月に住むうさぎは何を望む?
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月に浮かぶ黒い模様を人々は、色んなものに例えた。

 

女性の横顔、蟹、はたまたライオン…

そして、日本で多くの人が言う例え

 

 

 

 

 

それは「うさぎ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーいっもち米がたんねーぞー!」

「はいっただいま!!」

 

 

 

杵を思い切り振り、ペタンッと音がすると

しゃがみ込んでいたもう一人が、水で濡れた手で返し、再び杵を大きく振り下げ、ペタンッと音がした。

 

 

 

「はいはい!出来立ての餅の出来上がりだよ〜!美味しい、月見屋のつきたての餅だよ〜!!

 

 

 

周囲には沢山の人だかり。

持って行った餅たちはすぐさま完売。

 

汗水流し、3人は一生懸命餅をついた。

重い杵を振り、熱い御餅を引っくり返し、出来立ての餅を運び、お客に必死に売り込む。

 

そして、あっという間に夜明けが近づいてきた頃、

ようやく人が引いて、餅の材料である、もち米も無くなった。

 

 

 

「はー今日も売れたなぁ。」

「当たり前だよ、俺達の餅は世界…じゃない、宇宙で一番美味いんだ!」

「へへっそうだな!だが、お前らも頑張ったじゃねぇか。な、ツキ」

「僕、一生懸命売ったよ!」

「あぁ、偉い偉い。ルナ、お前も手、辛くねぇか?」

「平気だよ!俺よりムーンの方が杵持って、辛いんじゃないのか?」

「こんなもん大した事無い!ほら、今日の手取り金、貯金箱に入れるぞ」

 

 

 

そういい、ムーンの言葉に続くようにして三人は、すぐ後ろにある

大きな透明な瓶へと向かう。

その瓶には沢山のお金が入っており、小銭から万札まで…数え切れないくらいだ。

 

 

 

「僕がやりたい!」

「おし、ツキ。肩車してやるよ」

「わぁっ」

 

 

 

ムーンがツキの股の間に頭を入れ、そのまま担ぎ上げた。

ふらつくツキだが、普段は見れない高い視界に笑顔になる。

楽しそうなツキに、ルナが今日の手取り金をツキに渡し、ツキはそれを

大きな瓶の口から入れると、中で小銭が音を立ててその場所へと納まった。

 

 

 

「大分溜まったよな、ムーン」

「あぁ。だが、まだまだ足りないさ。」

「うんっ僕、頑張っていっぱい働くよ!」

 

「ツキは働き者だな、ルナ…俺らの夢をかなえるまでは、この職業、やめるわけにはいかねぇ。」

 

「それでも、ついてきてくれるか?」

「勿論だよ、ムーン。俺ら三人には、夢があるんだから!」

「ツキいえるよ!」

「お、いえるか?ツキ。俺らの夢は、なんだ?」

 

 

 

 

「僕らの月をきれいな大地にする事!!」

 

 

 

 

僕達の夢…

それは、昔、この月を巡って太陽と、地球が喧嘩をした。

でも月はここで生きる、僕らうさぎの為に、一生懸命に、うさぎ達を守った。

月は身体を犠牲にした所為で、表面はボロボロになってしまった。

そんな月を、ここに住む最後の兎である僕ら、

ムーン、ルナ、そしてツキで、この月をまっさらな綺麗な大地にする。

 

それが、僕らの夢。

 

 

 

 

「このお金が溜まったら太陽に、月の表面をピカピカに磨いてもらうんだ。

 その為の資金だもんな…まだまだ足りないけど、頑張ろうな!ルナ、ツキ」

 

「もちろんだよ!」

「うん!頑張ろうねっみんな!!」

 

 

 

 

うさぎは毎日、餅をつく。

月が輝く限り、その手を休めることは無い。

 

そしていつか、資金が溜まったとき…

 

 

 

 

月は、更なる光でその身を美しく、我々に魅せてくれる事だろう。

 

 

 

 

これは、月に住む、

三匹の餅つきうさぎの、御話。

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 

説明
月に住む三匹の兎の物語。彼らが何故、餅つきをしているように見えるのか?その理由を考えて、書いてみました。
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うさぎ  三匹 

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