真・恋姫無双〜妄想してみた・改〜第十五話 |
「 真 ・ 華 蝶 仮 面 ! 参 上 !!」
輝く太陽の光を背に受け、悠然とポーズを決める一人の男。
狭い路地の屋根の上、逆光のなかでも蝶をあしらったであろう奇怪な仮面がよく目立ち、存在感を引き立てている。
この場にいる全員の注目を浴びる中、男は不適に笑い、突如、あろう事か屋根から飛び降りた。
高さはそれほどでもなかったが、怪我を負うには充分な高度がある。
しかしそんな心配を感じさせないほど優雅に、まるで舞う蝶のように華麗な姿で降下していく。
純白のマントがふわりと揺れ、ちょうど華雄と呂蒙の間に向かって、軽やかに着地―
―グキッ
「……」
「「……」」
「「「……」」」
「くっ、さすがは張勲……!罠を張っていたとはな」
「よりにもよって私のせいですか!?」
なんて卑劣な奴だろう。ここはお約束で危害を加える場面ではないだろうに。
「……ええい。怪しい奴め!!たたっ斬ってくれるわ!!」
戸惑いながらも斧を振りかざす華雄。
だが仮面の男は、迫り来る恐怖に動した様子もなく、笑みを浮かべている。
「ふっ、そう焦るな。君は今なにが起こっているのか気が付いていない」
「なに?どういう事だ?」
「ふっ……」
「?」
「まだ脚が痛い。少し待ってくれ」
「情けないな!?貴様!?」
挫いた左足から上がってくる鈍痛に耐えながら静止をかける。
この状態で攻められたら間違いなく死ねるだろう。
いまだ、突然の闖入者に呆気をとられているのか、素直に待ってくれる面々に感謝しながら、痛みが引くのを持つ。
数分の後、いくらかマシになった左足の無事を確認して、目の前の相手に向き合う。
意を汲み取ったのか、再び武器を構えなおす華雄に対し俺は、
「天が知る―」
「何事も無かったように仕切り直すな!!」
登場の口上を阻止された。
むぅ。やはりこの時代にはヒーローものの良さは伝わらないのだろうか……。
「さっきから貴様を見ていれば……。いったい何の為に出てきたのだ!!」
ペースを乱され、怒り心頭の華雄が忌々しげにこちらを睨む。
どうやら正体はばれてないようだ。
向けられる視線には、苛立ちが色濃く写り、思惑通り(?)俺の正体に気付いた様子はない。
背を向ける形になった呂蒙達の反応は確認できないが、せめて事を成すまでは騒がずにいてほしい。
今重要なのは華雄をどう対処するかだ。
もっとも、謎の高揚感による自分のキャラ崩壊に、一抹の不安を覚えずにはいられないが、まだカケラ程の正気が残っている。頑張れ俺。
この場の羞恥心など、もう掻き捨ててしまえばいいさ!
とにかく、武で勝る華雄に真っ向勝負で勝つのは難しい。ここは争わず、説得で解決するのが最善。
洛陽では十分な活躍は出来なかったが、元武官である呂蒙を加えた三人相手をものともしない、まさに猛将と名乗るに相応しい実力を備えている。
たとえ俺一人が加わったところで勝敗は変わらないのは、火を見るより明らかだ。
だけど、女の子が目の前で傷付け合うこの状況で、手を出さずに静観するなんて選択肢は持ち合わせていない。
一つ対応を誤れば、死ぬかもしれないこの状況で恐怖に負けないよう、あえてわざとらしいほど、演技っぽく振舞う。
「冗談は置いておくとして……華雄。お前ほどの強者が、
実力で劣る相手をいたぶるなんて下賤な行為をこれ以上続ける気か?」
ビシリと片腕を突き出して質問する。
「……これは戦いでは無い。ただの狩りだ。言いがかりはやめて貰おう」
華雄はしぶしぶと答える。やはりこの戦いは彼女の本意では無かったのだろう。言葉の歯切れが悪い。
「言いがかり?……ふっ。たとえ狩りであっても、誇り高き華雄将軍は弱いものいじめなどしないと思っていたのだがな。
小物相手に高笑いしながら優越感に浸るようでは、せっかくの力が泣いていると忠告しているまでよ」
「ぐっ……!ワタシの武が相手を選ばぬ、低俗とでもいいたいのか!!」
「そこまでは言っていないさ。だが、はたから見ればそう感じざるを得ないという客観的な感想だよ」
「他人の評価など知ったことか!いきなり出てきての罵詈雑言の数々……もう辛抱ならん!そこに直れ!」
「!? ほん……。華蝶仮面さん!危ないです!」
迫る気配に気付いた呂蒙の警告が背中から飛んでくる。
前半二文字はまるで聞こえなかったが、片手を後ろに伸ばし、ジェスチャーで心配無用を伝える。
その間に心外だとばかりに息を荒げ、構えた戦斧を引き絞り始めた彼女を前に、冷静に問いを重ね始める。
「……つまり俺が言いたいのは、この状況を見て北郷一刀がどう思うか、ということだ」
「……なん……だと」
華雄の動きがピタリと止まった。
明らかに沸点に達したはずの怒りが、突然冷水をかけられたような驚きの表情に変わる。
「思い当たる節があるだろう?彼は無駄な戦いを好む人間だったか?今の君を見て、失望しないと言い切れるか?」
「そ、それは……」
「約束したのではないか?無闇やたらに力を振り回さないと。たとえ本心からの行動でないとしても、どんな反応をされるかぐらい容易く想像できるだろう?」
思い当たるふしがあるのか。見て分かるほど動揺が走り、さっきまでの荒れ狂う闘気はもはや見る影も無い。
力に酔って暴走しない。
この約束は泗水関で華雄の足止めの為に閨を共にした時交わした言葉だ。
実際には行為ばかりが先行し、戦場では守って貰えなかったが、彼女の中ではまだ楔のように残っているのかもしれない。
もしそうなら、華雄を思い留まらせるには丁度良い口実になるんじゃないか?
「わ、私は……」
「今からでも遅くない。武器を下ろして話し合おうじゃないか」
優しく諭すように語りかける。単純で自意識過剰な面が目立つが、心の根っこの部分は素直な女性だ。
このまま説得を続ければうまくいくかもしれない。
追い打ちをかけるべく口を開こうとした瞬間、今度は華雄の後ろから叱責の声が上がる。
「惑わされては駄目です!その男の言っている事が真実とは限りませんよ!」
声の主は張勲。戦斧の暴風に晒されたせいだろう、服のところどころが切り裂かれ、なかなかセクシーな格好にアレンジされている。
胸元を押さえながら、こちらを睨む。
「こんな怪しい輩の言葉を信じてはいけませんよ。あなたの思い人にはカケラも興味ありませんが、魅力的な男性なのでしょう?きっと単純バカな貴女でも許容してくれるのではありませんか?」
ぐっ、余計な事を……!
「第一、大陸に名を馳せる華雄将軍ともあろう御方が、男一人に現をぬかしてご自身の武の崇高さを貶めるおつもりですか」
「なんだと……私の愛が武に影響しているとでもいうのか」
「そうです。単純バカで武器を振るうしか能が無い貴方は深く考えず、斧を振り回していればいいんです。ヘタに知恵をつけられて寝返られても困りますし……もし、愛なんて妄言に騙されず、純粋に関羽と戦っていたら泗水関では勝てたかもしれなかったでしょう?」
「むぅ……確かに。ワタシが負ける筈はなかったからな……だとすると北郷は……」
まずい。今度はもう張勲の口車に乗せられている。このまま黙っていたらまた襲ってきかねない。
張勲の言葉に聞き入っている華雄に慌てて割り込む。
「待つんだ!一度は考えを改めたのなら、そう簡単に意思を曲げてはいけない。自分の選択を信じるんだ!あと、何気に罵倒され続けてるのに気付け!」
「そうはいうがな、関羽に負けた以上、理由を考えるとやはり……」
「まず自分の猪突猛進ぶりに疑いを持とうよ!?負けた理由を後付けするほうがよっぽどみっともないぞ!」
「そんなことありません!華雄さんよく考えてください。単純バカで武器を振るうしか能が無い上、なぜか隠し財宝ごと金目の品全部、孫策さんに没収されてるのに賃金は出世払いで……なんて嘘に引っかかって雇われた貴方でも、目の前の不審者より、雇用主である私を信じるべきだとわかりますよね!」
色々と酷くなってきてるな……まだ気付かない方も大概だが。
「惑わされるんじゃない!北郷一刀がこの惨状を見たらどうなる!?想像してみろ!」
「……ぬう……」
結局判断するのは、華雄次第。まずはじっくり考えてもらおう。
悩むように、顎に手を当てて目を閉じる華雄。時折顔をしかめ、唸りだした。
「考えなくても問題にはなりませんよ。思うがまま力を振るい、邪魔者を排除してください!」
語気を荒げる彼女にとって、この舌戦はこちら同様、正念場だろう。
華雄より強い人物がいない以上、彼女が引くか戦うかで決着はついてしまう。
「駄目だ!信じるんだ、愛の力を!!」
シラフでは言えないようなセリフで後押ししてみると、張勲が反論してくる。
「くっ……邪魔をしないでください。変態仮面さん」
素直に否定できない言葉だ。
「そちらこそ。後が無いのは分かるが、いつまでも逃亡生活を続けるわけにはいくまい」
時間が立つほど袁家の名は地に落ち、威光に頼った振る舞いは難しくなる。
普段から悪評が高い上、一度没落した袁術をわざわざ向かい入れる人もいないだろう。
前回の記憶を持つ雪蓮に徹底的に私財を奪われた袁術達にとっては、華雄は数少ない手札の一つだ。
「余計なお世話です。心配をされずともなんとかなります」
ふんっ、と鼻を鳴らしてそっぽを向かれる。
やれやれ。どうやら後の事はあんまり考えてないみたいだな。
このまま放置していると、とんでもない珍事を巻き起こしそう気配がする。
袁家=トラブルなんて図式がすぐ頭に浮かぶ。と同時に、ゆるやかに記憶が戻ってきた。
以前もこんな風に悩まされた事があったような……。
―袁家
―華蝶仮面
―無用のトラブル
少しずつ思い出していく。
記憶を持つ女の子と再会していない為か、酷く曖昧になっているがキーワードが浮かび上がってくる。
―悪役
―ムネムネ団
―正義
―地味仮面
ここでようやくどんな事が起こったか思い出せた。
確か似たような雰囲気相手に色々とてこずらされた気がする。
歴史に関係ない事は結構簡単に思い出せるのか?
まあ、今は関係ないけどなぁ……。
結構切羽詰まったこの状況で思い出す必要はなかったな。
運良くこれが終わっても楽進達についても孫権と話し合わないといけないし、気が重くなってくる。
……はぁ……。
………。
…………。
………………いや、待てよ?あの時、どんな方法で解決したっけ?
確か、暴動っぽい事を起こそうとした相手に、華蝶の導きを受けた人間が立ち向かったような……。
……もしかしたら使えるかもしれない。
―袁術達の処遇
―楽進達の仕官
うまくいけば、あの問題も解決できるアイデアが浮かんでくる。
「張勲……取引をしないか?」
「……いきなりなにを……」
突然の言葉に警戒の様子を見せる。
断られば、立ち行かないのでしっかり聞いてもらえるよう、多少の脅しをかけて言葉を選ぶ。
「悪い話じゃないさ。双方に利益のある提案だ、話だけでも聞いてみないか?」
「……」
「ちなみに、言い忘れていたが袁術の身柄はすでに預かっている。脅迫の形になる前に話をつけたほうが良いと思うぞ」
「あなたはいったい……」
「華蝶仮面。正義の味方さ……」
今から話す内容は、とてもじゃないが正しい行いとは言えない。でもそこにあるものは見様によっては正義とも言えなくはない。
仮面越しに張勲を見つめ、返事を待つ。
「……まあ、聞くだけならタダですし、聴いてあげますよ」
―第一関門突破。
後はうまく話しに乗っても貰えればOK。俺の交渉術がうまくいけばいいが……。
万が一、失敗して作戦が漏れれば、国の信用が落ちてしまう。
両者の間でいまだ悩む華雄。呆気に取られたまま三人と隠れている二人の運命を決める交渉が始まった。
「……北郷が……。北郷が……死んだ」
「今頃!?」
「……すまん。ヤりすぎるつもりはなかったんだ……」
「なんだ!?脳内でなにがあった!?」
話が纏まった後にあまりに衝撃的な回答が返ってきた。
「まさか、あんなに飛ぶとは……」
「おいよせ、やめろ。なにをするつもりだ。その視線はどこまで向かってるんだ」
なぜ雲を見てるんだ!
「愛とは悲しいものでもあったのだな……」
「遠い目をするな!思い直せ!おもに生きるか死ぬかの部分だけでも!」
このままでは、せっかく問題が解決しても俺だけが命に関わる局面に立たされてしまうではないかっ。
明かされた女性関係に対する叱責は覚悟しているが、そんな、『無茶しやがって……( ´=д=`)』で締めくくろうとしないでくれ。
割と本気でなりそうだから。
すでに、洛陽では華雄・恋・ねねと。
呉では雪蓮・小蓮・穏と大人で性的な関係を築いている俺は、もしも彼女達を本気で怒らせた時の場合を考えてみた。
―いずれも劣らぬ名将揃い、実力差は歴然とし……。
……。
…………。
「……俺が……死んだ」
いまだ顔につけた華蝶の面の力を持ってしてもこの沈んだ心は持ち上げられなかった……。
―1ヶ月後―
「きゃー!助けてー!」
「逃げろー!あいつらが出たぞー!」
平原の町を逃げ惑う人々。
そこにいるのは、おもに他からやって来て日が浅い人間がほとんどで、わけもわからず走っているのも多い。
確かに怯えた様子もあるが、ちらほらと笑顔が見え隠れしながら逃げているのは地元の子供達だ。
後ろから迫ってくる恐怖をむしろ楽しんでいるような姿で駆け回り、対照的に町の大人たちは、落ち着いた様子で避難を開始する。
そうやって人が居なくなったあと、間を置いて現れたのは女性三人組。
一人は大きな斧を持ち、もう一人は混乱に乗じて店先の品をくすねている。三人目は背が低く前の二人に隠れてよく見えないが、なにやら偉そうな態度が目に付く。
そのまま路地が交差する道の真ん中まで来ると、斧を持った女性が図ったように大声を上げた。
「力なき民達よ!!大人しく恭順せよ!!抵抗すれば命は無いものと思え!!」
荒々しく得物を突き上げ、少しでも遠くの人間に見えるよう存在をアピールする。
それに続いて小さい少女が高笑いとともに宣言が告げる。
「邪魔するものがいなければこの町は妾のモノじゃ!皆、ひれ伏すがよいぞ!うはははは!!」
「素敵ですよ美羽様!もっと愛くるしい笑顔をもっと見せてください!」
「うむ、蜂蜜水があればもっと笑ってやるぞ!さあ平民どもよ、持ってくるのじゃ!」
説明するまでもないが三人の正体は華雄、張勲、袁術だ。
定期的にこの平原の町に現れ、悪事を働いていくのが最近の恒例になっている。
ここだけ見れば治安について物言いがありそうなものだが、実際には一件も陳情は無く、むしろ全体的な苦情も減少傾向にあった。
その理由は今から始まる出来事が大きく関係しているのだろう。
いざ袁術達が行動を起こそうとすると、突如町に響き渡る声に邪魔され、動きが止まる。
声の元は高い場所から響き、三人が同時に店を仰ぐ。
「むぅ。また現れおったか……。忌々しい奴らなのじゃ!七乃!華雄!」
「はい!」「応っ!」
かけられた言葉を合図にお互いの武器を構える二人。
「今日こそ、返り討ちにしてくれるのじゃ!」
「……そううまくいくかな?」
「来おったか!?」
「悪があるなら、どこにでも参上してみせよう!」
正面の屋根の上から、返事が返ってきた。
その声がした途端、離れた場所で待機していた町民達からどっと歓声が漏れだした。
「おぉ!やはり来てくださったぞ!」
「待ってました!」
口々に期待の込められた言葉が波を打つかのごとく響き、期待の大きさが伝わってくる。
「ええい、さっさと姿をあらわすのじゃ!」
上機嫌はどこへやら。地団駄を踏む袁術。
「ならば明かそう、我等の姿!!」
「「「「 応! 」」」」
三人を取り囲むような位置から声が聞こえる。
「天が知る」
―デデン
「地が知る」
―デデデン
「人が知る」
―ジャーーーーン!
太鼓と銅鑼な音が盛大に鳴らされ、地面に五人の影が写し出される。
見物している町民のボルテージはどんどん高まっていく。
見上げた瞳には、逆光が強く姿は良く見えないがどこのだれかは想像できた。
「び、美々しき蝶も知っている」
言い終わると同時に五つの影は屋根から飛び降り、三人の前に降り立つ。
同時になんの原理か、色とりどりの煙が足元から吹き上がり、登場を演出している。
そのなかで屋根から降りた五人がポーズを決める。
「 美 麗 戦 隊 ! ゴ レ ン カ チ ョ ー ! ! 」
―ワァァァアアアア!!!!
最高まで高まった声援が投げかけられる。
「螺旋華蝶様ー!」
「拳闘華蝶様ー!こっちむいてー!」
「キタ!メイン華蝶キタ!!コレで勝つる!!!」
一部時代を超えた応援が聞こえたが俺のログにはなにもなかった。
「懲りん奴やな、袁術はん」
「まったくなの。そろそろ潮時だと思うの」
「……ふっ(あざ笑い)」
「むかーっ!そう言われると絶対諦めたくなくなるのじゃ!」
袁術の興奮もどんどん上がっていく。
「……うぅ」
「そろそろ慣れような、りょ……暗器華蝶」
「名前だけでも何とかなりませんか……一刀様」
「こーら、ここでは真華蝶仮面、もしくは隊長と呼びなさい」
ノリノリな四人をよそに、密談を交わす二人の華蝶。
もう何度目になるだろう。こんなイベントを行ったのは。
あの時の張勲との取引内容は定期的に町を襲ってほしいという、まともに聞けば正気を疑う内容だった。
そのうえ、住む家、生活費も全てこちらで面倒を見るという契約になっている。
驚きを隠せない様子の彼女に理解を促すべく説明をした。
襲うといっても本気ではなく、なるべく町に危害を加えない事、人は絶対傷つけないのが最低条件。
守られれば、雇用期間内なら身の安全は保障するという内容。
敵将を生かして、子飼いにするなんてばれた日には周瑜に殺されてしまいそうだが、
それだけのリスクを背負ってもなお十分に余るリターンが見込めた為、俺の独断で実行させてもらった。
一応孫権には伺いを立てたが、いまのところ密告された様子は無い。
一代作戦、『ヒーローショー作戦』は、低迷していた呉の人気を上げる狙いが一番大きい。
実際の政治でも、国が国民と共通の敵を相手取る事により、意思の統一を図るのは定石になっている。中国とか、韓国とか。
大陸に敵はたくさんいるが、この時代、あまりに数が多すぎて民衆は自国以外の誰が味方で敵かの判断がつきにくいことが多い。
そこで平原限定の共通敵を作り出し、意思の統一……までいかなくても人気集めに利用しようと思い立ったのだ。
結果はご覧の通り、絶大な効果が返ってきた。
“美麗戦隊”は孫権が指示する特殊部隊として認知されており、彼女は指令という役職を合わせて名乗ってもらっている。
ただ戦うだけではなく、元の世界の戦隊物や特撮、ヒーロー関係の知識を生かした演出を多用しているのが人気鰻のぼりの原因でもある。
袁術達の雇用条件にはこの悪役をお願いしてある。
もっとも、袁術だけは知らされず、毎回本気のようだが……。
華雄の説得もなんとか成功し、九死に一生を得たのは本当に嬉しい。更に、
「戦隊は五人!ここは譲れないからな!!」
これで楽進達の仕官も無理やり通させてもらった。
無論、将扱いではなく、俺の副官として始めてもらっているが、彼女達は才能がある。すぐにひとり立ちできるだろう。
最初こそ恥ずかしがっていた三人も今では自分達から望んでやっている節が見られる。
俺を含めて四人、最後の一人を呂蒙に頼んだときは、ささやかな交換条件があったが、今は滞りなく進んでいる。
「互いに真名で呼び合いたいか……」
「や、やはり駄目でしょうか?」
「そんなわけないじゃないか亞莎。むしろ嬉しいぐらいだよ!」
悲しそうな顔になった彼女に笑みで返す。
その言葉で安心したのか、はにかむような笑顔がかわいい。
少しずつ戻る記憶。近いうちに彼女に関するものは全て思い出せそうだ。
目の前で繰り広げられる予定調和を眺めながら、そう感じた。
その様子を見つめる人物が二人。
孫権と甘寧が身を隠して見守っている。
「……」
「蓮華様……」
先程から口を開かない主君は黙ってその男を観察していらっしゃった。
この状況は初めてというわけでもなく、最近は毎回あれが行われる度にこうして出向かれている。
理由は監視との事だが、明らかにそれは嘘だろう。
終わる頃にはいつも深い溜息をついておられるからな。
「……はぁ……」
原因は察するまでもないが、こればかりはどうしようもない。
黙って付いているだけしか無いとは、我ながら恥ずかしい限りだが……。
「……なによ、あんなに嬉しそうに亞莎に言い寄って……。私には、そんな笑顔一度も向けてくれないじゃない……」
「……蓮華様……」
「!? な、なんでも、なんでもないわ!独り言、そう、独り言よ!気にしないで!」
「いえ、私はなにも……」
「待って!言わないで!別に亞莎が羨ましいとか、三人も競争相手が増えて焦っているとかでは無いの!本当よ!!!」
「……」
「ただ少しだけ北郷の横顔が格好いいとか、見ているだけで動悸が早くなるとかだけで、細意は無いわ!」
「……そうですか」
「そうよ!もし仮に言い寄られでもしたら間違いなく口説かれる自信があるけど、きっとそれは錯覚だから!!」
「……そうですね」
慌てる蓮華を暖かい眼差しで見守る思春。
最後に一つだけ思う事があった。
(もしも蓮華様を傷つけるような事があれば……わかっているな北郷)
右腕の振りを確認しながら、なぜか雲に向かって目測を図る彼女だった。
説明 | ||
第十五話をお送りします。 ―袁術たちとの追いかけっこも終わりを迎え。 新たに迎える珍騒動― 開幕。 |
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コメント | ||
namenekoさん>蓮華さんはツンの弱いツンデレ(?)ですからねぇ。それでも一時間で無くなるのは流石に……(よしお) やはりすでに堕ちていたのか・・・・・・↓蓮華のツンは一時間でなくなるだろ(VVV計画の被験者) akiさん>蓮華さんのツンは一日……いや、半日でなくなりますからね!(よしお) 間違いなく口説かれる自信があるんだwww蓮華さんwwwさすが(aki) よーぜふさん>華雄さんと蓮華さんは一途なんです……。(よしお) 320iさん>色々と吹っ切れてますねw(よしお) ・・・みんな楽しそうで何よりですw そして華雄姐さん、やっぱりあんたって人はもう・・・w てか蓮華さん、あいかわらず本音ぶっちゃけてますなw(よーぜふ) |
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