやがって→勝手なことしやがってかな? 華佗山に置きっぱなしですか?w(2828)
感動だ!!(ROXSAS)
良かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(中原)
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