仮面ライダーディケイド×新・恋姫†無双 feat戦国乙女 新たなる外史への扉 第8話  微男熱女
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マサムネ(伊達先生)から残りの真紅の甲冑の在り処を聞いたノブナガ達は西国へと向かっていた。

ノブナガ達が徒歩で移動する中、ノブナガが加えている煙管に一匹の蝶が止まる。

 

「ふっ」

 

ノブナガは思わず笑う。

 

「お館、楽しそうですね」

「おお、旅は良い。なにやら心が浮き立ってくる」

「そうだな。よく旅してる俺もそう思うんだ。旅って良いもんだぜ」

「折角馬を用意いたしましたのに…」

「馬上からでは見えるものも見えなくなってくる」

「見えるもの?」

「それすなわち、天下という代物よ」

「なるほどな」

「?」

 

ノブナガの言葉に一刀は納得する。

質問したヒデヨシは分かっていない。

 

「はっはっは、城から見下ろしているだけでは見聞は広まらぬという事じゃ」

「へぇ〜、さすがお館」

「感心している場合か。相手はこうしている間にも軍勢を整え、我らを迎え撃とうとしているのかもしれんのだぞ」

「え〜、でもマサムネさんも……」

 

ヒデヨシは少し前の事を言い出す。

それは伊達先生の話では残りの甲冑を持っている三人が天下への野心が薄いので交渉次第では甲冑をたやすく手に入れることが可能とのこと。

 

「しかし……」

「案ずるな、ミツヒデ。相手に歓迎の時を与えねば、それこそ非礼というものよ」

「……」

「それに…、首尾よく甲冑を手に入れることが出来ぬのであれば……それはわしがその器ではなかったという事じゃ」

「もし戦いになったら俺一人でどうにかしてやるさ」

「貴様一人でって……」

「何、こいつの力……見くびるなよ」

 

一刀がディケイドライバーをミツヒデに見せ付けるように見せる。

 

「そんじゃー、はりきって行きましょうーーー!」

 

ヒデヨシは張り切るものの数十分後にはもうへとへとになり、棒を使って歩いている状態になっていた。

 

「あけりん、西国ってあとどのくらい?」

「まだまだだ、馬鹿な事を聞くな」

「だって朝からずっと歩き詰めなんだもん」

「この程度で根を上げるとは…使えぬ奴」

 

そのミツヒデの言葉でヒデヨシは少し怒りを顕わにする。

 

「違います、お館とあけりんに一刀さんが丈夫過ぎるんです」

「否定できないな」

 

ノブナガとミツヒデはこの世界の戦国武将。

そして一刀は仮面ライダーディケイドとして戦ったり旅をする前から特撮ものの影響で体を鍛えていた人間。

何もしていないヒデヨシとはわけが違う。

 

「やっぱり、この時代で生きていくのはつらいかも…」

「要は慣れだ。慣れちまえば楽だぜ。俺なんかもっと過酷な時代にいたときもあるしな」

 

ヒデヨシを励ます一刀。そしてその一同を木の上からこっそり見るハンゾウがいた。

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第8話  微男熱女

 

 

一同は道中の街へと入っていった。

 

「はあ…はあ…はあ…」

「喜べ、ヒデヨシ」

 

疲れているヒデヨシにノブナガが声をかける。

 

「?」

「この街で休みを取るぞ」

 

ノブナガが目線を上にするとそこには「だんご」と書かれた看板があった。

 

「え? ホントですか? やったーーーーーー!」

 

休むという事でヒデヨシは元気になり、走る。

 

「すみませーん、お団子とお茶、四人前」

「はーい」

 

店員がやって来る。

 

「あら、お侍様達どちらからおいでです?」

「はい」

「うむ!」

 

するとヒデヨシを押しのけるミツヒデ。

 

「聞いて驚け皆のもの! こちらにおわすはかの名が高き武将、尾張の織田ノブナガ様じゃ」

 

すると店員はお盆に乗せていた飲み湯を落とす。

 

「?」

「の、ノブナガ!?」

 

街の人全員が『ノブナガ』という言葉に反応する。

 

「なんかリアクション、違くない?」

「変な意味で大歓迎されてるようだな」

 

一刀が皮肉るように言う。

 

「お侍様、ほ、本当に、織田ノブナガ様で……?」

「いかにも、わしが織田ノブナガじゃ」

「ノブナガ!?」

「尾張の人喰い?」

「子供を隠せ! 食われてしまうぞ!」

 

街人達は一斉に家に隠れる。

 

『………』

 

一同は呆然とする。

 

「誰もいなくなっちゃいましたよ」

「なんじゃ、これは? おい、娘!」

 

ノブナガが隠れている店員を呼びつける。

 

「! ひぃ」

「これは一体どうしたことじゃ? 皆、何故わしがノブナガと知って身を隠す」

(あの世界の俺みたいだ)

 

一刀は思い出す。それは別の世界の一刀が三国志の世界なのに生み出された北斗神拳の伝承者となり、それを良く思わない兄弟子が一刀の名を騙り、その一刀の悪評を流した事もあった。

その兄弟子は北斗神拳伝承者の一刀によって倒れされたのは言うまでもない。

 

「だって、尾張の織田ノブナガは領民の赤子を捕らえて、喰らうと言う噂が……」

「なんじゃそれは」

「そんなの人じゃねえよ」

 

戦国の世で赤子を喰らうのはないわけではないが、ほとんどないに近い。

それに仮にしたとすればそれはもはや人ではない。人の形を外道であると一刀は思う。

 

「バカを申すな! 一体どこのバカがそんな根も葉もない噂を流した?」

 

ミツヒデが怒る。

 

「明智ミツヒデと申すお侍様です」

「!?」

「ここから西国にかけ、街道中は皆、ノブナガ様の噂でもちきりでございます」

「ミ〜ツヒデ〜」

 

ミツヒデが後ろを振り向くとそこには当然のことながら怒りを顕わにしているノブナガがいた。

 

「これは一体どういうことじゃ?」

「ご、ご、ご、誤解でございます! 何かの間違いで…」

 

ミツヒデは弁明をしようとしたがあることを思い出す。

それは西国に向かう前に部下にノブナガは強いだけでなく優しさを兼ね備え、領民達はノブナガに赤子の頭を撫でるように請うたりすると言う事を流すように言った。

そしてそれを流したのはミツヒデだと伝えるようにも部下達に言ったのだが……。

しかし噂は伝わってくるにつれどこかでこじれるもの。

次第にノブナガが赤子を喰うという変な噂が伝わってしまい、終いにはノブナガは人の姿をした鬼という変な事態になったのだ。

 

「尾張の織田ノブナガと言えば、残虐非道、極悪無残、苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)、横断歩道の化物と明智ミツヒデ殿が申しておるとおっしゃいます」

「………」

「あちゃ〜」

「ま、噂というのはどこかで改悪されるもんだからな。それはいつの時代やどこの世界でも同じだな」

「……」

 

ミツヒデがノブナガの方を見ると……。

 

「ミツヒデ、お前……」

「…なんで私の名前だけ……」

 

ミツヒデの肩に一刀が手を乗せる。

 

「お前の名前だけじゃない。ノブナガの名前もだ」

「一刀さん、フォローになってないよ」

 

ヒデヨシにツッコミを入れられる一刀。

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一方、とある場所ではイエヤスが何かの儀式のようなものを隠れてしていた。

 

「織田のガキ大将が動いたか」

「はっ、西へ向かっております」

「西…して目的地は?」

「さあ…」

「…さあ、だと……」

 

イエヤスが立ち上がり、錫杖を持ってハンゾウの前に立つ。

 

「それを調べるのが、ハンゾウ、お前達の勤めであろう」

「申し訳ありません」

「この間抜け!」

 

イエヤスにこってり叱られるハンゾウ。

そして戻ってノブナガ一同では、ミツヒデがノブナガから拳骨をもらっていた。

 

「申し訳ありませぬ、お館様〜」

「噂のせいでこの先の街にも迂闊に立ち寄るわけにはいかん。仕方ない、このまま獣道を行くぞ」

「ふぇ〜」

「旅は道連れ、世は情け……ってか」

 

一同が途中の川を渡っていると、ヒデヨシがお腹をすかせて余りに足を滑らせ、川に落ちる。

 

「お館〜、もう動けません」

「……そうだな、飯にするか」

「はっ!」

「お弁当ですか?」

 

ヒデヨシが目を光らせる。

そして出てきたのはにぼし五匹に少量の米粒に少量の味噌一つであった。

 

「え〜と、これ……」

「見ておれ」

 

ノブナガが川から水を汲み、その水をご飯にかける。

 

「干し飯じゃ」

「へ?」

「よく噛んで食え」

「味噌ににぼしまで付いて、ごちそうだぞ」

 

ノブナガとミツヒデは普通に食べ始める。

 

「……」

 

ヒデヨシは泣きながら、食べ始める。

 

「仕方ねえ、ほらよ」

 

一刀が自分の分をヒデヨシに渡す。

 

「良いんですか?」

「俺は適当にそこらにいる獣でも捕まえて食うわ」

 

一刀はディケイドライバーを腰につけて、展開し、ディケイドのライダーカードを取り出す。

 

「変身」

「カメンライド、ディケイド」

 

一刀はディケイドの変身する。

 

「じゃあ、適当に捕まえたら戻ってくる」

 

一刀は森の中を散策しに出かけた。

ヒデヨシは残された一刀のものを見ながら涙声でつぶやく。

 

「コンビニのツナマヨ、ファミレスのハンバーグ……」

 

ディケイドは適当に猪を見つける。

猪は簡単に捕まり、一刀達は感謝を込めて食べたそうだ。

食事を終えた一同は再び先を進み、絶壁を登っていた。

 

「お館、本当にこの道いいんですか?」

「心配するな。この峠を越えればまもなく街道に出るはずじゃ」

 

しかしそれとは裏腹に山の山頂に着いた。

 

「どうやら迷ってしまったようじゃ」

「へぇ〜、それって遭難じゃないですか」

「ま、大丈夫だろ。方角は合っておるし、日もまだ高い。どうじゃ、ミツヒデ」

「後、二つほど山を越えれば人里に出られるかと」

「後、二つ……」

「ほれ、休んでおると日が暮れるぞ〜」

「でも〜」

「狼の餌になりたくなければ歩くしかないのだ」

「お、狼!?」

「俺、飛んで運ぼうか?」

「………あ」

 

全員、一刀が飛ぶ力も持っていることを忘れていた。

一刀はディケイドブレイドジャックフォームに変身(ブレイドジャックの理由はオーズタジャドルだと三人運ぶのに一人は足にしがみつく必要があり、コンドルレッグのせいで傷つくため)し、皆を道まで運んだ。

 

「ようやく道に出たな」

「まったく」

 

一刀は変身を解除する。

 

「参るぞ」

「はっ」

 

三人は歩き出す。

 

「地図なんかないし、携帯もGPSも使えないし……もしあたし一人だったら……」

 

ヒデヨシは自分ひとりだったら骨になっている想像をする。

 

「やだやだ、そんなのやだよ」

「何をしておるヒデヨシ」

「置いてっちまうぜ」

「さっさとこんか」

「ふぇ〜、待ってくださいよ〜〜」

 

ヒデヨシは急いで三人の後を追う。

すると四人がいなくなった茂みから伊達先生が現れる。

 

「ふ、ノブナガったら根が単純だから私が思ったとおりに動いてくれ……」

 

伊達先生は自分の兜に蛇が付いていることに気づく。

 

「………いゃぁ〜〜〜〜!」

 

四人が遠く離れた時に先生の悲鳴が聞こえる。

 

「! 狼?」

 

ヒデヨシは悲鳴を聞いてそう思うが……。

 

「自業自得だ。先生……」

 

一刀は自分達の側に伊達先生がいたことに気付いていた。

あの蛇は実は一刀が用意していたりする。

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一同は道中で一つの寺に立ち寄る。

 

「助かりました、ご住職」

「いえいえ、ろくなもてなしも出来ず、申し訳ございません」

「震えてるぞ、ばあさん。大丈夫か?」

「お気遣いなく大丈夫です」

 

全員が手を合わせてお祈りをする。

一同は今日はこの寺で休む事になったのだ。

そして廊下を歩いていると……。

 

「あけりん、あれ何?」

 

ヒデヨシが外の方を見て、尋ねる。

 

「温泉が湧いているようだな」

「温泉! 温泉ですよ、お館、露天風呂ですよ、皆で入りましょうよ」

「俺はやめとく」

「当たり前です!」

 

ヒデヨシにまたツッコミを入れられる一刀。

 

「風呂か……」

 

そして一同(一刀は除く)は露天風呂に向かった。

 

「さっきのおばあさん、私達のこと怖がってませんでした?」

「ここにもわしの噂が伝わっておるのじゃろ。一体どんな話になっておるのやら…のう、ミツヒデ……」

 

女性一同は風呂を楽しんだ。しかし、ヒデヨシは風呂を終えたとたんに熱を出してしまう。

 

「風呂ではしゃぎすぎるからだ」

「ヒデヨシにはちときつい道中であったからな。旅の疲れが出たのであろう」

「何度も弱音はいてたからな。もう少し休む回数増やすべきだったか。俺がマシンディケイダーで運んでやるべきだったか……」

「は、は、はっくしゅん……だ、大丈夫ですよ。こんなの風邪薬飲めば一発です」

「風邪薬?」

「こいつだ」

 

一刀が風邪薬を取り出す。

 

「何だそれは?」

「こいつがその『風邪薬』だ。今のヒデヨシの病を治すには一番良いとされてるもんだ。ちょっと水もらってくるわ」

 

一刀が部屋を後にする。

 

「お館様、ここはこの寺にヒデヨシを預け、一刀殿にもここでヒデヨシを看てもらい、私達……二人だけで先を急いではどうかと………」

「そうだな…」

「ふぇ〜置いてかないでくださいよ」

「バカを申すな。その体で旅が出来るものか」

「で、でも……」

「出来る出来ないじゃない」

 

そこに水をもらってきた一刀がやって来る。

 

「やるかやらないかだ」

 

一刀がヒデヨシに近づく。

 

「まずは薬飲んで」

「……」

 

ヒデヨシは一刀に出された風邪薬を飲む。

 

「そして水だ」

「……」

 

水を飲むヒデヨシ。

 

「これでよしとだ。まったく月が俺のこと心配して持っていくように言われた風邪薬が役に立つとは思わなかったぜ」

「それですぐに治るのか?」

「すぐっても最低でも今日一日は安静だ」

「そうか……ともかく今夜様子を見ると言う事だな」

「そういうこと」

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夕方になる。

 

「はて…熱がひかぬどころか上がっておる」

「風邪……じゃねえのか?」

「お館……この時代の人間の寿命ってどのくらいなんですか?」

「寿命……ふむ、最近は長生きする人間が増えてきたそうだからな。人生ざっと五十年といったところか」

 

これはよく信長が好んで歌われていた「敦盛」にも言われる言葉でもある。

 

「ご、五十しか…でもあたし、そこまで持たない気がする……」

「しっかりせいヒデヨシ。病は気からと申すじゃろ。元気だけがとりえのお主がそんなことでは治る病気も治らなくなってしまうぞ」

「お館……」

「諦めちまったら、人生なんてそこで終わるんだ。それはどんな時でも言えるんだぜ」

「ゆっくり眠れ、今宵はわしが一緒にいてやる」

「はい……」

「………」

「ミツヒデ、一刀」

「!」

「おぬしらももう休め」

「お館様」

「ここはわし一人でよい」

「そうか」

「ですが……」

「お主らまで寝込まれては敵わんからな」

「……」

 

ミツヒデは照れる。

 

「何かあったら俺を呼べ。適当に薬まだあるから、その時のヒデヨシの状態見て飲ますわ」

「頼む」

 

一刀とミツヒデはヒデヨシの部屋を後にする。

するとそこに住職が部屋にやってきて、住職は一刀が出した風邪薬によく似たものを出す。

 

「これは一刀の持っていたのと同じ……どうしたのだ? これは」

「先ほど旅の侍が道を尋ねてきましてな、そのお礼にノブナガ様のお連れが病に伏しに倒れた事をお伝えしたところ、ならば南蛮渡来の良い薬があると、これを…」

「一刀はそんな事を言っておらんかったがな……」

 

ノブナガはもらった薬をじっと見る。

 

「しかし南蛮渡来のものなら値も張ろう。早速礼をせねば……」

「それが道案内の礼代わりとおおせられ…」

「もう行ってしまわれたのか」

「はい」

「ふむ、なんとも奇特な御仁じゃ」

「それにしても人の噂とはつくづく当てにならぬものです」

 

住職はノブナガと直接会って噂とは全然違う事を知ったのだ。

住職とノブナガが少し話し込み、住職が去ってすぐにヒデヨシが寝言を言う。

 

「一人は……嫌だ………」

「ヒデヨシ……」

 

ノブナガは笑みを浮かべた。

 

「ヒデヨシ起きろ。薬を飲むのじゃ」

 

ノブナガは住職に先ほど渡された薬をヒデヨシに飲ませようとするが、ヒデヨシは弱り切っていて飲み込めない。

 

「飲め、飲むのじゃヒデヨシ」

 

しかしヒデヨシは飲めない。

そこでノブナガは考えた。それはなんと自分の口に水を含み、その水をヒデヨシに飲ませたのだ。

そんな時であった!

 

「お館様、白湯を持ってまいり……」

 

タイミング悪くミツヒデが戻ってきてしまったのだ。

ノブナガが今やっていることはヒデヨシに薬を飲ませる行為。いうなれば人工呼吸と同じようなものである。

しかし途中から見た者からすればただキスしているようにしか見えない。

ノブナガに心酔してミツヒデならなおさらである。

ミツヒデはその姿を見て激しくショックを受けた。

ノブナガが薬を飲ませてくれたおかげでヒデヨシが目を覚ます。

 

「お館……なんで…キス……」

「大丈夫、大丈夫じゃヒデヨシ」

 

ヒデヨシは再び眠りにつく。

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その様子を寺を見渡せれる少し高い丘に一人の侍がいた。

その侍は明らかに現代の袋を持っていた。

 

「まったく、世話の焼ける生徒なんだから」

「まったくだな、先生」

 

先生と声をかけたのは一刀。そしてかけられたのは伊達先生であった。

 

「あなたは……」

「通りすがりの仮面ライダーだ、伊達先生」

「いつから気づいたのかしら?」

「最初に会った時からだな。あの時あんたは明らかにヒデヨシだけに顔をそらしていた。

人見知りなら、知り合いでも顔をそらすことが多いからな。それにこの前の雨の日でぼやいたことも聞こえていた。

だからあんたがあいつの担任の先生なのはもう分かってるんだ」

「そう……」

 

伊達先生は観念したかのように普通に接してくる。

 

「で、何のつもりだ? 風邪薬渡して……。俺も同じようなの持ってたんだが…」

「あなたのはあなたの世界のものでしょ。でもあれは日出さんの世界にあったもの。日出さんの体にとってはいいものよ」

「そうかい。それでなんであんなことしたんだ? あんたは俺達が目障りじゃないのか」

「誰も目障りだなんて言ってないわよ」

「だったらなんでこの間、ミツヒデをけしかけるようなことを言った。外史の管理者らしくここを正史のようにしたいんだろ?」

「……正直な話、分からないわ」

「何?」

「今の私が何者か、私自身もわかっていない。でもこれだけは言えるわ。日出さんは私の大切な生徒ってことよ」

「そうか……」

 

一刀はその場を後にしようとする。

 

「何もしないで帰るの?」

「あんたが何を考えてるかは完全じゃないがわかってるつもりだ。だけど、あんたが何者なのかまでははっきりしてないってのが本音だな。

とりあえずは俺も様子見ってことだ。

ただし…!」

 

一刀が伊達先生の方に振り替えながら指を突きつけながら言う。

 

「ミツヒデにアレをやらせるようなことをしたら、俺はあんたを倒す! そのつもりでいろ」

「ええ」

 

一刀はそう言い残して去って行った。

 

「…………」

 

そして伊達先生も少しヒデヨシのいる部屋を覗いて、その場を去った。

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翌日、ヒデヨシの体調は良くなり、目を覚ます。

 

「起きたか、ヒデヨシ」

「おはようございます」

 

ノブナガはヒデヨシのおでこに自分のおでこを合わせて熱を測る。

 

「熱は引いておる。どうやら南蛮渡来の薬とやらがよく効いたようじゃな」

「お館……もしかしてずっと看病してたんですか?」

「うん…気にするでない。戦場におることを思えば楽なものよ」

「お館……そっか〜それでかな〜」

「うん?」

「あたし、熱のせいだと思うんだけど、夢見たんです」

「ほぅ、どのような夢じゃ?」

「お館がね、あたしにその……キスする……!」

 

ヒデヨシは恥ずかしさのあまり、顔を隠す。

 

「キス? とはいったい何の事じゃ?」

 

キスというのは外来語なのでノブナガには伝わらない。

以前にシロがキスと言ったのはシロが特別な存在であるため。

基本的に現在この世界にいる人物で外来語で伝わるのは一刀、シロ、伊達先生だけである。

 

「そっか…え〜と……それはつまり……口と口を……こうやってくっつける…」

 

ヒデヨシは指と指を合わせて教えた。

 

「え〜と、そうだ。接吻ですよ、接吻」

 

接吻ならノブナガにも伝わる。ノブナガはヒデヨシの言いたいことがわかり、少し焦る。

 

「ば、バカを申すな! そのような真似、わしがするわけなかろう!」

 

ノブナガは昨日行ったことを思い出し、焦っているのだ。

 

「そっか〜、それもそうですよね」

 

ヒデヨシは勝手に納得した。

そして着替えて部屋を出る。

ヒデヨシは元気に廊下を走る。

それを角から見るミツヒデ。

 

「どうしたんだ?」

 

角から見るミツヒデに声をかける一刀。

 

「別に……なんでも……」

 

ミツヒデはそこを去っていく。ミツヒデは去り際に涙を流していた。

 

(……こりゃあ、下手すれば先生が何かしなくても勝手にやっちまうかもしれねえな)

 

一刀はある意味で焦りの色を見せる。

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そして一同は再び西国へと向かった。

 

「お館様、もう間もなくでございます」

「うん?」

「私の顔に何か?」

「目が赤い。眠れなかったのか?」

「いえ……恐らく私にも少々旅の疲れが出たのでしょう」

「そうか。くれぐれも無理するでないぞ」

「はあ」

 

ミツヒデはため息をつくように答える。

 

「あたし、このままこの世界でやっていけるのかな〜?」

 

棒を突きながら歩くヒデヨシ。

 

「やっていけるかじゃない。やっていくんだ。どんなに環境が悪くてもやっていける。人ってそんなものだ。

ってもあまりに環境悪すぎると死んじまうけどな」

「一刀さんは元気ですね」

「昨日言っただろ。俺はもっと過酷なところにいたことがあるって」

「それってどんな感じなんですか?」

「そうだな………。まずここ以上に道が……いや、思ったより平地が多かったな……。

まあ一番過酷なのは食うものがここより種類がなかったことかな」

 

一刀はそう言うが、一刀は月や詠に色々言って、様々な献立を考えさせていた。

今では正史と外史は行きやすくなったため、一刀のいた外史は現代正史とあまり変わらないものとなっていた。

 

「まあ、お前が色々教えてやればいいんだよ」

「そうかな〜、はあっ、はあっ」

「ヒデヨシ、あれを見よ」

 

息を切らしているヒデヨシにノブナガが声をかける。

ヒデヨシが何とかノブナガ達の元にたどり着くとそこには海が広がっていた。

 

「海…じゃあ西国に着いたの?」

「うむ」

「やったー、ゴールインだ〜〜〜!」

 

ヒデヨシは嬉しくなり走る。

 

「はっはっ、調子の良い奴め。まるで子供ではないか」

 

ヒデヨシのはしぎっぷりを見て笑うノブナガ。

 

(私の思いは通じておらぬのか……)

 

憂鬱になるミツヒデ。

その様子を影から見るハンゾウ。

そしてそのハンゾウのさらに後ろから見る三人の女武将。

 

「あれが織田ノブナガとお供の三人じゃ」

「どうする? このまま西国に入らせずとも」

「一発ドカンといっちゃろか?」

「待ちんさい。せっかくの客人じゃ。十分にもてなして差し上げんと……。そう、十分にな」

 

その三人の武将の気配をわずかにだが、察知していた一刀。

 

(まったく色んな世界回ってたから、気配察知まで出来るようになってるな……)

 

一刀は旅をしていく中でわずかにだが成長をしており、その成長の中にはほんの少しだが、近くに人の気配を察知することができるのだ。

 

(あっちはやる気ってところだな。だったら相手になってやるか)

 

一刀はディケイドライバーを腰につけるのであった。

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おまけ

 

 

作者「第8話だ」

一刀「どうした? 忙しいじゃないのか?」

作者「それなんだけど、第7話を投稿した翌日に忙しくなくなっちまったんだよな」

一刀「何があった?」

作者「リアルに悲しいことを言わせる気か? どうしても聞きたかったら俺とかなり親しくなることだな」

一刀「それ俺じゃなくてファンに言ってるだろ」

作者「まあな。というわけでしばらくはまた前のペースに戻るかな…。いや、俺のその時の気分によるな」

一刀「パソコンの不具合はどうした?」

作者「それはな、いっそのことパソコンを買い替えた」

一刀「はっ?」

作者「いやぁ〜、近々地デジ移行があるだろ。それを考えて買い替えを考えてたからちょうどいいといえばちょうどいいけど、前まで撮っていたアニメとかがな…」

一刀「そこは我慢しろ」

作者「本当に欲しいやつだったら買うしかないな。アスラクラインは欲しかったからDVDセット買ったし…」

一刀「ところで今は何をしてるんだ?」

作者「適当ぶらぶらだな。昨日はパソコンの設定してたし」

一刀「パソコンって昨日変えたばっかりかよ!」

作者「買ったのは一昨日だ。そして一人で何とかおおまかな設定はできたからこれで良しだと思う。

まあパソコンが前以上に動くからいい買い物したと思ったんだが…」

一刀「どうした?」

作者「展示品のだったからか少し傷みたいな跡があるのに気付いた。まあそこまで気にするものではないけど…。

とにかく、現実の忙しいのとパソコン事情は解決した。しかし俺は本来現実で忙しくなければならいないからどうにかするつもりだ」

一刀「そういえばこの世界の俺って少しスペック高くない?」

作者「確かに最後のところがな…。まあある程度鍛えてる上に世界を回ってきたんだ。少しくらい成長したっていいだろ。一応このディケイド一刀は俺が書いた一刀の中で一番年上だしな」

一刀「最年少は?」

作者「魏編の一刀だな」

一刀「一番強い俺が最年少なのかよ」

作者「そういうことになるな。後日談込で考えると現在の年齢はこんな感じかな。

ディケイド一刀(24)>アクセル一刀、星と共にの一刀(22)>蜀編一刀(21)>呉編一刀(20)>魏編一刀(19)

強さ的には魏≧ディケイド>アクセル=蜀≧呉だな『星と共に』はコンセプト違うから強さには入れていない。一応今はまたそらおと関係のものを書いているところだな。

それでは!」

説明
この話は作者が書いていた「仮面ライダーディケイド×新・恋姫†無双」の続編とされるものですが、舞台は「戦国乙女(アニメ版)」となっています。また話によっては主人公である一刀があまり出番がないことがあることをご了承下さい。
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コメント
俺は地震の時に買い換えましたよ。(アーマイル)
なるほど!! 続き楽しみにしてます^^(tukasa)
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