俺のあやせがこんなに可愛いわけがない
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第1章 

 

 

 

季節は冬。高校三年生の12月1日――――――

 

空は少し曇っていて、この季節になると、外は本気で寒い。

 

「ブルブル・・・・さみぃ・・!!ったくまだかよ」

今年は特に寒いらしいからな・・・風邪引かないようにしないと。風邪流行ってるって言うし。

その日俺は、桐乃の買い物に付き合わされていた。なんで俺は大して好きでもない妹の買い物に

付き合わされなきゃならないんだよ。大体今モデルの仕事ねーだろうがよ。

これ以上着飾る必要ないじゃん!?

モデルの仕事でもないのに服やアクセを買いに来るなんて・・・うーむ。俺には分からん感覚だった。

ってかそりゃぁたまには自分の服ぐらい買いに行くが、桐乃のそれは異常だと思う。

桐乃は今年で中学三年生。モデルの仕事をやっているが、流石にこの時期は受験勉強で、仕事はほとんどないそうだ。

それは、高校三年生の俺も全く同じなわけだが割と勉学はしっかりやっていて、希望の所にはまぁ寝坊でもしない限り大丈夫だろう。・・・・安心は出来ないが。俺は日々復習をかかさずに、坦々と生活していた。

「しかし・・・クソ・・・推薦ってずりーよな・・・」

みんな受験頑張ってる所に桐乃は学業や部活ではそれはもう大きな成績を残し、当然のように希望高に推薦で通っているのだ。

聞いた話じゃあやせも同じらしい。まったく世の中平等に出来てない物だ。俺が中学生の時どれだけ苦労して勉強したことか。

まぁ桐乃が普段努力しているのを知っている俺は、結局何も言えないわけで・・・。

 

「お・・・」

 

そんなことを考えていた目先に、知っている顔があった。

 

白いジャケットを着て、ピンクのスカート、中から見える服はフリフリがついてて、いかにも垢抜けている

着飾った衣装だが、けしてそれがケバくなく、なぜか清楚に見える。ちょっと俺の表現力がなさすぎてどう表現していいかわからないが、黒髪ロングはまさしく俺の好みで、もし話掛けられるのなら、すぐさま求婚を申しつけるだろう。

そして、断られた挙句、絶望するだろう・・・・orz

いかん・・・幸せな妄想のハズが、途中から現実の回想が出てきてしまった。

 

つまりそこに、あやせがいた。

 

・・・・あれから全然連絡をとってない・・・俺が電話すると避けられたように出ないし。

・・・まぁ着拒されるよりはマシか。

 

「ん?・・何やってんだ?」

 

あやせについていろいろ考えていた時、あやせの様子がおかしいと思えるような状況が目に映った。

数人の男性に話掛けられている。それをあからさまに嫌がっているようだ。

 

 

「ちょっとさぁ・・聞いてんの?俺等と遊ぶのぜってーおもしれーからさぁ」

「そうそう!いい店知ってるんだよね〜絶対気に入るからさ〜ちょっと行こーぜ?」

見るからにチャラチャラしている。なんなんだあいつらは・・・スゲーイラつく。

「ちょっと、嫌だって言ってるでしょ?どっか行ってください」

あやせは本気で嫌がってるみたいだが、男達は一向に去ろうとしない。

嫌がられるのをなんとも思ってないように。

慣れたようすで説得しようとしている。ちょっと脅してるようにも見えた。

通りかかる周りの人たちは見て見ぬ振りをしている。

 

「よお、待ったか?」

 

すかさずあやせに声をかけた

「いや〜〜ごめんごめん遅れれちまった!」

「あ? なんだお前」

男の一人が俺を睨み付けてくる。怖い・・・。

「なんだって待ち合わせしていた彼氏に決まってんじゃん」 

俺はびくつきながらも答えた。 

「ふーん、そんな風にはみえねーけど?」

男は急に現れた彼氏を見て、あからさまに機嫌が悪くなったみたいだ。

「こんな冴えない男よりさぁ、俺の方が絶対楽しいって、おい行こうぜ」

強引にあやせの手を引っ張ろうとする。なんだこいつは!俺は本気でむかついていた。

バチンと手を叩き、強引にあやせの手を離し、男を睨みつける

「チッ!んだてめぇ!やんのか!?あ!?」

・・・こりゃ本気で怒らせちまったな。

見渡すと人数は四人。いっぱしの受験生が一度に相手にするにはちとキツイ。

しかもあやせを守りながらなんて、もっと難しいだろう。

だが、俺のゴツイ外見と中身の攻撃力が一致したような親父や、いつも嫌なにらみを聞かせる妹に比べれば・・・・うん全然小さく見えるぜ。

カワイイもんだ。

 

そこであやせの表情を確認するために後ろを向いた瞬間。

ビィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!

歓楽街の真ん中で防犯ブザーが、でかでかと鳴り響いた。 

そういえばコイツ携帯用の防犯ブザーを持っていたんだった!

「うわっ、うるせぇ!!」 

ナンパ男達はそのあまりの大きな音に耳を押さえ怯んでいた。

そこですぐさま異変に気づいた警官が数人駆けつけた。 

タッタッタッタ 

「どうしました!?」

「その・・・私、男の人に、絡まれてて・・」

 

ホッ・・俺はため息を付いた。助かった。そうか、こんなときのために持ってたんだな。防犯ブザー。

 

「この人です」

「君、ちょっとこっちに来てもらうよ、いいかね?」

ったくあやせ、心配させやがって・・・・あれ?

 

警官2人組は、俺の両腕をガッチリと掴み、近くの交番まで連行しようとしていた!!

 

「ちょ!?え!?うそ!!まてまてまてまてまてまて!!俺!?」

「言い訳はこっちに来てから聞こうか」

きょろきょろ周りを見回すと、さっきまでいたはずのナンパ男達は一人残らず消えていた。 

「あやせ・・・冗談だよな・・・」

 

 

 

数十分後―――

 

 

 

「あぶねぇぇえええええ!!」

「プッ・・ふふふ・・アハハ・・・あーおかしかった」

あやせはご機嫌だが、俺は人生終わるかと思った。

「お前なぁ!!あと一歩弁解が遅れたら、親に連絡される所だったんだぞ!!!」

マジ洒落にならねーーーーー!!

親父が警官なのに俺が捕まるとか、マジありえねぇから!!

俺が生死の境をさまよってきた人間みたいな心持ちだった。

助けようとしたのに、普通こんな仕打ちするか!?

「チッ」っと舌打ちしたあとにっこり笑って「おしかったですね」と言った。

イライライライライライライラっ・・心から怒りがこみやげてくる

「俺が何をしたんだよ!?」

「いや、私にセクハラしたり、求婚したり、エッチなコスプレをさせようとしたり、上げるにはきりがないぐらいの

性的なセクハラ行為ですけど?」

ぐ・・・残念ながら事実だった。

「なんだろうそう言われるとただの変態ストーカー野郎みたいに聞こえるな」

「なんならそれにシスコンでロリコンで鬼畜ってのを追加してもらえますか?」

  

あやせはニヤニヤしながら俺を避けずんだ目で見下ろした。

ヒドイ(;´Д`)・・・ひどすぎる。多分今日一番むかついた場面は間違いなくここだろう。

さっきのナンパ男達がここにいたら仲間になってた所だぜ・・

 

その後、電話で呼び出され、ほったらかしにしていた桐乃に再開した俺は、こっぴどく怒られ、家に帰ることになる。

 

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自宅に帰って来た俺は、さっそく机に向い、受験勉強を始めた。

「まだ、怪しい所がいくつかあるから、気は抜けないんだよな」

2時間ほど勉強し、「よし、休憩にするか」と言って、ノートを閉じた。

勉強は毎日コツコツとやるものだ。それに休憩も必要だ。と、言い訳も出来たことだし、

 

俺は、さっき町で買ってきた本当の目的を始めることにする。

袋から出して、ソフトを本体にセットする。 

「おおおっ!」

スイッチを入れると、豪快な文字が出て、モンスターが動き回っている。

「おおおおお!これはカッコイイじゃねーか!!」

そう、このとき俺は、初めて自分で買った今日発売のゲームを機動していた。

 

「これが、モンハンってやつか・・・携帯ゲームなのにすげぇ迫力だ・・」

『モンスターハンター3』今日がその発売日だった。ちなみに予約していたので、すぐ手に入った。

まぁ伊織に言われるがまま予約したのは内緒だ。 

 

「女性声の09番めっちゃエロいな・・・17番のやられ声もなかなか・・・・迷う・・」

そこで、キャラクターの声や髪型をじっくり決めようとした矢先だった。

  

コンコン!ガチャリ

 

ドアを叩いたあと、ガチャリとドアが開かれた。返事を待たずに入るなんて、ノックの意味がない。

お前もし、俺が××の最中だったらどうするんだよ、・・・そんな所に遭遇するなんて、俺もお前も兄妹仲良く

トラウマになるぞ。

「ちょっと、何やってんの?勉強はなんでしてないのよ」

そこにはさっき謝ったのに未だ不機嫌な妹が現れた。

「な、なんだよ、勉強はさっきまでしてて今は息抜きだからいいんだよ」

大体なんで妹にそんな心配されなきゃいけないんだ忌々(いまいま)しい・・・お前は俺のかーちゃんか?

「何やってんの?」

「モーハンに決まってるだろうが、今の時期持ってない奴は遅れてるぜ?」

そう、今回はしっかり理由があるからな、妹ゲームなんてやらないぜ。

「はぁ?何がモーハンよ、キモ・・」

「いいじゃねーかモンハンやるぐらい、この時期はモンハンだろ?」

「あんたバカぁ?この時期って言ったらこのゲームに決まってるじゃない。」

最初からこれをやらせるために俺の部屋に来たかのように手に持っていたゲームを掲げた、そこにはアマガミと書かれた恋愛シュミレーションゲームらしきものが見えた。

「あま・・がみ?」

「そう!アマガミよ!!これはね、エンターブレインから出たこの季節にぴったりのゲームで、登場するミヤちゃんって妹がチョーーー可愛いの!!私もにぃにって呼ばれてみたいわ〜♪」

なんだかご機嫌で話出したが、俺には全然興味がなかった。

今回はエロゲーじゃなく、一般向けのゲームみたいだ。

「だけどさぁ・・・それって妹って攻略出来ないだろ・・・一般ゲームにそんな妹攻略出来るゲームがあったら引くぜ?」

「ふっふっこれはねぇ、ちゃんとミヤちゃんルートも用意されてる素晴らしいゲームなの!攻略キャラ全員をクリアした後、

隠しキャラもクリアして、最後の最後にみやちゃんルートに行ける選択肢が現れるのよ!」

最初はあきらめてたけど、ミヤちゃんルートが出た時の感動は忘れられないわ!!」

お前好きなゲームの紹介の時だけは妙に生き生きしてるな。

「・・・・そうっすか・・・それがどうしたんだよ」 

「はぁ?バカじゃん?だからこれを今からやれって言ってんの!」

いきなり無理難題を出してくれる。なにか?俺はプレイするゲームを妹の指示でやらなきゃいけない呪いにでもかかっているのか?

ったくそんなもん断固断る、俺は妹にハッキリ言ってやった。

 

「本体も一緒に貸してくれないっすかね?」

 

画面には、アマガミというロゴの下に、PRESS START Button と書かれた文字が表示されている。

俺はスタートボタンを押して名前を決める、「高坂・・京介・・・と」

ゲームを始めた。まずこのゲームに出てくるキャラを一人にしぼらないといけないらしい。

妹に説明されるがまま、ゲームを始めた。

まず登場キャラの中で俺が気になったキャラを紹介しよう。ぽっちゃり幼なじみの『桜井梨穂子』。

こいつは攻略がやりやすく、初心者にやさしいキャラだとか。

麻奈美みてーなキャラだな・・・。次に『七咲逢』、後輩でクールで扱い辛いらしい・・・黒猫みたいなキャラか・・・。

そして最後に黒髪ロングの優等生、『綾辻司』見たまんますごく清楚で、勉強、ルックス、性格、そのすべてにおいてパーフェクトのキャラらしい。うむ、あやせみたいなキャラだな。一部を覗いて。3人とも性格も外見もどこか知り合いに似ていた。まぁこの中で選ぶキャラなんて今の俺はこのキャラに決まっている。

「綾辻さんっていいよな・・・・」

そう口にすると、桐乃が隣りから変な目で見てくる。

「キモ・・・でも悪くない選択ね」

「だろ?」

俺は桐乃が部屋を出て行った後、黙々と、ゲームを進めて行った。うむはやり清楚で可愛いなこの子は。

パッケージのキャラだし、いかにも”正統派ヒロイン”と言えるだろう。

進めて行く途中、手帳を拾い、誰のかを確認するために中を見てみると、その時事件は起こった。

この辺はネタバレなのでアニメとかを見てからこの先を見て欲しい。

「みたわね?」

「え?」

 

なぜか、神社の裏に呼び出されて、綾辻さんに脅された!!

「なん・・だと!?」

怖ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!

 

 

 

いままで正統派の清楚でやさしい優等生じゃなかったのか・・・?

今画面上では、主人公が胸ぐらを掴まれて脅されてる映像が映し出されていた。 

バカな・・・パッケージを見返すと、やはり絢辻さんが表紙で映っている。一番メインのヒロイン・・だよな・・・

俺はコミケの時に出くわしたあやせを思い出していた。 

まさか、たかが恋愛ゲームにこんな、ヒロインの可愛さにドキドキする以外の理由でドキドキさせられるなんて・・・

バクンバクン・・・ 

心臓の音がバクバク聞こえる・・・。綾辻さんマジ怖ええええ

ブブブブブ!ブブブブブブ!

「うわぁ!!」

ゲームに夢中になっていると、突然ポケットの携帯のバイブが鳴り出しびっくりして飛び上がった。 

携帯には、『新垣あやせ』という文字が。

「ひぃっ!!」

二度びっくりした。なんなんだコイツは・・・今日は散々あやせにひどい目にあわされてる気がする。

俺は恐る恐る通話ボタンを押す。

「も・・・・もしもし?」

「もしもし、あやせです・・・ってなんでそんなビクビクした声なんですか」

「い・・いやぁ・・怖くて・・」

「ど、どうして怖がられなきゃいけないんですか!しつれいですよ!」

「い、いや、すまんすまん で?なんなんだ?」 

やはりビクビクしながら答えていた。高三の俺が女子中学生に電話越しでビクビクするなんて情けない話である。

「その・・今日はすみませんでした。あんないじわるしちゃって・・・」

「ああ、そのことか、いいよ、もう気にしてない」

そうだな、謝られるとこう返すしかないだろう。可愛らしい声でそう言われると、たとえ本当に被しかなくても許してしまう。

少し気は晴れたしな。

「わざわざそのために電話してきたのか?」

「い、いえ・・・その、ちょっと頼みたいことがありまして」

「?・・なんだ?」

「その・・・秋葉原というところに一緒に行ってほしいんですけど」

「ほう」秋葉原だと?あやせにはオタク趣味はない、そんなところ行ったこともないだろう。

「桐乃に、クリスマスプレゼントを上げたいんです。」

なるほどな、それで頼る人といえば俺しかいないだろう。

「いいよ、じゃあ一緒に行こうか」

「ホントですか!じゃあ、少し先になりますが、19日の日曜日にでも、その・・今日の御礼にその時何かごちそうします。」

 

 

 

そんなわけで、日曜にあやせと2人で出かけることになった。

 

「で、デートに誘われてしまった・・・」

これは・・デートと言うやつだよな?理由はどうあれ女の子と2人で出かけるわけだし・・・。 

 

 

 

「まぁ・・・罠じゃ・・ないよな・・」

 

そんないろんな不安をよそに、その日はやって来た――― 

 

 

 

 

 

【つづく】

 

 

 

説明
続編作ってみました。今回も全4話で季節は今の12月に合わせてみましたが、多分クリスマスまでには4話まで載せられないかと(爆)
なんせ明日がイブなんで(笑)
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