そらのおとしものf 番外編 『はちゃめちゃな正月(としはじめ)』
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今日は新年の初め。

 

「新年明けましておめでとうございます!」

 

智樹が珍しくイカロス達に朝の挨拶をするが、突然の挨拶に若干戸惑いを見せる。

 

「な、何よトモキ、そんなに改まって……」

「まあ今日は新しい年の初めだからな、これくらいは言わないとな」

「ふ〜ん」

 

ニンフはあまり関心がなかった。

 

「さてとお前達にお年玉をやりたいのだが……」

「「お年玉?」」

 

ニンフとカオスがお年玉のことを尋ねる。

エンジェロイド達にはそんな風習がなかったためにお年玉と言われてもなんなのか分からない。

カオスなんか生まれてまだそんなに経ってないのだから知らなくても無理はない。

 

「簡単に言うと新年で子供にお金をあげるもんだ」

「お小遣いですか?」

 

イカロスが言った。

 

「違う! お年玉! お年玉はいつもあげるお小遣いよりも奮発してお金が入ってるんだぜ」

「そうなの♪ それじゃあ、お年玉頂戴♪」

 

ニンフは少々現金であった。

 

「それがな……今家にはお金がほとんどありません!」

「ええええええ!?」

 

ニンフが一番驚いた。イカロスとカオスはあまり関心がなかった。

 

「な、何でよ!?」

「それはな……カオスが居候して食費は増えるは、そはらやアストレアはちょくちょく食いに来るは、先輩や会長や秋山もたまに食いに来るはで食費がかさばったんだ!」

「ご、ごめんなさい……」

 

ニンフは智樹の迫力に思わず謝った。

 

「そんなわけで俺からお年玉は上げれません!」

「そんな……」

 

ニンフはがっかりする。

そんな時であった。

 

「智ちゃーん」

 

隣の家に住む幼馴染のそはらが声をかけてきた。

 

「そはらさん達です」

「ああ……」

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鏡餅の陰から出てくる美香子、アストレア、ニンフ、守形、そはら。

鏡餅の上に乗っているみかんの中から出てくるカオス。

突如と鏡餅が真ん中から割れ、そこから智樹とタイトルが出てくる。

 

 

 

『はちゃめちゃな正月(としはじめ)』

 

 

鯛を持ちながら降りてくるイカロス。

船に乗りながら姿を現す秋山。

 

 

 

 

 

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智樹達が玄関に出て行く。そこには着物姿のそはらと美香子。

いつもの制服姿の守形といつもの格好のアストレアといつもの黒上着と白シャツと黒長ズボンの秋山がいた。

秋山曰く、替えの服はないわけではないが、いつものこの格好が好きだからと言う事で格好を変えていない。

替えるとしたら上着をマントに替えるくらいであった。

秋山はこの世界以外では比較的マントが多いが、この世界では上着の時の方が多いのだ。

 

「よ」

「皆、どうしたんすか?」

「俺からちょっとしたプレゼントをやろうと思ってな。皆、外に出てくれ」

 

秋山がそう言って、皆を外に出す。

 

「外に出たけどどうしたんだ?」

「お前達にお年玉をやろう」

 

そう言って秋山はお年玉袋を召還する。

そのお年玉袋はどちらかと言うとクリスマスプレゼントが入ってるような大きさであった。

 

「「「うわ〜い♪」」」

 

智樹、ニンフ、アストレアがお年玉袋に飛びつこうとするが……。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

秋山はなんと3人に奪われる前にお年玉袋を思いっきり太陽の方向に投げたのだ!

 

『ええええええええええ!?』

 

流石のことなので皆が驚いた。

 

「この俺が変態どもにプレゼントをやると思ってるのか? ふ、はははははははは!!」

 

どこかの伝説の超サイ○人みたいな台詞と笑い方をする秋山。

 

「待ってーーーーーー!!」

 

アストレアが急いで投げ飛ばされたお年玉の後を追った。

 

「いくらあいつでも追いつないだろ」

「そうだな」

 

秋山はそう言いながら手を後ろに回す。

そして再び手を前にすると先ほど投げたはずのお年玉袋があった。

 

「え? 秋山さんそれって……」

「それじゃあさっき投げたのは偽物かしら〜?」

「いや、これはさっき投げたものだ」

「じゃあ何でここにあるんだ?」

「俺の力を持ってすれば大気圏突破前にこれを回収するなど、造作もないぞ」

「すげ……」

 

秋山の力にはたびたび脅かされる面々であった。

 

「じゃあアストレアお姉様は?」

 

カオスがお年玉袋を追って飛んでいったアストレアのことを言い出す。

 

「安心しろ」

 

秋山が指を鳴らすと、智樹の前に突然アストレアが現れ、智樹と正面衝突した。

 

「きゃっ!」

「むぎぅ!」

 

智樹はアストレアの巨大な胸に押しつぶされる。

 

「いたたた……」

「ぐへぐへへへへ」

 

智樹がアストレアの胸を触りまくる。

 

「いゃっ!」

「智ちゃん!」

 

そはらが智樹にいつもの如くチョップを食らわせた。

 

「しかしどうやってアストレアを回収したんだ?」

「そうね。自分で投げたものの回収はともかくそれを追ってたデルタも簡単に回収するなんて…」

「簡単さ。俺は常に魂とかを感じてるんだ。魂てのは生き物だけじゃない。

お前達エンジェロイドだけでもない。テレビや電柱とかにも、とにかく全てに宿るものだ」

「ふぅ〜ん」

「だから俺は目が見えなくてもどこに何があるのか分かるんだよ。

基本的に俺は目で認識してるけどな。まあ戦闘中は目だけじゃなくてそっちの方もメインで敵とか探査してる。

っても俺は基本はその力を抑えるためにこの力は空美町周辺までしか分からない」

「色々大変ね」

 

秋山はそう言いながらお年玉袋からさらにお年玉袋を出す。

 

「ほれ」

 

秋山は全員にお年玉を上げる。

 

「一体どれくらい、入ってるんだろう?」

 

そはらはワクワクしながらお年玉袋の中を開ける。

すると中から1万円札が10枚出てきた。

 

「10万円!?」

「ちょっとした奮発だ」

「「うわ〜い」」

 

ニンフ、アストレアは喜ぶ。

 

「それとな、もう一つおまけのお年玉がある」

「本当?」

「ああ。しかしだ、ただでは渡せんぞ」

「な、何か嫌な予感が……」

 

智樹が嫌な予感がする。

 

「今年初めてのイベントだ。言っておくがこれは俺主催だ。そいつは関わってないぞ」

 

秋山が美香子を指す。

 

「ほ、本当か?」

「ええ、会長も知らないわよ」

「そしてこれがその概要だ」

 

秋山は紙を取り出し、それを全員に手渡した。

 

「ええ〜と、この家をスタート地点にして、畑を通って、商店街に行って神社のお賽銭のあるところがゴールっと……。

それで優勝資金は……1億!?」

「そういうことだ。そしてルールもある。競争相手同士による妨害はなしだ。やった時点で失格だ。

ただし俺側から妨害するものはあるけどな」

「あるんかよ!」

「まあ最後まで聞け。これはあくまで例えだ。例えば全員が走っている目の前で巨大な鉄球が転がってくるとする。

それをイカロスがArtemisなりなんなりと破壊する。それによって壊れた鉄球の破片が他の競争者に当たったりしてもそれは失格にならない。

しかし、どこを狙えば相手に当たるのかという意図的にやったり、悪意があって障害物を破壊したりして競争相手を妨害したらそいつは失格だ。

後、エンジェロイド達は羽で空を飛ぶのは禁止な。羽で障害物を防いだり、その力で横に避けたりするのはありだが、上に飛ぶのは無しだ。やった時点で失格だ。

ちなみに失格者は失格檻に入れるからな。それじゃあ俺は先にゴールに行ってるぜ。言っておくが俺はお前達の動向を見てるからな。

後、いつもはしないが相手の思考と心理読みもする。あくまで不正がないようにするためだ」

 

そう言って秋山はスタートラインを引く。

そして皆がスタートラインにつく。

 

「それじゃあ、全員いちについて……よーい………ドン!」

 

秋山が言うと、全員が一斉に走り出した。秋山はそれと同時に瞬間移動でゴール地点まで行った。

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全員が走り出しているが、その中でもトップを走るのが守形と美香子であった。

その次はイカロスとアストレアが並び、その次が最後尾になりニンフ、カオス、そはら、智樹であった。

 

「思ったより早いな」

 

秋山がその様子を見ていた。秋山はモニターで見ているのではなくゴール地点から直接視認しているのだ。

 

「まあ最初の所はなんにもないが、そろそろ障害物に入るな」

 

トップが守形達からアストレアに代わる。

 

「よっし! このまま!」

 

アストレアはこのままトップを維持しようと思ったが、突如と足が動かなくなる。

 

「な、なによ! これ!?」

 

アストレアの足には何かがねっとりとくっつき動けずにいた。

 

「これぞ、もちもち道」

 

秋山が一人でそうつぶやいた。

ようするに道だと思われていたところは実はねっとりした餅になっており、そこに足を入れるともちもちとした餅に動きを止められるというものであった。

アストレアは羽を使おうとするが、ふと秋山の言ったことを思い出す。

 

「うう……どうすれば……」

「言っておくが人間でも自力で脱出できるようにはしてある。頑張れ」

 

秋山の声が当たりに響く。

 

「ぐぬぬぬぬ!!」

 

アストレアは頑張ってそこを通ろうとする。

そこにようやく後続の面々がやって来る。

 

「餅でもちもちしてるわね」

 

皆が少し考えた末、全員が上着や着物の一部を脱ぐ。

 

「え?」

 

そしてそれを足場にしてもちもち道を通り過ぎていった。

 

「そんなのあり〜〜〜〜〜?」

「ありだ」

 

アストレアの言葉に秋山が答えた。

 

「負けてなるもんかーーーーー!」

 

アストレアは全員に抜かれてしばらくして何とかもちもち道から脱出した。

先頭はいつのまにか智樹になっていた。

 

「よし、このまま俺が!!!」

 

智樹を先頭にアストレア以外の面々が商店街に入る。

すると前方から何かが滑ってくる。

 

「あ、あれは!?」

 

なんと前方から滑ってきたのは巨大な鯛であった。

しかも1匹や2匹ではない。一度に10匹ほど滑っており、商店街の道を塞ぐようにしていた。

 

「マグロライダーならぬ鯛ライダーだ」

「ぐえっ!」

「きゃっ!」

 

智樹やそはらが滑ってくる鯛に当たり、吹き飛ばされる。

守形や美香子は滑ってくる鯛をジャンプして避けるが、秋山は間髪入れずに鯛を滑らせているため二人は新しく滑っている鯛の上に乗ってしまい、そのまま滑らされた。

 

「Artemis」

「えい」

 

イカロスがArtemis、カオスが羽を鋭くし、鯛を粉砕していく。

そして先頭はイカロスとカオス、その二人の後ろに隠れながら付いていく形でニンフがいた。

イカロス達は神社の前の階段にやって来る。

 

「あれ?」

 

神社の階段に何かが敷かれていた。そしてその目の前には小さい船がいくつもあった。

 

「漕ぐのです」

 

そう書かれた看板があった。

とりあえずイカロスとカオスはそれぞれ別の船に乗り込んだ。

そして漕ぐものを探すが、見当たらない。

 

「手で漕ぐのかな?」

 

カオスが手を水に入れて漕ごうとするが、なかなか進まない。と言うより進んでない。

イカロスも同じような状況であった。

 

「妨害しなきゃいいのよね」

 

ニンフがボートに自動で漕ぐように命令する。

しかしボートは全然動かない。

 

「動かないわね…やっぱり自分でやらなきゃダメなの? でもアルファー達を見ててもちっとも進まないわ」

 

ニンフは困り果ててしまう。

そこに後続で智樹達がやって来る。

皆がそれぞれ船に乗り込むが、全員同じようなものであった。

 

「どうすれば……どうすれば……」

 

智樹はかなり焦っていた。しかしそれは全員同じであった。

 

「くそーーーー! オールさえあれば!」

 

智樹が思わずオールを漕ぐ真似をする。すると船が前へと動き出した。

 

「あれ?」

 

智樹は動いたことに気付き少し戸惑う。

 

「まさか……」

 

智樹が再び漕ぐ真似をするとまた船が動いた。

 

「ひょっとして!」

 

そう。この船は漕ぐ真似をして初めて進むように秋山が仕込んだ船であった。

 

「よっしゃ! お先に!」

 

智樹は急いで漕ぐ真似をして、船を動かす。

 

「あ、智ちゃん!」

「待ちなさいトモキ!」

 

全員が智樹の真似をして智樹の後を追った。

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智樹が最初に神社の境内付近までやってきた。

 

「よし、このまま……」

 

智樹が後ろを振り向いてみるとなんと全員がほぼ同時にたどり着いていた。

 

「クソ! このまま逃げ切ってやる〜!」

 

智樹が全速力で走る。

 

「逃がさないわよ〜」

 

美香子を筆頭に全員が思いっきり走り出す。

そして秋山の待つ神社のお賽銭箱まで来た。

 

「よう」

「俺が……一番だ……」

 

ギリギリ智樹は逃げ切り一番になった。

 

「しょ、賞金を……」

「悪いが賞金は出せん」

「な、……なんで?」

「よく見ろぉ」

 

秋山は競争を始める前に皆に渡した紙を出す。

秋山はそしてその紙の一部分を指す。

 

「?」

「ここだ」

 

全員がよく見てる。

するとものすごく小さい文字でこう書かれていた。

 

「ただし、2時間でたどり着いた人限定」

『えええええええ!?』

「破ったのは俺ではない。貴様が破ったのだ!」

 

どこかのネタでありそうな台詞を言う秋山。

 

『ふざけるなーーーーー!!』

 

当たり前だが全員がとても怒った。

しかし秋山は上手く受け流した。

そして皆でお賽銭にお金を入れて願う。

それから皆でおみくじを引くが秋山特製のものであった。

秋山以外が引くととんでもないものがかなり多かった。

 

「俺は、小吉か」

 

守形は普通に小吉であった。

 

「会長は……駄凶?」

 

美香子はよく分からないものを引いた。

 

「私は……サブ吉?」

 

そはらはサブ吉と人の名前みたいなものを引いた。

 

「俺は……なんじゃこりゃーーーーー!?」

 

智樹はあまりのものに驚いた。

 

「どうしたの智ちゃん?」

「これは……」

「あらあら」

「マスター……」

 

皆が智樹の引いたおみくじを見る。そこには「最凶」と書かれていた。

 

「あ、俺が見たことある漫画であった一番最悪の奴だ」

「そ、そんなーーーーーー!!」

「お前の平和は来そうにないな……」

 

秋山は少し同情した。

ちなみにイカロスは「スイ吉」、ニンフは「貧吉」、アストレアは「むせる」、カオスは「大吉」とカオス以外はわけの分からないものであった。

説明
この作品はアニメ「そらのおとしものf」の最終回後を二次創作で考えたものです。
そのため映画に出てくるであろう要素は一切入りません。
原作キャラクターの性格や口調が一部変わっていたりするかもしれませんが、その事はご了承下さい。
またこの小説には作者の分身とも言えるオリジナルキャラクター(秋山総司郎)も出てきます。
今回は原作でもありそうなネタです。
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コメント
面白い正月行事だね。最凶と駄凶・・・二人にピッタシかもね。もしニンフがおみくじの貧吉の意味を知ったら阿修羅をも凌駕する怒りを出すだろうね。(黒鍵)
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そらのおとしものf 桜井智樹 イカロス そらのおとしもの 

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