真・恋姫無双 魏end 凪の伝 20
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※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、

 

記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。

 

後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も

 

多々ございますので、その点も御容赦下さい。

 

 

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日が暮れかけ、村の周囲にばら撒かれた油が燃える灯りが目立ち始める。

 

それにくらべて防壁の上では灯りを燈す様子が無い。

 

本来であれば煌々と灯りを照らして敵を迎え撃つ筈だが・・・。

 

最初の先遣隊で失った兵力はおよそ400人。

 

一万の兵力の中では微々たる数・・・だが、今その『にゃあ黄巾党』の本隊は僅か千人足らずの

 

村を攻めあぐねていた。

 

村の人口は千人程とはいえ、戦えるのは三百人程しかいないと聞いている。

 

さらには正面の入り口の防壁と門が破壊されてその機能を失っていた。

 

だが、一万の軍隊がいいように翻弄されている。

 

建業から離れたこの村は門を閉じてしまえば堅牢な要塞のようになり、最悪二日も篭城すれば建業から

 

呉の精鋭が駆けつけるとあって最近特に繁栄し始めた。

 

竹簡や木簡。そして紙の生産という力をあまり必要としない仕事が主な為に若い女や年寄りが多く、

 

犠牲を厭わずに一気に先遣隊で村に突入した後はお楽しみが待っている筈だった。

 

さらには依頼のあった孫権の首を取れば、自らが王にすらなれるかもしれない。

 

旨い話の筈・・・だった。

 

『にゃあ黄巾党』の本隊を指揮する男が舌打ちをする。

 

いかに突撃するしかない馬鹿供でも、一万もいれば敗北の二文字は無い。

 

そう考え、圧倒的な物量で攻め込むために一点に人員を集める。

 

「いいかおめぇら!!!ごちゃごちゃ考えてねーでとっとと、突撃しやがれ!!そうすりゃあ金も

 

女も獲り放題だぜ!!!」

 

その言葉におおおおおお!!!という雄叫びが上がる。

 

「さらにだ!!!孫権のヤツの首を取れば王様にだってなれるんだぜ!!!そうすりゃあ国中の女が

 

俺達の物になるんだ!!!『娘々姉妹(にゃんにゃん・しすたぁず)』のらいぶも見放題だぞ!!!」

 

うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!

 

地面が揺れたかと思う程の歓喜の絶叫。

 

「さぁ!!!突げ────」

 

男が剣を振りかざして号令を掛けようとした瞬間、ドン!!!!!!という音がして村の門が光った。

 

次に見えたのは自分達の周りがぱぁっと光に包まれる光景。

 

場違いにも、綺麗だ・・・と思ったまま指揮をしていた男と周りの数百人が一斉に吹き飛んだ。

 

彼らの耳は永遠にその後に続いた爆音を聞く事無く終わる。

 

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途轍もない爆音が村中に響き、いくつかの家の屋根が壊れる。

 

だが次の瞬間には『にゃあ黄巾党』の本隊のど真ん中で美しい死の花を咲かせた。

 

その場にいた者達は吹き飛び、近くにいた者達も大火傷を負って逃げ惑ったり気を失って倒れて

 

いるものもいるようだ。さらには馬は暴れ回って次々と足元に居る男達を踏み潰していった。

 

阿鼻叫喚の地獄絵図。

 

それを見ながら次玉の準備を進める。

 

一刀の指示で細かい軌道修正が加えられ、再び『にゃあ黄巾党』の本隊の中で死の花が開く。

 

一刀の用意した第三作戦。

 

それは真桜の作った打ち上げ花火を横に打ち出すというもの。

 

30号玉(約90センチ)の威力は三百メートルにまで広がる。

 

大昔の大砲のような貫通力は無いが、今はその貫通力は必要ない。

 

火花と爆音を拡散させるという目的に打ち上げ花火は最適だった。

 

まるで現代の砲台。

 

その打ち上げ花火で村に突撃をするために一箇所に集まった『にゃあ黄巾党』を狙い撃ちしたのだ。

 

軌道計算は大学のゼミで散々やった。主に教授の趣味だったが。

 

それがこんな所で役に立つとは思わなかったが、それは今絶大な効果を発揮している。

 

花火の爆音は吹き飛ばすだけではなく、大きい音に弱い馬をパニックに陥れた。

 

それも一刀の狙い。

 

この時代の高速での移動方法は馬を使ったものがほとんどだ。

 

そして『にゃあ黄巾党』も移動のためにかなりの馬を用意していた。

 

それらが一斉にパニックに陥ったらどうなるか。

 

答えは次々と踏み潰され、慌てふためいて逃げる『にゃあ黄巾党』の男達の姿でわかる。

 

これで正面の門から入ろうとするものはいないだろう。

 

実は30号玉は2つしかなかった。

 

それを立て続けに撃つ事で、まだまだあるように思わせる。

 

これで『にゃあ黄巾党』は他の場所からの攻撃に切り替えてくるだろう。

 

固まっていた部隊が蜘蛛の子を散らすように逃げるのを見て、

 

一刀は第五、第六の作戦の準備に入らせる。

 

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完全に日が落ち、暗闇が支配する中でも防壁の上に明かりが灯ることは無く、僅かに門の周囲に

 

明かりが灯されるだけになっていた。

 

人は生きている以上、腹が減る。

 

それは『にゃあ黄巾党』も同じで、村から離れた森の近くで炊飯の仕度に入った。

 

村を攻め始めてから約半日が経ち、『にゃあ黄巾党』の数は今や七千以下にまでなっている。

 

打ち上げ花火の威力は直接の被害だけではなく、凄まじく恐怖心を煽った。

 

死者は千人もいなかった筈。火傷や怪我で動けなくなった者も千人程・・・残りの千人程は逃亡したのだ。

 

恐らくすでに建業へは知らせが届いている筈。

 

建業から兵が駆け付けるまで早くても後一日・・・。

 

夜を挟めば攻めることが出来るのは後半日しかないという事になる。

 

その中であの死の花に怯え、爆発と矢を潜り抜けなければならない。

 

それは正規の軍人でもない者達には不可能だった。

 

これで夜が明ければさらに逃亡者が増えるかもしれない。

 

一人の男が溜息をつく。

 

こんな筈では無かった。

 

たった千人足らずの村に一万人で攻め込む。心配するのは自分の取り分位の物だと思っていた。

 

だが、実際はすでに負け戦の態だ。

 

指揮をする者を失い、その代わりに身分の高いものが指揮を執っているが何人もが俺が、俺がと

 

叫んでいる。

 

もう一度溜息をついた時、体が震えた。

 

(おっと、しょんべんしょんべんっと・・・)

 

森の中に入った彼は、その後その森から出てくる事は永遠に無かった。

 

小さな鈴の音を残して────

 

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闇夜の中で思春の持つ『鈴音』が数回振られる。

 

その度に確実に死体の山を築いていった。

 

思春は明命と他の部下と共に森の中をひた走る。

 

それは一刀の第五の作戦であり、第六の作戦の布石となる隠密作戦だ。

 

第四の作戦は想像以上に『にゃあ黄巾党』の後退が早かった為に中断されている。

 

思春や明命は未だ第六作戦までしか聞かされていないが、少なくとも第十まで考えたという。

 

(さすがは三国同盟以前に我らを敗北させただけの事はあるな・・・)

 

以前に一刀を調べた時は腑抜けて女にデレデレしていた印象しかなかったが、今はそういう事は一切

 

無く冷静に状況を見極め、冷酷とも思える程に作戦を指揮をするその姿はまるで冥琳様のようだと

 

思春は感じていた。

 

今ならば以前の事が演技だったという事が分かる。

 

(さらには明命の言う通りに雪蓮様と同じ覇気まで纏っているとは・・・)

 

ふと作戦の合間に見せた一刀の憂いを帯びた横顔を思い出し、ついでに森に入った男を二人始末する。

 

(やはり白蓮殿とお子が心配だからだろうか・・・)

 

それは凪に会えない一刀が凪を思い出していたからなのだが、その姿は他の者から見ればそう見えただろう。

 

横顔を思い出し、胸が高鳴る。

 

(ば・・・馬鹿な!わ、私がそのような・・・!)

 

思わず狼狽するが、チラリと見えた敵の咽を掻き切る。

 

(わわわ、私がそのような事を考えていては、蓮華様が・・・)

 

ゾクリ────

 

思春の背中を突然の寒気が襲った。

 

それはその森を抜けた先から感じられる。

 

木に隠れて気配を消し、盗み見れば数百人程の『にゃあ黄巾党』が馬に跨っていた。

 

(おかしい・・・)

 

その者達だけが統率が取れているように感じる。

 

『にゃあ黄巾党』の中でこれ程統率が取れる者がいるのならば、さらに苦戦していただろう。

 

だが今までの戦いはほとんど素人の筈だった。

 

やがて思春は寒気の正体を見つける。

 

『にゃあ黄巾党』の中で異質な存在。

 

篝火に照らされたそれは五胡独特の面をつけ、槍を持つ男とその側にいる

 

黒い神事服のようなものを纏った女の背中。

 

その時、突然その女が思春の潜む木に向かって振り向き────

 

「────こんばんわ。甘寧様」

 

顔の上半分は見えないが、ニタリと笑った女の口元を見て思春は全身の毛が逆立つのを感じた。

 

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お送りしました第20話。

 

もう20話ですねー。

 

何とも早い・・・。

 

そしてようやく思春に活躍の場がw

 

五胡の男の戦闘力としては霞+華雄以上、恋未満といった所です。

 

神事服の女はまだ不明ということで。

 

ここでも伏線伏線・・・。

 

それにしてもイラストが思ったより好評で大変喜んでおります♪

 

次のも順次描いていこうと思いますのでよろしくおねがいします。

 

ではちょこっと予告。

 

襲い来る五胡の男と黒い神事服の女。

 

爆符によって偽りの砲台が破壊され、村に『にゃあ黄巾党』の部隊がなだれ込む。

 

「続いていた最悪の予兆」

 

ではまた。

 

説明
真・恋姫無双の魏end後の二次創作SSになります。
凪すきーの凪すきーによる、自分の為のSSです。ご注意ください。
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コメント
思春も陥落したか^^; なにやらボス格の敵のようですが単身の思春は大丈夫だろうか・・・何気に思春の事も知っているようだしどのような存在なのやら;(深緑)
まーくん様、それは私も感じていましたので、この作品では一刀の年齢を上げたというのもあります。思春は・・・w(北山秋三)
FALANDIA様、一刀は意外とまめで抜け目無いイメージがあるんですよね。(北山秋三)
きのすけ様、ありがとうございます!思春の危機。これからどうなるかお楽しみに!(北山秋三)
中原様、さらに落としていきますよーw(北山秋三)
ロンギヌス様、一刀ですから・・・。(北山秋三)
poyy様、ここから本格的に戦いが始まる予定です。(北山秋三)
一刀くんて潜在能力が半端無いから、恋姫世界に来る以前に普通以上に勉強(鍛錬含む)していれば、活躍するのは目に見えていたんですけどね。それだけに本編ではどうしても種馬の側面ばかりが強すぎたので惜しいなあと感じていた次第。思春も元は真面目な分横恋慕と化したら暴走甚だしいだろうなw(まーくん)
スプレッドボム!なるほど、考えましたね。馬の居る中に撃ち込んでしまえば、あとは勝手に瓦解しますね。さて、いくつも策を打っていた一刀、失敗した場合の善後策はちゃんと用意してあるのかな?(FALANDIA)
更新乙です。 あれ?思春やばいんじゃね?(きの)
回を進めるごとに落ちるてゆくwww(中原)
白蓮や蓮華だけでなく、思春まで・・・(ロンギヌス)
今回はシリアス一直線ですね。(poyy)
タグ
真・恋姫†無双 北郷一刀   なぎ 白蓮 思春 蓮華 明命 

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