ロ▲コンオヤジ降臨(聖霊機ライブレード)
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 その日、アルフォリナはいつになくそわそわしていた。

 

「ねぇ、このドレスでおかしくないかしら?」

 

「ええ、とってもお似合いですよ。女王陛下」

 

「この髪飾り、派手すぎない?」

 

「ええ、ちっとも」

 

 侍女を相手に先ほどから延々とこんな遣り取りを交わしている。

 

 彼女がそわそわしているのには理由があった。今日は、アガルティアの皇太子との会見があるの

 

だ。アガルティアの若き皇太子ローディスは、アルフォリナの憧れの人であった。女王に即位した

 

ばっかりのときにローディスに会い、淡い想いを抱いたのだ。物腰が柔らかくおしゃれで美形のプ

 

リンスは、年頃の少女に恋心を抱かせるには十分だった。

 

 ヨーク王国はアガルティアと共同で聖霊機開発計画を推進していた。それゆえ、最近はその話し

 

合いのためにローディスとも頻繁に会っている。

 

 ひと通りの身支度を終えホッと一息ついていると、ローディスが到着したとの連絡が入った。

 

アルフォリナはひとつ深呼吸をすると謁見の間へと向かった。

 

 謁見の間のきらびやかな玉座に座る年若き女王を、ねっとりと見つめる二つの眼があった。ヨー

 

ク王国の宰相で、アルフォリナを補佐する立場にあるオズヴァルドであった。

 

(アルフォリナ様・・・いつもながら可愛らしくていらっしゃる)

 

 広間の玉座からほど近い所に佇みつつ、オズヴァルドは周囲に気づかれないように、懐からそ〜

 

っと何かを取り出した。お手製のアルフォリナちゃん人形である。一針一針邪な想いを込めて縫っ

 

た、お世辞にもカワイイとはいえない人形に、オズヴァルドはすりすりと頬擦りをした。

 

 入り口の壮麗な扉が開き、二人の侍従を従えたローディスが入って来た。アルフォリナの頬がパ

 

ッと染まり、肘置きを掴む指にキュッと力が入る。長いブロンドを後ろで軽く束ねたローディス

 

は、優雅な足取りで玉座に近づき、アルフォリナの手を取った。

 

「女王陛下にはごきげんうるわしゅう」

 

 そう言って白い手の甲に口づけた。オズヴァルドのこめかみが引き攣る。いくら社交辞令だとわ

 

かっていても、アルフォリナLOVEのこのオヤジには耐えられないらしい。

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(お、おのれ〜。私のアルフォリナちゃんに気安く触るでない!!)

 

 ローディスはアガルティア大陸きってのプレイボーイともっぱらの噂だった。その柔らかい物腰

 

と端正な顔立ちから、貴婦人たちにそれはそれはよくもてた。各国に想いを交わしあった姫君がい

 

るだの、シャングリラにハーレムがあるだの、ローディスに関するそのテの噂は絶えない。

 

(節操なしのたらし皇太子めが・・・・・・)

 

 オズヴァルドはローディスを睨みつけると、ギリギリと歯噛みした。

 

 ひと通り謁見が済んでアルフォリナは自室へ引き上げた。人払いをしてローディスを招き入れ

 

る。

 

「あのような場では、ゆっくりお話をすることもかないませんから」

 

 そう言ってはにかむように瞳を伏せたアルフォリナに、ローディスはそっと近づいた。

 

「本当にそうですね。こうしてあなたに触れることさえできない」

 

 細い肩に静かに手を置くと、そのまま腕の中に抱きこんだ。

 

「ロー・・・ディス、様」

 

「あなたに私の想いを伝えたくて・・・どれほど悩んだことでしょう」

 

「想・・・い?」

 

「ええ」

 

 この展開に仰天したのは、部屋の隅で観葉植物に変装して様子を伺っていたストーカー宰相オズ

 

ヴァルドだった。

 

(うおぉぉぉぉぉ、アルフォリナ様から離れろ。このこのこの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ)

 

 変装していることも忘れ、怒りと嫉妬で顔を真っ赤にして握り拳を震わせている。

 

(昨日今日のポッと出の若造のくせにィ〜! 私など陛下がお生まれになったときからずっと見守

 

り続けて来たとゆーのにっっ)

 

「女王陛下、ひとつお願いがあるのですが」

 

「何でしょう」

 

 ローディスの急な申し出に、アルフォリナは胸に顔を埋めたまま尋ねた。

 

「先ほどからそこの隅で覗いているデバガメをなんとかして頂けたら、と」

 

「え?」

 

 アルフォリナは驚いてローディスから離れると、怪訝そうな顔で部屋の中をひと通り見回した。

 

部屋の隅に鎮座している大きな観葉植物に目が止まる。

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(まさか・・・!)

 

 アルフォリナはハッと息を呑んだ。疑惑たっぷりの瞳で観葉植物を睨みつける。オズヴァルドは

 

とうとう観念したのか、或いは自棄になったのか、両手に持っていた大きな葉っぱの束を放り投げ

 

ると、二人の側までやって来た。

 

「オズヴァルド・・・あなたはここで何をしているのですか?」

 

 アルフォリナは呆れ果てて髭の宰相を見つめた。

 

「陛下が心配でしたので、変装して警護させて頂いておりました」

 

「警護?」

 

「ええ」

 

 怪訝そうに眉を寄せたアルフォリナの言葉に芝居っ気たっぷりに頷くと、オズヴァルドはローデ

 

ィスに視線を移した。

 

「アガルティアの皇太子殿下は、お手が早いと伺っておりましたからな」

 

 ローディスの頬がピクリと引き攣った。

 

「ご冗談を」

 

 二人の男の間に険悪な空気が漂った。

 

(ロリコンジジィ・・・)

 

(クソったれ皇太子が!)

 

 なんだか低次元な争いにアルフォリナは嘆息すると、オズヴァルドに退出するよう命じた。

 

「で、ですがアルフォリナ様。こんなオオカミのような男と二人っきりではあんまり・・・」

 

「な!」

 

 ローディスが絶句した。

 

「オズヴァルド! 言葉が過ぎましょう。とにかく出てお行きなさい」

 

「は、はい・・・」

 

 まるで叱られた子供のようにしゅんとすると、オズヴァルドはドアへと向かった。何度も何度も

 

未練がましく振り返る。

 

「早くなさいっ!!」

 

「はいいいいいいいいいいっ!!!」

 

 終いには涙目になりながら、それでもようやく部屋を出て行った。

 

 オズヴァルドが出て行くと、アルフォリナはローディスに向き直りすまなそうに睫を伏せた。

 

「臣下の者がとんだご無礼を働きまして・・・申し訳ありませんでした」

 

「顔をお上げ下さい、アルフォリナ。私は少しも気になどしてはおりませんよ」

 

 再びアルフォリナを抱きしめながらローディスは笑顔を作った。しかし、その目は笑ってなどい

 

なかった。

 

(あのロリコン宰相がっ。いつか、痛い目見せてやる。ケッ、てめーなんざヤギでも抱いてりゃい

 

いんだよ)

 

「ローディス様・・・なんてお優しい」

 

 想い人が腹の中でとんでもない事を考えているとは露知らず、アルフォリナはローディスの胸に

 

頬を埋めたままうっとりと呟くのだった。

 

 

 

 

                                   終幕

説明
聖霊機ライブレード同人誌「Natural Enemy」に掲載した某王国のロリコン宰相のお話です(^_^;)

あ、あのオヤジが30代って。。。\(゜ロ\)(/ロ゜)/
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タグ
聖霊機ライブレード アルフォリナ ローディス オズヴァルド ギャグ ロリ 

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