、キミのとなりで五話前半
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「わぁ〜〜!

ビックリした〜〜」

 

 弾む様な明るい声が届く。

 クリクリと大きな瞳を見開きその表情はコロコロと驚きながらも楽しんでいるように見える。

 

 

「って希咲ちゃん!?」

 

 振り向いた先にいたのは熊の耳が付いたパーカーを着た、少し恥ずかしそうに頬を

赤らめる希咲ちゃんだった。

 

「えへへへへ……タケヤお兄ちゃんビックリした?」

 

「もう希咲、まずはごめんなさいでしょ!

 

ホントごめんねタケ君」

 

「だって愛梨ちゃんが――」

 

「あああぁぁぁ〜〜〜!? 

その、違うのッまさかあんなに驚くとは……、

ホントにごめんなさい……。」

 

 

 あたふたと顔を赤らめ頭を下げる愛梨さん。

 どうやら愛梨さんの悪戯心により、希咲ちゃんが行動を起こしたようだ。

 

 だからといって、驚きはしたものの嫌な思いをしたわけでも怒ると言うわけでもない。

 

 

「クスッ……」

 

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 あたふたと顔を赤らめる愛梨さんがとても可愛らしくてなんだかとてもおかしくもあった。

 

 

「もう、笑わなくても……、

確かに我ながら子供っぽかったと思うけど……、

ホントごめんなさい……」

 

 

 更に顔を赤らめしおれる愛梨さん。

 どうやら自分の行動を笑われたと思っているようだ。

 

「いや、そういうつもりでは」

 

 実際愛梨さんが思っていることでクスリときた訳ではない。

 

 出会った時の印象がとても大人っぽく、自分の一つ上とは思えない程の色気を感じたのだが……。

 

 今目の前にいる愛梨さんは顔を赤らめとても可愛らしく、その印象とのギャップに、愛らしさについクスリときてしまったのだ。

 

 第一、一度や二度脇下を突くくらい可愛い物だ。

 ふと高校時代の記憶がよみがえる。授業中やら休憩時間、部活の黙祷中までも優斗が脇やら首筋をくすぐったりしてきた物だ。

 

 その悪意に満ちた行動と比べれば……。

いやまて、だからといって流石にあの驚きかたは無いような……。

 

 

「えっと……タケ君?」

 

 

 愛梨さんの呼びかけに我に返る。

 微笑ましい姿に見惚れていると、いつのまにやら目があってしまった。

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「えっ、いや、あの、全然大丈夫っすよ! 

というかほら、わーッ驚いたみたいな感じで? 

希咲ちゃん驚いたよみたい……」

 

 なんとか取り繕うとするが自然と早口で取り繕うが……。

 

「ごめんなさい、ホント脇とかかなり弱い物で……。」

 

 すぐにそれもあきらめる。

 流石に見詰め合っていたことについては触れないにしても、今のは苦しすぎるだろ……。

 

 

「なんですかそれ〜」

 

 

 愛梨さんも思わず顔を緩める。どうやらお互い落ち着きを取り戻したようだ。

 

 

「はい、希咲も謝ろう」

 

 

 愛梨さんに促されるように希咲ちゃんが一歩前えと出る。

 

 

「タケヤお兄ちゃんごめんなさい」

「うん、いいよ」

 

 しっかりと頭を下げる希咲ちゃん。

 下げた拍子に熊の耳がついたフードが被さり、なんとも可愛らしい光景だ。

 

「希咲偉〜い!!」

 

 と、その姿に胸を打たれ抱きつく愛梨さん。

 見ていると本当に希咲ちゃんを大好きなのであろう。

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 その姿は義理のなんて微塵も感じさせない仲が良い親子そのものだ。

 

 

「えっと……それでタケ君もこれからお出かけですか??」

 

 

 ひょいっと、希咲ちゃんを抱きしめながら顔を出す愛梨さん。

 

 

「あ、はい!食料品買いに行きたいんですけど、

近くに安いお店ありますかね?」

 

 

 目的を思い出し、ちょうど良かったと思いながら愛梨さんにたずねる。

 できれば近いお店が良いのだが……。

 

「あのね、あのね!

希咲と愛梨ちゃんこれからお買いものなの!

武弥お兄ちゃんも一緒に行けばいいんだよ」

 

 愛梨さんに抱きしめながらコロコロと眩しい表情を向ける希咲ちゃん。

 思わぬ誘いに「ナイス希咲ちゃん!!」と心の中で叫ぶ。

 俺にとっては願っても無い事だ。

 

「そうね!

ちょうど桜木デパートに行くところだし、

一緒に行きますか?」

 

「えっ、はい是非!」

 

 まだここら辺に疎い所があるので、かなり助かる。

 と言わんばかりの態度を取りながらも、内心二人と買い物に行けるという事実に胸が躍る。

 

 さらに言えば、行こうと思っていたデパートに行けるのだから願っても無い事だ。

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「あっと、その前にこれ置いて来ても良いですか!?」

 

 片方の手が塞がっている事を思い出す。

 東さんからの引っ越し祝いを持ったままだったのだ。

 

 

「な〜に、な〜に?」

「クラシコのカップだよ、ほら」

 

 

 キラキラと瞳を輝かせ興味心身で袋の中を覗く希咲ちゃん。

 

 俺は希咲ちゃんに見やすい様、中身を開いて見せた。

 

 

「ホントだ〜、おっきいね〜」

 

 

 コップを両手に取り顔の前へと持ってくる希咲ちゃん。

 自分の顔と大きさを比べている様だ。

 

 

「もう希咲、落したら大変でしよ!?」

「は〜い……、あっ、お手紙もあるよ!」

「えっ手紙!?」

 

 愛梨さんの言葉に少しシュンとする希咲ちゃんだが、コップの下敷きになっていた茶封筒に気付き、再び瞳を輝かせる。

 

 しかしコップの下敷きになっていた事もあり全く気付かなかった。

 希咲ちゃんが言う様に手紙でも入っているのであろうか?

 

「ドキドキ、ドキドキ」

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「希咲ったら……、

タケ君の何だからそんな……で〜……、

誰から!?

洒落っ気が無い所から見て東さんポイけど」

 

「愛梨さんまで……って、あれ!?これ……。」

 

 茶封筒には何も書かれておらず、折り目が付いているところを見ると、すぐに取り出してそのまま使ったようだ。

 

 なんとも東さんらしいとうか、ホント身内には雑な人だよな!

 

 愛梨さんや希咲ちゃんに見えないように中身をちょっと確認すると、そこには何人かの諭吉さんが見え隠れした。

 

 給料に上乗せすればいいモノだが。こういう形で渡してくれるのは非常に助かる。

 

 引越しの代金やその他の費用をかなりじぃちゃん達に支援してもらったのだが、全く自腹を切ってないと言えば嘘になる。

 

 ぶっちゃけ、懐は寒かったのだ。

 

 これでは尚更朝の掃除は欠かせないではないか……。

 

 

「お手紙じゃないの?」

「残念ながらね」

 

 

 不思議そうな表情を浮かべ首を傾げる希咲ちゃん。

 希咲ちゃんの中では封筒=手紙なのであろう。

 

 

「店長は手紙書くようなタイプじゃないもんね」

 

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 もしかしたらと期待していたのか、少しがっかりとした表情を浮かべる愛梨さん。

 

 

「確かに」

 

 

 実際俺に店長が手紙を書く事など、挨拶程度で合っても想像つかない。

 

 

「とにかくこれ置いてきちゃいます」

 

 

「ならタケヤお兄ちゃんが戻ってきたらレッツゴ〜だね!!」

 

「ゴ〜だね〜」

 

 希咲ちやんに答える愛梨さん。

 

 うん、やはり楽しそうだ!

 

 俺は手をつなぎ楽しそうに待つ2人を残し、アパートへと戻った。

 

 

 

 

「ニンジンさんにトマトさん!!」

「はい、ありがとう〜」

 

 

 実際桜木デパートは歩いて5分弱と近いところに立てられていた。しかし、小さな公園内を横切りたどり着いたので一人だとたどり着くことが出来たか不安になる場所。二人に連れてきてもらえたのは本当に良かった。

 

 

「あっ、アイリちゃん!

このキュウリ、オケケがいっぱい立ってる〜、

シンセンだ〜!」

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 キャッキャとはしゃぎながらも買い物籠に品物を入れていく希咲ちゃん。

 

 カートを引く愛梨さんにひょこひょこ、着いて行く希咲ちゃん。

 デパートに入り早速買い物している所なのだ。

 

「それにしてもかなりの量買うんですね。」

カートの籠を見ると二つの籠に溢れんばかりの量が入っている。

 

「ほら、家には食べざかりが何人も居るでしょ? 

共用の大きな冷蔵庫でも買っておかないとすぐ無くなっちゃうのよ。」

 

 おそらく……と言うか確実に銀治さん達の事だ。

 

「何時も愛梨さんが買いに行くんですか??」

 

 アパートには共用のキッチンがあるが、もちろん各部屋にもキッチンが付いている。     

 まとめ買いをするとなると毎回かなりの量を愛梨さんが買ってきている事になる。 

 

「二人とも片寄ったものしかかつて来ないから……。」

「あっ……確かにそんな気がします。」

 

 苦笑する愛梨さんと俺。

 あの二人の事だ、まだ会って間もないがその姿は容易に想像できた。

 

「ちゃんと食費代は頂いていますけどね。」

 

 すると愛梨さんは少しいたずらっぽく笑うと、バックから少し大きめの茶封筒を出す。

 そしてそこには達筆な時で大きく集金袋! と書いあった。

 

 どうやらこの封筒の中身も手紙では無いようだ。

 

 

「あのね、皆で食べると美味しいんだよ!

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タケヤお兄ちゃんも一緒に食べようね。」

 

「うん、そうだね。ありがとう」

 

 

 コロコロと笑顔を浮かべる希咲ちゃん。

 昨夜は優斗や琴音を交えたドンチャン騒ぎの夕食ではあったが、その笑顔から普段

の夕食がどういう物なのかを容易に想像出来る。

 

 

「よしっ、ではっ――」

 

愛梨の眼が突如さらなる輝きを帯びる……。

 

「最後にお菓子見に行きましょうか!!」

「きさチョコがイイ〜」

「よし、行こう〜〜」

 

 そのテンションから、どうやら二人はお菓子には目が無いようだ。

 

「きゃ〜〜、チョコチョコ〜〜!!」

 

 つないだ手をしっかりと結び、キャーキャーと嬉しそうにお菓子売り場へと駆けて行った。

 

 俺と買い物籠を乗せたカートを残して……。

 

 

 

「あとちょっとガンバですよ。」

 

愛梨さんが振り向きながらエールを送る。

買い物の帰り道、俺の両手は塞がっていたのだ。

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「がんばります。」

 

 

  両手にエコバックいっぱいの食材を持ちながらアパートへと向かっていたのだ。

 

 

「それにしても……かなりの量になりましたね。」

 

 

 格好つけて「俺が持ちますよ」と結局荷物の大半を持つことになってしまった。

 

 

「これだけあっても直ぐに無くなっちゃうんですけどね〜。」

「あははは……」

 

「それよりも重くありませんか?」

 

「へ、平気です……

逆にこんな重たいモノ、

愛梨さんに持たせられませんって!」

 

「助かります!

この量が一週間で無くなっちゃうんですよ、

これからはタケ君に手伝ってもらおうかな〜?」

 

「お、俺なんかでよければ、頑張りますッ!」

 

 愛梨さんの言葉で今朝の銀治さんとの一件を思い出す。

 あの食いっぷりを思えば納得だ……。

 

 それにしても――

後半へ続く

 

 

今回は長いので前半と後半で分けます。

投稿は明日になりそうです。

 

あとがきもそこで纏めて書きたいと思います。

 

byらいれん

説明
お待たせしました五話前半の投稿になります。今日も張り切って参りましょう!後半は明日投稿します。
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、キミのとなりで オリジナル 恋愛 家族愛 幼女 警官 公園 

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