名家一番! 第二席
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「待ちな!」

 

威勢のいい、よく通る声が俺の後ろから聞こえた。

 

次から次へと……、今度はなんだよ!?

 

 

一枠:現実は非常。連中の仲間が合流してきた。        

 

二枠:季節遅れのエイプリルフール。壮大なドッキリでした〜! 

 

三枠:急展開。救いの女神が現れる。             

 

 

頼むっ! 二か三で……できれば二枠でお願いします、神様!

 

祈りを込め、声が聞こえてきた後ろに振り向くと、そこには馬にまたがった一人の少女がいた。

 

金色の鎧を身にまとい、翡翠(ひすい)色の短めの彼女の髪は陽の光を吸い薄く輝いていている。

 

その画がとても綺麗で、数瞬、彼女に見惚れてしまった。

 

年は俺と同じぐらいだろうか?

 

だけど、その身体から発せられる気炎が、彼女をとても大きく頼もしい人物にみせる。

 

「やぃやぃやぃ! 一人に対して三人で寄ってかかるたぁ、男の風上にも置けねぇ連中だ!

 

天と地、そして天に住まう神仙が許しても、このアタイが許さねぇ!」

 

なんか江戸っ子みたいな女の子だな……って! そんなことよりも、大穴の三枠キタコレ!?

 

少女の登場に面食らっているのは、俺だけでなく中年三人組も同様だったが、

 

「いきなり出てきたと思ったら、なんだてめぇは!」

 

「てめぇもひん剥いて、売り飛ばしてやろうか!?」

 

「んだっ、んだっ!」

 

三人組は口々に脅し文句を吐きかけた。

 

しかし少女は、三人の脅しなどどこ吹く風といった様子で涼しい顔をしている。

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「おもしれぇ。アタイをひん剥けるもんならやってみな!」

 

少女は不敵に笑うと、自分が乗っていた馬を踏み台にし、天高く舞い上がる。

 

彼女の背から太陽の光が後光のように差し込み、天から救いの女神が本当に舞い降りてきたようだった。

 

 

 

――、ここまではね。

 

 

「必殺! 斬 山 刀 斬 山 斬 !!!!!!」

 

「え?……ざ、ざん? 今、なんて言った?」

 

彼女が叫んだ、必殺技であろう名前がよく聞きとれず、首をかしげていると、

 

少女が空から落下してきた。

 

地面にぶつかる寸前というところで、彼女は手に持っていた“何か”を勢いよく地面に振り下ろしたその瞬間、

 

とてつもない爆発音が辺りに木霊した。

 

「なんぞコレーーー!?」

 

少女の落下地点から、もうもうと土煙が立ち上っている。

 

土煙が徐々に晴れてくると、少女が立っている場所が大きく陥没しているのが見えた。

 

「んなっ……!?」

 

その光景を見て、地面にへたりこんでしまう。

 

彼女が振り下ろした“何か”とは剣だった。

 

 

 

しかし……、

 

それは剣と呼ぶにはあまりにも大きすぎた

大きく

分厚く

重く

そして

大雑把すぎた

 

それはまさに鉄塊だった……

 

 

 

「いやいやいや! どこかの狂戦士じゃあるまいし、あんなバカでかいのを振り回すとか――」

 

“ありえない”と言葉を続けたかったが、目の前の光景を見れば、認めざるを得ない。

 

天が遣わしたのは救いの女神でなく、全てを無に帰す破壊神だった。

 

母なる大地を陥没させた当の本人は、

 

「あっれー? 勢い余って外しちゃったよ」

 

と、呑気な声をあげている。

 

少女のすぐ横に目をやると、腰を抜かした三人組が陸に打ち上げられた魚のように、口をパクパクさせていた。

 

なるほど確かに外している。てか、外してくれてよかったよ。

 

もし命中していたら、土煙の代わりに三人の血肉を浴びることになっていただろうな……。

 

その惨状を想像してみて、身震いした。

 

「ぎゃあーーー!! 怪獣ぅーーー!!」

 

「おたすけぇーーー!!!」

 

「ひ、人殺しぃーーー!!」

 

三人組は、野太い悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

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「はぁ!? こんなにも可愛らしいあたいが、怪獣だとぉぉ!? てめぇらの目は節穴かっ!」

 

怪獣といわれたことが、よほど癇に触ったのか、巨大な剣を振りかざし、三人組の後を追いかけていった。

 

少女と三人組が去り、一人とり残された俺はその場に呆然と立ち尽くしていた。

 

「……な、なんだったんだあの娘?」

 

一応、俺のことを助けてくれた辺り、悪い人ではないだろうから、

 

“ここはドコ?”とか、“あなた本当に人間ですか?”とか、色々と情報を得ることができたかもしれないのに。

 

しかし、彼女は行ってしまった。

 

「これからどうしよう……」

 

どうやら、この辺りはあまり治安がよろしくないようだ。

 

下手に動いて、さっきの連中のような奴に絡まれでもしたら大変だしなぁ〜。

 

「う〜む……」

 

これからのことで、俺が頭を抱え込んで唸り声を上げていると、

 

「あ、あの。大丈夫ですか?」

 

ためらいがちに、誰かが俺に声をかけてきた。

 

さっきの少女が戻ってきたのかと思い、伏せていた顔を上げると、そこには見知らぬ少女が、俺を心配そうに見つめていた……。

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あとがき

 

どうも皆様。濡れたタオルです。

名家一番!の第二話いかがだったでしょうか?

ちょっと短いですが、ここで切ったほうが良い次回への引きになるかなぁ? と思い、ここで切らせてもらいました。

 

コメントをくださった方、本当にありがとうございました。とても嬉しかったです。

 

コメントで、TINAMIでは袁家√少ないと書かれていたので調べてみたら、本当に少なくってワロタwww

少しでも袁家のトリオの良さをこのSSで引き出せるよう頑張ります。って、まだ肝心の人が登場してませんが……。

 

ここまで読んで頂き、多謝^^

説明
第二話です。

ようやく一刀と猪々子が同じ場面に登場。
よろしければ、今回もお付き合い下さい。
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コメント
>>砂のお城さん えぇ!? 最終話なのに麗羽でなかったんですか……。それはそれで見てみたい気もするな。(濡れタオル)
>>hokuhinさん 真名の地雷イベントは、恋姫では恒例ですからねw(濡れタオル)
猪々子さん、最初から飛ばしてますねwさて、次の話で初見殺しの真名が出ると思いますが、この一刀は生き残る事が出来るかw(hokuhin)
タグ
真・恋姫†無双 北郷一刀 猪々子 黄色い三連星 名家一番! 

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