婚活†無双 〜理想の旦那が見つからない〜 その4
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魏国なう。

 

 

「あなたたち、これをどう思うかしら?」

 

 

魏王曹操――華琳が玉座で読んでいた竹簡を目の前にいる三人に渡す。

 

 

その三人とは、魏の街を守る警備隊の三本柱、斎藤、槙原、桑田の三人だ。

 

 

「これは何でしょうか?」

 

 

斎藤――凪が代表で竹簡を受け取る。

 

 

「なんかいろいろ書いてあるのー」

「新しいカラクリの設計図っちゅうわけやなさそうやな」

 

 

槙原――沙和と桑田――真桜もそれを見る。

 

 

「それは呉に放っていた間諜が報告してきたものよ」

 

 

話はそれ読んでから、と言って三人に読むように促す。

 

 

 

 

「こ、これは凄いです」

「事件の数が凄く減ってるのー」

「詰所の数とか増やしとるんやな」

 

 

一刀が考えた警備態勢だった。

 

 

「華琳様、これは一体誰が考え出したのですか?」

 

 

凪は華琳を食い入るように見つめる。

 

 

華琳は悪戯っ子のように笑う。

 

 

「天の御遣い、だそうよ」

『はっ?』

 

 

三人の声が玉座の間に響くのだった。

 

 

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呉国なう。

 

 

「う〜ん。これはどう読むんだろう?」

 

 

自室にてお勉強に勤しむ一刀だが疑問にブチ当たり悩んでいた。

 

 

「悩んでも仕方ないし誰かに聞くとしよう」

 

 

誰か教えてくれそうな人を捜しに一刀は部屋を出た。

 

 

「俺は一刀〜、ガキ大将」

 

 

ジャイアニズムを発揮しながら廊下を歩く一刀。

 

 

不気味である。

 

 

「か、一刀。医者を呼ぶか?」

 

 

そこに偶然通りかかった蓮華が一刀の心配をする。

 

 

「こ、これは天の国の歌なんだ! 誰もが街中で歌うようなとても人気の歌なんだ!」

 

 

とても住み辛い街である。

 

 

「そ、そうなのか? ……だがここではあまり歌わない方が良いぞ? 狂人と思われてしまうからな」

 

 

むしろ現代で歌う方が危うい。

 

 

そんなことはさて置き、一刀の目的である勉強を教えてくれる人がいた。

 

 

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「孫権、今からちょっと時間あるかな?」

「今からか? ……特に予定はないが何かあるのか?」

 

 

キタコレと一刀は蓮華に頼むことにした。

 

 

「ちょっと勉強で分からないところがあるんだけど教えてもらえないかな?」

「勉強? なんの勉強をしているのだ?」

「字の勉強をね。なんかこの世界じゃ喋ることは出来ても読み書きが全然できないんだよね」

「そ、そうだったのか? しかし読み書きなど出来なくとも日常生活に支障をきたすことはないのではないか?」

 

 

確かにこの時代の識字率は決して高くないので字が読めなくてもそこまで困ることはないのである。

 

 

「うん。でもさ、せっかくこうして養ってもらってるんだから少しくらいみんなの役に立ちたくてね。この前の警備体制のことについて献策した時、最初は天の国の言葉で書いたらほとんど読めないって言われてね。その時は口で何とか説明したのを周瑜や陸遜のおかげでなんとかなったけど、これからも気がついたことがあったらみんなに広めていきたいから字が書けた方が便利かなって思ったんだ」

 

 

この世界はそこまでご都合主義ではなかったようだ。

 

 

「……正直私は驚いている。お前がここまで私たちのこと、この国のことを思っていてくれたのだとは知らなかった。初めは天の御遣いなどと言う胡散臭い男だと思っていたのだったが視野狭窄だったようだ。すまない一刀。私はお前のことを見くびっていたようだ」

 

 

ペコリと頭を下げる蓮華に慌てふためく一刀。

 

 

「あ、頭をあげて! 自分で言うのも何だけど俺だって天の御遣いが胡散臭いものだってこと分かってる。むしろ俺が一番そう思ってるし。だから孫権は悪くない。とりあえず頭をあげてくれ!」

 

 

一刀の必死の思いが伝わったのか蓮華は頭をあげる。

 

 

一刀は周りを見渡す。

 

 

「ほっ」

 

 

鈴の女の子がいないことに安心するのだった。

 

 

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「改めて歓迎する。一刀、これからもよろしく頼む」

「うん。出来る範囲だけど頑張るよ」

 

 

がっちりと握手をする二人。

 

 

一刀は本当の意味で蓮華に歓迎されたのだった。

 

 

「よし、それじゃあ勉強をしよう。一刀の部屋に行くぞ」

「うん。孫権って勉強は得意なの?」

「得意かは分からないが幼い頃から王族として躾けられていたから一刀よりは出来るわよ」

 

 

柔らかな笑みを浮かべる蓮華。

 

 

「……あれ? なんか喋り方が?」

 

 

口調が変わったことに気がついた一刀。

 

 

「ゴホンゴホン! 一刀よりは出来るぞ」

 

 

慌てて言い直す蓮華を可愛らしく思った一刀だった。

 

 

「言いなおさなくてもよかったのに」

「何か言ったか?」

「何でもないですよ」

「それなら良いが」

 

 

一刀が抱いていた蓮華のイメージはガラリと変わるのだった。

 

 

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「ではお願いします先生」

「せ、先生などとからかうんじゃない!」

 

 

顔を赤らめる蓮華。

 

 

口調はきついがそこまで怒ってはいないようだった。

 

 

「で、どこが分からないんだ?」

「えっとね、ここなんだけどね」

 

 

さっそく教本を開き勉強を開始する。

 

 

教本は亜莎に借りたものである。

 

 

「これはだな――」

 

 

その時部屋の扉が開いた。

 

 

「蓮華様、雪蓮様がお呼びですので玉座の間へお越しください」

 

 

ドーベルマンの登場だ。

 

 

「し、思春?」

「はい。なるべくお急ぎください」

「姉様の呼び出しとあらば無視するわけにもいくまい。すまない一刀」

「いや、仕事があるなら仕方ないよ。誰か別の人に聞くから」

 

 

残念そうにする一刀。

 

 

それは蓮華も同じようで、心苦しい表情をしていた。

 

 

「それなら思春、これからの予定は?」

「水軍の調練は終わりましたので特にありませんが」

「なら思春、一刀に勉強を教えてあげなさい」

『はい?』

 

 

一刀と思春がシンクロした。

 

 

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「…………」

「…………」

 

 

一刀の心境は気まずいの一言だった。

 

 

思春のことは嫌いではない。

 

 

むしろ仲良くしたいと思っている。

 

 

しかし今この状況は辛いものがあった。

 

 

一瞬とはいえ蓮華と二人きりになった後なのでなんとなく噛みつかれないか怖い。

 

 

「あの」

「なんだ?」

 

 

ギンっと鋭い眼光で打ち抜かれる一刀。

 

 

でも一刀は負けない。

 

 

「ここを教えて欲しいのですが……」

 

 

つい敬語になってしまうのは許して欲しい。

 

 

「ここか、これはだな……」

 

 

意外にも分かりやすく丁寧に教えてくれた思春に驚きを隠せない一刀。

 

 

「……なんだ?」

 

 

一刀の視線に気付いた思春。

 

 

「いや、なんか優しいなーって思って」

「ほう、死にたいのか?」

「なんでそうなるの!?」

 

 

いきなり剣を突きつけられる一刀。

 

 

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「冗談だ」

「あ、あなたの場合冗談ではすまないです!」

 

 

必死に訴えかける一刀だが、思春は涼しい顔で受け流す。

 

 

「いやー、でもてっきり『それぐらい分かれ』とか『私に聞くな』とか言われると思ってたよ」

「貴様が私をどう思っているか良く分かった」

「ご、ごめんなさい!」

「ふん。蓮華様の命令だからな」

 

 

蓮華大好きの思春。

 

 

「それに……」

「それに?」

「貴様に教えることが呉に益をもたらすのならば安いものだ」

「……もしかして、見てました?」

 

 

あれは二人しかいなかったはずでは、と一刀は冷や汗が。

 

 

「貴様が蓮華様に不埒なことをしないか監視していたのだ」

「フヒーヒ、そうなんだ」

 

 

乾いた笑いをこぼす一刀。

 

 

「もちろん蓮華様に頭を下げさせたこともな」

 

 

ギンギラギンに輝く思春の眼。

 

 

「兵法第三十六計『走為上』」

 

 

覚えたての兵法を使い、部屋を飛び出す一刀。

 

 

「キャン!」

「貴様! 逃がさん!」

 

 

追いかけっこが始まった。

 

 

「うぅ〜。いきなり扉が開くなんて聞いてないよ〜。せっかく御遣い様にお茶を淹れたのに……。でも私負けない! 頑張るのよみっちゃん!」

 

 

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「あはははははー」

「討負負負負負ー」

 

 

浜辺で追いかけっこをするカップルのように微笑ましい光景。

 

 

実際には剣を持った思春から必死に逃げる一刀なのだが。

 

 

「ギ、ギブアップ……」

「ふん。貴様ごときが逃げ切れるわけがないだろう」

 

 

 

あっという間に捕まった一刀は中庭で寝ころんでいた。

 

 

思春はその隣に腰を下ろす。

 

 

「まさかこんなに簡単に捕まっちゃうなんて」

「鍛錬が足りんのだ」

「……ごもっともです」

 

 

兵の調練に出ようか考えたが、邪魔になるので断念する一刀。

 

 

「一つ聞かせろ」

「何?」

「貴様が蓮華様に言ったことは嘘偽りはないか?」

「ない。国の為って言われると困るけど、少なくとも甘寧を含めたここにいる人たちに恩返しが出来るなら俺の乏しい知識なんていくらでも提供するさ。まあ、役に立たないことばかりだろうけど」

「そうか……」

 

 

一瞬、思春が笑った気がした一刀。

 

 

「思春だ」

「へっ?」

 

 

つい声が裏返る一刀。

 

 

「二度は言わん」

 

 

そう言って立ち上がり、その場を去っていく思春。

 

 

「ありがとう思春! 俺、頑張るから!」

 

 

その後ろ姿に訴えかける一刀の表情は嬉しさで一杯だった。

 

 

そしてこれからも頑張ろうという気持ちになるのだった。

 

 

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<おまけ>

 

 

「用とはなんですか姉様?」

「あっ、蓮華」

「急用と聞きましたが」

「そうなのよー。ちょっと私街に行かなくちゃいけなくなったからこれよろしく」

「ちょ、姉様!?」

「じゃあね〜♪」

「……行ってしまった」

 

 

仕方なく仕事を始める蓮華。

 

 

「えっと、地方の豪族、権力はそこそこある、資産もそこそこ、性格は女好き……ダメね。姉様には相応しくないわ……ってこれはなにかしら!?」

「雪蓮、相手は決まっ……蓮華様? 雪蓮はどこへ行かれたのですか?」

「急に街に行くと言い出してこれを任されたのだが、なんなのだこれは?」

「はあ。また逃げ出したのかあいつは。……これは雪蓮へ申し込まれた縁談の相手を調べたものです」

「縁談の……。姉様はそれを了承しているの?」

「ええ。王として後継ぎを作らねばならないのでその伴侶となる相手を探しているのですが……。あやつもなかなか頑固なところがありまして……」

「そうか……。私たちもそんな時期なのだな……」

「ええ。この問題は雪蓮だけではないことは確かです」

「結婚か……」

 

 

 

完。

 

説明
気のせいか拠点の連続のような?

「斬る後デレ」
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コメント
みっちゃん。負けるな! きっとうまくいく!(くらの)
ついに思春にまで・・・。(mokiti1976-2010)
みっちゃんには神としての権限により練り製品を一生無料で食べることを許すので頑張ってw(ちくわの神)
みっちゃんがレギュラー化?(鬼間聡)
お〜れ〜はヒトヤ犬〜エ〜ロ大将〜♪フヒーヒW(一刀も今回俺のように笑ったな)(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
みっちゃんガンバ(BX2)
某ガキ大将の歌を歌うとは・・・不覚にもコーヒー吹いた・・・(東方武神)
みっちゃん哀れwww(poyy)
なんだろう。 本来は雪蓮に同情すべきなんでしょうけど、普段もこんな事している気がするので同情できない(w(うたまる)
あ、そろそろ話の始まった本題に入れそうですな(ロンギヌス)
ちがう・・・その3にんちがう・・・w じゃあ対抗してバース、掛布、岡田で・・・ なんやかんやで優しい思春さん・・・みっちゃんふぁいとー!w(よーぜふ)
結婚話か・・・・・各諸侯で混乱が起こりそうだ。理由:御使いがいるから来て来てアピール結果なんか戦争起きそう。(黄昏☆ハリマエ)
「斎藤、槙原、桑田」wwww 地味にワロタwww(みっちー)
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真・恋姫†無双 婚活 蓮華 思春 ヒャッハー 

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