恋して、落として、口づけて
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天の国にいるじいちゃん

元気にしていますか?

 

俺・・・北郷一刀は元気です

此方での生活にもだいぶ慣れました

最初は戸惑ってばかりでしたが、今では大抵の事態には冷静に対応できるようになりました

 

そんな俺ですが、今何処にいるかおわかりでしょうか?

 

薄暗い穴の中

遥か頭上に見える太陽が、サンサンと輝いています

 

 

 

そうです

俺は今、落とし穴の中にいます

 

 

 

 

「やっちまったなぁ・・・はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪恋して、落として、口づけて≫

 

 

 

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「さて、どうしたもんか・・・」

 

 

言って、俺はもう一度自身の状況を確認する

穴は驚くほど深く、上がるのは相当苦労するだろう

それでも、上れない高さではない

しかし、それは“いつもの状態”での話だ

 

 

 

「ってて・・・まさか、足を挫いちゃうなんてなぁ」

 

 

そう・・・今言ったとおり

この穴に落ちた拍子に、俺は足を挫いてしまったのだ

それも、割と強くだ

ジンジンと痛むこの足では、この穴から這い上がるのは無理だろう

 

 

「参ったな・・・」

 

 

溜め息と共に、俺はその場に座り込む

それから、苦笑した

 

 

「たまには落ちてやろう・・・って、そう思ったらコレか」

 

 

そう言って思い浮かべるのは、一人の少女の姿だ

俺のことを、いつも“死ね”だの“種馬”だの言う・・・あの、“猫耳軍師様”

 

 

「桂花・・・」

 

 

その少女の名前を呟き、俺はまた溜め息を吐きだした

 

彼女は、俺のことが嫌いだ

それはもう盛大に、いっそ清々しいくらいに

会うたびに、“死ね”って言われるくらいだ

彼女はきっと、俺の顔も見たくないのだろう

とにかく、俺は物凄く嫌われている

 

けど・・・俺は“違う”

 

 

 

 

「好きなのに・・・」

 

 

好きなんだ

彼女のことが、桂花のことが

俺は、大好きなんだ

はじめに言っておくが、俺は別にドMってわけじゃない

彼女の言葉には、毎回すごく傷ついてるしね

下手したら、泣きそうになるくらい

 

けど、それでも俺は彼女のことが好きだった

 

大好きな人の為に、一生懸命に頑張るところとか

春蘭と、いつものように喧嘩してるところとか

全部、大好きなんだ

 

それなのに・・・

 

 

 

「変わらないな、ホント」

 

 

変わらない

俺たちは、変わらない

いつものように顔を合わせては、いつものように彼女は俺を避けるんだ

そんな毎日に変化が欲しくて、いつもは避ける落とし穴に嵌ってみた結果が・・・このザマだ

 

 

 

 

 

「・・・雨?」

 

 

そんな俺に追い打ちをかけるように、降り出した雨

ああ、もう笑うしかないよな

そんな下らないことを考えながら、俺は自身の体を抱き締める

 

 

「桂花・・・」

 

 

“好きだよ”

 

届かない

届くことのない言葉を胸に仕舞いこみ

 

 

俺は、そっと瞳を閉じたんだ

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

「なんで、出てこないのよ・・・」

 

 

呟き、私は隠れていた草むらから身を乗り出す

おかしい・・・

確かに、いつもより深く掘った

それでも、上れない高さじゃないはずだ

 

 

「いえ、それ以前の話よね・・・」

 

 

そもそも、いつもなら穴には落ちない

何でか、いつも上手く躱していくのに

今日に限って、まるで自分から落ちに行くように穴へと向かっていったのだ

おかしい・・・今日のアイツは、絶対におかしい

 

 

「・・・って、何考えてるのよ私

アイツがやっと、私の作った落とし穴に落ちたのよ

もっと、喜ばないと」

 

 

いい気味だって、そう言って笑わないと

そう思い、私は思い止まる

 

 

 

「違う・・・」

 

 

違う

私は、そんなことがしたいんじゃない

本当は・・・

 

 

 

 

「好きなの・・・」

 

 

好きなの

大好きなの

 

だけど、素直になれなくて

いつも、顔を合わせるたびに悪口を言って

そんな私を、アイツはきっと嫌っているだろう

 

嫌だ

嫌われたくない

だけど、私にはどうしたらいいかわからなくて

結局、またいつものように悪口を言って

 

なんて、悪循環・・・

 

 

 

 

「変わらないわね・・・ホント」

 

 

変わらない

私たちは、変わらない

いつものように顔を合わせては、いつものように私は彼に悪口を言うの

そんな毎日に変化が欲しくて、気付けばいつもよりも深く穴を掘っていた

 

 

 

「・・・雨?」

 

 

ふと、頬に触れたのは雨水

ポツリポツリ、地面が濡れていく

それはやがて、勢いを増していくのだ

 

 

「・・・アイツは?」

 

 

まだ、出てこない?

なんで?

早く出てきなさいよ

でないと・・・

 

 

 

「・・・もうっ!」

 

 

気付けば、私は駆け出していた

彼が落ちていった穴へと

そして、下の様子を見る

 

彼は・・・膝を抱え、動かない

 

 

「ちょっと、どうしたのよ!?」

 

 

穴に向い、私は叫ぶ

しかし、返事はない

 

何かあったんだ

そう思い、私は一瞬ためらった後・・

 

 

 

 

「っ・・・一刀っ!!」

 

 

自身で掘った穴へと、飛び降りたのだ

 

 

「きゃっ!?」

 

 

しかし、上手く着地が出来なかった

私は、思い切り足を捻ってしまう

だけど、そんなことは気にならなかった

それよりも、彼のことが心配だったのだ

 

 

「一刀っ!

しっかりしなさい!」

 

 

体を揺すり、彼の言葉を待つ

 

 

「けい・・・ふぁ」

 

「そうよ!

いったいどうしたの!?」

 

 

しばらくして、彼が小さく私の名を呼んだ

そのことにホッとしつつ、私は彼に話しかける

そんな私にかけられたのは、予想もしない一言だった・・・

 

 

 

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「愛してる・・・」

 

「え・・・?」

 

 

時間が、止まった

それは勿論、そう錯覚しただけのこと

だけど、それほどの衝撃だったのだ

 

だって・・・

 

 

 

 

「愛してるって・・・私のことを?」

 

 

信じられない

こんな私のことを、愛してるですって?

 

 

「き、聞き間違いよね」

 

 

そうよ、きっとそう

当たり前のことじゃない

いつも悪口ばっかり言ってる私のことを、愛してるはずがない

 

だけど・・・

 

 

 

「私も・・・」

 

 

少しくらい、期待してもいいでしょう?

今くらい、正直になってもいいでしょう?

 

 

「私も、好きよ・・・」

 

 

いつか・・・そう遠くない未来

 

伝えたい

 

この言葉を

この想いを

 

真っ直ぐと、貴方の心へと

 

 

 

 

 

 

「愛してるわ・・・一刀」

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

 

「華琳様ーーーー!」

 

 

中庭を歩く、一人の少女・・・曹操こと、華琳

彼女に向かい、かけられる声

その声に、彼女は声がしたほうへと視線をうつす

 

 

「春蘭、見つかったの?」

 

「はい、見つけました

しかし・・・」

 

「・・・どうかしたの?」

 

「あ、いえ・・・二人とも、無事でした

ですがこう、何と言いますか・・・まぁ、ご覧になっていただければわかると思います」

 

「そう、なら案内なさい」

 

「御意」

 

 

返事をし、歩き出す春蘭

その後ろを、華琳はついていく

やがて辿り着いたのは、中庭の隅の方

そこにある、不自然な穴の前

 

 

「落とし穴、ね

この中にいるの?」

 

「はい・・・」

 

 

その返事を聞き、華琳は穴の中を覗き込む

そして・・・フッと、柔らかな笑みを浮かべた

 

 

「ふふふ・・・そう、こういうことだったのね」

 

「はい」

 

 

2人は顔を見合わせ、小さく笑った

その視線の先

 

一刀と桂花

2人は互いに身を寄せ合い、幸せそうに眠っていたのだった

 

 

 

 

 

 

「桂花・・・」

 

「一刀・・・」

 

 

 

 

 

 

すれ違う想い

重ならない想い

 

それでも、“同じ想い”

 

 

 

この想いが重なるのは、もう少し先のお話である・・・

 

 

 

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☆あとがき☆

 

皆さん、こんにちわ

月千一夜です

 

今回の主役は桂花です

珍しく純愛です

すれ違う想い

だけどそれは、きっといつか重なるはず

そんな想いを込め、書いてみました

 

 

説明
≪月の詩≫
第六作品目
今作は、ほっこりとできる作品です♪
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コメント
狭乃 狼さん<28282828282828wwwww (月千一夜)
ZEROさん<勝ってくださいww (月千一夜)
村主7さん<無茶しやがって・・・w (月千一夜)
よかった〜やっとカオスがなくなったのですね。これで勝てます。(ZERO&ファルサ)
前3,4作があまりにもカヲスでしたので・・・ 当方もタグが「モッコr(コメ者は鎌・大剣・弓矢・鉄球・巨大ヨーヨー・気弾・ドリルにより消滅しますたw(村主7)
尼あま2828あまあま2828(以下、永遠に同文)www(狭乃 狼)
namenekoさん<激甘ですw (月千一夜)
ywxhffrom341さん<2828ww (月千一夜)
うにゃあああああ!!!!!!!!!桂花の話はぞくぞくっと来るものがあるし、甘いな(VVV計画の被験者)
mightyさん<モッコリwwwwww (月千一夜)
悠なるかなさん<こういう恋愛が好きなんですww (月千一夜)
よーぜふさん<NGシーンww (月千一夜)
タグのホッコリがモッコリに見えたからまたカオスか!?と思ったら;;ちくしょう、不純な自分を許してくれつД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚(mighty)
桂花でほっこり 素直な桂花はどのツンキャラよりも破壊力がある(悠なるかな)
だからこその一夜殿! というかなぜか華琳さんがにっこり笑って首を斬る、なNG?シーンを思い浮かべてしまいましたw (よーぜふ)
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