そらのおとしものf 番外編 『煌めきの氷世界(ソウル)』
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ここは空美町。

それは冬のある日のことであった。

桜井家では家族みんなで朝食をとっていた。

家族といっても桜井家の人間は桜井智樹一人しかいない。

他にいるとすれば『エンジェロイド』と呼ばれる少女達が3人いる。

一人はピンク色の髪をした少女、名前はイカロス。

一人は青色の髪をした少し幼なそうな少女、名前はニンフ。

一人は黄緑色にもう少し黄色を入れた髪をした3人の中で一番幼く見える少女、名前はカオス。

このエンジェロイド達三人の少女達はこの桜井智樹の家に一緒に住んでいる。

その家族達の中にもう一人別のエンジェロイドもいる。

そのエンジェロイドもやはり少女であった。

その少女は金髪で胸はイカロスよりも大きい、名前はアストレアであった。

アストレアは一緒に住んでいるわけではないが、大抵桜井家で食事をしている。

その理由は智樹がアストレアに「お腹がすいたら何時でも(家に)来て良い」と言ったからである。

アストレアは家がなく、基本的にサバイバル生活を送っている。

そんな桜井家のにぎやかな朝のあることであった。

たまたまテレビをつけてみるとニュースを見る。

そのニュースキャスターはこんな事を報道していた。

 

「昨日のフィギュアスケートの蛭田リオさんが……」

 

季節は冬。日本ではフィギュアスケートの大会が行われていたのだ。

ニュースはそのフィギュアスケートの大会の事を取り上げていた。

そのニュースを見てニンフはふと思った。

 

(私も……智樹と一緒に滑りたいな……)

 

ニンフは智樹の事が好きなのだ。

それも友達としての好きではない。恋としての好きであった。

余談だが、智樹は学校では『G(ゴキブリ)桜井』と呼ばれ、女子のほとんどから嫌われていて、もてる男ではない。

その理由としては智樹が異常なまでにスケベであるからだ。

事あるごとに女性にセクハラしたり、女子更衣室を覗いたり、銭湯の女湯に侵入したりと嫌われる事ばかりしているからだ。

しかしそんなことばかりしている智樹に良いところはある。

その良いところにニンフは惹かれたのだ。

ニンフは好きであると智樹に思わせる行動を時折していても智樹は気付いてくれない。

そしてそれはニンフだけではない。イカロスも同じであった。

しかしイカロスはニンフと違って感情が乏しいためにニンフ以上に気付きにくい行動ばかりしている。

そんなイカロスもそのニュースを見て、ニンフと同じような事を考えたのだ。

そしてもう一人、同じような事を考えた者がいた。

 

「ねえねえお兄ちゃん」

「うん?」

 

カオスが智樹に声をかけてきた。

 

「私も踊ってみたい」

「踊ってみたいって……あれをか?」

 

智樹がテレビで映っているスケートの映像を指差しながら、カオスに尋ねる。

 

「うん♪」

 

カオスは機嫌よく答えた。

 

「スケートか……」

 

智樹は考える。

 

「…ってもスケート場ってあったっけ?」

 

智樹はプール場は知っているがスケート場が空美町にあるかどうかは知らないのだ。

 

「スケート場ならあるわよ〜〜」

 

するとそこにどこからか声が聞こえてきた。

声の主は居間の向こうにある中にはいた。

その声の主は五月田根美香子であった。

 

「師匠!」

「げっ、会長!」

 

智樹はとても嫌がる顔をして、美香子を見る。

師匠と言ったのはアストレアであった。

その理由は美香子が以前に智樹を殺そうとしたアストレアを新しいおもちゃのように思い、アストレアに智樹をいたぶるための特訓をしたことによるものである。

そのため智樹は美香子に苦手意識があるのだ。もっとも、アストレアが来る前から智樹は美香子のせいでたびたび酷い目にあっている。

そんな美香子の他にも中庭には人がいた。

一人は見月そはら。智樹の隣の家に住んでいる幼馴染の女の子で胸がとても大きい女の子であった。

一人は守形英四郎。新大陸発見部と呼ばれる部の部長で智樹達の1学年上の先輩で美香子の幼馴染の男である。

この守形は家で何かあったのは不明だが、かわらでテントを張ってサバイバル生活を送っている。

そのためか着るものが学校の制服しかないため、こんな冬の休みでも制服である。

そしてもう一人男が居た。その男は白くて長い髪に、長い黒色のズボンに、白シャツと長袖の黒い上着を着ていた。

その男の名は秋山総司郎。秋山はこの世界の人間ではなく異世界から来た人間である。

秋山は異世界に存在する「邪悪なる闇の魂」と呼ばれる闇の力を手に入れ、異世界放浪をしているとのことだった。

最初は智樹達もそのことを信じられないでいたが、秋山の異常なまでの力と能力を見て、認めざるを得なかった。

ちなみに秋山は初めて智樹達と会った時は髪は短髪の黒であったが、ニンフを助ける戦いの際に現在の白くて長い髪になったのだ。

秋山曰く、現在の姿は『真モード』と呼ばれる形態とのこと。他にも強いモードがあるらしいが特定の条件でないと発動しないとのこと。

 

「美香子、スケート場があるって本当?」

 

ニンフが美香子に尋ねた。

 

「本当よ〜。秋山さんに頼んで作ってもらったのよ〜」

 

皆が秋山の方を見る。

秋山ならスケート場の一つや二つ、簡単に作れるからだ。

 

「氷は俺が作ったけど、スケート場そのものはお前が作ったんだろ」

 

秋山が美香子の方を見て答え、皆も美香子の方を見る。

美香子ならスケート場を作るのは簡単であろうっと思ったからだ。

 

「そんじゃ、行くとするか!」

 

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スケートリンクをすべる智樹。

智樹の上の天井が崩れ、崩れた天井からやって来るカオス。

落ちてきた天井の瓦礫に潰される智樹。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                               『煌めきの氷世界(ソウル)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトルが書かれた看板がさらに智樹の上に落ちてくる。

つぶれている智樹を叩くカオス。

右横から飛んでくるイカロス。

左から滑ってくるニンフ。

右から滑って転んでくるアストレア。

氷の下から氷を突き破って顔を出す秋山。

 

 

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五月田根スケート場

そう書かれている看板のスケート場に智樹達はやって来た。

そのスケート場は出来て間もないと言うのに智樹達以外にもかなりの客が訪れていた。

 

「すごい人ですね〜」

「大々的に宣伝はしてないんだけどね〜」

 

美香子もこの客の多さには少しばかり驚かされていた。

 

「スケートしたい奴が多いだけだろ」

 

秋山が冷静に答える。

 

「まあとにかく滑ろうぜ」

 

珍しく智樹が率先して、皆に滑ろうと言う。

それから皆、スケート靴をはいてスケートリンクに立とうとすると……。

 

「きゃっ!」

「はうっ!」

「へぶっ!」

「!」

 

そはら、ニンフ、アストレア、そしてイカロスが派手に転んだ。

 

「いたたた……」

「もう全然滑れないじゃない……」

「はぅ〜」

 

そはらとニンフは尻を押さえ、アストレアは顔面から転んだために鼻から血(?)が出ていて、鼻を押さえている。

 

「そりゃあ、簡単に滑れるもんじゃないだろ」

 

何故かスケート靴を履いておらずいつも履いているスリッパ(サンダル)でスケートリンクを滑る秋山。

 

「俺だって、闇の魂を手に入れる以前の時はさ、最初っから滑れたわけじゃないぜ」

 

そう言いながら秋山は思いだすように顔を上に向けて思い出していく。

 

「でも、そんな派手に転んだことはないな」

 

秋山は笑いながら言った。

そんなそはらとニンフの尻を見る男がいた。

G桜井こと智樹であった。

 

「今日は白色ですか〜」

「「智ちゃん(トモキ)!!」

「うひょひょ〜〜〜〜」

 

智樹は急いで滑りながら逃げる。

そはらとニンフは立ち上がろうとするが、また転んでしまう。

 

「あいつ、初めてじゃないのにうまいな……」

「あはは〜〜〜」

 

そんな智樹の後を追うようにスケート靴で滑るカオス。

 

「何であいつも簡単に滑れるのよ〜?」

「これが第2世代と第1世代の性能の差という奴か」

「それは違うと思うぞ」

 

秋山のボケに守形がツッコミを入れる。

 

「まあ出来る出来ないかは得意不得意みたいなもんか」

「こうなったら……」

 

そはらとニンフはスケート靴を脱ぎだそうとする。

 

「おいおいやめておいたほうが良いぞ」

「止めないで下さい、秋山さん!」

 

そはらとニンフ、ついでにアストレアもスケート靴を脱いで氷の上に立とうとすると……。

 

「「「きゃっ!!!」」」

 

三人は再び派手に転んだ。

 

「だから止めておけと言ったんだ。俺の作った氷だぞ。滑りやすさはそんじょそこらのものとは比べ物にならないぞ。

スケート靴なしじゃすぐに転んじまうぞ」

「じゃあ何であんたは大丈夫なのよ!?」

「邪悪なる闇の魂は基本的に不可能はない。裸足でも簡単に滑れるぞ」

「ニンフお姉様、アストレアお姉様」

 

そこにカオスがやって来る。

 

「滑れないの?」

 

最初にニンフ達が会った時のカオスならばとても悪意があって言っているだろうが、今のカオスに悪意はない。

しかし悪意はなくても傷つく言葉ではあった。

 

「私が教えてあげようか?」

 

カオスが滑り方を教えようとするが……。

 

「いいわよ、あんたの力は借りないわ」

「私もです、ニンフ先輩」

 

ニンフとアストレアがスケート靴を履きなおす。

 

「やるわよ、デルタ!」

「はい!」

 

ニンフとアストレアそしてそはらを交えて、三人は特訓する。

三人は転び続けるもそのたびに立ち上がる。

 

「大丈夫か? あいつら……」

 

遠くでその様子を見る智樹。

 

「ま、いっか」

 

そんな三人を無視するかのように、智樹は他の女性客に対してセクハラをしていた。

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その智樹のセクハラの様子を見たそはらとニンフはとうとう我慢の限界に達する。

 

「智ちゃん……ニンフさん!」

「分かったわ!」

 

そはらが皆まで言わずともニンフはそれを察したかのようにニンフは手を広げて氷の上に乗せる。

ニンフが行おうとした事は、智樹の脳にハッキングして滑れないようにしようというものだ。

しかし……。

 

「あ、言い忘れてた」

 

秋山が何かを言い忘れていた。

ニンフ達が智樹の方を見るが、智樹は依然として滑っていた。

 

「な、なんでよ……なんでよ! 羽も生えてるのに!」

「いや、別にお前の性能が落ちたとかじゃなくてこの氷に問題があるだけだ」

 

ニンフをフォローするように秋山が説明する。

 

「そういうハッキングとか、あんまり面白くないと思ってな。ハッキングが伝わらないように細工してある。

だからハッキングしても意味ないぞ。後、これを融かそうと思っても無理だぞ。

この氷は俺が融かそうと思わないと融けないようにしてあるからな」

「そんな〜」

 

そはらががっかりする。

 

「大丈夫よ〜」

 

そんな時、美香子がどこから出したのかマシンガンを持っていた。

 

「会長が桜井君におしおきをしてあげるから〜」

「よせ、他の客に迷惑だ」

 

美香子の暴走を守形が止める。

 

「そうだな。ここでそんなもん撃ったら確実に他の客が死ぬな。

まあ、そんなに落ち込むな。ちょっとしたお詫びをしてやるよ」

 

秋山がそう言って、そはら達のスケート靴を触る。

 

「これですいすい滑れるぞ」

「ありがとうございます!」

 

三人はようやくまともに立ち上がれるようになった。

 

「さてと、行くわよ!」

 

そはらがすいすい滑れるようになったスケート靴で智樹を追いかける。

 

「げっ! なんで!」

「智ちゃーーーーーん!!」

 

そはらが殺人チョップで智樹に迫る。

智樹は懸命に逃げるが、秋山によって滑れるそはらのスピードには敵わない。

数分後……。

 

「うう……」

 

智樹はボロ雑巾のような状態で氷の上に倒れていた。

 

「自業自得だな」

 

そこに秋山がやって来る。

 

「まあ、そんなことより一緒に滑ってやりな」

 

智樹が立ち上がり、秋山が向くほうを見る。

そこにはそはらやニンフにカオス、それにイカロスなどが立っていた。

 

「あいつら……」

「お前と滑りたいんだよ。それくらい察してやりな」

「ってもよ、俺あいつらに合わせては滑れねえぞ」

「安心しろ」

 

秋山が指を鳴らすと会場からロック系のような音楽が流れてくる。

 

「な、なんだ? 体が勝手に……」

 

智樹の体が突然踊りを始める。

その反応は智樹だけでなかった。

智樹の向かいにいたそはらやイカロス達も踊り始めていたのだ。

 

「この音楽は俺以外は皆踊っちまうようにしてある」

「お前は踊る気ないのか!」

「いや、踊るさ。まあ俺も踊りをしてやるさ。それじゃあ行こうか!」

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智樹は踊りながらそはら達に近づく。

 

秋山も踊り始める。

 

智樹はまずはそはらと手を繋ぐ。

二人はその場で回り始める。

 

秋山はバック宙返りをし、何度も宙を回ったら、地面に片手を着く。

 

そはらが離れ、次にアストレアが智樹に近づく。

 

秋山は右手をあごにあて、左手は右ひじを支えるかのように添える。

そして秋山は右手を伸ばすと同時に人差し指と中指を微妙に伸ばす。

 

智樹とアストレアは背中合わせになって、その場を一回転する。

一回転をしながら二人は両手を広げる。

そして一回転を終えると二人は手を合わせるかのように掌をあて、アストレアは離れる。

 

秋山が伸ばした右手をそのまま自分の頭の上へとゆっくり伸ばす。

 

智樹はアストレアと離れると同時に再びその場を回転する。

そして回転し終え、目の前にはニンフが恥かしがるように立っていた。

 

秋山は伸ばした手をゆっくりと下へとやる。

 

智樹とニンフが手を繋ぐ。

ニンフの顔が赤くなる。

二人は繋がったまま腕を大きく広げて、背中合わせになる。

二人は繋いでいた手を放し、それぞれの右手をゆっくりと自分の胸の前に上げる。

右手を前にしてしばらくした後、二人は回転しながら離れる。

 

秋山は下ろした手を腰辺りにまでやるとゆっくり下ろした手を一気に横に広げる。

横に広げたと同時に秋山の黒い上着が黒いマントへと変わる。

黒いマントに変わると同時に秋山の下にある氷が少しばかり割れ、小さい氷のかけらは全員の頭上に舞う。

 

智樹に歩きながら近づくカオス。

カオスは手を伸ばして氷のかけらを手に取ろうとするが、氷のかけらは簡単に融けてしまう。

カオスは寂しそうな顔をするが、そこに智樹がやってきてカオスの頭を優しくなでる。

カオスは笑顔を向ける。

 

秋山は左腕を上げながら、歌うようなアクションをとる。

左腕を下げると同時に右腕を上げ、上げた直後に右腕を横に大きく広げる。

秋山が智樹達の方を向き、右手を広げる。

 

カオスが離れて、智樹は一人になる。

智樹は顔を下に向ける。

そこにイカロスがやって来て、智樹の肩に手を乗せる。

智樹がイカロスの手を取り、イカロスの方を振り向くとそこにはいつも自分と一緒にいてくれた皆が立っていた。

 

秋山が思いっきり右腕を上げると、どこからか蒼い大剣のような物が飛んでくる。

秋山は大剣の柄を掴むとその場で剣舞を行う。

 

まだ降っている氷のかけらがイカロスの目元につき、それはイカロスの涙のように見える。

智樹はその涙のような露をぬぐって上げる。

イカロスは本物の涙を流し、皆がイカロスを囲む。

皆が笑顔になり、全員が秋山の方を見る。

 

秋山はちょうど剣舞を終え、大剣を振り下ろしたところであった。

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スケート場からの帰り道

 

「どうだった?」

「どうだったって……」

「何であんな風に躍らせたんだよ!」

「何となくだ」

 

秋山はそう言いながら空を見る。

 

「とりあえず……いい天気だな」

 

秋山はそう言いながら歩く。

 

「ってごまかすなーーーーーーー!」

 

智樹は怒りながら、秋山を追おうとする。

 

「待ってよトモキ!」

「お兄ちゃん!」

「智ちゃん!」

「マスター」

 

そんな智樹を追う女の子達。

 

(やれやれあいつも罪作りな男だな)

 

秋山はそんな様子を見ながら、笑顔で逃げ去るのであった。

説明
この作品はアニメ「そらのおとしものf」の最終回後を二次創作で考えたものです。
そのため映画に出てくるであろう要素は一切入りません。
原作キャラクターの性格や口調が一部変わっていたりするかもしれませんが、その事はご了承下さい。
またこの小説には作者の分身とも言えるオリジナルキャラクター(秋山総司郎)も出てきます。
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2157 2003 5
コメント
綺麗なイメージを連想させる作品かと思います(枡久野恭(ますくのきょー))
タグ
そらのおとしものf 桜井智樹 イカロス そらのおとしもの 秋山総司郎 

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