黒子……ですの。その2
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 愛しのお姉さまを誑かす類人猿……もとい上条当麻。

 彼にジュースを奢ったあの日から数日――

 

『今度の日曜、暇か? あの時のお礼をしたんだけど』

 上条当麻から一通のメールが来ました。

 あの時の言葉通り、わたくしにお礼をしたいみたいですの。

 口だけの男かと思ってましたが、どうやら違うみたいですね。

『一応、暇ですけど……』

『なら今度の日曜会わないか?』

 この男は、どれだけわたくしにお礼をしたいのでしょうね。

 ただジュースを奢った。それだけですのに……

 まったく、変な人ですの。

 ……ですが悪い気はしませんね。

『構いませんの。では、今度の日曜日に』

『おう!』

 彼にメールを送り携帯を閉じる。

 そして、ふと鏡を見ると何故かわたくしは笑っていましたの。

 もしかしてわたくしは、彼に会うのを楽しみにして――

 

「いえ、それだけはあり得ませんわね」

 男に会うのが楽しみだなんて、そんなこと。

 ただの気の迷いに決まってますの。

 わたくしは自分の考えを振り切るように、眠りにつく。

 

 

「おーい白井ー! こっちだこっち!」

「はぁ。あまり大きな声を出さないで欲しいですの」

「あ、悪りぃ。白井に会えたのが嬉しくて……ついな」

「つい……じゃありませんの」

 いちいち恥ずかしい事を言わないで欲しいですわ。

 言っている貴方は無自覚で言っているから気にならないのでしょうけれど、その言葉を

聞かされる方は恥ずかしくて堪りませんわ。

「……それで、貴方は何をしてくれるんですの?」

 まぁ、過剰な期待はしてませんけどね。

「あーそれなんだけど、実は全然考えてなかった」

「は?」

 この男は何を言って……

「いやー、白井に礼をする事ばかりが先行しちまって――」

「はぁ……つまり、気持ちばかりが先走ってしまい肝心の内容を考えて無かったと?」

「すまん!」

「はぁー」

 確かに期待はしてませんでしたけど、ここまで酷いとは思いませんでしたの。

 何も考えていないって……バカなんですの!?

 あ、いえ、確かこの人はバカでしたね。

 はぁ……

「ちょっ、白井さん!? そんな呆れた顔をされると悲しいのですが」

「自業自得ですの」

 どこまで頭が空っぽなんでしょうかね。

「し、白井……さん?」

「はぁ。もうクレープでいいですの」

「……え?」

「そこのお店でクレープを買ってきてくださいまし。それを貴方からのお礼として受け取らせて

いただきますの」

「お、おう! 分かった」

 急ぎ足でクレープを買いに行く上条当麻。

 ジュースのお礼としては妥当なところでしょう。

 まぁ、クレープの方が値段が高いのですけどね。それは、何も考えていなかった罰ということで。

 

「買ってきたぞ白井」

「どうもですの」

 買ってきていただいたクレープを頬張る。

 うん。美味しいですの。

「……」

「なんですの? そんなにわたくしを見て」

「あ、いや……そうやってクレープを食べている白井が可愛いって思って」

「な――――っ!?」

 こ、ここ、この男は何を言って――っ!?

「ば、ばばば、バカなこと言わないで欲しいんですの!」

「バカなことって、正直な感想なんだけど」

 どうして、どうして、そんな事を真顔で言えるんですの?

 まったく、まったく――

「か、帰らせてもらいますの!」

「あ、おい、白井!?」

 上条当麻。貴方は一体何なんですの!?

 わたくしをこんな気持ちにさせるなんて……

 わたくしの心はお姉さま一筋なのに。

 

 

「白井のやつ……どうしたんだ? 俺がなんか余計な事したのか?」

 上条当麻は白井の背中を見つめながら、一人ぼやく。

 自分の何気ない一言が理由とは知らずに。

 

説明
早速迷子ぎみな気がしないでもない……
どうして、すぐに迷子になってしまうん?
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とある魔術の禁書目録 二次創作 上条当麻 白井黒子 

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