真★恋姫†無双-真紅の君-
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終わり・・・それは、新しい始まりの合図

 

 

「何処に・・・あるのじゃろうか」

 

 

終わりだと思っていたものは、新しい始まりの為の合図にすぎないのだ

 

 

「誰でもいい

この愚かなワシに・・・この汚れたワシに、与えてくれぬか」

 

 

これは遥か昔

ある物語の終わりから始まる・・・

 

 

「このワシに・・・全ての罪を、償う場所を」

 

 

一人の賢者の・・・【罪滅ぼし】の物語

 

 

 

 

 

 

 

《真★恋姫†無双-真紅の君-》

  第零話 それは遥か昔の物語

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

時刻は大体、昼を少し過ぎたころのこと

深い・・・深い森の中

そこにある川原に、一人の青年の姿があった

 

 

その美しい顔立ちはさながら女性のようで、黒く腰辺りまである長い髪は襟足の位置で軽く結んである

身に着けている衣服は白を基調とした、丈や袖の長いローブのようなもの

冬ならばともかく、夏ならば確実に蒸し暑いだろう

ちなみに今は、残念ながら夏・・・にも関わらず、彼は汗一つ掻いていない

 

その彼なのだが・・・今、何をやっているのか

彼はなにやら妙な装飾の施された長細い棒の先端に糸を括り付け、それを川へと垂らしていた

 

所謂、釣りというやつである

 

彼は先ほどからずっとこのように糸を垂らしながら、視線を空へと向けていた

遥か頭上、眩いばかりの蒼天を

やがて彼はすっと目を細め、静かに呟く

 

「うむ・・・良い空じゃ」

 

見た目からは想像もつかないような言葉遣いで、そっと彼は呟いた

僅かに、悲しげな表情を浮べたまま・・・だ

しかし視線は、依然と空へと向けられている

 

見た目といえば、だ・・・彼には一つ、他の者に比べ目立つところがあった

 

それは、彼の『瞳』

彼のその両の瞳は、真っ赤に染まっていたのだ

 

それは、一言で表すならば・・・『真紅』

 

炎のように・・・また血のように紅い、真紅の瞳

その真紅の瞳で彼はずっと、空を眺めていたのだった

 

だがその視線がふと、空から川へと移っていく

それから彼は小さく溜め息をつき、苦笑しながら呟いた

 

 

「誰かは知らんが・・・そのような所に隠れてないで、こっちにきて話でもせんか?」

 

 

そう言うのと同時に、彼の視線は川から自身の背後・・・生い茂る木々の間へと向けられる

いや、正確にはそのさらに奥

その先にある『気配』に向けて、だ

 

 

「やれやれ・・・気づいていたのですね」

 

ガサリと・・・彼の瞳がうつす先

木々の間から、一人の男が姿を現した

 

金色の長い髪に黒いローブのようなものを纏う、どこか妖しげな雰囲気を漂わせる男

その男はその雰囲気と同じく妖しげな笑みを浮かべたまま、その視線を真紅の瞳へと向ける

 

「いやはや、これでも気配を消すのには自信があったんですけどね」

 

「ふむ・・・ワシはただ『何となく』、そう言ってみただけなんじゃが

まさか、本当に隠れておるとはな」

 

「それは、尚更にタチが悪い」

 

ニヤリと笑みを浮かべ言う彼に、男は苦笑することしかできなかった

 

だがその苦笑もすぐに消え、残ったのは真剣な表情

そのまま、男はスタスタと歩いていき・・・やがて、青年のすぐ傍で足を止める

 

そして、青年に向かい深く頭を下げた

 

 

 

「ようやくお会いすることができました・・・貴方が、【太公望】様ですね?」

 

 

 

男は深く頭を下げたまま、青年へと問いかける

だがその言葉は、どこか確信をもっているようにも聞こえた

 

その問いに対し、彼は・・・ニヤリと笑って見せる

 

 

「いかにも・・・ワシが、太公望じゃ」

 

 

言って、彼は・・・太公望は、その場から立ち上がった

その真紅の瞳が、目の前にいる男の姿を真っ直ぐと見据えている

 

その視線に気づいたのか、男はゆっくりと下げていた頭を上げた

 

交錯する視線

そのまま・・・沈黙が流れる

 

だが、そんな状態をいつまでも続けるわけにはいかない

そう思い、沈黙を破ったのは太公望だった

 

「して、ワシは名乗ったぞ?

次は、お主の番じゃろうが」

 

悪戯っぽく笑い言う太公望

男はその言葉に、再び苦笑を浮べる

 

 

「これは失礼・・・私は、【南斗】と申します

これでも一応、仙人の端くれです」

 

 

『仙人』

この言葉に、太公望は一瞬だけ表情を歪める

 

「仙人、のぅ」

 

それから小さく呟き、眉をしかめる

そんな彼の様子を見て、南斗はクスリと笑いをこぼした

 

「どうかしたのですか?

貴方にとって仙人など、それほど珍しいものでもないでしょう?

確か貴方は、さる有名な仙人の弟子だったはずですし」

 

「何故そんなことを知っておるのかはわからんが、ワシをあのような爺どもと一緒にするでない

ワシはこれでも・・・れっきとした『人間』じゃ」

 

「ふふ・・・まぁ貴方がそこまで言うのであれば、そういうことにしておきましょうか」

 

南斗が再び笑うのを見て、太公望は盛大に溜め息をついた

それから、置いていた棒を拾い肩に担ぐ

 

 

「そういえば、お主はワシに何か用があったのではないか?」

 

ピタリと・・・この言葉を聞いた途端、南斗は笑うのを止める

それから額に手を当て、溜め息をついていた

 

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「私としたことが・・・太公望様とのお話があまりに楽しすぎて、すっかり忘れていました」

 

「お主・・・色々と大丈夫か?」

 

本気で忘れていたのだろう

南斗の頬からは、冷や汗が流れていた

 

 

「危ない所でした・・・『私だけ送り忘れた』なんて、あとで皆になんて言われるか

考えるだけで、ゾッとします・・・特に、【北斗】は容赦ないですから」

 

「なにを、ブツブツと言っておるんじゃ?」

 

「いえ、こちらの話です

どうか、お気になさらずに」

 

 

そう言って、ニッコリと笑う南斗

『まぁ、人それぞれ何かしら事情があるし』と、太公望は納得しておくことにした

 

 

「して、お主の用とはなんじゃ?」

 

真紅の瞳で見つめ、太公望はたずねる

その言葉に、南斗はまた真剣な表情を浮べた

 

「実は・・・貴方に、お頼みしたいことがあるのです」

 

「頼みたいこと、じゃと?」

 

コクリと、南斗は頷く

それから、太公望に向かい再び頭を下げた

 

 

「実は・・・」

 

「だが、断るっ!!」

 

「・・・すみません、まだ何も言えてないのですが?」

 

 

南斗、唖然

それもそのはず、今まさに何か言おうとしたものを太公望に遮られたのだから

しかも、いきなりの『お断り』だ

もう、笑うしかない

勿論、苦笑いなのだが

 

「何故、ですか?」

 

「面倒くさそうじゃからじゃっ!!!!」

 

・・・しかも、物凄く自己中心的な理由だった

 

これには、もう苦笑いすら出ない

対して太公望はというと、何故か物凄く誇らしげな表情

 

 

「面倒だから、ですか?」

 

「うむ、そうじゃ」

 

 

聞き間違えたか・・・その考えは、一瞬で崩れ去る

そして理解した

 

この人は、素で言っている

 

 

「は、はははは・・・はぁ」

 

ようやく出たのは、小さな笑い

そして溜め息

それから南斗は額に手を当て、クッと小さく笑いをこぼした

 

「なるほど・・・噂どおり、『自由奔放』な方だ」

 

そう呟き、彼は太公望に視線を向ける

それから・・・彼は、右手を太公望に向け伸ばした

 

「しかし・・・私も、このまま帰るわけにはいきません」

 

パチンと・・・音が響いた

彼の指から発せられた、小さな音

その音が太公望の耳にも届いた瞬間

 

「我開く・・・繋ぐ扉」

 

 

ソレは、起こった

 

 

 

「なっ・・・!?」

 

それは・・・まさに、一瞬の出来事

太公望に向かい伸ばされた指から音が発せられると同時に、『ソレ』は現れたのだ

 

ソレは・・・一言で言うならば、『扉』

巨大な、それでいて異様な気を放つ扉

 

そして・・・その扉と太公望を囲むように、地面には眩い光を放つ魔方陣のようなものが浮かび上がる

 

 

「これは・・・!」

 

「これは、貴方を『アチラ側』へと送るための扉ですよ

因みに、下のは結界ですから・・・逃げようなどとは、考えない方がいいですよ?」

 

「アチラ側!?

それに、結界じゃと!?」

 

「貴方が断る事は、ある程度予想してましたから

お話しをしながら、準備していたんです♪」

 

「くっ・・・してやられたわ」

 

コメカミあたりをおさえ、悔しそうに呟く太公望

そんな太公望の様子を、南斗はニコニコとしながら見つめていた

そんな中、やがて彼はピッと人差し指を立てる

 

「さて、それでは私の話を聞いてもらうとしましょう」

 

「ぬぅぅ・・・」

 

未だに納得できないといった表情の太公望だったが、結界を敷かれた以上は逃げ切れないと思ったのか・・・今度は口を挟もうとはしなかった

 

「貴方にはこれから、こことは違う・・・『別の世界』へと行ってもらいます」

 

「別の世界、じゃと?」

 

「はい、そうです

そこで、貴方にはある事をしてもらいます」

 

「ある事・・・」

 

「なに、簡単な事です

貴方のやりたい事をしていってくれればいいのですよ

たとえば・・・」

 

 

 

 

 

 

〜『罪滅ぼし』とか・・・ね〜

 

 

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空気が・・・時間が、止まった

勿論それは錯覚なのだが、それに気づくのに彼は時間がかかってしまった

それほどの衝撃

 

「何故、お主がそのことを・・・」

 

「仙人ですから・・・というのは、理由にはなりませんか?」

 

「ふざけおって」

 

南斗の、冗談めいた言葉

その言葉に対し、彼は・・・太公望は、笑っていた

それも真紅の瞳を僅かに輝かせ、子供のような笑みを浮かべながら

 

 

「なるほどのぅ・・・好きにしてよい、か

ならばワシは、ワシのやりたいようにやるとしよう」

 

棒を担ぎなおし、不敵に笑う太公望

つられて、南斗も笑う

 

「おや、ようやくやる気になってくれたようですね

いやはや、頼もしい限りです」

 

「ふん、何を言うか

ワシはお主の思い通りになぞ動かんぞ」

 

「それで、結構ですよ

それでなくては、意味がないですからね」

 

 

呟き、彼は扉に向かい右手を伸ばす

それから瞳を閉じ、なにやら呪文のようなものを呟いた

 

「【開】」

 

その言葉が響いたのと同時に、ゆっくりと開いていく扉

その瞬間、凄まじいまでの光が扉から溢れてくる

 

「その扉の向こうに、こことは違う世界・・・【外史】が広がっています」

 

「外史、のぅ」

 

「さぁ・・・進んでください」

 

 

南斗の言葉に、コクンと頷く太公望

それから、一歩を踏み出そうとした瞬間だった

 

「あ・・・一つ、忘れていました」

 

南斗が何かを思い出したように、声をあげたのは

 

 

「・・・なんじゃ、いったい?」

 

出鼻を挫かれたとばかりに、不機嫌な表情で南斗を見つめる太公望

そんな彼の視線など気にせずに、南斗はニコニコとしたまま話を続ける

 

「もし何か迷われたり、悩まれたりした時は・・・【光】を思い出してください」

 

「【光】・・・じゃと?」

 

「はい・・・貴方は一人ではありません

【白き光】は、きっと貴方を助けてくれるはずですから」

 

「よく、意味がわからんのじゃが」

 

「今は、それでいいのですよ

そのうち、思い出してくれればそれで構いません」

 

「ふむ、わかった」

 

頷き、今度こそ足を進める

ゆっくりと、近づいてくる扉

それにあわせ、光もさらに強くなってくる

 

やがて、辿り着いた扉の前

巨大な扉の前、太公望は自分が随分と小さく見えた気がした

 

「まったく・・・」

 

思わずこぼれてしまった、深い溜め息

同時に、彼は踏み出した

 

『この世界』での、最後の一歩を

そして同時に、小さく呟く

 

 

 

「面倒なことになったのう」

 

 

 

笑いながら・・・南斗のことを見つめ

彼は、そう呟いたのだった

 

-5ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

「やれやれ・・・何が、面倒なことになったですか」

 

太公望がいなくなった森の中、彼は溜め息と共にそう呟いていた

少しだけ、笑みを浮かべたままで

 

「騙されたのは、どうやら私のほうだったみたいですね」

 

南斗は思う

間違いない

彼は・・・太公望は気づいていたのだ、と

会話をしながら結界を張っていたことも、自分が言いたかったことも

全部、気づいていたのだろうと

 

何故なら・・・

 

 

「騙された人が、あんな風に笑えるわけがない・・・」

 

最期・・・この世界から消える直後に見せた、あの笑顔が全てを物語っている

 

 

〜なんて人だ・・・〜

 

 

「ともあれ・・・ひとまず、私の仕事は終わりですね

『他の方』はもう終わったのかわかりませんが、とりあえずは見守る事にしましょう

あの世界の、外史の行く末を」

 

 

〜そして・・・『彼ら』の紡いでいく、物語を〜

 

 

「さぁ・・・新たなる『紅き光』は、救いをもたらすのか

それとも・・・」

 

 

-6ページ-

 

ーーーー†ーーーー

 

その日・・・『その国』に、一筋の流星が流れ落ちる

それは、【真紅の流星】

昼間にも関わらず、はっきりと見えるほどに輝きながら

 

真紅の流星が、流れ落ちたのだ

 

 

「あれは・・・流れ星?」

 

「このような昼間から見えるとは、なにやら不吉じゃのう

しかもあの方角・・・近くの森にでも、落ちたのじゃろうか?」

 

「行ってみましょう」

 

「・・・は?」

 

「行ってましょうって言ったのよ、【祭】!」

 

「ああ、待ちなされ【策殿】!!」

 

 

それは『合図』

新しい物語

その始まりを告げる、合図だったのだ

 

 

さぁ始めよう

紅き流星に導かれし・・・新たなる物語を

 

 

 

 

《真★恋姫†無双-真紅の君-》

   開†幕

 

 

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★あとがき★

第零話、いかがだったでしょうか?

本作の太公望は様々な資料をもとにした、オリジナルキャラですw

決して何かとのクロスではないので、あしからず

 

・・・という説明は、前にもしましたねw

 

改訂版、ってかんじっすかね?

なろうに載せたやつを、こっち用に書き直しただけですが

 

事情は、まえがきの通りですww

ま、真紅の君だけならいっか・・・みたいな

 

 

さて、僕は友人から送られてきた土下座画像でも眺めてニヤニヤしてますww

 

それでわww

 

説明
友人「なろうに行くのダルイから、せめて真紅だけでもこっちに載せてくれよ〜」
僕「え〜・・・」
友人「頼むよ〜、土下座でもなんでもするから〜」
僕「ほぅ・・・言ったな?」
友人「あ、あれ?」


てなアホい事情で、改訂版にて再開する僕は本当にアホだと思うんだww
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コメント
ほうほう面白そうな作品だ。(乗りませんよ)(スターダスト)
土下座・・・すなわち金貸しの兵藤氏が開発した焼き土下座をして華琳様にツンツンされるのですね?(thule)
下のに乗ったほうがいいんですかね? 熱した鉄板の上の土下座ですね。(ZERO&ファルサ)
ちょww違うwwww(月千一夜)
土下座・・・すなわちぶる夜さんが土下座して貂蝉とギシギシしている画像ですね?完璧に理解できます、お楽しみに♪(mighty)
土下座・・・すなわち一夜氏が土下座して桃香に・・・。桃・・・。あ、駄目だ。桃香わかんない。(FALANDIA)
土下座・・・すなわち一夜君が土下座して雪蓮にコリコリされる画像だね?わかります、どこをとは言わないが・・・(トウガ・S・ローゼン)
土下座・・・すなわち一夜殿が土下座して華琳さまにぐりぐりされてる画像ですね?わかります(よーぜふ)
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