真・恋姫無双〜妄想してみた・改〜第三話
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「愛紗〜!こっちにも知ってる人はいなかったのだ〜〜〜!」

 

小柄な少女がこちらに向かって駆けてくる。その体にはあまりにも不相応な大きな槍を背負って。

 

「…ああ、すまない。これは礼だ。取っておけ」

 

驚いている行商人に少ないが情報代を払い、身を上げた。……たいした情報は得られなかったな。

 

傍らの少女も彼女を迎える。こちらは同じく小柄な姿だがひらひらの服を着た人形のような姿をしている。

 

ある目的の為、聞き込みをつつけこの村で合流と相成った。

 

「…これで付近の村全てを回った事になりますね……」 

「……そうだな、しかし」

 

ご主人様は見つからなかった。

 

「お兄ちゃんどこに行っちゃったのだ〜?」

「こうまで目撃情報が無いとすると、別の場所へ降りられたと考えるべきか?」

「う〜ん、星さんが仰るにはここで間違い無いらしいんですが 」

 

鈴々と朱里に落胆の表情が浮かぶ。やはり到着が遅かったか……。

 

―――そう、我々は天の御遣いである北郷一刀様の捜索を行っていた。

 

我らがもう一人の主を思い出したのは桃園での誓い直後。

 

記憶が混乱する中、すぐに五台山の麓へと駆けつけたがご主人様の姿は無く、近隣の村に聞けば流星が落ちた噂すら無いという。

 

だが、旗揚げ直後の我々にこれ以上人を探す余裕などありもせず、無常に月日は流れ続け……。

 

黄巾の乱沈静化の折、ようやく流星が落ちたとの話を聞き及んだ。

 

本来ならば黄巾の乱の後、一度離れるはずだった星を引き止め(あやつも前回の記憶を持っていた)、桃香様の護衛を頼み、

 

さっそくご主人様を探しに行くと告げると、

 

「あいや待たれい。私の知り合いに夜空の星を読む人物がおってな。そやつによると今、我等から会いに行くのは凶兆らしいぞ?

………いやいや、いきなり構えるな愛紗よ、私とて主は大事、すぐにでも再会したい心は同じだ。最後まで話くらい聞かんか」

 

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奴の知人曰く、昨今の大陸にとても強い邪悪を感じていたという。ある日空を見上げ、

 

「もしかしたら世界、終わっちゃうかもわからんね〜」

 

あまりに突飛すぎる話に半信半疑だったらしい星だが、

 

「あ〜でもご安心を。お空にとっても強い星が輝いてます。それがなんとかしてくれますよ〜」

 

「根拠?いえ、特にありませんけど?なんだかそう信じられる感じがするからです。……星さんもそんな感じしませんか?」

 

問われ、思い出したそうだ。我等を導き、人々の標となったご主人様の記憶を。

 

そこで詳しく話を聞くと、

 

―ひとつ、落ちる場所は洛陽周辺、時期は分からず。

 

―ふたつ、時が満ちればおのずと流星とともにソレは落ちてくる。

 

―みっつ、ソレは宿星であり、人の手で運命を変えるべきではない。

 

「……まあ、そんなところだ。言って聞くおぬしではなかろうが参考までにな。留意しておけよ」

 

やはり本心では奴もすぐご主人様に会いたいのだろう、止めはされなかった。

 

……言われるまでもない。なんであろうとご主人様は必ず見つけてみせるさ。

 

そうして私、鈴々、朱里の三人は身分を隠し、洛陽周辺で聞き込みをしていた。

 

 

 

 

「にゃ〜……。もしかして誰か知らない人に着いて行っちゃったのか〜?」

「なにを馬鹿な事を言っている!ご主人様がいるべき場所は我等蜀のみ。あちらからも向かって来ているに違いない。ここは入れ違いになったと考えるべきだ」

 

その可能性を考慮して桃香様と星、雛里、白蓮殿には留守番をお願いしている。(居残り組)

 

「……ご主人様の場合、目の前に困ってる人がいればそちらを優先してしまいますからね」

「それで合流が遅れていると?」

「まああくまで仮定のお話なんですけど」

「確かに……ありえなくは無いが……」

 

あの方の人徳は尊いものだ。だがここは私達を優先してほしいと身勝手な思いが巻き起こる。

 

「でも助けたのがかわいい女の子だったら、今頃イチャイチャしてるだけかもしれないのだ」

「ちょ、ちょっと鈴々ちゃん!?」

「…………………………………………………………………ほぅ」

「愛紗さん落ち着いて!?全部仮定の話ですよ!」

「にゃはは、愛紗はあいかわらずやきもちばっかなのだ」

 

構えた青龍刀をゆっくり下ろす

 

「………まったく、お前という奴は姉をからかってなにがおもしろい」

 

ただでさえ気の多いあの方だ、あながち仮定で済む話でもない。

 

情が移って自らの近くに置く事に関しては前例が多すぎる。

 

 

 

       この私では不満なのだろうか

 

 

 

この思慕の気持ちは他の誰よりも揺ぎ無いもの。あの方を想う気持ちは誰にも負けない自信がある。それなのに……。

 

「? どうしたのだ愛紗?いつもみたいに追いかけっこしないのか?」

 

「なんだ。そんなに仕置きされたかったか。なら仕方ない……全力で逃げろよ」

 

「うわわ、やぶへびなのだ!」

 

胸の中にわずかに感じる痛みを押し殺し、駆け出した背を追いかけようとしたところで、

 

「!?前に気をつけて!」

 

「にゃにゃっ!?」

 

「鈴々!」

 

こちらに気が散っていた鈴々は正面から通行人と激突してしまった。

 

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「よく前を確認しないからだ!申し訳ない、妹が迷惑をかけた」

 

「いやいや、謝らんでいいよ。元気の良いちみっこやん。子供はこれくらいでないとな」

 

「鈴々は子供じゃないのだ!」

 

「そう言ってるうちはお子様やで〜♪」

 

「なにお〜!」

 

!? こいつは!

 

暴れようとする鈴々を素早く押さえ無理やり頭を下げさせる。

 

「お前は黙っていろ。人にぶつかって置いてその態度はなんだ」

 

「にゃ〜、だって〜」

 

「ええて別に、ほんと怒ってへんよ。からかって悪かったな」

 

「むぅ〜〜〜」

 

この顔、姿は間違いない

 

「本当に申し訳ない事をした。張遼殿どうかお許しを」

 

「お?うちの事知ってるん?……見たところ旅人さんみたいやけど」

 

「へ!?う、うむ!各地を旅する身なれどその武勇は各地に伝わっていますからな」

 

「あはは、照れるな〜!そんな有名になっとったか」

 

危うく不審がられるところだった

 

正体がばれて要らぬ問題が起こらぬとも言えないからな

 

……いや、相手は薫卓軍の将。民の知らぬ情報が有るかも知れぬ。

 

「迷惑をかけた身で頼むのは心苦しいのですが ひとつ、お尋ね申し上げたい。よろしいか?」

「なんや?いきなり改まって。別にかまへんよ」

「恩に着ます。この周辺で光を受けて輝く、煌びやかな服を纏った青年を見なかったでしょうか?」

「輝くって、そんな服ほんまにあるんかい」

「ぽーりえすてーる……という材質らしいのですが」

「………悪いけど知らんなぁ、そんな服着とったらすぐ噂になるやろ。うちんとこぎょうさん情報入ってくるけど聞いたことないで」

「そう、ですか……。ありがとうございました」

 

洛陽の情報網でも分からんか…嘘の可能性もあるが管絡の予言が広がってない以上匿う理由もなかろう

 

「せっかく頼ってくれたのに役に立てなくて、えらいすまんな」

「こちらこそ、重ね重ねすまなかった。……我々はこれにて。鈴々、朱里行くぞ」

「そんな急がんでもいいやん。……………なぁ 関羽」

「!?」

「いや、思った通りのべっぴんさんでうれしいわ。ん?ばれないと思ってたか?冗談やろ。姿を隠しとっても溢れ出る威厳があるさかいな、ただの旅人ってこたない」

 

威厳?そんなものが出ていたのか?

 

「そこに、その美しい御髪に美貌。そんな人間が槍持っとたら何処の誰かわかるもんやで」

「………私を関雲長と知ってどうする」

「なにもせんよ、敵対する理由がないやん。ただウチの憧れやったから興味があるんや。や〜ほんと嬉しいわ」

 

……………どうやらこちらに危害を加えるつもりはないようだが………。

 

「………」

「え、なにその反応。なんでちょっとずつ離れていくねん」

 

むこうに非は無い。極めて普通?に接してきているのだが……。

 

「………」

「愛紗?」

「愛紗さん?」

 

……この女は私の事を……

 

………

 

…………

 

「うお!」

 

「きゃっ!」

 

微妙な空気が流れ始めたその時、突如軍馬が突っ込んでくる。

 

「張遼殿!!火急の件にて失礼。至急洛陽へご帰還ください!」

「っ!危ないやろ!いったい何事や」

 

鎧から見るにどうやら薫卓軍の伝令のようだ。息を切らしている。

 

「お耳を……………」

「……………!?なんやと!月が!?いったい誰の仕業や」

「分かりません、ですが全将軍に召集令が掛かっています、一刻も早く入城を」

「ちっ、ほんまになにが起きてるんや。関羽。悪いけど急ぎの用や……またどこかで会おうな」

 

ひらりと、随行していた馬に跨り一目散にこの場を後にしていった。

 

「いったいなにが起こったのだ?」

「…どうやら董卓軍で問題が起こったようですね。私達もそろそろ戻らなければ」

「えっ!? お兄ちゃんはどうするの!?このまま帰っても収穫無しなのだ!」

「記憶が正しければ、まもなく袁招が洛陽への進軍を提案する頃だ。その前に軍備を整えねばならん」

「ここで私達が勝って名声を得なければ、他国に飲み込まれてしまいかねませんからね」

「う〜〜、せっかくお兄ちゃんに会えると思ったのに〜〜……。愛紗は本当に納得できるのか?」

「……いまは天運が無いと割り切るしかあるまい、ここで我等が滅んでは元も子もなかろう」

 

あの方が帰ってくるのは確実、ならば機を待とう。

 

「?前なら、『なんて薄情な!お前達の忠義はその程度か!!』とかいいそうなものなのに、今の愛紗はやけにあっさり引くのだ」

「…………あの方への忠義はいつでも変わらん。が、それで私が危険な目に会えばご主人様は悲しまれる…………そんな心配は掛けたくない」

 

ああ、そうさ。

 

そう、きっとあの方は誰よりも、誰よりも私の事を気に掛けている筈だから。

 

「? やっぱり今日の愛紗は変!良く判んないけど、なんかおもしろくないのだ!おかしいのだ!」

「鈴々ちゃん……」

 

いかぶしげな二人をよそに遠くを見つめる愛紗。

 

ここに来る前にもその兆候はあった。

 

どこか達観した瞳と口調、妹分である鈴々は一際大きく不審を感じた。

 

「さあ鈴々、朱里、桃香様の下へ戻るぞ」

 

けれど理由は解からず、しぶしぶ帰路に着く。

 

そこに何者かの意思が加担しているのに気付くわけも無く。  

 

 

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「くそっ!無事でおってくれよ!月、詠……………一刀!!」

 

馬を叩き全速力で洛陽を目指す張遼は知らない、思い出せない。

 

叫んだその中に探し人がいる事に。

 

 

 

 

 

 

「………フム、危ないところでしたね」

 

四人が去った道路の隅で声がする。

 

誰もいなかった物陰にそれはじわじわと染みのように人が形作られていった。

 

「まさかここまで探しに来るとは いやはや大した影響力ですね。北郷一刀という人物は」

 

現われたのは白い装束に眼鏡をかけた女。細い目からは暗い怨念を感じさせる。

 

……流星については管路も含め噂が広がらないよう留意したはずですが。

 

「話を聞くに蜀に関しては、全員記憶が戻っていると考えたほうがいいですね」

 

忌々しいまでの影響力。記憶操作の方は念入りに手を加えたつもりだった。それでも綻びは出るということだろう。

 

「この事に関する計画の変更はまあ、別段気に掛けることはないでしょう 保険がキチンと働いているのを確認できましたからそれで良しとしましょう」

 

北郷一刀に演じさせる物語は悲劇でなくてはならない。でなければあの人は報われない。

 

「報われる………私達がそう考えるのも滑稽ですね」

 

呟きとともに女の姿も消えていく。

 

―さて、私は私の仕事を続けますか―

 

 

説明
第三話をお送りします。

北郷一刀をご主人様と慕う一勢力が、
愛しきその人を求め村々で情報収集をする。

開幕。
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コメント
(´・ω・`)(秋草)
PONさん>真で出てきた子たちはともかく、無印からの子たちの記憶がどちらのものか、はたまた両方所持しているのか……続きをお待ちください! 一刀と出会うために必要なイベントなんですよぅー。(よしお)
この愛紗たちは無印のなのか真のなのか…どちらにせよ月たちに非は一切ないのを知ってて連合に参加するのに躊躇いが一切ないあたり立派な外道になりましたね、と言ってあげたい。(PON)
タケダムさん>うpしました!(よしお)
シンさん>いいところで終わっちゃいましたよね><;(よしお)
今、確認しました。あれ、連載中止になったのか。かなり気になるところで終わってるのに…ショック。(シン)
よーぜふさん>干吉はきっと巨乳だと思うんです。(よしお)
シンさん>プロローグの話での作品紹介に書いてありますよ。(よしお)
ほぉ・・・干吉も女体化してるとは・・・ 蜀勢はがっつり記憶戻ってるようですし、あくまで”蜀”としての記憶なようですが。 続き楽しみにしてます(よーぜふ)
この小説どこかでにたような?ものを見た気がする。もし、自分の予想が正しければ向こうの方も夏休み前から気になっている。(シン)
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