俺のあやせがこんなに可愛いわけがない(2)
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第2章

 

 

 

12月19日 日曜日。昼の12時。

 

休日はやはり人が多い。駅前でメイドさんがテッシュやチラシを配っている。その格好で寒くないんだろうか・・?

俺はかなり着込んで来たのだが、それでも寒かった。

秋葉原の、電気街口から出て左の通路を通って外に出る。上を向くとラジオ会館という大きな看板が見える。

その隣にはゲーマーズと書かれた店がある。

俺は何度かここに来た事はあるが、完全にどこに何があるのか把握したわけではない。

今日は下調べしてきた店を回るつもりだ。

 

「きょーすけさーーん!」

右からこそばゆいような、可愛らしい声が聞こえた。

そこには、白と黒の色のバランスのとれた服。黒いロングでサラサラの髪。今日も変わらず清楚で可愛らしい。

その印象は、いかにも雑誌に載ってそうな綺麗さだった。

「はぁはぁ・・ちょっと、遅れてすみません」

「い、いや、それぐらいいいよ」

よく見ると、走ってきたのか、息づかいが荒く、少し顔が赤くなっていた。

「とりあえず飯でも食いに行こうぜ」

「ええ」

なんとか会話になったが、一瞬あまりの可愛さに硬直してしまったぜ・・・ 

 

昼飯を食べた後、早速秋葉の店に入る。 

入ってすぐのエレベーターに乗り、5階で止まった。

「なんか狭いですね・・・」

「まぁしょーがねーだろ、こういう店っていろいろあって種類が多い分狭く感じるんだよ。」

店の中に入ると、女の子のイラストがいっぱい描かれたパッケージのゲームが並んでいる。 

「へぇ・・・思ったよりカワイイ絵ですね。」

「まーな。」

ちょっと前は桐乃とアニメ映画を見に行ったりして、だいぶ苦手意識も薄れてきたんじゃないかと思う。

ただ、これは別だと思うんだが・・・

あやせがパッケージを手に取って裏返して裏を見てみる。

そこには、表紙のキャラが、あられもない姿でHをしている絵が描かれていた。

「ってなんて所に連れて来てるんだ死ねェェェェェェェェェェェ!!」

ドカッ ドカッドカッ

「いてぇ!!ちょ、蹴るな!イテテ!!その靴は痛いから!!」

「そ、そりゃお前が連れてこいって言ったから連れてきたんじゃねーか!」

「そりゃ言いましたけど、こ、こここんなHなものがあるなら最初に言ってくださいよ!!

ブチ殺しますよ!?」

「わ、わかったすまん!違うところへ行こう!」

あやせの顔が凄く不機嫌になった。・・う・・・ここに連れてきたのは失敗だったか・・・

でも、何だろう・・・あやせの言動に変な違和感を覚えた。 

次に行ったのは、フィギュア専門店。1階から5階まですべてフィギュアが売ってある。

ここに桐乃が好きそうなフィギュアはたくさんあるので、あやせが選んだものだったら喜ぶだろう。 

 

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「またいかがわしい店じゃないんでしょうね・・・」

「大丈夫だって、ここは人形ばっかりだし、さっきみたいにあからさまなやつは、ないはずだぜ?」

3階に上がると、女のキャラのフィギュアがたくさん並んでいる場所に着いた。

「ん〜〜確かこの辺に・・・ってそっちじゃないぞ」

あやせを見るとフラフラと階段の方に歩いていた、すかさず手を引いて目当ての所に行く。

「あ、すみません・・」

「大丈夫か?・・お前なんか変だぞ?」

「ええ、お兄さんが変態なことするから身構えてたんです」

「おい」

そのフロアにあったメルルフィギュアを取って、あやせに渡す。 

「これなんかどうだ?メルルのちょっとリアルな人形だ。

ほどよくデフォルメされていて、可愛らしいだろ?」

髪がリアルに出来ていて、リカちゃん人形みたいに本物の毛が使われている。服の生地も布で出来ていて、着せ替えが可能みたいだ。

「桐乃の部屋にもこれはなかったぜ?」

「うん・・確かに可愛いですね・・これなら桐乃も喜んでくれるかも」 

フィギュアを観察していると、何かするりと落ちた。 

「あれ?何か布みたいなのが落ちましたけど・・・」

拾ってみると、それはパンツだった。

「な・・」 

あやせはそのメルルのフィギュアをのスカートをめくって中を確認すると、みるみる顔が赤く染まって行く。

「な・・・な・・な・・・」

俺も顔を近づけて中身を確認する。

そこには裸のメルルのディティールが細部までしっかり再現されていた!!

造形師は一体何を考えてこんなものを作ったのか・・・値札にはR-18と書かれていた。

「こ・・・この・・」

「うわぁ・・まてまて!知らなかったんだそんなものがあるとは!!」

あやせはそのフィギュアを頭の上に掲げ、俺に向かって腕を振り下ろした 

「この鬼畜ッ!!変態ッ!!死ねッ!死ねッ!死ねェェェェェェェ!!!」

「いてててててて!!ヤバイから!その足尖ってるから!!うわっ!!」

ヤバイ・・本気で怒らせてしまったかもしれない

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・この・・・」

「・・?・・・あやせ?」

数回殴って来たが、全然痛くない。ぜーぜー言って、ちょっと息使いが荒い気がする。足も少しおぼつかない。

「ちょっと触るぞ?」

あやせの肩を掴み、額に手を当てた。 

「うわっ・・お前めちゃくちゃ熱あるじゃねーか!!」

「な、何するんですか変態」

なんてこった・・・どうも今日は会った時から顔が赤くて様子がおかしいと思ってたら、こんなにぐあい悪かったんじゃねーか。

クソっ・・なんでもっと早く気付かなかった・・浮かれすぎだった・・ 

「う、うるさいですね!私は大丈夫です!」

言い当てられて、気が緩んだのか、俺の体に寄りかかって来る。

「はぁ・・はぁ・・きょ、京介さんが・・また変なセクハラするから・・」

「そんなんで熱出るわけねーだろ・・帰るぞ」

「え・・まだプレゼント買ってない・・」

「バカ、そんなこと言ってる状況じゃねーんだよ」

俺は強引にあやせを外に連れ出した。

 

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タクシーに乗って、とりあえず病院に直行し、薬をもらい、家に送っていく。

 

 

家に行くタクシーの中、あやせはぐったりとしていて、本当に、気分が悪そうだった。 

「どうして出てきたんだ?」

「え?」

「お前、来た時から変だっただろ、別に無理して出てくることはなかったんだぞ?」

「・・・・・・・・・・」

答えは帰ってこない。

「ふぅ・・・」

俺はため息をついた。 

・・だいたいコイツの親は?母親だったら娘の風邪ぐらいすぐ気づくと思うんだが・・・

「なぁ、お前のかーちゃんは娘が風邪引いた時心配で看病してくれないのか?」

俺は、少し怒り気味に聞いていた。

「母は・・今朝から仕事に出ていて数日は家に戻らないって言ってました」

「そうか・・・じゃあ電話で呼び戻してくれ」

当然の事だ。女の子を一人、しかも風邪をひいた子共一人残して仕事してる親がどこにいる。

いくらなんでも、すぐ帰って来るはずだ。

「それは・・・言いたくありません」

俺のその当然の意見に、あやせはNOと首をふった。

「母が働いているのに、私一人のワガママで、迷惑をかけるわけにはいかないから・・」

「お前ねぇ・・何を言って」

あやせは苦しそうな虚ろな表情で声を出した。

「とにかく・・・私は大丈夫ですから、家に送ったらすぐ帰ってください」

・・・・・・・・・・・・

責任感の強い人間だとは思っていたが・・・ここまでとは。

俺にはわからないことだった。

厳しい親なんだろうか・・・風邪ひいた時ぐらい、優しくしてやってもいいじゃねーか。

「この仕事は結構前から準備があったみたいで、大事な仕事なんです・・だから私がちょっと風邪をこじらせたぐらいで放り出すことなんて出来なくて。

 

それに・・これぐらい別に一人でもなんともありません」

 

「・・・・・そっか」

 こいつの母親はPTAの会長で、親父は議員だと聞いたことがある。二人とも、忙しくて

なかなか家に帰っては来ないのだろう。いたとしても、家で仕事していて、かまってやれてない。

そりゃぁこんだけしっかりした子供だ、育てるのに手間は掛からなかっただろう。

 

 

だけど・・だけどさぁ・・・こんな時ぐらい頼っても、甘えてもいいじゃねーか。

 

たった一人の娘だろ? 

 

 

 

 

俺は、そんな”強がり”を言うあやせを、ほっとけないと・・・思った。 

 

 

 

 

【つづく】 

 

 

説明
年末ですね。正月は多分モンハン漬けです。
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