G×N・ネギま!とヨコシま!〜五話目〜
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ピピピピピピピ

 

「ふあ〜〜あ、ねむ……。まだ早朝は寒いから厚手の下着にしとこ」

 

携帯からアラームが鳴り、明日菜は朝の新聞配達の為に着替えようとするが下着が一枚もない事に気付き、慌てふためく。

 

「な、何で?何で?」

「ん〜〜、どしたんアスナ?」

「私の下着が一枚も無くなってるのよ!!」

「それは変やな……あや?ウチのも無くなっとる」

「はっ!!も、もしかして…」

 

何か思いついたのか、明日菜はカモが寝ている押入れを開いてみる。すると……

 

「おっ、姐さんおはようございます。いやー、コレぬくぬくっスっよー」

 

案の定、カモが明日菜と木乃香の下着に包まって寝ていた。

 

「断りもなく人の下着で何をやってるのよ、このエロガモーーッ!!」

「ひーーー、勘弁っス姐さん!!」

「まあまあ、アスナもそんなムキにならんと」

「何を呑気にしてるのよ。木乃香の下着もコイツに盗られてるのよ」

「でもどっかに持って行った訳でもないし、ちゃんと返してもろたらウチは別に」

「ああ、このかの姐さん。何て優しいんだ」

「甘いわよこのか。コイツはやらしい目的で私達の下着を盗んだに決まってるのよ。…そうね、例えば横島さん以外にそんな事されてこのかは平気なの?」

「えっ、そうなん?う〜〜ん、それはややなあ」

「と言う訳でこのエロオコジョにはお仕置きが必要なのよ」

「じゃあ、仕方あらへんな」

「そんなーーーーっ!!」

「自業自得よ。じゃあ、逝きましょうか」

「ぎゃーー、字が違うっス!!」

「違わないわよ」

「いーーーーやーーーーーっ!!」

 

 

そうして明日菜のお仕置きを受けたカモだが登校時間にはしっかりと復活していた。

こういった肉体の再生能力は横島同様、スケベの必須スキルなのだろうか?

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第五話「私はガイノイド、私には心など…by茶々丸」

 

 

あの後カモを連れて帰ったネギ達は木乃香にはただのペットで通すつもりだったが、カモが明日菜達の下着を漁った事であっさりと喋れる事がばれてしまい魔法の事は隠したまま喋れる不思議なオコジョと言う事にしておいた。

 

「まったく、下着ドロのエロオコジョなんてとんでもないペットが来たものね」

「もー、やったらあかんえ」

「今後はなるべくひかえやす」

「するなって言ってるのよ」

 

登校途中、明日菜はカモの事を責め続けていて、そんな中ネギは肩の上に乗っているカモに話しかける。

 

(それよりカモ君、人前じゃ喋っちゃダメだよ)

(えーー、何でだよ兄貴)

(オコジョが喋ったら目立つだろ)

 

学校に着くとネギはあたりをキョロキョロと見回し出す。

 

「よう兄貴、さっきから何キョロキョロしてんだ?」

「いや、ちょっとね。……実はうちのクラスに問題児が」

「問題児が何だって?」

「え?……うひゃあっ!!」

 

いきなり声をかけて来たのは今噂をしていた相手、エヴァンジェリンとその従者のガイノイド、茶々丸であった。

 

「おはよう、ネギ先生今日もまったりとサボらせてもらうよ。ふふふ、ネギ先生が担任になってからいろいろと楽になった、感謝するよ」

 

「エ、エヴァンジェリンさん、茶々丸さん!?」

 

二人を目の前にしたネギは杖を抜き戦闘態勢を取ろうとするが、エヴァが差し出した手に動きを止められる。

 

「良いのかいネギ先生、こんな所で闘っても?それに勝ち目など無いのはこの前で良く解ってる筈だぞ」

「う、うう…」

「校内では大人しくしていた方がお互いの為だろ。それから言っておくがタカミチや学園長に助けを求めようとするなよ、生徒達が襲われるのは嫌だろ?」

 

そう言い残すとエヴァは去って行き、茶々丸もネギに一礼するとその後を追い去って行く。

残されたネギは言い返す事も出来ずに拳を握りしめ、泣きながら走り去って行く。

 

「うわああ〜〜〜〜ん!!」

「ち、ちょっと待ちなさいよネギ」

 

 

 

「マスター、少し言い過ぎたのでは?」

「ふん。あの程度で闘えなくなるのならその程度だっただけだ。それこそ「坊や」ではなく「お子ちゃま」だな。(しかしあのオコジョ、少し厄介な事になるかもな)」

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「ちょっと待ちなさいってばネギ」

 

ようやく追いついた明日菜だがネギは項垂れて泣いていた。

 

「うわああ〜〜〜〜ん。な、何も言い返せないなんて僕はやっぱりダメ教師だ〜〜」

 

「そうか、あの二人っスね!?あの二人が兄貴を困らせている問題児なんスねー!?許せねえ、舎弟の俺っちがとっちめて来てやりまさぁ!!」

 

そう言いながら何処から取り出したのかカモは釘バットを振りかざして走り出そうとする。

 

が……

 

「あのエヴァンジェリンさん、真祖の吸血鬼なんだ」

「故郷に帰らせてもらいやす」

 

夜逃げスタイルで立ち去ろうとする。

だが、そのしっぽを明日菜が掴んで逃がさない。

 

「そして隣に居た茶々丸さんがパートナーで、僕はあの二人に惨敗してるんだ」

「し、真祖の吸血鬼って言えば最強クラスの魔物じゃねえか。兄貴も良く生き残れやしたね?」

「うん、僕一人だったら今頃血を吸い尽されて死んでたよ。でも、タダオが助けてくれたから」

「タダオ?誰ですかい、それは」

「横島忠夫、GSの横島忠夫さんだよ」

「横島……何処かで聞いた様な……はっ!!」

 

その時カモの脳裏に浮かんだのはあの悪鬼の様に黒いオーラに包まれた男の姿だった。

 

「ア、兄貴……その横島って男はGジャン姿で頭に赤いバンダナを付けてなかったですか?」

「タダオを知ってるのカモ君?」

「………やっぱり故郷に帰らしてもらいやすっ!!」

「ちょっとカモ君、何処に行くんだよ?」

 

再び逃走しようとするカモだがネギと明日菜の二人がかりで止められる。

その後、ようやく落ち着いたカモを加え三人でこれからの事を話し合う。

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「どうしたらいいかなカモ君?」

(お、ひょっとしてこれはチャンスかもしれねえな)

「そう言えば今あの子は魔力が落ちているって言ってたわよ。たぶん、次の満月までは大人しくしてるんじゃない」

 

明日菜のその説明にカモの目がキラーンと光る。

 

「そうか、吸血鬼だから月の満ち欠けに魔力が影響を受ける訳だな。そーゆー事ならいい手があるぜ」

「えっ!?何かあの二人に勝つ手があるの?」

 

ネギと明日菜は驚きながら聞き返すとカモは薄笑いを浮かべながら答える。

 

「相手の片方…あの茶々丸って奴を二人でボコっちまうんだよ」

「二人でって、それはちょっと卑怯なんじゃ」

「卑怯じゃねえよっ!!兄貴だって二人がかりで襲われたんだろ?やられたらやり返す。常識だぜ!!」

 

気乗りしないネギをカモは嗾けるが其処に明日菜が疑問を投げかける。

 

「でもどうやって?あの茶々丸さんも結構強いんでしょ?」

「其処はアレだ。ネギの兄貴と姐さんがサクッと仮契約を交わしちまうんですよ」

「ぼ、僕とアスナさんが仮契約!?」

「仮契約?ネギ、仮契約って何よ?」

 

明日菜の疑問にカモは目を光らせながら答えていく。頭の中は5万オコジョ$で一杯の様だ。

 

「仮契約っていうのは「魔法使いの従者」(マギステル・マギ)になる為の契約の事っス。「魔法使いの従者」はマスターの魔法使いを守り、助ける代わりにマスターから魔力をもらってパワーアップする事が出来るんス。オマケにアーティファクトという魔法具も付いて来る特典もあるんスよ」

「いいわね、それ。やってみようかしら」

「やってくれやすか!?な〜に、かんたんなことっスよ。兄貴とこうブチュ〜ッとするだけで」

 

カモはジェスチャーでキスをする素振りをするが明日菜はそれを見てとたんに赤くなる。

 

「じょ、じょ、冗談じゃないわよ!!何で私がキスなんかしなくちゃいけないのよ!?」

「あれ?姐さんひょっとしてキスはした事が無いんですか?」

「なっ!!」

「初めてなんじゃしょーがないっスよね。まあ、無理強いはしないっスよ」

 

カモはそう言い、口笛を吹きながら横を向く。

そんな態度にカチンと来たのか明日菜は顔を赤くしながらもその提案を受け入れる。

 

「わ、分かったわよ、やってやろーじゃない!!何よ、キスくらい!!」

「よっしゃ、じゃあ気が変わらない内に」

 

そしてカモはすぐさま地面に魔法陣を描き発動させ、二人は魔法陣から噴き出す光に包まれる。

 

「仮契約(パクティオーー)!!」

「な、何よこの光?(何だかちょっと気持ちいい)」

「じゃあ、アスナさん。お、お願いします」

「しょ、しょうがないわね」

 

明日菜はそう言うと戸惑いながらネギの額にキスをする。

 

「姉さん、おでこはちょっと中途半端な…」

「う、うるさい!!キスには変わりないでしょ!!」

「えーーーいっとりあえず仮契約成立!!『神楽坂明日菜』」

 

その叫びと共にネギと明日菜は眩い光に包まれる。

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翌日、街中のオープンテラスで横島は脹れっ面でコーヒーを飲んでいた。

 

その頬には真っ赤な手形が付いておりどうやらナンパに失敗したようだ。

 

「くそー、せっかくの日曜日。新たな出会いのチャンスなのに何故誰も相手にしてくれんのじゃ」

「ならば私が相手をしてやろうか」

「へ?」

 

声がした方に顔を向けると其処には何時の間にかエヴァと茶々丸が席に座っていた。

 

「エ、エヴァちゃん?」

「どうした?この私が相手をしてやると言っておるのだ。もう少し喜んだらどうだ」

「いや、バインバインのお姉ーー様ならともかく、ワイはロリじゃないし」

「き、貴様っ!!こう見えても私は…」

「でもちょーど良かった。エヴァちゃんには聞きたい事があったんだ」

「聞きたい事、何だそれは?」

「『登校地獄』の事だけどもし、この麻帆良から出たらどうなるんだ?」

 

横島のその言葉にエヴァは顔を曇らせ俯き、体も小刻みに震えている。

 

「エヴァちゃん?」

「お前は酷い奴だな、そんな事を興味本位で聞くとは。いいだろう、教えてやる。もし、この麻帆良の地を出たり、学校をズル休みしたりしたらとてつもない激痛が体を襲うんだ」

「とてつもない激痛?……それってまさか、『両手両足がボキッて折れて肋骨にひびが入り、苦しくて蹲った所に小錦がドスンと落ちて来た…』」

「止めろーーーーっ!!お、思い出させるなぁーーーーーーっ!!」

「マ、マスター!大丈夫ですか!?」

 

かつて味わったであろう激痛を思い出したのかエヴァは冷や汗をかき、息も絶え絶えで茶々丸に肩を抱き抱えられていた。

 

「だ、だが横島よ。何故貴様がそんなにも具体的にあの苦しみを言葉に出来る?」

「いや〜〜、実は以前ある事件での後遺症でそーいった激痛を味わった事があるもんで。何しろ生傷が絶えない職場やからな」

「そ、そうか…貴様も気苦労が絶えないんだな。同情するぞ」

「はははは」

 

エヴァは心の底からそう呟き、横島も乾いた笑いを返す。

 

「そーいえばエヴァちゃんにはプレゼントがあったんだった」

「わ、私に…だと?」

「ああ」

 

そう言いながら横島は懐からピンク色の紙に包まれた薄い板の様なものを取り出してエヴァに渡す。

 

「(何だこれは?形からするとハンカチみたいな物か。まあ、それはそれでいいか)開けてみてもいいか?」

「勿論いいぞ」

 

少し照れながらも包みを開き中身を取り出す。

 

(布じゃ無い…紙か?)

 

折りたたまれていたそれを開き、そこに描かれていた物を確認するとエヴァの顔に青筋が立ちその手もブルブルと震えだす。

 

「横島…何だこれは?」

「世界地図だけど?」

「……そう言えば貴様は別の真祖に噛まれたと言っていたな。…そいつの名は?」

「えっと、たしかブラドー伯しゃ…『この私をあんな化石脳味噌と一緒にするなーーーーーっ!!』どわーーーーっ!!」

 

地図を破り裂くと座っていた椅子を振り上げ横島に殴りかかる。ブラドー伯爵のボケ気味は何かと吸血鬼の間では有名らしい。

 

「何するんじゃーーっ!?エヴァちゃん!!」

「やかましいっ!!大人しく殴られろ!!」

「嫌じゃーっ、痛いやないか」

「男ならその位我慢しろ!!」

 

 

そんな二人を茶々丸は静かに眺めていた。

 

(あんなに楽しそうなマスターは初めてです)

 

其処に、ネギ達はやって来てエヴァと話をしている横島を見つける。

 

「あれ、タダオ?エヴァンジェリンさんと何を話してるんだろう」

「何だか随分と仲が良さそうね」

 

ネギと明日菜はその光景を不思議そうに見つめるが、カモはと言うと……

 

「あ、あ、あ……あの兄さんは……やっぱり俺っちは故郷に……」

「だから何でアンタはそんなに横島さんを怖がるのよ?」

「は、放してくだせぇーーーっ!!」

 

カモは涙顔で必死に逃げようとする。

あの病島はカモにとって結構トラウマだったらしい。

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「マスター、用事がありますので少しお傍を離れてもよろしいですか?」

「ん、ああ構わんぞ。あまり遅くなる前に帰って来いよ」

「はい、ありがとうございます。マスター」

 

エヴァに一礼した茶々丸はそのまま何処かへと歩いて行く。

それを見送ったエヴァは横島に向き直り、ニヤリとほくそ笑むが其処にタカミチがやって来た。

 

「おーい、エヴァ」

「ん、何だタカミチ。何の用だ?」

「学園長がお呼びだ。一人で来いだってさ」

「ちっ、仕方ないな。横島、話は今度だ。次は逃がさんからな」

 

エヴァは横島を指さしそう言い残すと踵を返して歩いて行く。

 

「何だエヴァ。随分と横島君と仲が良さそうじゃないか」

「五月蠅い、貴様には関係ない」

 

タカミチと一緒に歩いて行くエヴァを見送った横島は「助かった」と呟くとすっかり冷めてしまったコーヒーを飲みほして何処かへと歩いて行く。

 

「チャンスだぜ兄貴、あの茶々丸って奴が一人になった。今の内にボコッちまおうぜ!!」

「ダメだよカモ君、此処じゃ人目があり過ぎるよ」

「な、何だか辻斬りみたいね。しかも相手はクラスメートだし。でも、アンタやまきちゃんを襲った悪い奴なんだから何とかしないとね」

 

 

 

そうして茶々丸の後を付いて行くと、まずはコンビニで何かを買った様だ。

 

その後も、フーセンを木に引っかけて泣いている子供の為に取ってやったり、老人を抱えて歩道橋を渡ってやったり、子供達に懐かれていたりと悪い面は無く、むしろいい面ばかりが見えて来る。

とは言え、さすがにジェット噴射で空を飛び、ロボットだったと解った時には驚いたが。

 

 

 

「お待たせしました。お食事ですよ」

 

教会の裏庭に辿り着くとおもむろにしゃがみ込み、コンビニの袋の中から猫缶を取り出すと何処からともなく数匹の猫が集まって来る。

 

「いい人だ」

「ホントね」

 

ネギと明日菜はそんな茶々丸を見ていてホロホロと涙を流していた。

 

「何言ってんスかーーっ!!アイツは敵なんスよ、それにネギの兄貴は命を狙われたんでしょ。しっかりしてくださいよ!!」

「で、でもカモ君…」

「デモもストもないっス!!ここは心を鬼にして一丁バシーーッとお願いしやす!!」

「行きましょうネギ」

「ア、アスナさん」

「しょうがないわよ、このエロオコジョの言うとおりこのままじゃやられるのを待つだけよ」

「…分かりました」

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ゴーーン、ゴーーン、ゴーーン

 

教会の鐘が鳴り、食事を終えた猫達が帰って行くのを見届けた茶々丸だが後ろに二人の人影があるのに気がついた。

 

「…こんにちは、ネギ先生、神楽坂さん。油断しました、でもお相手はします」

 

「茶々丸さん、僕を狙うのはもう止めてもらえませんか?茶々丸さんの事見させてもらいましたがあんな優しそうな心があるのなら…」

 

ネギは最後通告とでも言う様にそう言うが茶々丸はやはり、それに応じようとはしなかった。

 

「申し訳ありませんが私にとってマスターの命令は絶対です。そのお願いには応えられません」

「そうですか…仕方ありませんね。(アスナさん、さっき言ったとおりにお願いします)」

「(上手くできるかどうか分からないわよ。まあ、全力は尽くすけど)」

 

人気のない教会の裏庭で二人は茶々丸と対峙する。

 

「じゃあ、茶々丸さん」

「…ごめんね」

 

「はい、神楽坂明日菜さん。…いいパートナーを見つけましたね、ネギ先生」

 

「…行きます!!「契約執行10秒間!!ネギの従者『神楽坂明日菜』!!ラス・テルマ・スキル・マギステル」

 

ネギがそう叫ぶと明日菜の体にネギの魔力が流れ込んで来てその身体能力は大幅に活性化される。

 

(何これ?体が凄く軽い。まるで羽根が生えたみたい。これが魔力の効果なの?)

 

明日菜は茶々丸が繰り出して来る拳を打ち払い、攻撃を仕掛ける。

茶々丸も攻撃を受け止め、明日菜を倒そうとする。

 

「早い!?素人とは思えない動きです」

 

 

「光の精霊11柱…集い来たりて……」

 

ネギは攻撃の為の呪文を唱えようとするがやはり、なかなか踏ん切りがつかない様だ。

そんな時、ネギの頭の中に先ほどカモの言われた言葉が浮かんで来る。

 

《兄貴、相手はロボなんだぜ。手加減なんかしたら兄貴がやられちまうっス!!何度も言うようですが気持ちを切り替えて完膚なきまでにブチ倒さねえと》

 

「うう、ゴメンなさい茶々丸さん!!「魔法の射手・連弾・光の11矢!!」

 

そして呪文は完成し、魔力で創られた幾つもの光の矢は茶々丸へと襲いかかる。

 

茶々丸は迫って来る魔法の矢に気付くがもはや避けきれず、自分が破壊される事を悟った。

 

「すいませんマスター。もし私が動かなくなってしまったらどうか猫のエサを…」

 

茶々丸が力無く呟いたその言葉はネギの耳に届いた。

 

「くっ…や、やっぱりダメだーーーっ!!「戻れ!!」」

 

ネギがそう叫ぶと魔法の矢は引き寄せられるようにネギに舞い戻る。

 

「んきゃーーーーーっ!!」

「ネ、ネギーーーっ!?」

「ア、兄貴ーーーっ!?」

 

「ネギ先生…何故…?」

 

茶々丸は自身を傷つけてまで魔法の矢を引き戻したネギを不思議そうに見つめるが駆け付けて来る明日菜達に気付くとすぐさまその場を飛び去った。

 

「ああーー、逃げられた!?」

「ちょっとネギ!!アンタ一体何をしてんのよ!?」

「兄貴ーーー!!何で矢を戻したりしたんだよ!?いくら魔法の盾で緩和出来るからって今のは無茶過ぎだぜ!!」

「魔法が思ったより強くて、それにやっぱり茶々丸さんは僕の生徒だし怪我をさせる訳には」

「甘いっ!!兄貴は甘すぎるぜ!!いくら生徒だからって相手は兄貴を殺しかけた敵なんでしょう。生徒の前に敵っスよ、敵!!」

 

けたたましく責めて来るカモにネギは俯いているが其処に明日菜が話に割り込んで来る。

 

「でもさエロオコジョ、あの茶々丸さんやエヴァンジェリンも二年間私達のクラスメイトだったんだよ。本当に本気で命を狙って来るのかな?」

「甘いっ!!姐さんも甘々っスよ!!さっき、まほネットでしらべておいたんスけどあのエヴァンジェリンって奴は15年前までは魔法界で600万$の懸賞金が懸けられていた元賞金首ですぜ。確かに女や子供を殺したっていう記録はねえが裏の世界でも未だに恐れられている極悪人だぜ!!」

「ちょっと、何でそんな奴がウチの学校に居るのよ!?」

「それは分かんねえけどよ、とにかく奴が本気で暴れ出したらどうなるか解ったもんじゃねえ。姐さんの友達にも危険が及ぶかもしれねえぜ?」

「マ、マジッ!?そんな事になるんなら仕方ないのかな?…ねえ、ネギ…」

 

明日菜はカモの言葉を聞いて申し訳なさそうにネギに向き直るが、

 

「そ、そんな事…そんな事言われたって……ぼ、僕…僕はどうすれば……うう、ぐすっ。…うわあああ〜〜〜〜〜〜んっ!!」

 

ネギは突如泣きだすと、杖に飛び乗り何処かへと飛び去った。

 

「ちょっとネギ、何処に行くのよーーーっ!!」

「兄貴ーーーっ!!」

 

 

 

そして、そんなネギの姿を少し離れた屋根の上で茶々丸は静かに見つめていた。

 

「ネギ先生……ネギ・スプリングフィールド。……貴方は一体……」

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そして飛び去って行くネギを見つめるもう一つの視線があった。

 

「ネギ?どうしたんだアイツ、こんな真昼間から」

 

 

 

ネギはひたすら空を飛んでいた。いや、逃げていた。

 

(僕は、僕はどうすれば……僕のせいでみんなに迷惑が。このまま何処かに行っちゃいたいな)

 

そんな風に考えていると前を良く見ていなかったのか、山の中に飛び込んでいた。

 

「でも何時までも逃げていたって…て、うわあっ!! お、落ちる〜〜〜。ぶわっ!!」

 

気がついた時にはすでに遅く、ネギは木にぶつかって杖から振り落とされ、そしてそのまま川の中へと落ちる。

 

川に落ちたネギは起き上がり辺りを見回すが杖が何処に行ったのか見当たらない。

 

「ぼ、僕の杖!何処にあるの!?」

 

すぐさま川から上がり、捜し回るが影も形も見つけられなかった。

 

「うう、そんなぁ〜〜。僕の大切な杖、あれが無いと帰れないし魔法だって使えない〜〜」

 

地面にへたり込んで涙ぐんでいると後ろの草むらからガサガサと草をかき分けて来る音が聞こえてきた。

 

「ひ、ひいい〜〜〜!!な、何?オオカミ?それとも熊?に、逃げなきゃ…あうっ」

 

ネギはそこから逃げようとするが慌てれば慌てるほどワタワタとうろたえ、顔から地面へと転んでしまう。そしてネギの耳に足音が聞こえて来る。

 

「僕なんか食べても美味しくないよ〜〜。た、助けて〜〜!!お姉ちゃ〜〜ん!!

 

「…美味そうじゃないのは見れば分かる。それに…そうか、ネギには姉ちゃんが居るのか。美人なのか?」

 

「え、お姉ちゃん?お姉ちゃんは美人だけど…え…タダオ!?」

「よ!!」

 

ネギが振り返るとそこには何時の間にか横島が居て右手を軽く上げて挨拶をしていた。

 

「何でタダオがここに?」

「いや〜、ネギが飛んで行くのが見えたから付いて来たんだがお前、木にぶつかって落ちただろ」

「う、うん。考え事してたら前を良く見るのを忘れちゃって」

「何があったんだ?」

「そ、それは……」

「拙者も知りたいでござるな」

「うわあっ!!(どわあっ!!)」

 

気配を殺して何時の間にか二人の後ろに居た楓であった。

 

「か、楓さん?」

「き、君は確か……(あの時のバトルジャンキー予備軍)」

「ネギ坊主に横島殿ではござらぬか。奇遇でござるな」

 

その後、ネギは二人に問いただされるが横島だけならともかく楓が居るのでそのまま話す事は出来ずにただ、悩みがあるとだけ言っておいた。

 

「そうでござるか。まあ、悩める時に悩んでおくといいでござるよ。思いっきり悩んで悩み抜いて、それから出した答えなら間違いは無いでござろう。逆に悩まずに出した答えなら必ず何処かで間違えてしまうと拙者はそう思うでござる」

「そんな物でしょうか?」

「そんな物だ。まあ、楓ちゃんの言う通り悩める内に悩んでおけ」

「それより二人共食事は済んだでござるか?」

 

楓がそう聞くと横島は腹に手を当てて空き具合を確かめる。ネギの腹からは思い出したようにグーと鳴る。

 

「そー言えばまだ昼飯を食って無かったな。ネギは?」

「僕もまだです」

「ならば今から一緒に岩魚でも獲って食べぬでござるか。丁度拙者も獲りに行く所でござるよ」

「そうするか。ネギ、お前も来い」

「え?は、はい」

 

ネギが答えるより早く楓は走り出し横島もその後を追う。

 

「ま、待ってくださーい!!」

 

楓は森の中、道なき道を飛び跳ねながら進んで行き、横島も女の子が通る所だからと別に気にせずに後を追っている。ネギもまた置いて行かれない様に魔力を足に集中させてごく普通に後を追っている。

 

(ほほ〜〜。横島殿だけでなくネギ坊主もなかなかやる様でござるな。これは後が楽しみでござる。古菲には悪いでござるが一足先に拙者が手合わせをしてもらうでござるよ、ニンニン♪)

 

何気に楓の罠にはまっている横島であった。

 

 

 

 

「さて、着いたでござるよ。此処なら岩魚は獲り放題でござる」

「うわー、魚が一杯居る」

「ほほー、中々だな」

 

楓が示す先にある川には沢山の魚が泳ぎ、ウエールズとはまた違う自然の姿にネギは目を輝かせている。

 

楓はクナイを使い魚を獲り、ネギはそれを真似しようとするが当然中々上手くいかない。

横島はそんな二人を後目にガチンコ漁(※禁止されています)で魚を獲って行くが楓に思いっきり殴られていた。楓曰く、『それは邪道でござるよ』らしい。

 

山菜採りではネギがキノコを一つ二つと採って行く間に楓は16人に分身してあちらこちらで採って行き、横島も短時間でかなりの量を採っていた。横島曰く、野草は薄給の彼にとって飢えから逃れる為の生命線らしい。

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「ふう〜、美味しかった。お腹一杯です」

「満腹満腹、しかもタダなのがまたいい」

「あいあい♪ではそろそろ始めるでござるよ」

「どわあっ!!か、楓ちゃん行き成り何を!?」

 

そう言うや否や、楓は横島に襲いかかる。

当然横島は避けるが楓の猛攻は続く、横島が避け続け楓が攻撃を繰り返す。

横島は猿神や小竜姫の指導を受けている為、霊波刀などを使わなくてもかなりの強さを秘めていた。

 

「思った通り中々の御仁でござったな」

「しまったぁーーーっ!!初めからこれが狙いやったんか、謀ったなーーーっ!!」

「何の事か解らぬでござるな、ニンニン♪」

 

そんな二人の闘い?をネギは眺めていた。

 

(二人共凄いなぁ。…僕もあんな風に強くなれれば、でも今の僕じゃ)

 

それから数時間、ようやく満足したのか楓は「いい汗を掻いたでござる」と言いながら額の汗を拭い、横島はうつ伏せに倒れて肩で息をしていた。

 

「さて、拙者は風呂の用意をして来るでござるから忠夫殿とネギ坊主は休んでいるでござる」

 

「あ、はい」

「言われんでも一歩も動けんわい」

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そして空が夕闇始めた頃、ネギはドラム缶風呂に横島と一緒に入り夕焼けを眺めていた横島に話しかける。「男同士、積もる話もあるでござろう」と楓の粋な計らいらしい。

 

「ねえ、タダオ。僕は間違っていたのかな?」

「何が?」

「さっきは楓さんが居たから詳しく話さなかったけど僕は茶々丸さんをアスナさんと一緒に倒そうとしたんだ」

「……そうか…」

「確かに茶々丸さんはエヴァンジェリンさんと一緒に僕を襲って来たけどそれはマスターのエヴァンジェリンさんの命令だったんだし、逆らえなかったんだろうし…」

「お前は自分の意思で闘ったのか?」

「ううん。責任を擦り付ける気は無いけどカモ君っていう僕のペットというか使い魔というか、そのカモ君が最初に二人がかりで片方を倒した方がいいって」

「それで後悔してるって訳だな」

「……うん」

 

風呂の淵に寄りかかり項垂れているネギの頭に手をやり、横島は語りかける。

 

「いいかネギ?後悔には二つある」

「二つ?」

「そうだ。ああするしか無かったという後悔と、ああしなければ良かったという後悔だ」

 

哀しげな瞳で話を続ける横島をネギは見つめ、その話に耳を傾ける。

 

「ああするしか無かったという事は選択肢は一つしかないという事、あったとしてもそれは絶対に選んではいけない物だ。そしてああしなければ良かったという事は他にも選ぶべき選択肢があったという事だ」

「……あっ!!」

「分かった様だな」

 

(そうだ、行き成り闘いをけしかけなくてもまだ話し合いをする余地はあったんじゃないか?あんなにみんなに慕われてたし、猫の世話をする時だって…)

 

「そのカモとか言う奴の事はこの際どうでもいい。お前自身はどうなんだ?お前自身はどうしたいんだ?」

 

(僕のしたい事、僕は立派な魔法使いになりたくって…僕は、そうだ僕は!!)

 

ようやく迷いが晴れたのか、立ち上がったネギの目は晴れやかだった。

そして目を瞑り意識を集中させると頭の中に無くした杖が木に引っ掛かっている姿が浮かんだ。

 

(来い、僕の杖)

 

そう念じると杖は一直線にネギの手の中へと飛んで来た。

そしてネギは杖に跨り飛び立とうとするが…

 

「ありがとうタダオ!僕、頑張ってみるよ」

「頑張るのはいいが素っ裸で何処に行くつもりだ?」

「え?…うわあっ!!」

 

裸のまま飛び立とうとしたネギは慌てて服を着込むと改めて杖に跨って飛び去って行った。

 

「タダオー、楓さんによろしくーーーっ!!」

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「何とか立ち直ったか」

「その様でござるな、しかし魔法使いとは本当に居たんでござるな」

「ばれると色々と面倒らしいし内緒にしてやってくれな」

「あいあい。では拙者も風呂をいただくでござる」

「ああ、丁度いい湯だぞ………へ?」

 

衣擦れの音が聞こえてきた所で横島はようやく誰と会話をしていたのかに気がついた。

そして、湯に浸かってる為とは違う嫌な汗が流れてきている事にも……

今すぐに振り返り、そのあられもない姿を見たい気持ちは山々だが相手は中学生という事実はさすがに彼の理性にストップをかける。

 

「ちょっと…か、楓ちゃん?」

「何でござるか?」

「今はワイが風呂に入っとるんじゃが」

「見れば分かるでござる」

「いや、分かってるんなら入ってきたらダメじゃろがっ!!」

「何故でござるか、これは拙者の風呂でござる」

「だからその風呂には男のワイが入っとるじゃないか、もっと恥じらいも持ちなさい!!」

「大丈夫でござるよ。ちゃんと水着は着てるでござる」

「そ、そうか。なら……ごぶはっ!!」

 

その言葉に安心して振り返るが彼は即座に後悔した。

なにしろ彼女は中学生には見えないプロポーションに黒のビキニを着けただけの姿だったのだから。

 

「いやいやいやいやいやいやいやいや、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う、ドキドキしとらん、ドキドキしとらん、ドキドキしとらん、ドキドキしとらん、ドキドキしとらん、ワイはロリや無い、ワイはロリや無い、ワイはロリや無い、ワイはロリや無い、ワイはロリや無い、ワイはロリや無い」

 

頭を抱え呪詛の様に呟く横島の肩に楓は手を置き耳元にそっと呟く。

 

「折角だから背中を流してあげるでござるよ。さあ、風呂から出て来るでござる」

「いやいや、いいからっ!!女の子がそんな大胆な事をしちゃイカンッ!!」

「遠慮は無用でござる、さあ」

 

楓は慌てふためく横島の腕をとって引き寄せようとするがそうすると彼の腕は楓の胸に沈む事になる。まさに横島にとっては天国で地獄である。

 

「ああ、腕に何やら温かくてやーらかいモンが。嫌じゃ嫌じゃ、このままでは堕ちてはいけない所に堕ちてまう」

「何でござるか?コレがいいんでござるか、ほれほれ」

「いーーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 

その雄たけびは星が瞬き始めた空に木霊した。

-12ページ-

「茶々丸、何かあったのか?少し様子が変だぞ」

「い、いえ、何もありませんマスター」

「そうか、ならいいんだがな。クチンッ!!くそっ、始まったか。全く忌々しい」

「マスター、今日はもうお休み下さい」

「そうだな、そうさせてもらおう。クチンッ!!」

 

部屋に上がって行くエヴァを見送った茶々丸は窓から空を見上げネギの言葉を思い出していた。

 

『茶々丸さん、僕を狙うのはもう止めてもらえませんか?茶々丸さんの事見させてもらいましたがあんな優しそうな心があるのなら…』

 

 

「ネギ先生……私はガイノイド、私には心など……」

 

一人呟いたその言葉を聞く者は誰も居なかった。

-13ページ-

その頃、美神除霊事務所では……

 

 

パキン

 

「ああっ!!横島さんのお茶碗に罅が」

 

 

続く…

-14ページ-

あとがき

 

ようやく完成です。

 

人間、健康が一番の財産ですね。

ネギが茶々丸を襲ったという告白ですが横島はあえてネギを責める様な事は言いませんでした。

ネギが心底後悔してる様でしたからね。もっとも実際に目にしていたら本気で怒ってただろうけど。

 

では、また次回。

 

説明
長らくお待たせしました。



一姫「待ってた人いるのかしら?」

あう…
本作はArcadiaにも投稿しています。
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コメント
茶々丸はネギルートかな続きが気になりますね。刹那との仮契約カードカモが持っているかな。木乃香にバレたらどうなるのかな。(杉やん)
よく考えたら、どこかで魔鈴が魔法つながりで関わってきたら面白そうwww(P.G.)
GSのノリでネギまのクロスは見ていて楽しいです。今後も期待していますw(魔神)
執筆お疲れ様です、一姫に続き、最近になってGSを知った(&完読)事も手伝い、読み始めました。ネギま!クロスは多いですが、世界感が融合しているのは珍しく続きが楽しみです 次作期待(クォーツ)
ばかな!横島がカッコイイだと!あ、よかった、いつものに戻ったな。 俺は待ってましたよ。(ZERO&ファルサ)
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