デペイズマン・シード 5th seasonF
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戦い。

それはそうと言うべきなのか。

決闘、と。そこで空気をともにする少女たちは少しだけそんな風に思った。

彼女たちとて、人外との戦いに対しての経験がないわけではない。

だが過去の記憶、そこにあったのは制圧と言ってよいものだった。

しかし今ここで展開しているのは奇妙なまでの理を伴って。

 

「おぉおおおおお!」

 

大輔と賢の闘志に呼応し、物理法則をドン無視した巨大な力が大気を裂く。

存在自体がダーヴィン涙目の紫の生き物がその力の固まりを大きく凪ぐ。

それはとても奇妙な光景。

それはとても、現実味のない風景。

原始的でありながら、洗練されたヴィジョン。

相反する二つを併せ持つ生命の狂舞。

奏でる存在こそ「デジタルモンスター」なる、未知にして近しい存在。

 

ただ事実は、それが攻撃すべきタイミングだという判断。

決闘という形式美ではなく、泥をかぶろうが卑怯といわれようが、勝たなければならない戦い。

それを最初に誰よりも理解していたのは、いうまでもなく多くの者が焦がれやまない、汚れなき魔王!

 

「レイジングハート!」

<yes,master>

 

少女の言葉が形をなす。

長き過ごした相棒は自らの名に込められた意図を解し、力を集約する。

 

「だいすけさんたちー!!よけてくださーいい!!」

「え?」

「ディバイング・バスター!」

 

桜色の光が走る。

それは化け物の腕を焼く程度の威力ではあったが、確かに

少女の意志を押し通し、はじけた。

 

「高町なのは。助太刀します!」

 

自身の攻撃がさほど利いていないのを確認してなお、少女はきっぱりと宣言する。

声は震えず、むしろ危機と未知の敵へと経緯すら払って相対し。

 

「バルビッシュ」

<sir>

「プラズマランサー!!」

 

第2撃。雷鳴とどろき、輝きが落ちる。

その巨体に対してはささやかながらも、確かにそれは肩に辺り、わずかともその動きが鈍くなる。

続いたのは血にまみれること無き死神の娘。

黄金の雷撃があたりを物騒に照らし、異形を貫くことを無言に誓い。

 

「フェイト・T・ハラウオン。同じく」

 

そして、その金色を従える宣言。

むしろ不意打ちっぽい瞬間に、標的が移ろってしまいそうな、それ。

果たして。

 

「ブラッティタガー!」。

 

赤いいくつもの切っ先が空を切り、のばされたその巨大な手のひらに突き刺さる。

びくっ、と驚いたような反応は、確かな手応えと無理矢理信じ、戦うことをためらわない闇(ひかり)の聖母(てんし)が声を張り上げた。

 

「八神はやて。やったるでぇ」

 

それらはとても小さな効果だろう。

だが確かに効果を見せ、なおかつ当人たちの戦意を大きく膨らませる。

ひるむことのない自分たちよりも幼い少女たちに、少年たちも気合いが入る。

 

「やるぞ、賢」

「まけてられないね、大輔」

「全くだ」

 

それは敵にも味方にも。

パートナーたる彼らの心に呼応し、仲間の意志に鼓舞し、インペリアルドラモンもまたホウコウを上げた。

 

 

 

「いやはや熱血だねー♪」

 

戦う意志にその年齢は関係ない。

揺るがないその目を画面越しにみながら、京は軽く口笛を吹いたが、少女たちの構えた2撃目に対するディアポロモンの反応に眉をひそめた。

つきだした手の平を中心に、現れる光の文字と図で作られた「一面」。

そういう技がないわけではない。

たとえばエンジェモンのヘブンズゲートとか。

しかしそうと考えるには、あまりにもそれは別のものによく似通っていた。

 

「エイミィさん!」

「こっちでも観測したよ。間違いないねー」

 

魔法障壁だと、オペレーターの声。

京の顔から血の気が引く。

 

「まさか、食ったの?魔法という情報を」

 

クラモンから進化する一連の存在をもっとも正確に表現しようとしたらそれは「情報喰い」という点だ。

そしてこの世界の魔法は徹底的に演算される情報として取り扱われている。

だとしたら、デジモンが「魔法」を使うことは不可能ではないと?

 

「まさか。燃料(魔力)がないわ」

 

自分の判断を自分で否定する。

無性に今ここにいないパートナーを抱きしめたかった。

よくわからないことに、気持ちが落ち着かない。

 

「可能性はあります」

「え?」

 

混乱を沈める声。

それは画面から目を離さないまま、光子郎がぽつりとこぼれ届いた。

彼の指先は揺るぎなくキーボードという楽器を奏でていたが、声もまた、よどみない。

ふつうに見事なマルチタスクなのだが、まぁその辺りはともかく。

 

「それより、防御ができるということは」

「あっ!」

 

もっと今考えるべきもの。

画面越しの戦場で、放たれる「魔法陣を伴った」逢魔ヶ刻を思わせる光の収束砲撃ー

 

「よけろぉおおお」

 

大輔の声に巨体が翻る。だが。

 

「だめ!追尾弾!」

「え?」

 

賢がその声に聞き及んだ際には、遅い。

 

ぐいんっ

 

ワンテンポ遅れてぶつかる衝撃。

 

「うわぁ」

「ぐっ、まだまっ・・・」

 

ガクンっ

この程度でと実際衝撃だけで外傷はなかった故に立ち上がろうとした少年たちと、同様体勢を立て直そうとしたインペリアルドラモンの体がそろって大きく傾ぐ。

 

「?!」

「な、に・・・ちから、が」

「しま、った・・・このせかいの、まほう、は」

 

虚脱感。

表現するにもっとも最適なのはその言葉だろう。

体が泥を纏ったように重い。

それはある意味でクリーン、かつドS心満載な「この世界に横行する力」の象徴。

 

「相手の無力化・・・・・・、けど非殺傷設定がされてるなんて意外だねぇ」

 

アースラのブリッジで、エイミィが独り言めいたつぶやきをこぼす。

京がそれに対応するように口を開く。おそらく自分の考えをまとめるための意味合いも伴って。

 

「おそらく基本的にそれが前提のデータにしかふれていなかったんじゃないですかね。

知らない方からみれば、どんな形であれ相手を傷つける力なんだから、無力化っていうより、なぶり倒すみたいなイメージなんですけど」

「まぁ純魔力による非殺傷攻撃ってその気になれば死なない程度にしばき倒し続けることも可能だものねー」

「・・・・・・・」

 

まさにそれを象徴する白い悪魔のことが艦長以下アースラメンバー皆一同にふとよぎったりよぎらなかったり。

それは某協会のレアスキル保持者すら裸足で逃げ出すくらい明確な未来のヴィジョン。

後に冥王誕生と呼ばれるわんしー・・・・・・閑話休題。

ばしゃん、と一度地面にひざを突く現在の主力戦力を見送りながら、光子郎の声が時間を動かす。

気合いだけで、再び彼らが立ち上がっていくのもまた、信用の一部か。

 

「とりあえず魔法についてはあいつのことです。新しく手に入れた玩具程度の認識でしょう。

実際、はやてさんたちの放った攻撃は届かなかったわけではありませんが、やはり効果が薄い。

わざわざ警戒(防御)の為に力を裂くとは思えません」

「魔法は脅し程度の威力にしかならないと?」

 

滑り込んできたリンディの声はむしろどこか楽しげだった。

自分たちの無力を嘆くには、少々、いろいろ目撃しすぎていたからかもしれないが、流石に失礼と思ったのか光子郎もここで一端キーボードと画面から目を離し、モニター内の女性に不愉快な表現になってしまって申し訳ありませんと前置きする。

 

「どう考えてもはやてさんたちが今放ったものは挨拶程度の砲撃に見えましたから、それを判断するのはこれからですし、クロノさんの威力からすれば本来もっと派手でしょうしね」

「ほえ?なんでクロノくんの魔法知ってるの?光子郎くん」

 

エイミィの疑問はもっともといえた。

今する議論ではないのも事実だったが、少なくともDWにおいてもこの世界においても光子郎の前で「職務」において彼が魔法を使ったことは一度もないはずだったからだ。

 

「いろいろありまして」

 

にっこり。

果たしてその「いろいろ」の部分を利かせる気は全くないあたりがその笑顔にはねじ込まれていたのはいうまでもなく。

 

「それはともかく、僕の考えが皮肉にも正しいのだとしたら、この世界におけるリンカーコアという器官を利用した魔法システムであれば、情報というものを魔力に疑似的に変換することは可能だと思います。おそらくその逆の開発を行っているはずだから」

「開発?」

 

この状況では、いやな予感しかしない単語である。

事実、まるでなにもかもを見据えているといった調子で少年が発するのは、ある意味で風が吹いたから桶屋が儲かるという話をすっとばしてそれが原因での大規模な森林伐採が発生するという展開になるような発言だった。

 

「えぇ。DWにちょっかいを出してきた、理由。

その大きくが、人格の情報化という、研究です」

「人格の」

「情報化・・・って、」

 

珍しいこととはふつうなら考えない。

人工AIの開発は、ロボットファンならずとも研究者の夢だ。

だがこの場合は間違いなくそういうものではない。

現実にある存在のデータ化。

皮肉なことに、とあるプロジェクトではそれができなかった故に、一人の少女が「生まれることができた」それ。

つながっている、という、不愉快な連鎖はつまり、眉をしかめるしかない可能性をにじませて。

 

「そんなことしてどうするんですか?!」

 

それは、誰がいった言葉だっただろう。

果たしてその口調が叫んでいたのかもよくわからない。

力ない、泣き言のようだった声のようにも、泣きじゃくっている子供の絶叫のようにも聞こえた。

それは大きな混乱を持って、おそらくという少年の言葉とともに憶測といういいわけを伴って暴かれる。

 

「永遠の命を得ること。

権力者が一度は望む、まさになっったものでしかわからない、どの世界でも珍しくないという未知の一つですね。」

「は?」

 

まず、言葉が理解できなかった。

何人かは予想していたはずだが、それでも「理解することを思考が拒否した」。

 

永遠の命。

死なずの魂。

滞った進化。

そんなもののために?

 

「そんな閉じた千年王国(ミレニアム)の為に私たちは侵略を命じられたというのかしら?管理と正義の名の下に」

 

この場ではもっとも地位を持つ女性の声が、絶対零度を持ってこの非現実的な空間に溶けた。

いや、アースラはDWにたまたま関わっただけで作戦には参加してませんから、とは誰もいえなかった。

遠回しだろうとなんだろうと、その言葉は「事実」にほかなら無かったからだ。

 

 

 

 

 

そのころ。

まさに双方にとって自覚のないシンクロニシティを伴って、姿を与えられた妄執のかけらは、その表情に歓喜の色を浮かべていた。

彼にしてみれば目の前にある光景はあくまでも観察対象であり、押さえきれない研究欲ともいうべきものを満たす存在でもある。

実に興味深かった。

 

進化というのは、平たくいえば環境適応である。

さらにいえば「上位の存在」になるというのは「結果」にすぎず、たとえば一度陸に上がりながら、再び海を生活の場に戻したり、闇の中視力を捨て、他の五感を発達させたのも退化と呼ぶ輩もいるが、不要なものを捨てるという行為もまた、確かに「進化」なのだ。

そういう意味で「デジモン」という研究の一環として知り得た存在は研究者としての情欲を大きく刺激した。

感情による進化。

それは「彼」にとって、ひどく近いところにあるものに見えていた。

 

「老人たちに、彼らはよく似ている。

望みを果たすために、その姿を変える。

より強大になる。より強さを求める」

 

うっとりと。夢見心地につぶやく男の言葉を聞き及ぶ存在はそこにはいない。

同意するものも、激しく拒絶するものも、そして。

 

彼という存在を正しく見定めようとするものも、誰一人。

 

 

 

 

 

 

===

今回のスカさんは黒幕とはいいがたい立場です。

そんなせいか、妙に的外れなことをいっています。

感情を持って力を求め、デジモンという形で進化し道を切り開く。

けれどそれは決して自分の望みを叶えるためではなく。

ただ皮肉を込めた意味で老害連中も求めているのは進化だよね、という話

進化内容については作中光子郎さんがいったとおりなのでこれを進化とっwかっwってなもんですが、まぁ別物なので。

次回戦力その1オメガ組と魔法班現場監督の帰還予定

 

 

説明
オヒサシブリですなデペイズマンシード 最終シリーズ7話です
本音言えば実はXWに出てきたオメガモンは「彼ら」のオメガモンで、つまり人間界に残ったってことでゼンジロたちが「彼ら」に出会って、色々助けてもらってタイキの跡を追うとかアリでね?とか思う人間なんだ、俺。
思うだけなら勝手だろ?どうせ描写されないラインの話なんだし、とか思いつつ。
もう、GWなんだぜ・・・・・・4月から新シリーズとか言ってた俺はどこにいったんだろう・・・?
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