【南の島の雪女】第2話 ハブのおまわりさん(5)
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【おじいちゃんと先祖の霊】

 

おじいちゃんは、風乃が非力だと知り、

重たい岩や鉄パイプを持たせないよう

工夫を凝らした。

 

その工夫とは、霊的な力を風乃に宿し、

戦わせることだった。

 

「先祖の霊を、己の身に宿して

 敵と戦うのじゃ。

 先祖が拳法の達人であれば、拳法が強くなる、

 先祖が弓術の達人であれば、弓が強くなる」

 

「おお、それは強そうだね、おじいちゃん」

 

「先祖の霊はわしがつれてくる。

 安心して戦ってくれ」

 

「OKだよ、おじいちゃん!」

 

(…はて、拳法の達人とか弓術の達人が

 うちの先祖にいたかのう。

 口から出任せを言ってしまったが)

 

おじいちゃんは、テキトーな男だった。

 

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【おじいちゃんと先祖の霊2】

 

「じゃあ、わたし、行ってくるよ。

 おじいちゃんも元気でね」

 

「風乃や。先祖の霊とて、無限の力ではない。

 決して無理をするでないぞ」

 

「はい」

 

「何か悪いことがあれば、おじいちゃんを

 呼ぶんじゃぞ。

 先祖の霊にお願いして、風乃を守ってやるからのう」

 

「はい」

 

「あと、親の言うことには素直に従うのじゃ」

 

「はい」

 

「白と黒をまぜると?」

 

「グレイ」

 

「空気が読めないのは相変わらずじゃな」

 

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【おじいちゃんと先祖の霊3】

 

「おじいちゃんは、寂しいのじゃ。

 おばあちゃんも、子も孫も、まだここにはいない。

 ずっとひとりぼっちじゃ」

 

「はい…」

 

「風乃にやっと出会えたというのに、

 もうお別れじゃ…

 おじいちゃんはさびしい」

 

「はい…」

 

(いかん、しめっぽい話で孫がうなだれていく。

 ここは元気づけないと!)

 

「『Yes』を日本語に直すと?」

 

「はい!」

 

「Yes!

 YesYesYes♪

 FoooNoや、おじいちゃんは!

 お・じ・い・ちゃ・んは!」

 

おじいちゃんはいきなり歌いだした。

痴呆になったわけではない。ボケたのだ。

 

「はい♪ はい♪」

 

空気を読んで、合いの手を入れる風乃。

 

「OH! Gちゃんは!

 ひとりぼっちなのさ〜♪」

 

「はいはいはい♪」

 

「川のはしに一人で立ってて〜

 ぼうっと川向こうを見ていると〜

 なぜか孫娘がそこにいて〜」

 

「はい♪ はい♪」

 

「OH! Gちゃんは感激してYO、驚いてYO、

 川の向こうへ連れて逝く! と手をひっぱれば!」

 

「Hey♪ Hey♪」

 

「なかなか川を渡らん渡らん…♪

 浮き輪があっても水着があっても渡らん渡らん…♪

 友達救うと言っては聞かぬ♪」

 

「はーい、はーい♪」

 

「中略」

 

「はい♪」

 

「水着もあと10種類くらい用意すっから、

 今度川を渡るときも大丈夫ZYAaaaaa〜♪」

 

「おじいちゃん、学校の水着を着てくるから

 大丈夫だよ…。

 じゃあね、バイバイ」

 

風乃は、おじいちゃんにさよならした。

 

「OH… Gちゃんは…

 ひとりぼっちなのさ…」

 

おじいちゃんのソロが、川のまわりで、むなしく響く。

 

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【意識を取り戻すはず】

 

「風乃様! 風乃様!

 おきてください!

 まだあの世に行ってはいけません!」

 

南国紳士は、風乃の身体をゆさぶり、起こそうとする。

 

「う…」

 

それまで閉じていた風乃の目がゆっくりと開く。

 

「風乃様! 良かった、意識が戻られた」

 

風乃は、自分の視界の中に、南国紳士の姿をとらえる。

 

南国紳士と目が合う。

 

「風乃様、おはようございます!」

 

(げっ、いきなりこいつかよ!)

 

風乃は心の中で毒づいた。

 

「おやすみなさい」

 

風乃は、ふたたび目を閉じ、意識のないふりをした。

 

「風乃様! 風乃様!

 二度寝は三文の毒です!

 おきてください!」

 

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【あーはっはっは】

 

風乃は意識を取り戻し、ゆらりと立ち上がる。

そして、南国紳士を見て、不気味な笑みを浮かべた。

目つきがおかしい風乃。

 

「ふっふっふっ…

 はーはっはっは!」

 

いきなり高笑いをしだす風乃。

 

「ふ…風乃様? いかがなされました?」

 

「もう紳士さんは怖くないよ!

 だって私には力があるから!

 はーはっはっは!」

 

「うるさい! 静かにしろ!

 何時だと思ってるんだ!」

 

おじさんの怒声。

 

直後、隣の民家の窓から灰皿が飛んできて、

風乃の側頭部に直撃した。

 

「はーはっはっは、はぁぁぁぁ!?」

 

風乃はその場にばたりと倒れ、

またしても意識を失った。

 

 

 

次回に続く!

説明
【前回までのあらすじ】
雪女である白雪は、故郷を脱走し、沖縄まで逃げてきた。
他の雪女たちは、脱走した白雪を許さず、
沖縄の妖怪たちに「白雪をつかまえろ」と要請する。

岩、金属バット、鉄パイプ、バールのようなもの。
死んだおじいちゃんがくれた風乃へのプレゼント。
「さあ、これで白雪を救え」とおじいちゃん。
しかし風乃は、誤っておじいちゃんの頭を割ってしまった。
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コメント
>ko-jiさん コメントありがとうございます。三文の毒って既出だったんですね。参りました(何に)風乃はパワーアップしておかしくかっこよく(?)活躍する予定なので、次々回をご期待ください。(新原)
タグ
南の島の雪女 沖縄 雪女 妖怪 コメディ 

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