『?迎、瑚裏拉麺』 其之壱 丁
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其の拾壱、戦国の場合

 

 

戦国、こっち焼き鳥追加な〜!!

 

 

―――――は〜い、解りました〜!!

 

 

戦国さ〜ん!!空いた食器、下げてもらってもいいですか〜!?

 

 

―――――は〜い、いいですよ〜!!

 

 

……戦国、胃薬、ないか?

 

 

―――――……丈二さんに聞いてきますね。

 

 

戦国殿っ、関平がっ、関平の顔が土気色に!!

 

 

―――――愛紗さんっ、今度は何食べさせたんですか!?

 

 

戦国っ、蓮華ちゃんがフラポテ喉に詰まらせた!!

 

 

―――――一気に食べさせ過ぎですって、マリアさん!!ほら、お水!!

 

 

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とまぁ、こんな調子で時間は経過して……………

 

 

 

 

 

 

 

 

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(つ、疲れたぁ…………)

 

戦国は厨房の片隅で燃えつき掛けていた。

身体を完全に椅子と壁に預け、肩を落として両腕はぷらぷらと力なく垂れている。

 

「……悪いな、戦国。手伝いなんてさせちまって」

 

「あ、いや、いいんですよ。僕が好きでやってるだけですから」

 

「そうか?」

 

「そうですよ。他に仕事、ありますか?」

 

「あぁ……だったら最後にこのブランデー、狼に渡して来てくれるか?後は俺一人でも十分回せるからさ」

 

「はい、解りました」

 

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丈二が言うには狼は席を移し、カウンターの端の方で桂花と再び呑む事にしたらしい。

 

「え〜と……あ、いたいた」

 

騒ぎ続ける皆の間を縫うように進み、やがてその声が徐々に聞き取れるようになって、

 

「狼さん、ブランデー持って来まし―――――」

 

 

 

「もっろあらしのころみらはいよ!!らきしめらはいよ!!ちゅーしらはいよ!!るっと、るっと、るっとまっれるのにぃ!!」

 

「ったくじゃあ……こげな可愛え女子放っとくなんざぁどうかしとるったい!!」

 

 

 

「―――――た、です、はい……(何故に熊本弁?)」

 

物凄く関わりたくない光景が広がっていた。

『ベロンベロン』に……いや、『ヴェロンヴェロン』に酔っ払い、顔を真赤どころか真紅に染め上げた二人。

方や呂律はまともに回らず、方や完全に目が据わり近づき難いオーラを放っていた。

 

「ろうして、ろうしてらのよ……あらしがなんれおろしあららんかほるろおもっれんのよ?いっしょにいれるかららない!!あらしのころ、みれくれるかららない!!ろうしてわかっれくれらいろよ!?」

 

「せや!!んでこない泣かしとんねん!!ワシ直々にしばいたろか!?」

 

「(今度は大阪弁……?)あの、狼さん?」

 

「なんじゃいワレぇ!!」

 

「ひぃっ!?あ、いや、その、あの、」

 

「……おぉ、おらが頼んだ『ぶらんでぇ』だがね。あんがとぉさん」

 

「(また変わった!?今度は名古屋弁!?)ど、どうぞ。それじゃ、僕はこれで……」

 

「ありがとうなぁ、したっけ〜」

 

「はい、ではごゆっくり〜(今度は北海道弁か……)」

 

「ほんろは、すきよ、らいすきよ、もっろいっしょにいらいろよ、わかりらさいよ!!……うぅ、う゛ぅぅぅ」

 

「泣きてぇ時やぁ、ちゅーじゅく泣きなせぇ。くまや、宴会なんあんくとぅ」

 

(……最後は沖縄弁だった)

 

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―――――おぅ、お帰り。どうだった?

 

 

あはは……あの二人はもう、あれ以上は呑ませない方がいいと思いますよ?

 

 

―――――そこまでか。

 

 

はい。相当酔ってます。

 

 

―――――ん、お疲れ。ほれ、お前もそろそろ楽しむ側に戻りな。

 

 

……あ、サーモンのムニエル。

 

 

―――――割に合わんかもしれんが、労いの意味も籠めて、な。……どうだ、いっそウチでバイトしてみるか?

 

 

うぇっ!?僕がですか!?

 

 

―――――前回も思ったが、中々真面目だし、手際も悪くねぇしな。優遇するぞ?

 

 

あ〜……ちょっと、考えさせて下さい。

 

 

―――――おう。いい返事を期待してるぜ?

 

 

いただきま〜す。……あ、そうだ、丈二さん。

 

 

―――――ん?

 

 

食べ終わったら、また『アレ』やりません?

 

 

―――――…………あぁ、『アレ』な。

 

 

はい、『アレ』です。

 

 

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……………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

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≪せんごく≫

 

リザードン スターミー

メタグロス ゲンガー

ガブリアス トゲキッス

 

 

≪ジョージ≫

 

ハガネール トリデプス

ボスゴドラ ミノマダム

ルカリオ  ヒードラン

 

 

NOW LOADING…………

 

 

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(とうとう来たか、丈二さんの本気パーティ。でも、ヒードランは解るけど、ミノマダムって何するんだろう……?)

 

(やはり使ってきたな、メタグロス。当然俺も育てているし、ミラーマッチも面白いかもしれんが、今回は敢えて外して正解だったな……)

 

まずは互いのパーティを見て、自分の戦略を組み立てる二人。

暫くの黙考の後、やがて先発メンバーを確定、画面が競技場へと切り替わり、二人のアバターが歩み寄る。

そして、放たれたボールより現れたのは真紅の炎竜と鋼鉄の鎧怪獣。

 

「先手はボスゴドラですか……(って事は多分特性『いしあたま』で『もろはのずつき』だろう。なら、一撃で狙えるかな)」

 

「(―――と思ってるだろうな)甘いぜ、戦国」

 

直後、リザードンが放つ『きあいだま』。

見事直撃し、一撃で終了―――――と思いきや、

 

「……えっ、『がんじょう』?」

 

残り一撃という状況で、それは発動した。

鋼タイプの代名詞(丈二論)の特性『がんじょう』。

『体力満タン時に一撃で倒れるダメージを受けると、HPを1残して耐える』というその特性は、前回のバトルでも猛威を振るった。

そして、

 

「喰らいやがれ、『メタルバースト』」

 

「ちょ、うわっ!?」

 

自分が直前に受けたダメージを1.5倍にして返す技『メタルバースト』。

当然、満タン時のボスゴドラのHP×1.5と『≒』なダメージに耐え切れるはずもなく、

 

「よし、一番の脅威は撃退完了、と」

 

「ぬぅ……」

 

唯一の炎タイプがここで轟沈。

思わず顔を顰める戦国に、丈二は意味深に微笑む。

 

「前回、コイツにはかなり暴れられたからな。当然、『いしあたま』で『もろはのずつき』型も育ててあるが、今回はコイツで狙ってみたって訳だ。当然、HPにはフルで振ってある」

 

(狙われてたって事か……本当に油断できないな、丈二さん)

 

何においても油断できない事実を再確認。

そして繰り出したのは濃紺の砂鮫。

 

「ガブリアスか、まぁ無理だな」

 

当然、素早さで敵うはずもなく、ボスゴドラはここでリタイアとなった。

再び暫しの黙考。そして、

 

「……よし」

 

繰り出されたのは実に巨大な、鋼鉄の大蛇。

 

「ハガネール……(前回、結局『だいばくはつ』しか技は確認できてないからなぁ。とはいっても、何となく想像はつくんだけど)」

 

ガブリアスが放つ『じしん』。

タイプ一致の攻撃力130族が放つそれはとんでもない威力。

しかし、

 

「ぬぅ、やっぱり堅いなぁ……」

 

HPは辛うじて半分を切った程度。

ハガネールの防御力もまた、全ポケモンにおいて5本の指にすら入る高スペック。

そして、

 

「喰らえ、サ○コクラッシャー!!」

 

「『ジャイロボール』でしょ!?」

 

言わずと知れた鋼タイプの定番、『くろいてっきゅう』での『ジャイロボール』。

しかし、定番という事はそれだけ強力だと言うこと。

当然、その強力な攻撃力の反面、さしたる防御力を持たないガブリアスが耐え切れるはずもなく、

 

「ぐぅ……今回、ちょっと押され気味」

 

苦い顔を隠さず呟く戦国。

やがて繰り出されたスターミーにハガネールは突破された。

そして、

 

「行って来い」

 

「うげっ!?来たかぁ、トリデプス」

 

放たれる『なみのり』。

効果は抜群。

タイプも一致。

特攻もトップクラス。

しかし、

 

「……耐えるんだよなぁ、トリデプスは」

 

脅威の防御値。この場合は特防値か。

本当に弱点なのかと目を疑いたくもなる。

それでなくてもトリデプスの特性は『がんじょう』。

一撃で仕留めるのはほぼ不可能と言っていい。

そして、

 

「あぁ、やっぱりそう来ますよね」

 

「当然」

 

放たれる『メタルバースト』。

やはり耐え切れるはずもなく、ここでスターミーも撃沈する羽目に。

 

(う〜む……少し早いけど、コイツに出てもらうかな)

 

現れたのはトゲキッス。

『てんのめぐみ』『おうじゃのしるし』『エアスラッシュ』『でんじは』と、相手の動きを封じる事に特化した脅威の『まひるみ』型。

 

(前回はハッサムに押し切られたけど、今回こそ活躍できるはず!!)

 

順当に『はどうだん』でトリデプスを落とし、活躍を確信する戦国。

そこに丈二が放ったのは、

 

「(ルカリオか。型が多いから読めないんだよなぁ……攻撃型か、特攻型か、それとも両刀か)どのみち、まずはこれかな?」

 

順当に『でんじは』を選択。

ルカリオに麻痺を与え、次は『はどうだん』か『エアスラッシュ』、どうしようかと考えた、その直後。

 

「……え?」

 

ラムのみ、発動。

麻痺は綺麗さっぱり消え去り、次にルカリオが放ったのは、

 

「うげっ!?」

 

まさかの『メロメロ』であった。

そして気付く。

このルカリオ、よく見ると非常に珍しい♀であった。

再び『でんじは』をかけようとするものの、『メロメロ』により行動不能。

そして、

 

「おっしゃあ、来た来たぁ!!」

 

「ぎゃあああああああああああああああああ、急所おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?」

 

『ストーンエッジ』が急所に炸裂。

トゲキッス、一撃で轟沈。

 

「……当てておいて何だが、トゲキッスが不憫に思えてきた」

 

「うぅ、まるで活躍なしですよ……」

 

敵討ちと言わんばかりに現れたメタグロスに、『バレットパンチ』で一矢報いるものの、ルカリオはやはり一撃で葬られた。

そして、

 

「うし、俺の切り札、行って来い」

 

現れたのは現在唯一、炎・鋼という異色の存在。

あまりの灼熱に自身の鎧さえも融解させてしまう火山の主。

 

「とうとう来ましたね、ヒードラン……」

 

選んだのは『じしん』。

鋼タイプは得てして遅いもの。

メタグロスもそうではあるものの、鋼の中ではかなり速い方であるため大丈夫だろう、そう思って安心していたのも束の間。

 

「―――――え?」

 

先にカメラが捕らえたのは、まさかのヒードラン。

 

「甘いな、こいつはスカーフ持ちだ」

 

そして放たれる、彼の専用技。

 

「『マグマストーム』威力120。タイプ一致。そしてコイツの特攻値は130。……耐えられると思うか?」

 

正に化け物。

準伝説は伊達ではない。

炸裂する溶岩の奔流は瞬時に鋼鉄の円盤を飲み込み、

 

「…………」

 

戦国、愕然。

彼の鋼への拘りは伊達ではなかった。

解き放つ最後の1体。

現れたのはメタグロス。

 

(鋼パーティとの対戦で最後に残ったのが鋼タイプかぁ……皮肉というか、何というか)

 

順当に放たれるマグマストーム。

効果は抜群。

一撃で終わった、と思いきや。

 

「ありゃま」

 

『きあいのタスキ』により耐え切ったメタグロスの『じしん』が炸裂。

高い防御を誇る鋼タイプも4倍ダメージは流石に耐え切れず、互いに最後の1体に。

 

(残りがイーブンならまだ勝機はある!!十分に逆転も狙える!!)

 

何が起こるかわからないのがポケモンバトルである。

放たれた最後のボール。

現れたのは、

 

「ミノマダム(ゴミのみの)、か……何、するんだろ?」

 

思わず首を傾げる戦国。

そして発動する、ミノマダムの特性。

 

(『きけんよち』発動?って事は、一撃で倒せちゃうの?)

 

『きけんよち』。

自分を一撃で倒しうる技を相手が覚えている場合、身震いという形で教えてくれるという特性。

つまり、このまま技を放てば、普通に勝ててしまう相手だと言う事。

素早さでもこちらが勝っている。

しかし、

 

(……いや、丈二さんがそんな簡単に勝たせてくれるとは思えない。絶対に何かあるはず)

 

前回のバトルも正に辛勝だった。

本当にギリギリの所で勝てたのだ。

取り敢えず、順当に狙えるであろう『じしん』を選択しておいて、

 

「―――――んなっ!?」

 

カメラが先に捉えたのはミノマダム。

その訳は、

 

「『ふいうち』!?覚えたんですか!?」

 

「プラチナでのみ、教え技でな。ちなみにコイツの持ち物も『きあいのタスキ』。そして、『がむしゃら』も覚えてる」

 

「あ……」

 

「≪『きあいのタスキ』→『がむしゃら』→『ふいうち』=終了≫って訳だ。最後の1体がゲンガーだったら、ちょっとやばかったな」

 

発動する『ふいうち』。

ミノムシの一撃により、鋼タイプのエースが撃沈された瞬間であった。

 

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「いやぁ、当たって良かったぜ、『マグマストーム』」

 

「……はい?」

 

「いや、最後の『マグマストーム』が当たってなかったら、メタグロスのHP満タンだっただろ?」

 

「はい」

 

「って事は、だ。『がむしゃら』やってもHP1にしか出来なかったわけだ」

 

「はい」

 

「……お前のメタグロス、『バレットパンチ』覚えてないか?」

 

「……あ」

 

そう、『ふいうち』は相手が攻撃技を選んだ場合のみ成功する特殊な先制技。

しかし、その優先度は他の先制技と同じ。

つまり、最終的にはポケモン自体の速さが問われることになる。

メタグロス、素早さ種族値70。

ミノマダム、素早さ種族値36。

つまり、

 

「だから、当たって良かった、ってな」

 

「……丈二さん!!」

 

「ん?」

 

「もう一回やりましょう!!」

 

「……おぅ」

 

この後、暫く二人はテレビの前から動かなかったそうな。

 

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其の拾弐、YTAの場合

 

ジューーーーーー

 

鉄板の上で爆ぜる油。

光を反射し輝く脂。

表面はこんがりな黒。

中心は瑞々しい赤。

やがてその一切れがゆっくりと口に運ばれ、

 

「ん、美味いっ!!流石は丈二だっ!!」

 

「ステーキハウス経営してるお前に言われると皮肉にしか聞こえねぇな」

 

特製のレアステーキ(420グラム)を頬張り満足げな声を上げるYTAに頬杖をつきながら苦笑する丈二。

丈二が注文されたメニューを全て作り終えた今、二人はカウンター席に並んで座っていた。

 

「そんな事は無い!!現にこのソースは初めて食べたが、何だこれは!?二つとも白米が恋しくて堪らなくなるぞ!!」

 

YTAが言っているのは、その巨大なステーキに丁度半々で掛かってる2種類のソース。

肉単体でも絶妙な焼き加減で噛む度に肉汁が溢れ出し相当な美味さなのだが、それを壊さず昇華させていた。

 

「こっちが玉葱と人参、そっちが梅肉で作ったソースだ。簡単だから、後で作り方教えてやる」

 

「是非に頼む!!いやぁ、美味い!!米が進んで進んで止まる気配が全くない!!」

 

言いながら白米を掻きこむYTA。

その箸は決して止まる事無く、ステーキの鉄板と茶碗の白米の間で往復運動を繰り返す。

 

「肉料理に関しては俺も自信があるが、お前の料理はまた違った良さがあるからな、何度も、何度でも食いたくなる!!」

 

「よく言うぜ。なら訊くが、俺の料理の良さって何だよ?」

 

「む、そうだな。何と言うか、何処か懐かしいというか、暖かいというか、身近というか……」

 

 

 

「…………お父さん?」

 

 

 

「そう、それだっ!!丈二の料理は『家庭の味』というか、そんな感じがするんだよ!!……って、今のは誰だ?」

 

「…………美味しそう」

 

「『お父さん』『家庭の味』ねぇ……恋ちゃんも、ステーキ食べるか?」

 

「…………(こくり)おんなじやつ」

 

「あいよ、ちょっと待ってな」

 

立ち上がり、再び厨房に消えていく丈二。

やがて、再び肉の焼かれる音が聞こえ始める。

同時に微かな、上機嫌な鼻歌も。

 

「恋殿〜、勝手に席を外されては困りますぞ〜?」

 

「…………ごめん、ねね」

 

「お、ねねちゃん!!元気だったか!?少しは背、伸びたか!?」

 

「うぐっ、人が気にしている事を平然と……そういう所は変わってないのですね」

 

「はっはっは!!俺は俺だからな、そうそう変わらんさ!!で、どうだ?キックは出来るようになったか?」

 

「それは大丈夫なのです、今やねねの『あいでんててー』の一つなのです。今では零距離でも最大で放てるくらいですぞ」

 

「おぉ、とうとうそこまで昇華させたか!!師匠として、これほど嬉しいことはないぞ!!」

 

「おい、盛り上がってる所悪いが、前を空けてくれ」

 

丈二が『素手で』運んで来る、ステーキハウス等でよく見るあの木枠に乗っかった鉄板と、『漫画盛り』の白米。

上には山のような牛肉に、同じように掛けられた2種類のソース。

 

「ほれ、たんと食いな。ナイフやフォークなんて使い慣れてないだろうから予め切っておいたが良かったか?」

 

「…………(こくり)」

 

「なら良かった。そこの割り箸使ってくれ」

 

「ご馳走様。実に美味かったぞ、丈二!!」

 

「もう食ったのかよ、相変わらず早いな……」

 

食べ始めてものの10分程度である。

420グラムを。想像し辛い人はググってみよう。

 

「ふぅ、本当ならもう1枚と言いたい所だが……丈二」

 

「ん?」

 

腹を軽くさすりながら立ち上がるYTA。

その表情が至って真剣な事に気付き丈二も頬杖を解き、若干姿勢を改める。

そして、

 

 

 

「久々に本気で、勝負しないか?」

 

「……ほぉ」

 

『……っ!!』

 

 

 

不適に笑う二人。

誰もが手を止め、口を噤み、意識を傾ける。

周囲に緊張の糸が一瞬にして張り巡らされ、今までの騒ぎが嘘のように静まり返る。

膨れ上がった闘気で張り詰める中、丈二はゆっくりと立ち上がって、

 

「……いいぜ。久々に楽しめそうだ」

 

二人は、ゆっくりと表へと出て行った。

 

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吹き抜ける夜風。

舞い上がる砂塵。

向かい合う影二つ。

念入りに身体を解すYTA。

身体中の間接を鳴らす丈二。

見守る記録者や恋姫達は、一様に思う。

 

(大丈夫なのか、YTA……)

 

丈二はあの漢女達と肉弾戦で引き分けるほどの実力者である。

まともに戦って、まず敵う相手ではない。

故に、皆の心配はYTAへと注がれていたのだが、

 

「その心配は、無用ですよ」

 

「老仙さん……どういう事ですか?」

 

関平が尋ねた、直後の事だった。

ドゴッ

鈍く響く。

重く轟く。

それは開戦の狼煙。

皆が視線を向けた先、攻撃を受けていたのは、

 

 

 

YTAではなく、丈二だった。

 

 

 

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「はぁっ!!」

 

開幕一番、突撃をかますYTA。

瞬時、懐へと潜り込み、そのまま肘鉄を食らわせる。

ドゴッ

直後、車輪の轍のように、大地に引き摺られた跡。

傾かないものの、その巨体を退かせたという証。

 

「(あの速度で鳩尾を正確に……相変わらず、ずば抜けた技術だな)うらぁっ!!」

 

だが、丈二は苦悶一つ上げる事無く、無造作に右の拳を振り下ろす。

それは実に単純な、正拳ですらないただのパンチ。

しかし、

 

ゴゥッ!!

 

「うおっ!!」

 

咄嗟に飛び退いた直後、周囲の酸素を根こそぎ奪わんと唸る風。

そして、

 

ドゴォン!!

 

大地は粉砕。

空気は震撼。

数瞬、音を置き去りにしたそれは巨大な鉄塊すら粉塵へと帰す一撃必殺。

舞い上がる土煙の中、悠然と立ち上がる巨影を見て、

 

「(相変わらず、とんでもないパワーだな……そう来なくてはっ)行くぞっ、丈二っ!!」

 

「来いっ、YTA!!」

 

二つの影は、再び交差する。

 

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唖然。

今の皆の様を表すなら、正にこの一言だろう。

一方的な展開になると思いきや、予想に反する均衡試合。

むしろ、手数においてはYTAの方が勝ってさえいた。

 

「YTAさん、こんなに強かったの……?」

 

高速。そして的確。

丈二の攻撃を避け、人体の急所への正確な一撃。

ひたすら高速かつ連続で。

 

「闘いとは、即ち攻防。攻めと守りによって成り立ちます」

 

突如、語りだす老仙。

皆は視線を離さず、しかし耳を傾ける。

 

「何を重視するかによって個々の戦闘スタイルは決まります。様々な選択肢の中、彼が行き着いたのはこんな答えでした。『攻撃を喰らわずに攻撃すればいい』故に、彼は自分のスタイルをスピードに特化させ、相手をより確実に仕留められるよう、人体の構造や急所の位置に基づいて戦略を立てるようにしたんですよ。今もああして丈二の注意を霍乱させつつ、頭の中ではどうやって突き崩すかを組み立てているはずですよ」

 

集中する視線の先、目まぐるしく動き回るYTA。

巻きつく蛇のように、渦巻く旋風のように、丈二から一定の距離を保ちつつ四方八方より襲い来る打撃。

 

(ちょ、丈二さん、押されてない……?)

 

傍目にはそうとすら見えた。

防戦一方。

振り回す双腕は何処か闇雲にさえ思える。

そして、

 

「それはどうですかねぇ……?」

 

『は?』

 

全員が同時に疑問符を浮かべた直後。

 

「せえりゃあああああああああああああああ!!!!

 

「ぬっ?」

 

ドゴォッ!!

 

丈二の腹にYTA渾身のドロップキックが直撃、弾かれるように巨体が吹き飛んでいく。

周囲の建造物を倒壊させながら一直線。

やがて土埃が晴れた時、見えたのは高々と積載した瓦礫の山。

 

『ちょ、色々大丈夫か!?』

 

皆が驚愕と焦燥の表情で見守る中、

 

「立て、丈二!!その程度でくたばるお前じゃないだろう!!」

 

「……当たり前だ」

 

通る声。

瞬間、変化は現れた。

 

バゴンッ

 

瓦礫の山から伸びた影。

同時、へし折れた木片が物凄い勢いでYTAの傍らを通り過ぎる。

正に『蹴り飛ばされて』。

そう、伸びた影の正体は、

 

ガラガラガラ……

 

音を立てて崩れる山より、冬眠から目覚めた熊のように気だるげに現れる巨体。

ゆっくりと立ち上がるその体躯には、傷一つ無かった。

 

『…………』

 

「ふふふっ、実践から離れて大分経つはずですが、相変わらずの頑丈さですね」

 

「……どういう、事ですか?」

 

愕然とする傍観者達を代表した狼の質問に、老仙は流暢に答える。

 

「先ほど言いましたよね、戦闘スタイルには個々の行き着いた答えがある。丈二の導き出した答えは至極単純、しかし普通ならまず思いつかない、思いついても実行しようとは思わないような無茶苦茶なものでして……」

 

くくくっ、と漏れる含み笑い。

首を傾げる面々に老仙が告げたのは、

 

「『攻撃を喰らっても倒れなければいい』」

 

「……は?」

 

確かに滅茶苦茶だ。

常人の思考回路ではない。

しかし、確かに間違ってはいないのだ。

 

「何故、そのような結論に至ったのか、それは彼自身にしか解りませんが、極限まで鍛え上げられたその肉体は、正に鋼。『肉を切らせて骨を絶つ』といいますが、彼が『肉を切らせた』所を、私は見た事がありません」

 

視線を戻す。

二つの影が刹那にして、数十メートルの距離を縮めた。

 

「ちょ、丈二さんも十分速い」

 

「二人は速さの質が違いますからね。単純な速さだけなら、YTAさんに分があります(へたれ雷電さんもそうですね)。が、丈二が攻撃に移る際の瞬間的な加速はそれに引けをとりません。例えるなら……YTAさんが『流水』とするなら、丈二は『弾丸』ですかね?」

 

「あぁ……なんとなくは理解できました」

 

「皆、普通に音速を越えてますからねぇ……本気状態の丈二に至っては、その音速さえ越えてきますし」

 

「は、はは……」

 

それはあの、俗に言う『音を置き去りにする』というやつだろうか。

益々の規格外なスペックに、最早渇いた笑いしか浮かばなかった。

記録者や恋姫達もまた同様。

自分との実力差に愕然とする者。

純粋な憧憬を抱く者。

多大なる興味を抱く者。

底知れぬ畏怖を覚える者。

達すべき目標として燃える者。

そして、

 

ブォン!!

 

ブォン!!

 

ドゴォン!!

 

空を切り、大地を屠るその拳。

速さのYTAが叩き込む攻撃は丈二にさしたるダメージを与えられない。

しかし、その速さ故に丈二は的確な一撃を叩き込めない。

力の丈二が繰り出す攻撃はYTAに悉くかわされてしまう。

しかし、その力故にYTAは容易に近付けず攻めあぐねてしまう。

このままでは一進一退。

均衡状態を脱出せず、泥仕合と化してしまう。

 

「確かに凄い仕合だけど……」

 

「これ、決着つくのか?」

 

皆の間にざわめきが広がり始めた頃、件の二人は一度距離をとった。

互いに無傷。未だ呼吸を崩さず、その額には汗の滴一つなし。

そのまま、身体の調子を確かめるように拳を開いたり閉じたり、首を左右にゴキゴキと鳴らしたり。

そして、

 

「相変わらず、いい腕だな、丈二」

 

「ん?」

 

「そろそろ、準備運動は終わりでいいだろう?」

 

『……は?』

 

「だな。そろそろ、本気でやり合うか」

 

『はい?』

 

 

それが、本当のカオスの始まりだった。

 

 

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※注意

 

次のページは、先ほどの対戦以上に混沌たる空間と化しております。

 

『いいですとも!』な方のみお先へどうぞ。

 

 

                        峠崎ジョージ

 

 

 

 

 

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「気力っ!!」

 

 

丈二が突き出す逞しい両腕。そして、

 

 

「ぬぅぅぅん!!」

 

 

YTAは力強く両の拳を握り締め、己が闘志を高める。

 

 

「転身っ!!」

 

 

掛け声と共に引き伸ばすリング。

 

 

「ふっ!!」

 

 

解かれた両腕はやはり力強く空を切り、知る者が見れば驚かざるを得ない、あの戦士と同じ動きを辿る。

 

 

「オーラっ!!」

 

 

月下、曇りなき輝きを放つ金銀のブレス。

 

 

「変―――――」

 

 

全身に漲る力を行き渡らせながら、左手は緩やかに弧を描き、

 

 

「チェンジャーっ!!」

 

 

掛け声と同時、体表に定着する大気中の金属イオン。

 

 

「―――――身っ!!」

 

 

真紅に輝くキングストーンがベルトを形作り、エナジーリアクターが増幅させたエネルギーが全身を駆け巡る。

 

 

そして、現れたのは、

 

 

「ヒヒレンジャー、天剛星・丈二っ!!」

 

 

風を唸らせ名乗りを上げる、気力の闘士。そして、

 

 

「仮面ライダー、BLACK!!」

 

 

余剰エネルギーを白煙として間接部から噴出させる、太陽の世紀王。

 

 

同じ漆黒の鎧に身を包む夢想の、そして無双の戦士達であった。

 

 

-16ページ-

 

『………………』

 

最早語る言葉も無かった。

全員の開いた口が塞がらない。

そんな彼等を余所に、

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 

「ぬぅん!!」

 

一気に距離を詰めるYTA。

キングストーンのエネルギーを右の拳に集中させながら向かう先、丈二は正拳突きの構えを崩さず待ち受ける。

背後に現れる巨大な狒々。

そして、

 

「ライダー、パァァァァァァァンチ!!」

 

「天剛星・爆裂正拳っ!!」

 

ドゴォン!!

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?』

 

衝突する二人の拳。

広がる衝撃の波紋は突風へと変わり、皆を吹き飛ばさんと猛威を揮う。

 

「くっ(流石にパワーでは不利か。バイタルチャージを以ってしても本気の丈二には敵うかどうか……仕方ないっ!!)」

 

均衡は長くは続かず、押し切られ始めたYTAは即座に飛び退る事で再び距離をとろうとし、

 

「逃がさんっ!!天剛星・百裂拳!!」

 

「うおっ!?」

 

逃がすまいと距離を詰める丈二。

掛け声と共に放たれるは、間断なく襲い来る拳の暴風雨。

まるで城壁そのものが迫り来るような圧迫感。

自ずと限られる退路から現状を打開する手段を構想、選別し、

 

「ならば、とぅ!!」

 

「っ」

 

飛び上がるYTA。

月を背に再び輝くキングストーン。

そして、

 

「ライダー、チョォォォォォォォォォォォップ!!」

 

眩き光を纏った右の手刀。

重力加速度により更に肥大する威力。

常人ならば避けるの一択であるそれを、

 

「ぬぅん!!」

 

頭上で交差させた双腕により、丈二は受け止めてみせた。

 

「流石だなっ、丈二!!だが、今日こそはお前の膝を着かせて見せるぞ!!」

 

「言うじゃねぇか、出来るもんならさせてみせろ」

 

そして、やはり互いに距離をとる二人。

丈二が取り出したのは紅蓮の円形剣。

 

(大輪剣?投げてくる気か?ならば、俺はこうだ!!)

 

見極めると同時、YTAはベルトのエナジーリアクターへと意識を集中させる。

直後、紅き光がベルトに集中。そして、

 

「大輪剣、気力シュートぉ!!」

 

「キングストーンフラァァァァァァァァァァァァァッシュ!!」

 

豪腕より放たれた大輪剣。

ベルトより放たれた光線。

丁度両者の真ん中でぶつかり合うそれは大気との摩擦により絶えず火花を散らし合い、

 

(よしっ、これなら相殺でき―――――何っ!?)

 

胸を撫で下ろすのも束の間、光で埋め尽くされる視界の端に捉えた丈二は、

 

「乾・坤・一・擲!!」

 

フレイルを彷彿とさせる巨大な破砕武器、流星鎚を構えていた。

 

「天剛星・爆砕流星撃!!」

 

渾身の一投は紅き光線を霧散させながら物凄い勢いで肉迫し、

 

「(くっ、ならば)とぅっ!!」

 

再び、しかし今度は空高く飛び上がるYTA。

はるか上空、煌きを放つキングストーン。

それはさながら、真夜中の太陽。

紅き恒星のように、持てる全ての力を足先へ。

そして、終に放たれる、あの必殺技。

 

「ライダー、キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィック!!!!」

 

「来るかっ!!なら、蹴りには蹴りだっ!!」

 

先程と同様に、しかし籠める力は桁違いに。

走り出す。

その脚が大地を捉える度に伝わる震撼。

そして、漆黒の彗星を迎え撃つように、空へと昇る一筋の漆黒。

 

「天剛星・裂鬼鉄槌脚!!」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

裂帛の気合。

必殺の間合。

 

 

そして―――――

 

 

-17ページ-

 

『………………』

 

「くくくっ、皆驚いてますねぇ」

 

時刻は若干遡る。

開いた口が塞がらない傍観メンバーに老仙は湧き上がる笑いを堪え切れずにいた。

 

「しかし、相変わらすとんでもない仕合ですね、この二人は。私が周囲に結界張ってなければ、この程度の被害じゃ済みませんよ?」

 

呟いた老仙を中心にぼんやりと光る、半径1キロほどの半球状の薄いドームのような壁。

その効果は『結界を解除する時、内部で起こった変化を全て直前の状態に戻す』というもの。

つまり、この結果内で破壊された物質や負傷した怪我、失った体力などは全て、ビデオテープを巻き戻すかのように『無かったことになる』。

 

「しかし、ダイレンジャーとBLACK……完全に二人の好みが出てますね。私だったら、何になりますかね?」

 

そう呟いた、その直後。

 

 

 

「表が騒がしいと思ったら……なぁに、老仙も参加する気なの?」

 

 

 

「っ!?……あぁ、貴女でしたか。いきなり後ろから話しかけないで下さいよ、吃驚するじゃないですか」

 

「よく言うわよ、気配くらい読めてたでしょ、って……あぁ、別に結界張ってたのね」

 

「えぇ。それに、周囲を警戒するだけ無駄でしょう。ここには世界を全壊させられる程の力が集まってるんですから」

 

「まぁ、そうかもね」

 

言うや否や、『彼女』が取り出したるは一本の棒。

その先端には細い叉のような鉄器が取り付けられており、

 

「よっと」

 

それを、先程丈二が使った流星槌、その鎖部分に噛み合わせ、

 

「さてと、それじゃうちの『旦那』止めてくるわね」

 

「はい?」

 

「熱くなり過ぎて、周りが見えなくなっちゃってるわ。久々に本気を出せたのがよっぽど嬉しかったんでしょうけど、柄にもなく酔っ払ってる今の状態じゃ、あなたもそろそろ限界でしょう?」

 

「……相変わらず、その目聡さには脱帽しますね。確かに、これ以上は少々キツくなり始めてた所です」

 

そう小さく呟いた老仙の額には、実に若干ではあるものの、確かに汗が滲んでいた。

 

「ふふっ、あなたもその知らず知らずに溜め込んじゃう癖、何とかしなさい」

 

笑いながらそう言うと、『彼女』はそのまま僅かに腰を落とし、

 

「せぇ、のっ!!」

 

棒を軸にして鎖ごと流星槌を、さながらフレイルのように回転させる。

風を唸らせながら円を描く鉄球。そして、

 

 

 

「いい加減にっ、しなさあああああああああああああああああああああああああい!!」

 

 

 

そのまま、上空へと思い切り投げ飛ばした。

 

 

 

-18ページ-

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

木霊する裂帛の気合。

二つの漆黒が終に交差しようとした、その瞬間。

 

 

ゴゥッ!!

 

 

『―――――は?』

 

突如、聞き慣れない音。

瞬時、割り込んできた影。

そして、

 

『ぐほぉっ!?』

 

当然、予想だにしていなかった二人はそのまま直撃。

衝撃で変身までも解け、揃って地面に撃墜。

 

「(ガバッ)何だ今のは!?いい所で邪魔しやがって!!やはりゴルゴムが何処かにっ!?」

 

「(むくり)……痛ぅ。何で俺の流星槌が?」

 

即座に起き上がり見当違いな叫び声を上げるYTAとは対照的に、ゆっくりと起き上がって割り込んできた物体、流星槌を見て眉を顰める丈二。

そして、

 

「ふぅ……落ち着いたかしら、丈二?」

 

その傍らにやって来て胸を撫で下ろす『彼女』。

金髪のサイドポニーは先端がクルクルと巻かれており、『とある恋姫』を彷彿させる。

 

「もう、いい歳してはしゃぎ過ぎよ?周り、滅茶苦茶じゃない」

 

『……あ』

 

言われ、二人は周囲を見回す。

先刻、丈二が吹き飛ばされた『元』家屋『現』瓦礫な山は勿論、ぶつかり合った衝撃により周囲の窓はひび割れ、戸や柱はへし折れ、見るも無残な地獄絵図と化していた。

 

「来る時にお店の中も見てきたけど、皆怯えてたわよ?中には泡吹いて倒れちゃってた子もいたんだから」

 

「も、申し訳ない!!」

 

「……済まん、熱くなり過ぎた」

 

頬を膨らませる『彼女』に、勢いよく立ち上がり頭を下げるYTAと、気まずそうに返す丈二。

申し開きの言葉もない。

宴の開催者が客人を脅かすなど言語道断。

増してや、彼等は自分のために集まってくれたというのに。

すると、不機嫌そうな顔から一転、『彼女』はふっと表情を緩めて、

 

「……まぁ、あなたと本気で戦える人なんて殆どいないから、偶には本気で暴れたいっていうのも解らなくはないけどね。ほら、立って。皆の手当てしなきゃ」

 

「……あぁ」

 

伸ばされた手。

握り返す手。

立ち上がると、『彼女』の顔は丈二の肩にすら届いていない事が解る。

 

「……悪いな、いつも面倒ばかりかける」

 

「いいわよ、別に」

 

見下ろす視線と、見上げる視線。

交わる二つの距離は徐々に縮まり、

 

「ホント、あたしがいなきゃダメなんだから……」

 

「……そうかもな」

 

厚い胸板に顔を埋める小さな身体を、逞しい両腕がゆっくりと包み込んでいた。

 

-19ページ-

 

数分後。

老仙が結界によって周囲を修復し、気絶してしまったメンバー(といっても極少数)を畳に寝かせてからの事。

 

「悪かったな。こんな事になっちまって」

 

「いやぁ、別にいいさ。物凄いもの(有り得ない対戦カード)見れたしな…………で、なんだけどさ、丈二?」

 

「何だ?」

 

皆を代表し、狼が問う。

 

「……その人、誰だ?」

 

丈二の隣、終始絶やさず笑顔を浮かべながら寄り添う『彼女』。

その視線は何処か期待を帯びて丈二へと注がれており、

 

「あぁ、その、なんだ、つまりだな……」

 

珍しく歯切れの悪い態度の丈二に、記録者や恋姫達は首を傾げる。

やがて、暫くそんな調子が続いた後、

 

 

「名前は、華陽(かよう)。俺の、家内だ」

 

 

「丈二っ!!(ぱぁっ)」

 

 

『……………………ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?』

 

 

これ以上はないであろう驚愕の声を上げる皆。

そして、弾けるような満面の笑顔でその腕に抱き付きながら、彼女は言った。

 

 

「初めまして。姓は曹、名は真、字は子丹、といってもこれは昔の話。曹真子丹改め、峠崎華陽です。皆、宜しくねっ」

 

 

(続)

-20ページ-

 

 

後書きです、ハイ。

 

いやぁ、長かった

 

……『元』前編、『現』甲をうpしてからほぼ一月ですよ。

 

『一応』続き物なのでそれっぽい終わり方にしてみましたが、果たして次を書くのはいつになることやら……まぁ、また気が向いたら募集しますので、参加していただけたらと思います。

 

さ〜て、『盲目』の続き書かなきゃ……

 

 

 

で、

 

 

 

戦国とのバトル、如何だったでしょうか?

 

解らない人にはつまらん内容だったと思いますが、半分以上俺の自己満足なので悪しからず。

 

ちなみに、参考までに今回新たに出てきた面子の紹介をば。

 

 

トリデプス/ダンドラム(FEの砦の名前から拝借)

持ち物:こうかくレンズ

 特性:がんじょう

技構成:メタルバースト

    ステルスロック

    ほえる

    じわれ

 

普段は他にも撒き要員を用意してほえまくるか、ひたすら『じわれ』ばっか打ちまくるww

『じゅうりょく』下なら飛行タイプや『ふゆう』にも当たるし命中率も上がる。

なによりデフォで『なみのり』に耐えるコイツが普通に好きだ。

 

 

ボスゴドラ/ゴジュラス(見た目がもう、ねww)

持ち物:おうじゃのしるし

 特性:がんじょう

技構成:アイアンヘッド

    いわなだれ

    でんじは

    メタルバースト

 

まぁ典型的な『ずっと俺のターン』型。

今回は本領発揮できなかったものの、実はコイツも『まひるみ』だったりしたww

ちなみにゴジュラスは他にも5匹ほど育ててるので、俺と対戦する日が来てもコイツだと思わない方がいいかもww

 

 

ミノマダム/だいこん(さくら大根っぽいでしょ?)

持ち物:きあいのタスキ

 特性:きけんよち

技構成:がむしゃら

    ふいうち

    ステルスロック

    スキルスワップ

 

コイツに掛かればどんな奴も(ゴーストタイプ除いてww)2ターンで仕留められる。

が、正直割と有名な型。当然、他にも色んな型は育てているので抜かりなし。

交換だと思ったら『ステルスロック』撒いたり『スキルスワップ』したり。

読みが何より重要。

 

 

ルカリオ/ワーガルル(コイツも見た目が、ねぇww)

持ち物:ラムのみ

 特性:せいしんりょく

技構成:バレットパンチ

    インファイト

    ストーンエッジ

    メロメロ

 

コイツも色々型が作れるので面白い。

基本的に『ひるみ』が五月蝿い奴に出すこと多し。

メロメロは一時期気まぐれで入れたやつが以外に対人線で役に立ったのでそのままにしてるだけだったり。

 

 

ヒードラン/ジョニー(最初はゴ○ブロスの予定だったww)

持ち物:こだわりスカーフ

 特性:もらいび

技構成:マグマストーム

    りゅうのはどう

    だいちのちから

    おにび

 

実は意外と速いコイツ(Gっぽいからか?ww)

『マグマストーム』は言わずもがな強力だし、『もらいび』だと『鋼に対して炎』って考えてる奴に対して無償降臨(+炎強化)出来たりするのでかなり使いやすい。

ちなみに普段は『ふうせん』を持たせてます。

 

 

…………はい、解らない人には退屈ゾーンでしたww

 

YTAさんともぶっちゃけ趣味全開になりましたね〜ww

 

特撮っつか、ダイレンジャーとBLACK知らなきゃ詰まらなかったと思う。

 

俺が特に好きなスーパー戦隊は以下の通り。

 

1、ダイレンジャー (実際の拳法をモデルにしてるだけあって、CG等の技術が未発達な頃の作品なだけあって、殺陣の迫力が段違い)

2、ゴーゴーファイブ(扱ってる内容も去る事ながら名言多し。何より主題歌がカッコ良過ぎ)

3、ガオレンジャー (ロボット多くて最高。特にゴリラ。マッスルラリアット。異論は認めるが意見は変えない)

 

是非、特撮について語らいたい人は特撮ラウンジへ。

 

話題を振ってくれたら尚嬉しいです。

 

 

 

最後に、

 

 

 

華陽の出演許可を頂きました南華老仙殿には多大なる感謝を。

 

恐らく、この作品中の彼女は貴方の考えている人物像とは懸け離れてしまっている、もしくは懸け離れていく可能性が御座いますが……大丈夫でしょうか?

 

ちなみに見た目は戦国が描いてくれたイラストを基準に想像しております。

 

気になる方は覗いてやって下さいませ。

 

こちら:http://www.tinami.com/view/207935

 

隣のごついおっさんが俺だそうでっせ。

 

それでは、次の更新でお会いしましょう。

 

でわでわ

 

 

 

 

…………バイト先の仕事のお陰で両腕及び両手に生傷が耐えず、余計に周囲の誤解を招いているようです。

-21ページ-

 

≪峠崎丈二のお手軽料理レシピ 〜本日のメニュー:特製ステーキソース〜≫

 

「よう、美味い飯食ってるか?『病は食から。『人』に『良』いと書いて『食』と読む』ってな。今日は作中に出てきたステーキ用のソースのレシピを教えよう。これで今日から市販の焼肉のタレなんて必要無しだ」

 

「まずは『玉葱と人参のソース』から。玉葱1つ、人参5cm程度、ニンニク少々、醤油と味醂を大さじ1杯、オリーブオイル(なければサラダ油でよし)小さじ1杯、塩少々。用意するのはこれだけだ。作り方も実に簡単。玉葱、人参、ニンニクをすりおろして残りの材料を混ぜて耐熱容器に入れ、電子レンジで4〜5分加熱する。ハイ終了。簡単だろ?」

 

「で、『梅肉のソース』は更に簡単だ。材料は梅干4つ、だし汁大さじ2杯、味醂・砂糖・醤油大さじ1杯、酢小さじ1杯。梅干の種を取って包丁で叩き、残りの材料と混ぜ合わせるだけ。加熱すら必要なし。大葉と合わせると更にさっぱりして美味いし健康的だ」

 

「やっとタイトルらしくなってきたかね。二つとも肉との相性は抜群だ。個人的には豚か鶏を推すぜ。豚の肩と鶏の胸は割と安いし噛み応えあるしな。米が進むぜ〜?やっぱ日本人なら米だろう。是非、試してみてくれ。それじゃ、今日はこの辺で。次はどんながメシいい?」

説明
投稿58作品目になりました。
やっと宴会終了……長かった、実に長かった。
今回、かなりというか相当俺の趣味が大暴走しております。
『何じゃこりゃ?』って思う人いること間違いなし。
『気が合いそう』って人、ラウンジでお待ちしております。
取り敢えず、今回も読んでやって下さいませ。

各アバターはなるだけ御本人の要望を反映させてはいますが、基本的に俺の勝手な妄想の産物です。

では、どうぞ。
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コメント
ZERO殿、コメント有難う御座います。ディスカウントショップの品出し担当なので、ダンボールやら何やらで結構怪我する事多いんですねぇ……(峠崎丈二)
腕の傷は修行の方向でですか?  カオスぽかったですけど面白かったです!(ZERO&ファルサ)
YTA殿、コメント有難う御座います。ちびっ子、これ読んでるかなぁww まぁ、弟子が技を何に使うかは自由ですからねぇ……(遠い目)(峠崎丈二)
萌香殿、コメント有難う御座います。はい、(続)って書いてますよ?(峠崎丈二)
 やはり、今回も引き分けか……まぁ、どっちかが勝っちゃうとそれぞれのファンのチビッコが悲しみますから(笑)。しかし、私が音々音のキックの師匠だったとは……と言う事は私のssの一刀を苦しめてるのは、私自身……?(YTA)
なんか下の方に(続)って書いてありませんでしたか?(萌香)
へたれ雷電殿、コメント有難う御座います。権化……まさか俺がそんな称号を頂く日が来ようとはww(峠崎丈二)
BLUE殿、コメント有難う御座います。慣れというものは本当に恐ろしいですよね。自分は何とも思わないのに回りは爆笑してたりドン引きしてたりすると余計にそう思いますww(峠崎丈二)
関平殿、コメント有難う御座います。あれですね、度を越えた恐怖や痛みは逆に何も感じないというアレと同じって事ですね?ww(峠崎丈二)
ほわちゃーなマリア殿、コメント有難う御座います。カクレンジャーもいいっすね。名乗りシーンでのケインさんの浮きっぷりが特にww その時はまた是非に!!(峠崎丈二)
黒山羊殿、コメント有難う御座います。その一言だけで嬉しいですよ!!次回も是非、参加してください!!(峠崎丈二)
まさにカオスの権化!ww(へたれ雷電)
このカオスにも慣れてきた。慣れって怖いねwww(青二 葵)
ダイレンジャー・・・戦隊物でも1・2位を争う好きなものでしたね。ちなみにカクレンジャーも好きですよ。また誘って下さいね。(ほわちゃーなマリア)
楽しませていただきました。次回もやる時は是非声を変えてください。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
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