虚々・恋姫無双 虚拾伍之奥
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「雪蓮さま……雪蓮さま…!」

 

戦場の中で、私は兵士たちと一緒に血の涙をながしながら戦っていました。

だけど、孫呉の兵や蓮華さま、思春殿たちが感じていた怒りや憎悪よりも、私を圧倒させる感情がありました。

罪悪感。

 

「私のせいで……私が…!」

 

殺しました。

雪蓮さまは私が殺したのも同然でした。

 

 

あの時、天の御使いさまが消え去った後、私は雪蓮さまを支えて蓮華さまたちが居る場所に向かいました。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「雪蓮さま…私は……私は…」

「…明命、よく聞きなさい」

 

私に脇を任せて一歩一歩思い足を動かしながらも、雪蓮さまは凛とした声で私に言いました。

 

「私が死ぬのはあなたのせいじゃないわ。誰のせいでもない。あなたはやるべきことをした。あの子も自分がやるべきだと思ったことをした。それでも私が生きれなかったのは、それは天命としか言えないわ」

「…天命……」

「そう、だから私は悔しくも、あなたに怒りを持ってもいない。だから、蓮華のことをお願い。側であの子のことを、今日私に出来なかった分まで全部成し遂げて」

「はい………はい……!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

でも、どうしても頭から消えない思い。

あの時、私が下手に動いていなければ…もう少し状況を確認して動いていたのなら、雪蓮さまは生きていたのに…

そんな後悔と自分への罪悪感。

それを振り切ろうかのように、私は目の前の敵を殺し尽くしていました。

 

その中、

 

「!」

 

変な匂いがしていました。

これは……毒の匂い!

 

「全軍ここから離れなさい!」

 

いつの間にか周りが、毒の霧に包まれていました。

私は昔から毒に耐性をつける訓練も受けていたのである程度は大丈夫でしたが、一般の兵士たちは自分が毒を受け死んで行くことも分からず戦い続けていました。

まさか魏軍から…そんな、ここにはまだ自分たちの兵も残っているのに…!

一体どこから…

 

「周泰隊、今から撤退します!この辺りは危険です。全軍引き上げて!」

 

私はそう皆に命じて毒が放たれている、毒の霧が最も濃い場所に向かって走りぬきました。

 

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「っ!毒が濃い!」

 

いくら私でもそろそろ頭がじりじりとしてきました。

周りにはまだ血迷って戦いを止めず自分が死にゆくことも知らず敵を殺している兵士たちも居ました。

こんなに濃い毒霧の中でこれぐらいいたら…一般の人だったらもう倒れていてもおかしくもないはずです。

 

「早く毒を出している相手を仕留めなければ……」

 

長い髪で鼻と口を塞いでもっと奥へ進んだら、霧の濃いある場所に何かの影が見えました。

 

「あれが…!」

 

間違いないと判断して奥に進もうとしました。

 

そしたら、

 

サシュッ!

 

ガチン!

 

「!」

 

ギリギリで剣で止めてみたら、剣身に細い針が刺さっていました。

 

サシュッ、サシュッ!

 

つづけてまた来るのを感じて私は急いで避けました。

この毒を見る限り、多分相手は毒を使う相手。針にも即効性の何かが入っているのでしょう。

 

「っ!」

 

でも、そんなものを気にしていたら先に霧にやられてしまいます。

そう思った私は、影の方に手裏剣を何発投げました。

 

そして、相手がそれに気をとられているうちに、反対側に回って近づきました。

 

「動かないでください!」

「!!」

「!」

 

後ろから首に剣を付けてたら、ふと見慣れた顔だということに気づきました。

忘れることができない顔でした。

こんな酷い顔、寝たら夢に出るか怖いぐらいですから。

 

「あなたは……!」

「…!」

 

サシュッ!

 

「っ!!」

 

や、やられました。

脚に針が……

駄目、もう精神が朦朧と……

 

「ごめ……さい……こんなところで……まで……うわけには…」

 

何を……

で、気が遠くなりつつある中、下に落ちる視線に何かが移りました。

 

「御使い…さん……」

 

そこにはさっき見た、そして私たちの前で消えてた天の御使いが倒れていました。

 

「御使い……さま……」

 

その時、また自分の行動の愚かさを思い出してしまいました。

あの時、…ああしていなければと…

 

御使いさま、あなたは自分と何の関係もない、寧ろ敵であるはずの孫策さまのために命を賭けて、敵の城に入ってきて…助けようとしたのに…それなのに家臣という私は…

 

時間を戻すことができるなら……

 

「御使いさま……」

 

最後の力で、私は御使いさまの顔に手を伸ばしながら気を失っていました。

 

 

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「……きて……起きてください!」

「!!」

 

と思ったら、いつの間にかまた身体が軽くなっていました。

 

「あなたにお願いがあります」

 

気を確かにして見たら先の女の人が私を見ていました。

いえ、確かに言うと「見て」はいませんでした。その人は目を閉じて居ました。目が見えないのでしょう。

 

「今さっきあなたに刺した神経毒と、この霧に耐性が付く薬を使いました。動くに問題はないはずです」

「…どうして?」

 

どうして一度気絶させたからまた自由に…

 

「あなたに頼みがあります。この方を…一刀様をどうか安全な所に連れて行ってください」

「…へ?」

 

一瞬、言っている意味が分かりませんでした。

 

「あなたは、私たちに借りがあります。この状況、あなたの責任もあるはずです。ですから、一刀様を助けてください」

「どうしてそんなことを敵の私に頼むのですか?このまま私がこの方を連れて行って、どこかで殺してしまうかもしれませんよ」

「……わたくしは分かります。あの時、あの場所でのあなたの行動。感情。声…あなたは決して悪い人ではありません。何の罪もない子供を殺すことが出来るはずがありません」

「………」

「それに、またも言いますが、こうなったのはあなた、そして亡くなった孫策さんの責任もあります。少しでも罪悪感をお持ちならどうか…お願いします」

「……」

 

私はその人を睨みました。

嘘を言っているのではありませんでした。

ですけど、この人………

 

「わたくしは……構わず……一刀様を助けられるのは……あなただけです。ですから早く……」

 

やっぱり、この人ちょっと調子がおかしいです。

肌の色が黒くて良くわかりませんが、汗を凄くかいていて、手を付けてみたら熱が酷いです。

 

「分かりました。ただし、あなたも一緒に行きます」

「へ…ひゃっ!」

 

私はその人の腕を引っ張って立たせて、腰を掴んで片手に持ちました。

そして、もう片手には一刀様を抱いて戦場を駆けました。

 

「動いたら危ないので絶対動いちゃ駄目です!」

「わたくしのことは連れていかなくても…

「駄目です!あなたは孫策さまを助けようとした恩人です!それを駄目にしたのは私…!だからあなたまでも見逃してしまえば、私は本当に孫策さまに許されないことをしてしまうことになるのです!」

「………」

 

だけど、この行動。大丈夫なのでしょうか。

敵の将と天の御使い。

その場に殺すことおろか、戦場から離脱して隠してあげようとしているこの行動。

もし、バレてしまったら私は……

 

いいえ、そんなことを考えてる場合ではないのです。

今は早く……この人たちをつれてこの戦場を離れなければ……

 

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――そして、ここに二人を連れて来て……毎日隙を見てここに訪れて、二人の様子を見続けていたわけですか。

 

「…はい……って、あの、いつからそこにいらっしゃったのですか、あなた様は…」

 

――………

 

万安ちゃんが周泰さんを毒から回復させた理屈は恐らく、推測ですが…周泰さんが倒れる時に、万安ちゃんは周泰さんが一刀ちゃんに触れることを見たのだろうと思います。

 

――周泰さん、ちょっと一刀ちゃんをほっぺをつねってみてくれますか?

 

「へ?」

【え?…】<<ぐいー>>【あいだだだだー!】

「こうですか?」

 

何の迷いもなく実行しやがったよ、この人……

 

『痛いじゃない』「!!」

「あ、ごめんなさい。割と慣れていたもので……」

「慣れてたじゃと?それはどういうことじゃ?」

「え、あ!そ、それはその……」

 

気絶してる間散々遊び道具に使いましたね、この人。その気持ちは分からなくもないのですが……

 

「ちょっとほっぺの柔らかさがお猫様のぷにぷにした肉球にしていたもので…」

『何それ意味分かんない!』

 

一刀ちゃんの訴えはもっとも…

でも、僕も一刀ちゃんのお姉ちゃんだった頃には散々堪能していたのでそこんところはまぁ突っ込まないようにして差し上げます。

 

――ところで黄蓋さんはどうやってここに……

 

「うむ、何日かこ奴がどっかに出かけるのを見かけたのでな。策殿もなくなって皆沈んでおるというのに、こ奴ったら慎みというものを知らんのかと、ちょっと冥琳の真似をしようと尾行してきたのが、この様での…」

 

――良く孫権さまや周瑜さんに報告せずに…

 

「できるわけないじゃろ。そんなこと今言ったら、例え明命でもただでは済まぬのじゃ」

 

――まぁ、それに付いては僕も感謝の言葉申し上げます。

 

「別にお主らに感謝されたくてやったわけではおらんわい。儂はただ、明命の優しい心のせいで自分を傷つけないかが心配なだけじゃ。

「祭さま……」

「………」

 

ぐいぐい

 

「うん?」

「?」

 

暫く見ていた一刀ちゃんが黄蓋さんの裾を引っ張りました。

それを見た周泰さんも一刀ちゃんに注目しました。

 

『二人とも、結以お姉ちゃんと、僕のこと助けてくれたありがとうございます』<<ペコリ>>

「……うっ」

「…い、いいえ…」

 

子供までそう頭を下げてくるからには、流石の黄蓋さんも固くは出られなかったようです。

 

「ま、まぁ、それはそうとしてじゃが…」

 

と、照れくさくなったのか黄蓋さんは話を変えました。

 

「この小娘は、どうするつもりじゃ?どうやら身体の調子も良くないようじゃし、いつまでもこのままにしておくわけにも行くまい」

「……あの、やはり私が出て医者を手配して…」

「駄目じゃ。そんなことをして思春辺りにでもバレてしまったら口塞ぎもできんぞ。冥琳の奴にバレて本当にお終いじゃしの」

「ですが……」

 

……二人とも困っているようですね。

一刀ちゃんも内心は万安ちゃんに抱きついて泣きたいところ人の目があるから黙って見ているだけのようですし……

 

一刀ちゃん?

 

「…?」【何?】

 

――万安ちゃんを、故郷に帰らせようと思います。

 

「!」

「故郷じゃと?」

 

黄蓋さんが疑問そうに言いました。

万安ちゃんは見た目からすると少し焼けていて、江東に住んでいる人から見るとあまり不思議じゃないかも知れないけど、服やらを見ると大陸の人ではないことが分かります。

大体マントを脱がすと重要なところやっと隠したぐらいですけどね………

 

――彼女はここから遙か西、蜀からまた南に入る南蛮の胎生です。ここで病気なったのは恐らく、こちらの水や食べ物が口に合わなかったせいでしょう」

「じゃあ、南蛮に帰ったら治るのですか?」

――少なくともここにばかり置くよりはずっとマシでしょう

 

少しでも回復すると、薬師の彼女のことですから、後は自分で何とかできるでしょう。

 

「ふむ…じゃが、どうやってそこまで連れて行くのじゃ?」

「あ、それは………」

 

周泰さんと黄蓋さんが困った顔をしますが、僕は一刀ちゃんのことを見ました。

 

「………」

――一刀ちゃん?

「………」

――僕がすることも出来るですが、あまり派手にやってしまうとバレてしまう危険があります。ここは一刀ちゃんが…

「……」【南蛮に行ったら…もう二度と来ないのね】

――……はい、一度帰ったら、もうここには呼ばないつもりです。

「………」

 

一刀ちゃんは嫌だとはとても言えず、だからってこんな風に突然万安ちゃんと離れることも嫌で何も言えないまま黙々と俯いていました。

 

「か…ずと…さ、ま…」

「!」【結以お姉ちゃん!】

「気が着いたのか?!」

 

――万安ちゃん!

 

「……左慈…さま…もうしわけ…ありまs」

 

僕に謝ろうとするのを見て、僕は直ぐにその口を止めました。

――勝手なことは言わないで。あなたは良くやってくれました。一刀ちゃんもこうして元気ですし。

 

「です…が…」

 

――ありがとう、本当に…こんなになるまでやってくれて……感謝してるわ。

 

「……」【結以お姉ちゃん……】

「………」

 

万安ちゃんには一刀ちゃんの心の声が聞こえません。

万安ちゃんの薬がないと、一刀ちゃんと万安ちゃんの意思疎通の手段はありません。

 

「かずと……様…」

 

それでも、万安ちゃんは何も見えないまま、顔は天井を向けたまま、手を伸ばしました。

一刀ちゃんは前に出てその手を掴みました。

 

――そこのお二方、よろしければ少し席を外してもらえますか?

 

「あ、は、はい…」

「…仕方ないの」

 

呉の二人さんも空気読んでくれて外に出て扉を閉じました。

 

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「………」【万安ちゃん…大丈夫?】

「…かずとさま……お体の方は、大丈夫なのですか?」

「…」

 

一刀ちゃんは返事代わりに掴んだ万安ちゃんの手をもっと強く握り締めました。

 

「…良かったです……」

「……」【…よくないもん……全然、良くない…】

「きっと一刀様なら今、わたくしの心配をなさっているだろうと思います」

 

万安ちゃんも一刀ちゃんと長く一緒に居る間、大体一刀ちゃんの思考ルーツを分かってきたようです。

 

「わたくしは、大丈夫ですよ。こうして一刀様のことも無事ですし、わたくしに出来ることは全て成し遂げました……そうですよね、左慈さま」

 

――ええ、あなたは良くやってくれました。僕の代わりに、命を賭けてまで一刀ちゃんを守ってくれました。それだけでもあなたは、僕に負った貸しも全部返しました。

 

「…違います、左慈さま」

 

 

「わたくしがあなたに借りがあるとか、そんなちっぽけなことで一刀様を守ろうとしたわけではありません。…わたくしは、左慈さまの幸せのためにこうしたのです」

 

僕の…幸せ?

 

「そして、あなた様の幸せは、わたくしの幸せでもあります。ですから……一刀様が無事であなたが幸せなら……わたくしは例えここで命を落としても構いません」

【そんなこと言わないで!結以お姉ちゃんは死なない!南蛮ってところに戻ったらいいんでしょう?行こう、今直ぐ行こう!】

 

……孟節……あなたは……

 

――あなたを死なせるつもりはありませんわ、「結以」。一刀ちゃんもそう言ってます。

 

「!左慈…さま」

 

彼女を真名で呼んだことは…初めてこの娘の真名をもらった以来一度もありませんでした。

真名を許した相手が自分を真名に呼んでくれないことは、その人にとって何よりも酷い屈辱。

それでも彼女は、一度もそれについて文句を言ったことがありませんでした。

そう、この娘は最初から………そんな娘だった。

 

――あなたには生きて欲しいんです。そして、誰よりも幸せになってもらわなければならない。幸せすぎて、他の人のことなんて考えられないほど幸せに、してあげます。

 

一刀ちゃんと同じほど、あなたのことも幸せになってもらいたい。

だから……

 

――結以、僕のお願いを立派に成し遂げてくれたあなたには、ご褒美をあげなければなりません。

 

「へ?」

 

――この世界で一度あなたから奪われたもの。

 

僕はさっき南華老仙の爺からもらった「珠」を、結以の手に乗せてあげました。

 

――それを飲み込んでください。

 

「……」

【さっちゃん?】

 

結以は何の迷いもなく、僕からもらったその珠を口に入れて、飲み込みました。

 

「!」

 

そして、次の瞬間、

 

「あぁ……ぁ………あぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

 

結以は顔を掴んで叫び出しました。

 

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「!」【結以お姉ちゃん!】

「あああああああああああ!!!ぁああ゛!!」

 

結以はただ叫ぶ。痛いはずです。

でも、それを耐え抜ければ……

 

「何事じゃ!」

「どうしたんですか!」

 

その声に驚いた外の二人まで中に入ってきました。

 

【さっちゃん!結以お姉ちゃんに何したの!】

――彼女の眼は元々とても赤い、赤い瞳だったそうです。彼女の一族は炎の化身、祝融の子孫で……その赤い瞳は宝石のように美しく、周りの蛮族たちは皆その瞳を恐れながら、そしてその美しさを妬んだと言われます。

「何を言ってるんですか?」

 

だからあのような刑罰が生まれた。彼女はその犠牲者だったのです。

だけど、もう……

 

「はぁ………はぁ………」

――もう収まったようですね。なくなってたものがまた生まれてくる感覚はなかなか痛いものですからね……

「……」【結以お姉ちゃん、大丈夫?】

「…………」

 

結以は、しばらく自分の眼がある部分をふさいだまま何も言わなかった。

そして、…ゆっくりと、その手を放して……その中の誰もが見たことのないそのまぶたの中を見せるのでありました。

 

「………う……そ」

 

真っ赤な瞳。

まるでルビ、いや、そんな宝石に比べるにも惜しいほど、美しい瞳二つが、そこにはありました。

 

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――如意珠の芯でした。食べた者は、病者はあらゆる病から開放され、身体が一部がない者はその力でなくなった肉体が生えて来て、死んだ者の口に入れるとこの世が終わるまで血気のあるままにしてくれるという妙薬中の妙薬です。

 

「わたくしの……眼が……光が……」

【……結以お姉ちゃん】

「綺麗……」

 

部屋の中の誰もが(僕を含め)その眼に自分たちの眼を魅了され、周泰さんはボソッとそんなことまで口にしまうほど、彼女は元々は綺麗な人でした。

 

――周泰さん、顔を洗う水をもらえますでしょうか。

 

「へ、あ」

「儂がやろう」

 

彼女の眼に魅されぼうっとしていた周泰さんの代わりに黄蓋さんがあっち置いてあった水を入れた瓶の水を広い盥に移して持ってきてくれました。

 

「……」

 

水が入った盥と布巾が自分の前に来ても、しばらく悶々を状況を分からずしている結以に向かって、

 

――洗って?何なら一刀ちゃんにやらせてもいいけど。

 

「じ、自分でします」

 

流石に子供に顔洗ってもらうのは恥ずかしかったのか、彼女は自分の手で水を汲んで、その顔の洗いました。

 

 

 

顔を洗う度に、彼女の顔から何かが落ちてきます。

 

彼女の顔を覆っていたかさぶたや腫れ物が落ちてくる。

 

そして、布巾で顔の水を全部取った時には、彼女は昔、彼女が毒草に手を付く前の美しい顔に戻っていました。

 

「……<<( ゚д゚)ポカーン>>」

「( ゚д゚)ポカーン」

「( ゚д゚)ポカーン」

 

それを見た三人とも、驚いて言葉もでません。

 

「あの、皆さん、どうなさったのですか?」

「ど、どうも何も……あの、これ!」

 

周泰さんがさっさと鏡を持ってきて(いや、だからって壁にくっついている鏡を取ってくるのも…どんだけ正気じゃなかったのやら)結以に見せました。

 

「…これは……わたくし…」

――あまりにも久しぶりだから自分でも分からないのですか?

「………あぁ……」

 

南蛮で、いや、大陸で見てもそんな美女はなかったと言えた。

実際に周泰や黄蓋さんまで魅了されていたし、一刀ちゃんたら驚いて声も出なかった。

 

紗江には悪い話ですけど、彼女はまだ時が熟されてないつぼみの美しさなら、結以の美しさは満開した華。

華琳さまが彼女の本当に顔を見ると、紗江のことなんてさっぱり忘れてしまうほどの美しさでした。

 

――これが、僕からあげるあなたへの感謝の気持ちです。

「………」

 

…?

何か期待したより反応薄い。

 

「左慈さま…」

 

彼女は僕のことを見ていました。

 

「左慈さま………左慈さま!!」

 

彼女は突然僕に向かって飛びついてきた。

ちょっと、僕身体実際ないんだからあぶな……

 

ぎゅーっ。

 

「………へ?」

「左慈さま……左慈さま…!」

 

ちょっと、え?どうして……僕、抱きつかれて…

っていうか、

 

「ちょっと、放れなさい!人の前よ!<<かあ>>」

「いえ、どうぞどうぞ」

「……<<どうぞ>>」

「青春じゃの」

 

もうだめだ、この面子、早くなんとかしないと……

 

「会いたかったです……一度だけでも良いから…あなた様を…見たかった……」

「あ…」

 

そっか、僕は結以の瞳を今まで見たことがない。

それは逆に言うと、彼女は一度も僕のことを見たことがなかった。

 

「…はい、はい、もう見たからいいでしょ?もう放れてください。いい加減僕が恥ずかしいですから」

「あ、す、すみません」

 

やっと分かってくれたのか、結以は僕から放れました。

 

というかちょっと待って、そろそろ僕の身体の変化もヤバいのですけど……いや、この際はちょっと放っておきましょう。

 

「結以、本当にありがとうございます。一刀ちゃんのことも…あなた自身のことも、守ってくれて……」

「…わたくしこそ、分に余るものを受けてしまいました…」

「そんなことはありません。あなたは十分値します。それに…さっきからあなたのことを待っている人も居ますから、僕への感謝は後回しです」

「え?あ…」

 

結以が振り向いたら、一刀ちゃんが涙溢れそうなかおで結以を見上げていました。

 

「あ、あのごめんなさい、一刀様、わたくしったら左慈さまのことで頭一杯で一刀様のこと無視して…」

「……<<ぎゅーっ!>>」【よかった!】

「へあっ!<<ぎゅっ>>」

 

今度は結以が一刀ちゃんに抱きつかれた驚く番でした。

 

「良かったって言ってます」

「え?」

「……これで妹さんにも堂々と会いに行けるねって」

「…あ」

 

結以、一刀ちゃんにあんなことまで言っていたんだね。

まぁ、孟獲なら別に顔のことなんて気にしなかったけどね……

 

「ありがとうございます、一刀様…あなた様のおかげです」

「………<<ぎゅーっ>>」

 

そうやって一刀ちゃんは暫く、と言うには結構長い間、結以のことを抱きついていました。

きっと、ここで放したらもうお別れって分かっているからでしょう。

だけど、仕方がありません。彼女の居場所は南蛮です。いつまでも一刀ちゃんの側に居させるわけにはいきません。

 

……一刀ちゃんの見る目がこれ以上高くなってしまうと困りますので。

 

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「直ぐに戻って来ますので、二人はここで待っていてください」

「どこへ行くというのじゃ?」

「南蛮に…これからですか?」

 

僕たちが南蛮に行く準備をしたら黄蓋さんと周泰さんはキョトンとした顔で訪ねました。

 

「まぁ…一食頃も経ちませんよ。…一刀ちゃん?」

「<<コクッ>>」

 

頷いた一刀ちゃんは結以の手を掴んで、結以は僕の手を掴みました。

 

スッ

 

「なっ!」

「あ、そういえばあの時もこうして……こうやって南蛮まで行けるのですね」

「どういうことじゃ、明命?」

 

ドカーーーン!

 

「「!!」」

 

・・・

 

・・

 

 

着いた場所は、結以が住んでいた東屋の前。

 

「はい、着きましたね」

「はい」

「………」

 

真ん中にいた結以は、僕と一刀ちゃんの手を放して、家の方に何歩進みました。

 

「長く居なかったものですから……薬草も勝手に植えてますし、お掃除が大変そうです」

「……!」『じゃあ、じゃあ、手伝っていく!』

「駄目ですよ。一刀様には、これからやるべきことがありますから…」

「……ぅ…」

 

もうちょっとでも一緒に居たい一刀ちゃんの望みは薄情にも絶たれました。

 

「家の掃除なんて必要ないでしょう?この道に妹のところに行きなさい」

「わたくしももう少し心の準備とか必要なんですよ……それに、ここを捨てて行くわけには行きません。ここは左慈さまとの思い出がたくさんある場所ですから」

「………結以」

「左慈さま、左慈さまに話したいことがあります。今まで言えなかったですけど…」

「結以」

「左慈さま、わたくし…」

「結以、駄目」

「……え?」

 

僕は次を言おうとする結以の口を止めました。

 

「それ以上はいけない」

「…どうして、ですか?」

「………」

「……」

「?」

 

僕に言うことを邪魔された結以はその美しい顔が直ぐに泣きそうな顔になっちゃってました。

 

「…後で…全部収まったら…全てうまく行けば…その時に聞いてあげる」

「…………幸せに、してくれるって言ったじゃないですか」

「ええ、言いました」

「だったら…」

「もうちょっとだけ……もうちょっとだけ待ってて」

「………」

 

まだやらなければならないことが多すぎる。

何一つ解決されたことはなく、問題は大きくなり、そして増えつつあります。

だから今はまだ……まだ駄目。

 

「帰りましょう。一刀ちゃん」

『もう行くの?もうちょっとだけ』

「あまり、彼女を困らさないでください。それに、やりたいことがあるのでは?」

「………」

一刀ちゃんはその言葉を聞いたら、それ以上言わずに、結以の方を見ました。

 

「これでお別れですね」

『うん…さようなら、結以お姉ちゃん』

「はい、……また会いましょう」

『うん…また会いにくる。今度は僕がここに来る』

「はい、そしたら、にがーいお茶を用意してお待ちしてます」

「……<<コクッ>>」

 

一刀ちゃんはそこまで言って振り向きました。

 

【行こう、さっちゃん】

「はい……」

「……」

 

………

 

「一刀ちゃん、ちょっと先に行ってくれますか?」

【え?ボクやっと心決めたのにさっちゃんばかりここに長居するつもりなの?】

「直ぐ行きますから…ちょっと大人の事情があるんですよ」

「……<<むむむ>>」

 

納得いかない顔をしながら、拗ねた顔で一刀ちゃんは振り向いて、

 

スッ

 

戻っていきました。

 

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「左慈さま…?」

「僕、先ちょっと嘘言っちゃいました」

「え?」

「さっきの、実は南華老仙からもらったものなんです。だから僕からもご褒美はまだあげてないんです」

「どういう……」

「だから……これが……本当の僕からの褒美………」

 

 

 

 

 

どうも、さっちゃんです。

本日は虚々・恋姫無双をご覧になってくださって、ありがとうございます。

大変申し訳ありませんがこの先はとてもプライベートな場面ですので見せません。

見せる趣味ありません。

何のために一刀ちゃんを先に帰らせたと思ってるのですか。

これからも虚々・恋姫無双のさっちゃんは一刀の幸せな未来のために頑張りたいと思います。ほんとうにありがとうございます。

あ、これからも温かい目で見てください。

 

 

                                    音楽 MINAMIちゃん

 

 

説明
三番煎じです。ほんとうにありがとうございます。
色々取り乱しました。
後悔はしています。
修正はしません。
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コメント
・・・じゃあ、俺もスルーするよ!(運営の犬)
皆さんスルーうまいですね……ところで行方不明組みってさてどういうことでしょうか(TAPEt)
孟節は幸せになりそうですね。(ZERO&ファルサ)
行方不明組みがどうなるかだな(VVV計画の被験者)
さっちゃん……これから色々問題があるけど、どれから解決するのか、まずは行方不明組からですかね?(山県阿波守景勝)
百合?wwww(an)
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