眩暈3
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星の導きのようにある日と突然二人は出会い、会話を交わし、お互いを認め合い、そして惹かれ合い互いの半身を必要とするようになり、定期的に会うまでの関係になった。だが、まだ青い果実のような間柄はしばらく続いた。まだ二人の関係は、恋人のようで恋人でない、また友達のようで友達でない、幸恵と櫂は正に友達以上恋人未満の関係だった。

 

もっぱら二人の共通の趣味は少なくとも初期は、美術館めぐり―まあ、殆どが箱根の彫刻の森美術館に行く事が主な活動だ―に尽きた。最初は、二人はまるで美術館から始まったと言っても過言ではない交際の幕開けだった。

 

美術館の帰りに、幸恵がお腹が空いたと言ったので、櫂は助手席の幸恵と共に車でデニーズに入った。「ねぇ、これ美味しいね!感激!」さっきオーダーしたばかりの真っ赤なロブスターがお皿に腹を切り裂かれた格好で載せられて目の前のテーブルの上に置かれていた。「もちろん、美味しいよ、ここの自慢の料理らしいからね!たーんとお食べ」幸恵の頬っぺたが、とても幸福そうにピンク色に輝いた瞬間だ。「すみません、ちょっと良いですか?」後ろから、甲高いテノールの男の声がした。「えっ何か?」慌てて、櫂が男の問いかけに反応すると、幸恵がすかさずこう言い放った。「いいよ!一緒に食事しようよ!」櫂は驚いてしまった。だって、いきなり幸恵と自分の二人の間に外野が入ってきたからだ。

 

だが、そんなイライラしだした櫂のことを余所目に外野の男と幸恵は初対面だと言うのに大変意気投合した感じだった。「君、可愛いね、俺の好み、・・・あっごめっ、隣の人彼氏だよね!」今更気づいたかのようにこの初対面のずぅずぅしい男がそう言うと、な、何と幸恵はこう言ったのだ。「うぅん、違うよ!友達、友達!」いや、確かにその通りだ。この時点で櫂と幸恵の関係はまだ潔白な関係だったから。

 

だけど、あまりにずぅずぅしくないか?男と女がどんな事情であれ、二人でファミリーレストランに来て入れば、どう考えても馴れ初めの関係であることは一目瞭然ではないか?そんな思いが櫂の脳裏にふと浮かんだが、次の瞬間、打ち消された。なんとずぅずぅしい初対面の割り込み男が幸恵の肩に櫂の目の前で手を掛けたではないか!

 

櫂はそれまで嫉妬心という物を幸恵に感じたことは、唯の一度もなかった。元々、櫂は、嫉妬をあまりしない性質だった。だが、あまりにもずぅずぅしい、初対面の外野男の振る舞いにいつのまにか気づけば心の中は烈火の如く熱く滾っていた。これは本当に櫂にとっては珍しい感情のあり方だった。

説明
またまた眩暈の続き載せました・・・たぶんすべて会員限定で公開すると思います!!よかったらお楽しみ下さい!!(やっぱ誰でもみれるにしました!!)
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タグ
アートの世界・恋愛・葛藤・自殺

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