変態司馬懿仲達物語 08
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見渡す限り人、人、人。

ずいぶん賑やかになってきた市を抜けた一刀は

汗で濡れた顔を袖で拭った。

 

「何なんだ? いったい……」

 

一刀はぽつりと呟いた。

ここ最近、一ヶ月くらい前から急に住民が増え、商人の数も

一ヶ月くらい前から倍くらい増えたような気がする。

気のせい、だと思うには目の前の人の群れを見ては説得力に欠ける。

 

「あ……そういう事か」

 

もう一度人の群れを見て、一刀は納得したように頷いた。

 

「逃げてきたんだ。この人たちは」

 

一刀は軍議で話し合われていたことを思い出した。

黄巾党と呼ばれる集団が各地で暴れまわり、特に中央、洛陽に

近い地域は黄巾党出没の頻度が桁違いらしく、日々その討伐に

追われている状態だという。

一刀がいる新野でも同じような事が続いており、ケ艾、姜維が

討伐から帰ってきてすぐに討伐に向かう光景を一刀は何度も見かけていた。

この人たちは中央から逃げてきた人たちで、司馬懿はこれを機に

労働力の確保と兵力増強を図るようなことを言っていた。

 

「これだけ人がいれば犯罪も増えるよな。勝里さんの事だから抜かりは

ないと思うけど、急に人が増えて警備隊は混乱してないかな」

 

一刀は司馬懿に警備隊を組織してはどうかと言う案を持ちかけたことがある。

具体的案や誰が担当するのか、そう言った細かい部分が不明確で

採用はされなかったが、天の御遣いとして何かしなければいけないと

諦めきれずに指摘された部分を修正して再度提出し、

見事実用する方向で話が進んだ。

警備隊の隊長はケ艾が勤め、副隊長を立案者の一刀が勤めている。

武芸などからっきしだった一刀だが、ケ艾に無理やり鍛えられて並大抵の

相手なら後れを取るようなことはなくなり、

討伐が忙しく、ほとんど警備隊の仕事ができないケ艾にかわって、

一刀が隊長を勤めているような感じである

 

「しまった、警備隊にこの事を伝えてない。大丈夫かな?」

 

心配する一刀の視界に警備隊の兵士が入ってきた。

普通の兵士と変わらない鎧を着て見回りをしている警備兵たちは

もみくちゃにされながら人の波を掻き分けて歩いていた。

 

「あれじゃ、いざって時に動けないな。勝里さんに相談してみるか」

 

警備兵たちが何事もなく生還したことを確認して、

一刀は城に向かって歩き出した。そのときだ。

 

「退いてくれ! 道を開けてくれ!」

 

一刀が歩いてきた方向から怒鳴りつけるような大声が響いた。

男がかなり慌てている様子で無理やり人の波を掻き分けて押し進み、

押されて転びそうになっている人が何人も出ている。

 

「急いでいるんだ! 通してくれ!」

「きゃあ……」

 

一刀の横を通り抜けた時、男が近くを通っていた女の子と肩がぶつかり、

一刀はよろめいた女の子を受け止めた。

 

「大丈夫? 怪我はない?」

「……ないわ。一様お礼は言っとく。ありがとう」

「当然の事をしたまでだよ」

 

女の子に笑顔で対応した後に走り去っていく人物を見た。

向かっているのは城のある方向だ。

もしかしたら、という不安が一刀の頭をよぎった。

 

「何かあった……詮索は後だ。とにかく城に……」

 

一刀は城に向かって走り出した。

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「勝里さん!」

 

城に到着した一刀は兵士に連れられて玉座の間に入った。

そこでは徐庶が司馬懿となにやら話し合いを行なっている。

 

「早いですね、一刀くん。いい心がけです」

「どうも……それで、何かあったんですか?」

「ええ、少々……いえ、かなり厄介な事になりました」

 

司馬懿は一刀に事情を話し始めた。

城に駆け込んできた男は国境付近を警備していた者で、

袁術の元にいる客将、孫策の手から逃れた黄巾党が徒党を組んで

新野に迫っているらしい。

数にして三万。それを率いているのは張曼成という

黄巾党の中でも武勇に優れ、五千の黄巾賊を束ねていた男だ。

各地で敗走を続け、もはや風前の灯になっている黄巾党に見切りをつけ、

河北周辺に集まっている敗残兵を抱えている張角率いる本隊には戻らず、

独立しようとした動きだった。

その狙いにされたのが新野である。

 

「既にケ艾将軍、姜維将軍には緊急招集をかけて全軍を集めています。

しかし、わたしたちの総勢力は五千。義勇軍を募ったとしても

おそらくは六千がいいところでしょう」

 

「一刻を争う事態です。一刀くんは兵糧の準備、それと軍馬、弓矢の

数をこちらに上げてきてください」

「わ、わかりました」

「それはわたしがやるわ。なんだか頼りなさそうだし」

 

一刀は背後から聞こえた声にハッと振り返った。

 

「君はさっきの……」

 

そこにいたのは街で一刀が倒れそうになったところを受け止めた女の子だった。

垂れた耳のように見える頭巾から胸に流れるように伸びている茶色の髪。

小柄でどこか冷めた目をした女の子が一刀の横まで来て頭を下げた。

 

「遅くなりました。荀ェ、ただいま到着いたしました」

「この時に来てくれるとは嬉しいですね。彗里、一刀くん。彼女は

袁紹軍から引き抜いた荀ェさんです」

「袁紹軍の荀ェ……どこかで……」

「えっと……確か……あ、君、荀ケって言うお姉さんいる?」

「いるけど……桂花を知ってるの?」

「いや知らない。うん、わかった。ありがとう」

「……? 変な男ね」

 

不審者を見るような目で一刀を見ていた視線が外れ、司馬懿を見た。

 

「司馬懿さま。兵糧、軍馬、弓矢はわたしにやらせてください。

この男……彼は少し頼りないです」

「頼りないって……まあ否定はしないけど」

「そうですね。お手並み拝見といきましょう。一刀くんを補佐に

つけますので、わからない事があれば彼に聞いてください」

「わかりました。……ほら行くわよ。さっさとしなさい」

「え……ちょっと待って!」

 

冷ややかな目で一刀を睨んだ荀ェはさっさと歩き出した。

それを追いかけるように一刀は走り、玉座の間を後にした。

 

「大丈夫でしょうか? あの二人」

「一刀くんなら大丈夫でしょう。知っていますか? 一刀くん、城の

侍女の方々の人気者なんですよ」

「顔……ですか? わたしは普通だと思いますけど」

「いえ、優しくて気配りが出来る。それだけです」

「……まあ、優しくて気配りが出来るなら女の子としては好評ですね」

「わたしも気配りと優しさは兼ね備えていると思うのですが、

侍女の方々には逃げられてしまうのです。何故でしょう?」

「……太守だからじゃないですか?」

「やはりそうですか。立場と言うのは時に残酷です」

「(頬を赤らめて逃げているのを見かけたけど、もしかしてこの人、気付いてない?)」

「どうかしましたか?」

「いえ……それより対策を考えましょう。時間がありません」

「そうですね。では軍編成から考えていきましょう」

 

主要な者たちが集まるまで二人の作戦会議は続けられた。

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「これで最後ね。予想より軍備はしっかりしているのね」

 

荀ェは報告書を見ながらそう呟いた。

 

「そうなの? これくらいが普通だと思ってたんだけど」

 

報告書を見ている荀ェの隣から一刀が覗き込んできた。

一刀に背を向けるように体の向きを変えた荀ェが歩きながら説明する。

 

「これくらいあれば文句はないわね。南皮や陳留だと賊討伐が多すぎて

装備が間に合っていなかったわ。荊州は被害が少ないし、これくらいあって

当然と言えば当然よね」

「陳留にもいたことあるの?」

「手違いでね。桂花……姉の荀ケが曹操さまに認めてもらうって息巻いて、

それに巻き込まれたから到着が遅れちゃったのよ。まあ、そのおかげで

曹操軍の強さを肌で感じる事ができたから嬉しい誤算と言えるかしら」

「曹操……魏の曹操か。今の時期ならまだ陳留にいるんだよな」

「………ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

報告書から顔を上げた荀ェが一刀の方を見た。

まるで何かを探るような、確かめようとする目が一刀を見上げている。

 

「司馬懿仲達の下にいる天の御使い、北郷一刀。あんたで間違いない?」

「間違いないけど……」

「そう、あんたが……なるほどね」

 

何か納得した様子の荀ェに一刀は質問した。

 

「何が“なるほど”なの?」

「天の御遣いが想像通りだった、という意味よ」

 

まだ納得できていない様子の一刀にため息を漏らした荀ェは話しはじめた。

 

「いい? 天の御遣いは名前だけ大陸中に広まったわ。どんな人物なのかを置いてね。

それでいろんな仮説が飛び交って、凄いことになっているわ」

「凄いことって?」

「口から火を噴くとか空を自由自在に飛ぶとか。妖術師みたいな感じで広まっているわ。

まあ人の噂も七十五日。すぐに消えるでしょうけど」

「そんな能力俺にはないな」

「でしょうね。それで、どういう人物なのか想像していて、

わたしの予想は見事当たった。そういうことよ」

「へぇ……君の中で俺ってどういう奴だったの?」

「貧弱で貧相で戦乱を収める事なんて出来なさそうな痩せ細ったブ男」

「……酷いな。これでも一般人には負けないくらい武はあるはずなんだけど」

「そうじゃないと話にすらならないわよ。ほら、報告書も出来たんだから

さっさと司馬懿さまのところに戻るわよ」

 

スタスタ先を歩く荀ェの後ろについて歩く一刀は一つの疑問をぶつけてみた。

 

「荀ェってさ、男嫌いだったりする?」

 

ピタッと足が止まった荀ェは振り返った。

 

「そうよ。出会いが酷いものばっかりだった、というのもあるわね。

肥えた豚みたいな奴とかわたしの顔を見た瞬間に舌なめずりをする奴とか。あぁ気持ち悪い」

 

腕を抱き寄せるように身震いした荀ェに一刀は苦笑しながら同意した。

一刀も何度か訪れた都からの使者を見ているが、印象の良い者は一人もいなかった。

自分の地位の方が上だと威張り散らす者。侍女に手を出そうとしていた者。

賄賂を要求してくる者。さまざまだ。

司馬懿は柔軟に対応し、罵声を浴びても笑顔で応え、丁寧に使者を侍女から遠ざけ、

相手が納得する程度の賄賂を渡して事なきを得ていた。

一刀は司馬懿に良かったのか尋ねると「今はいいのです」と微笑んでいた。

 

「というより、俺もそんな奴に見えてるの? そんなに酷い顔とかしてた?」

「……少なくともブ男じゃないわよ。本性はどうか知らないけど」

「そ、そう? よかった」

 

一刀の言葉に荀ェは眉をひそめた。

 

「あんたって罵倒されて喜ぶ変態?」

「えっ!? そんな訳ないだろ! 俺はそんな変態じゃない!」

「だってブ男じゃないだけで、あんたの事を性欲しか頭にない変態と思ってるのに

“よかった”なんて、聞く人が聞けば当然の答えじゃない」

「いや、よかったって言うのは姿の事で、別に罵倒されてよかったなんて思ってないよ」

「性欲は否定しないのね。やっぱり変態じゃない」

「ちが……落ち着け、俺。落ち着くんだ」

 

深呼吸をした一刀は荀ェに向き直った。

荀ェは手を伸ばしても届かないくらい離れた位置にいつの間にか移動していた。

 

「男なんだから外見は気にするだろ? 特に女の子からどう見られてるのとか」

「女あさりには必要よね」

「いや、俺だって男だから女の子にはカッコよく見えていたいっていうだけだよ。

女の子だって可愛いと思われたいのと一緒だと思うけど」

「男に好かれたいなんて思った事無いから分からないわよ。

自分の外見とか気にしないから」

「勿体無いな。そんなに可愛いのに」

「んなっ!? ば、馬ッ鹿じゃないの! 可愛いわけないじゃない!」

「え? 普通に可愛いと思うけど」

 

頬を染めた荀ェの顔が一刀の一言で顔を真っ赤なリンゴのようになった。

追い討ちをかけた一刀は何故荀ェが顔を赤くしているのか分からず首をかしげた。

 

「どうしたの? 顔が赤いけど」

「あ、赤くなんかないわよ! 変な事言わないでくれる!」

「いや、でも……」

「赤くないったら赤くない! これだから男は……!」

 

大股でズカズカと歩いていく荀ェを追いかける一刀。

その様子を遠くから眺める人物がいた。

 

「なるほど。一刀くんはそちらの才能はお持ちなのですね。

これは面白くなりそうです」

 

司馬懿はくすくす笑って歩き去った。

 

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お久しぶりです。傀儡人形です。

リアルが課題とかバイトとか忙しくて更新遅れました。

今回は袁紹から引き抜いた荀ェを出しました。

次は討伐です。

では。

 

説明
どうも傀儡人形です。

かなりの駄文。キャラ崩壊などありますのでご注意ください
オリキャラが多数出る予定なので苦手な方はお戻りください

書き方を試行錯誤しているのでおかしな箇所あります。
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コメント
荀ェか…ちょこっとだけ出てきてフェードアウトする人だけど能力は大丈夫なのだろうか(PON)
袁紹から引き剥いたのは桂花の姉・荀ェでしたか・・・仲達さんはおもちゃを見つけたみたいですなw(hokuhin)
こんばんは〜 イラストメインの人なのですがこの小説の登場人物を描かせてもらってもいいですか〜?  とりあえず顔とかなんですが下書きをポンと(eez_nite)
282828(2828)
ついに天然種馬の本性が・・・2828w(よーぜふ)
2828ですわwww(狭乃 狼)
2828ww(JIN)
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真・恋姫†無双 司馬懿 ケ艾 姜維 徐庶 荀ェ 一刀 

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