新・外史伝『希望』編 第11話『黄巾討伐戦・中 〜劉の名を持つ男〜』
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新・外史伝『希望』編第11話 『劉の名を持つ男』

 

 

翌日、王朝の要請を受け一人の男が自軍2万を率いて官軍に合流した

 

黒地に赤の『劉』一文字

 

彼の名前は『劉璋』

 

蜀を支配する愚君と揶揄されている王である

 

「凪!まずは、皆に挨拶に行くぞ。付いてきてくれ。」

 

「はい!ご主人様!!」

 

凪と呼ばれた少女、楽進は劉璋の後に続く。

 

「焔耶。お前は兵の管理を一任する。」

 

「お、親方様!?」

 

焔耶と呼ばれた少女、魏延は顔を驚きの色で染めた

 

劉璋はそんな彼女の肩に手を乗せて優しく諭す

 

「大丈夫!焔耶ならできるって。

 

桔梗に師事していつも勉強している君なら大丈夫。

 

オレは信じているよ?」

 

魏延は顔を真っ赤に染め

 

「ぎょ、御意!!

 

か、必ず親方様の信頼にこたえます/////!!!」

 

 

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官軍の指揮官、何進の天幕に諸侯が集まっていた

 

玉座には銀髪のグラマーな美女が露出の高い服を着て寝そべっていた。

 

曹操が彼女に問いかける

 

「大将軍。本日はいかようで我らを招集されたのでしょうか?」

 

この美女こそ、何進大将軍であった

 

「うむ。われらが賊を討伐し始めて既に半年が過ぎようとしておる。

 

しかし、それでもなお駆逐できておらぬ。

 

このままでは、わらわの信用問題にもなりかねぬ」

 

その言葉に諸侯は苛立ちを覚える

 

自分たちは漢を救うためにここに集い戦ってきたのにもかかわらず

 

この女はそんなことは知らぬという。

 

自身の力を誇示し、王朝での力を確実なものとしたいと考えているのだ。

 

しかし、そんなことはお構いなく彼女は続ける

 

「それもこれも、貴様らがふがいないばかりにこうなったのだ。

 

わらわの顔に泥を塗るようなことは断じて許さぬぞ」

 

その言葉に、一人の男が異を唱える

 

「やれやれ、今はそのようなことを言っている場合ではないでしょうに。

 

大将軍様、時代の流れを読み間違えると、のちのち痛い目を見ますぞ。」

 

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何進は男を睨みつける

 

諸侯達も、視線を向けた

 

「なにものだ!

 

ここをどこだと心得る!」

 

何進の言葉に全くどうじていない青年は傷の目立つ少女を引き連れて、ゆっくりと歩んでくる

 

「これは、申し訳ありません。

 

もうしおくれましたね。

 

オレは本日より、皆様方と共に戦うように命を受け、はるばる蜀の地より馳せ参じたました…」

 

その言葉に、皆がざわつく

 

あぁ…あのどうしようもない暗愚か

 

「ふん!ずいぶんと遅いご到着。

 

噂通り、愚劣だな」

 

フードを深くかぶった青年は何進に一礼する。

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

いやみをいやみで返すと、さっと振り返り皆にも一礼する

 

「皆様方、お初にお目にかかります

 

オレは、姓を劉・名を璋、字を季玉と申します。

 

そして、こちらの女の子が我が部下、楽進。

 

以後、お見知りおきを。」

 

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自己紹介の終わった劉璋に、何進は席に着くように言う。

 

言われたとおり自身の席に着く劉璋を誰を、誰も見向きもしなかった

 

それもそのはず、彼は世間では暗愚と噂されており、誰一人役に立たないと思っていたのだ

 

諸侯らは彼を無視して、作戦会議を行っている。

 

しかし、桃香だけは違った

 

会議が終わり、解散後

 

「あ、あの…」

 

桃香は劉璋に話しかけたのだった

 

「ん?」

 

「わ、私。劉備って言います」

 

彼女は共に戦おうとする仲間として、彼に挨拶をしたのだった

 

「先ほども名乗ったが、劉璋だ。

 

君は優しい娘だね〜。正直、諸侯連中にここまで無視されるとは思わなかったよ」

 

劉璋はやれやれっと言ったしぐさをする

 

「無視はいけないと思うの。

 

やっぱり、みんなで協力しないと…漢王朝は守れないもん。」

 

桃香は熱心に語る。

 

劉璋も黙ってそれを聞いていたが、彼はこうつぶやいた

 

「君の理想は正しい。だが、間違えているともいえる。

 

それでは、君は何も救えぬだろうよ…。」

 

愛紗はこの言葉が気に入らなかった

 

「桃香様。そのくらいになさいませ。

 

そのようなものにかまうなんて、時間の無駄です。」

 

愛紗も劉璋の噂は聞いている

 

噂とは、『劉璋は政を一切せず、全て部下に任せて自身は遊び三昧している』っといったものだ

 

「あ、愛紗ちゃん!」

 

桃香は愛紗をいさめようとするが、愛紗は劉璋にも噛み付いていく

 

「貴方も貴方だ!民草のことなど気にかけぬくせに。

 

ここで、点数稼ぎのつもりか?」

 

まるで、汚らわしいものでも見るような視線を向ける

 

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しかし、劉璋は口元に不敵な笑みを浮かべたまま何も言わない

 

「な、なんだ!?

 

なにか、言ったらどうだ!」

 

愛紗の言葉にも全く反応しない。

 

まるで、品定めでもするかのような視線を向けてくる

 

「ふっ…。

 

そうだ…っと言ったら?」

 

彼は愛紗の軽蔑を含んだ視線を涼しげに受け流しながら聞いた

 

「な!?き、貴様!」

 

愛紗は激昂し、劉璋の胸倉を掴んだ

 

その拳が振り上げられた瞬間

 

「貴様!ご主人様に何をする!!」

 

怒った楽進は愛紗に殴りかかる

 

しかし

 

「止まれ。凪」

 

劉璋は何と彼女を止めてしまった

 

「「えっ!?」」

 

重なる楽進と桃香の驚きの声

 

そして

 

 

バギィイ!!!

 

 

劉璋は愛紗の拳を受け、吹き飛ばされたのだった

 

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ドガァ!っというけたたましい音と共に地面に転がる劉璋の胸倉を愛紗は掴みあげる

 

「貴様!もういっぺん言ってみろ!!」

 

怒鳴り散らす愛紗に劉璋はその不敵な笑みを崩さない

 

「愛紗ちゃん!やめて!!」

 

桃香は愛紗にすがりつき必死に止めようとする

 

「いいとも。

 

君は劉備の臣下のようだが…、君は、いや…君たちは今の時代を全く読めておらんようだな?」

 

「何!!」

 

さらに劉璋を締め上げる

 

「おいおい…痛いじゃあないか。

 

そんなに、強く締められたら喋れないよ」

 

劉璋はまだ、余裕を見せていた

 

「いいか、君たちの理想は『話し合えば分かり合える』っと言った至極簡単なものだ

 

しかしなぁ、君たちは今の現状を理解しているのか?

 

オレ達は今から戦をしようとしているのだぞ。

 

つまり、人の命の取り合いだ。

 

これを手段として選択した時点で、君たちの理想は破綻していると気が付かんのか?

 

仲良くしようと言いながら、剣を振り上げる奴がこの世にいるか?

 

いいかい、人を導くためには…」

 

彼の言はまるで諭すように優しい口調だった

 

「貴様のような暗愚に、桃香様の理想は離解できんのだ!!」

 

しかし、怒り狂っている愛紗には利かず、気がつくと劉璋を地面に乱暴に投げつけていた

 

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劉璋は派手な音を立て、二・三回回転した後、木の箱にぶつかり止った

 

「あいたぁ〜…」

 

「ご主人様!」

 

楽進は劉璋に駆け寄り抱き起こした

 

「ご、ご無事ですか?」

 

楽進は腕の中に抱えた劉璋を心配そうに労わる

 

「心配はいらんよ。凪

 

ありがとうな」

 

劉璋は楽進の頭を撫でてやる

 

彼女は赤くなりながらもそれを受け入れた

 

しかし、そのことを吹き飛ばすように頭を振り桃香を睨みつける

 

「劉備!貴女は部下さへも抑えられぬほど愚かなのか!?」

 

その言葉に愛紗が反応する

 

「なんだと!?

 

言うに事欠いて、貴様!!」

 

愛紗が楽進に怒鳴りつけようとした瞬間

 

 

 

バチィン!!!

 

 

乾いた音が木霊する

 

桃香が彼女をぶっていたのだった

 

「と、桃香様…」

 

「愛紗ちゃん!

 

いい加減にしなさい!!」

 

そこには、のほほんとした少女はいなかった

 

その姿は劉備軍総大将に相応しい覇気を出し、愛紗の動きを止めていた

 

桃香は愛紗に諭すように言う

 

「愛紗ちゃん。

 

愛紗ちゃんが怒ってくれたこと、すごく嬉しいよ。

 

でも、でもね…

 

やっぱり、暴力はいけないよ。」

 

桃香は、劉璋に振り向き頭を下げる

 

「劉璋さん。ごめんなさい!」

 

劉璋は、楽進の肩を借りて立ち上がり自軍の天幕に帰ろうとする

 

「劉備!次は無いものと思え…」

 

二人を威嚇する楽進をいさめながら劉璋は桃香の謝罪に耳を傾ける

 

謝罪を受け入れて二人を許した彼は、悔しそうに手を握り締め震えている愛紗にすれ違いざま、

 

「どんなに許せない発言でも、最後まで聞くべきだ。

 

その途中でそれを途切らせたら、その言葉全体が持つ意味合いを取り逃す事だってある。

 

常に冷静に言葉の分析をしろ。

 

どうか、これだけはゆめゆめ忘れるな。」

 

愛紗には、その言葉が何故だか重く感じたのだった。

 

「劉璋さん…」

 

桃香は再び彼の名を呼ぶ

 

「何かね?」

 

劉璋は振り返らず聞き返した

 

「でも、でも…私…この理想を捨てられないの!

 

どんなに言われたって…絶対に捨てたくない!!!」

 

劉璋は「ふぅ〜」っと深いため息を吐くと

 

「こいつは重症だな」

 

っと呟いたという。

 

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公孫賛軍の天幕に帰ってきた桃香達に公孫賛が駆け寄ってきた

 

「桃香!関羽!

 

お前達、大丈夫か!?」

 

公孫賛は桃香の肩を持ち、前後に揺らす

 

「な、何もされなかったか?

 

本当に、大丈夫なんだな!?」

 

「「はわわ!」「あわわ!」桃香様ぁ〜!」

 

朱里と雛里も彼女の足にしがみついてきた

 

「ぱ、白蓮ちゃ〜ん!朱里ちゃん!雛里ちゃん!

 

す、少しおちついてぇ〜!

 

め〜が〜ま〜あわぁ〜りゅ〜・・・・」

 

呆気にとられる愛紗を尻目に公孫賛は桃香に必死の形相で質問攻めにした

 

わけが分からない愛紗たちを見かねた劉備軍客将趙雲こと、星が真相を語る

 

「おぬしら2人が、劉璋殿にちょっかいを出されて、困り果てた愛紗が奴を少しこついたら吹き飛んだと報告が入ってな。

 

事態の根源たる劉璋は、謹慎させられたが…白蓮殿がどうしてもおぬしらが心配だといってきかぬのだよ。」

 

「「え!?」」

 

二人はわけが分からなかった

 

劉璋はちょっかいどころか、暴言の一つ言ってはいない。

 

それどころか、自分と愛紗を諭してくれたはずだ

 

桃香は先ほど起こったことを皆に説明した

 

「うそぉ〜!」

 

白蓮は信じられないっといった表情だ

 

「桃香!人が良いのも大概にするべきだぞ。

 

あんな暗愚を庇ったて何にもならないんだからな!」

 

白蓮の言葉に桃香の軍師達も賛同する

 

「で、でも!本当のことなんだよ!

 

ねぇ!?愛紗ちゃん!?」

 

愛紗に同意を求める桃香だったが

 

「・・・・」

 

愛紗は何も言わなかった

 

「ホラ見ろ!愛紗が肯定しないってことはやっぱりそうなんだな!

 

まったく、あの屑野郎〜!!私の友達に何てことしやがる!!!!」

 

怒り狂う白蓮にもはや説明は無駄だった

 

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劉璋は劉備にちょっかいを出し、部下の関羽が注意した

 

その際に力が入りすぎ、怪我を負わせる形となった

 

この報告が全軍に知らされたものであった。

 

劉璋の部下である楽進と魏延はこの内容に怒り、何進に抗議しようとしたが、

 

「いいたいやつには言わせておけば良い。

 

いちいち他人の言うことを気にしていたらきりが無いぞ。」

 

劉璋によりとめられた

 

事件のあらましを聞いた何進らは、全面的な責任を劉璋という悪役に押し付けたのだった

 

本来の責任は劉備たちにあるが、それではその上司である自分が監督不行き届きっとなってしまう。

 

暗愚と噂される劉璋のせいにすれば、この件をうやむやにしたのであった。

 

さすれば自身の名は汚れず今の地位は安定し、劉璋の評判はさらに地に落ちることになる。

 

何進らにとって劉璋は漢の血を少なからず引くものという認識もあるため、その出世の芽を今のうちに摘んでおきたかった。

 

 

こうして、事件は解決させられたが…

 

桃香と愛紗はなんともいえない悔しさを覚え、人の思い込みの怖さを、そして醜い人間の業を知ったのであった。

 

 

 

つづく

 

説明
今回のお話は、対黄巾軍の中編です。今回から、オリジナルキャラが登場します。また、アニメ版恋姫†無双から、何進大将軍も出演させてもらいました。今回の愛紗はすこし暴走気味ですが、「これが若さか…」っと思っていただきたいと思います。それでは、すこし、長いかもしれませんが、貴方に楽しんでいただけたら幸いです。
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コメント
2828様へ。コメント感謝です^^ 呉ルート、魏ルートでもOHANASHIで物事を解決しようとしてましたからね、この人たちは…。(たっちゃん)
殴り合いと書いて話し合いと読むんですね・・・・あぁOHANASHIですかw(2828)
ヒトヤ犬様。そうですね、彼女達の理想は破綻しやすいものですから。早くそれに気が付いて欲しいですね(たっちゃん)
赤字様へ。言葉の持つ意味合いは解りにくいものですね(たっちゃん)
怒ったからって最初から胸ぐら掴むんだ、最後まで聞かないってことは話し合いを自分んから放棄したということ・・・・「話し合えば解決できる」・・・・プッW(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
関羽・・・人の話しはちゃんときけよ。劉璋の評価がどう変わっていくのか楽しみです。頑張ってください。(赤字)
皆様の感想をお待ちしております(たっちゃん)
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