そらのおとしもの 二次創作  〜 桜井智樹はモテ期なのか? 〜
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 こんにちは、智樹です。

 今日も平和な一日です。午前の授業が終わってこれからお昼休み、お弁当という憩いの一時が待っています。

 

「智ちゃーん、お客さんだよー」

「…うーい」

 幼馴染の声に少しだけ嫌な予感が沸いてきますが精一杯の平常心で答えます。

 今日は用事があるとかで未確認生物は家でお休みなのです。せっかくの平和な一日を甘受する為にも平常心が大切なのです。

 振り返った視線の先には数人のクラスメイト、しかもかつてあの雪合戦で共に戦った男子達でした。

 なんだ、いつも親しい連中じゃないですか。きっと更衣室を覗くか何かの計画なのでしょう。平和な一日に一匙のスパイス、それもいいかもしれません。

「桜井、一緒に来てもらうぜ」

「…え?」

 その彼らがなぜ険呑な雰囲気を発しているのか、その時の僕には知る由もありませんでした。

 

 

 

  〜 桜井智樹はモテ期なのか? 〜

 

 

 

 

「さて桜井、自分がどうしてこうなっているか分かるな?」

「いや! さっぱり分からないぞ!?」

 なぜ僕は体育館倉庫の中で縄に縛られているのでしょうか。男子諸君は絶対零度の視線を向けてくるし、訳が分かりません。

「自覚が無いとは益々重症だな、俺達の別の名前を知ってるか?」

「フラレテルビーイング、だろ? 俺もその一員じゃないか」

 フラレテルビーイング。それはモテない男達が結成した粛清機関であり、カップルへの武力介入を主活動とする魂で結ばれた集団なのです。

 無論校則違反のモグリ活動ですが、僕らはそれに誇りを持っています。

「その魂の友をなぜ拘束する!? 一体何があったんだお前ら!」

「黙れ裏切り者がっ!!」

「う、裏切り者だとっ!?」

 僕が彼らを裏切ったなんて事実無根です。きっと些細な誤解が招いたすれ違いなのです。

 

 

「最近てめぇの周りは可愛い女子ばっかりじゃねぇかっ! このモテ野郎!」

「な、なんですとー!?」

 驚きの事実。僕は自分の知らぬ間にモテ期に入っていた様なのです。

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「で、それがそはらやイカロスやらニンフ、終いにゃアストレアだと?」

「あの娘らお前ん家に居候してんだろう!? そして見月は隣住まいの幼馴染ときた! ハーレムじゃねぇか畜生!」

「………はぁ」

 せっかくモテ期到来と思っていたせいか、凄くがっかりです。どうやら彼らは根本的な誤解をしている様です。

「あのなぁ、あいつらは人間じゃないんだ。未確認生物なんだぞ? そはらだって俺を殺人チョップで何度もミンチにする奴だぞ?」

 僕の平和をバッキバキに打ち壊す破壊者。それが彼女達なんです。

「でも可愛いじゃないか!」

「顔が良けりゃなんでもいいのかお前ら!」

 

 

 

「ああ、いいですとも!」

『そうだ! いいですとも!』

 

 

 

 それは魂の唱和でした。さすが僕と魂で繋がった男達。何となくそういう反応をするとは思っていました。

 ですがここで屈する訳にはいかないのです。今の状況をハーレムだなんて認めてはいけないんです。

 ハーレムとはこう、もっと甘美な物であると信じたいんです。

 

「では最初に見月から聞こうか? どう見てもくっついているとしか思えないんだが」

「そはらは今言った通り泣く子も黙る殺人チョップの使い手だ。ギャグパートじゃなかったら俺、軽く百回は死んでるぞ?」

 そもそもアレはギャグパートだからこそ活きる設定かもしれませんが。

「でも巨乳だよな!」

「しかも女子からゴキブリ、フナムシと呼ばれるお前に唯一付き合ってくれる女子なんだぞ! どこが不満だ!」

「いや、だからあの暴力の数々がだな…つーかフナムシなんて呼ばれてねぇ!」

「いいか桜井。『巨☆乳』なんだぜ!?」

「ああ、それは確かに…ってだからそういう問題じゃないっつうの!」

 危ない危ない、こっちが懐柔される所でした。

 さすが僕と魂で繋がった男達。僕の趣味を的確についてきます。

「とにかくあいつとは幼馴染の腐れ縁なだけだ! 断じてそういう関係じゃない!」

 現実は漫画じゃないんです。幼馴染とふとした事から恋に落ちるなんてあり得ないんです。

「…まあいい。次の尋問に移ろう」

「マジかよ…」

 どうやら彼らが納得するまで続けなければならない様です。

 ゴッド、僕は何か悪い事しましたか?

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「アストレアちゃんとはどうなんだ? 最近は親しく遊んでると聞いたが?」

「あー、まあ遊び相手としては面白いけどさ。つーか何で知ってる?」

「某方からの情報でな。そもそも今回の発端はあの人の―」

「いや、言わなくていい。もう分かったから」

 会長、これは間接的に殺人罪と同じです。きっとどこからか楽しそうに覗いているんだろうなぁ。

「だいたいアストレアとか可愛いか? あいつ本物の馬鹿だぞ? しかも色気より食い気な奴なんだぞ?」

 ついでに言えばあいつのせいで家のエンゲル係数はうなぎ登りです。地味に一番迷惑なんです。

「馬鹿な娘ほど可愛いって言うじゃないか! あの朗らかな表情にときめくだろ!?」

「ええー…」

 僕にはいまいち理解できない趣向です。

 僕と魂で繋がった男達でもやはり他人。違う部分はあるのかもしれません。

「それに巨乳だしな!」

「またそれか! お前らそれしか無いのか!」

 

「桜井、お前も好きだろう。おっぱい」

「ふっ、まあな。………だがそれとこれとは別問題だっ!」

 そもそもあのヴァカに恋愛とか無縁過ぎます。きっとそんな言葉すらも知らないでしょう。

「とにかくあいつとはそんな関係になってねぇ!」

「ふん、まだ白を切るか。しつこい奴だ」

「どっちがだよ…」

 いよいよもって偏執染みてきました。僕の命も危ういかもしれません。

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「ニンフちゃんは間違いなくお前にホの字だ! なんでそれに気付かん朴念仁が!」

「…いや、ないだろ。あいつ気難しいし」

 あいつは猫かぶりの傾向があって、初対面の人間にはおしとやかですが、親しくなると遠慮が無くなるタイプなんです。

「いつもいわれのない事で勝手に怒ったりするし。趣味はお菓子と昼ドラだし」

 家にいる時のあいつはお茶の間でテレビの主と化しています。まるで暇な主婦です。家事は一切しませんが。

 

「しかもあの貧困に喘ぐ胸囲! それに欲情するのかお前ら! それは犯罪だぞ!」

「幼女が嫌いな男なんていません! イエスロリータ! ノータッチ!」

『イエスロリータ! ノータッチ!』

「…ああ、そう」

 なんだかこいつらと魂で繋がった仲である事に疑問を感じてきました。所詮、他人は他人なのでしょうか。

「あのツンデレが分からんとは哀れな奴だな、桜井」

「俺にはツンばっかりな気がするんだどな…」

 そりゃ時々しおらしい時もありますが…って正気を保て! ここでそれを認めたらこいつらに処刑される!

「ニンフは家の居候であり、それ以上はない! 絶対だからな!」

「動揺が透けて見えるぞ桜井。まあいい、次で最後だ」

「もう完全に悪役面だよな、お前ら…」

 かつての盟友達はすでに不倶戴天の敵になっていました。じいちゃん、僕もう泣いていいですか?

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「さて、最後はイカロスさんだが…もう弁明は諦めろ、桜井」

「いーや! むしろ弁明するね! あいつこそあり得ないんだよ!」

「ほう、何故だ?」

「そもそもだな、イカロスは…」

 ………あれ? あいつがいて困った事、最近あったっけ?

「どうした桜井? 己の罪を認めるのか?」

「いや、待て! 今思い出すから!」

 そうだ思い出せ。そもそも今の状況はあいつに会ってから始まったんだ、何もない方がおかしいはず!

 料理は…駄目だ。そはらが熱心に教えたせいか、今じゃ家の台所の主はあいつだ。

 一般常識…微妙だ。まだ突飛な行動は散見されるが、最初の頃に比べれば周囲への被害はほとんどなくなった。我ながら頑張って教えたもんなぁ。

 学校での素行…問題無い。むしろ優等生の部類だ。

「マジかよ…」

 無いぞ!? イカロスに対する決定的なマイナス評価が無い!?

「マスターとか呼ばせているんだろ? 家じゃさぞかしお楽しみなんだろうな」

「うわー、そういう趣味かよー…」

「桜井め、変態だな。いや、最初からか」

「いや違う! あいつが勝手にそう呼んでるだけだ! やましい事も一切ない!」

 そう、本当にやましい事は何一つないんです。自分でも不思議なくらいに。

「終いにはイカロスさんに責任転嫁か、見下げ果てた奴め」

「だから違うって言ってるだろぉ!」

 もう彼らからは偏見に満ちた視線しか感じません。

「桜井、天へと帰る覚悟はできたか?」

 爽やかな笑顔で死刑判決を下す魂で繋がった仲間達。ああ、これはもう駄目かもしれません。

 死を覚悟した僕の視線の先には薄暗い体育館倉庫を照らす窓の光が―

 

 

 その先に、良く見知った顔がありました。

 今ちょうど話題にしていたイカロスさんです。今日は家で休んでいるばずなのですが。

 

 

「―いや待て! この状況は本当に拙い!」

 思い出した! あいつの一番の問題点!

「死ね桜井! お前の歪みを破壊する!」

『うおおおおおおおお!!』

「だから待てぇぇぇぇぇ!」

 殺到する男子連中。逃げられない僕。その状況はそろってしまっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…永久追尾空対空弾≪Artemis≫、発射」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、僕らの学校の体育館倉庫は跡形も無く消滅しました。

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「マスター危機感知システム?」

「そう。デルタみたいなお馬鹿ならいいけど、それ以外の襲撃者が来ないとも限らないし。念には念を押しておこうと思ったのよ」

「あー! ニンフ先輩ひどーい!」

 家に帰ると出迎えてくれたニンフとアストレアは懇切丁寧に説明を始めてくれました。

 さっきから部屋の隅っこで小さくなっているイカロスはちっとも事情を説明してくれないので助かります。

 本当に死人が出なかったのが奇跡でした。イカロスなりにしっかり手加減をしていたかもしれませんが、それでも体育館倉庫が消滅したのは事実なので久しぶりにきつく叱りました。

「トモキが自身に危機を感じると、アルファにダイレクトで位置情報を送信するシステムなの。これならこっちから捜す時間も省けるしね」

「ああ、なるほど」

 確かに、僕はあの時に命の危機を感じとっていたわけで。

「ふふーん、これって私の発案なんだから感謝しなさい!」

「デルタは発案だけしかしてないじゃない。ともあれ失敗ね。考えてみればトモキが命の危機を感じるのって日常茶飯事だし。その度にアルファーがすっ飛んでいたら身が持たないわ」

「…こっちの身も持たないしな」

 ニンフの言い方には物申したい所もありますが、否定しきれない事実なので断念します。

「今後は別のアプローチが必要、そう結論するわ」

「はいはーい! じゃあ私達の誰かがいつも一緒にいれば良いと思います!」

「いいデルタ、それが出来ない時の為のシステムだったのよ?」

「ええぇー…?」

 うん、事情は呑みこめました。

 その上でしっかり処罰しないといけません。こいつらは甘やかすとつけ上がるので尚更です。

「お前ら、今月の小遣い50%カットな」

『えええぇぇぇぇ!?』

 抗議の声を上げるニンフとアストレア。

「………って50%ってどれくらいでしたっけ?」

「半分よ半分! トモキ! それはいくらなんでも横暴なんじゃない!?」

 訂正、抗議するニンフと理解できていないヴァカ。

 イカロスは部屋の隅っこで小さくなったまま、無言です。学校で散々叱られた事に落ち込んでいるのでしょう。

 

 ………まあ、いいか。反省しているんだし。

 そもそもこいつらに悪意なんて無かったんだし。

「と、言いたい所だが今回は特別に許す。今度はちゃんと俺にも言ってくれよな」

「本当!? やったー!!」

「…うん。でも私はトモキを危ない事に首を突っ込ませる気はないからね」

「こっちだって危ない事なんて御免だ。イカロスもそれでいいな?」

「はい、マスター。…ありがとう、ございます」

 これにて一件落着。今日も大変な一日になりましたが、無事終わって良かったです。

 

 

「さて、じゃあ飯にしよう。イカロス、今日の晩飯は何だ?」

「………あ」

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 ずるずる。

 

「はぁ。まさか夕食の買い物まで忘れてすっ飛んでいくとはね」

 

 ずるずる。

 

「ううー、こんなの美味しくないー」

 

 ずるずる。

 

「もう三つも空にしてる奴が言うな! イカロスも気にするなよ、な?」

 

 ずるずる。

 

「…申し訳、ありません」

 

 

 今日の夕食はカップ麺でした。明日はもう少しまともなご飯を食べたいと思います。

説明
「そらのおとしもの」の二次創作になります。
色々と勢いで書いている部分が多く拙い作品ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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コメント
月野渡 様へ  一度やってみたかったネタだったのでつい… 許していただけるなら今後もちょくちょく使いたい所存です。(tk)
BLACK 様へ こういう作品には付き物な問題ですよね。その辺の決着は原作者様へお任せするという事で…(丸投げ) (tk)
枡久野恭(ますくのきょー) 様へ  桜井君もまさか自分が介入される側になるとは思いもしなかったでしょうね。実際問題、なぜ自分がモテないと信じてられるのか不思議です。(tk)
……フラレテルビーイングが完全にわたくしの手から離れつつあるorz(月野渡)
フラレテルビーイング、まさか別の人の作品で見るとは・・・。しかし智樹、いい加減介入理由に気付いてやれ。マイスター達だけでなくイカロス達まで泣かせることになるぞ(BLACK)
フラレテルビーイングが桜井智樹に介入するのは歴史の必然ですからね。今回の事件は避けられないものだったと思います。(枡久野恭(ますくのきょー))
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