真・恋姫無双 改変・呉√2
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「ん〜、あれ?俺いつの間に寝たんだろう?」

 

何か知らない間にベットの中にいるし。

そこで、俺は布団に包まったまま一番近い記憶を漁り始めた。

確か学校が終わった後にチャリでノートやら何やらを買いに行ったんだよな…

 

で…………………………

 

ダメだ、そこから先が思い出せない。

まあ思い出せないものはしょうがないか。

 

それにしてもベットの感触が昨日までとやけに違うな。

及川の奴が何かしたのか?

それを確かめるべく俺は体を起こし、瞼を開けた。

 

そこに飛び込んできたのは慣れ親しんだ寮の部屋ではなく、まるで映画に出てくるような光景であった。それも古代中国を舞台としたような。

 

「えっ?どこ、ここ?何で俺の部屋じゃないの?え?」

 

やばい、いきなりの急展開に頭がついていかない。

疑問点が多すぎて逆に何がおかしいのか分からなくなってきた。

そんな時であった。ガチャリと音がして扉が開いたのは。

 

思わず身構えてしまう。

これで入ってきたのが及川で、『ドッキリ大成功〜。どやった、かずピー?驚いた?』と言ってきたらどんなに良かったことか。

勿論、現実はそんなには甘くなかった。

 

「あ、起きられたんですね」

 

入ってきたのは女の子だった。それもかなり可愛い。

髪は金で肩をちょっと越えるぐらいの長さ。背は小柄で俺の胸ぐらい。頭にちょこんと乗ったベレー帽が印象的であった。

 

「あ〜〜、ええと今しがた起きたばかりです。それで、ここはどこですか?やっぱり及川とかのドッキリじゃないんですよね?」

 

十中八九無いとしても、未だ及川ドッキリ説に縋り付きたい俺。

だが、やはり現実は非情だった。

 

「ここは揚州の会稽にある孫権様の館です。それと、どっきり?ですか?すいませんが私ではちょっとわかりませんね」

 

女の子は無情にも蜘蛛の糸を切ってしまった。

その顔は嘘をついているようには見えなかった。だって、本当に申し訳なさそうにしてるんだから。

それに及川にこんな可愛い知り合いがいたら真っ先に自慢してくるだろうし。

 

それにしても、今この子なんて言った?

ようしゅうのかいけい?そんけんさまのやかた?

彼女の言っている意味が分からない。

なんで日本にいた俺がいつの間に明らかに国外にいるんだよ。

しかも、名前的におそらくは中国っぽいし。

それにそんけんって……まさか、孫権って書くじゃないだろうな!?いや、孫堅って可能性もあるのか?

それとこの古代中国風の部屋のことを合わせて考えてみると……

 

 

 

俺、タイムスリップしちゃったのか!?

 

 

 

 

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「あの、どうかしましたか?」

 

一人で頭を抱え、唸っている俺を見かねたのか女の子が心配そうに声を掛けてくれた。

 

「いや、ちょっと事態が呑み込めなくて……あの〜すごい馬鹿なこと聞きますけど……まさかとは思いますけど、今って漢王朝だったりします?」

 

聞いてしまった…。これでもう後戻りは出来ない。

女の子が答えるまでが永遠のように感じたが、その答えは確かに俺の耳に届いた。

 

 

 

ええ、そうですよ、と。

 

 

 

「ああ〜やっぱりか。タイムスリップしちゃったんだ…」

一人でうんうん頷いている俺を再び心配したのか、また女の子が声を掛けてきた。

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「あ、ごめん。本当に大丈夫だから。色々と分かったこともあるし」

 

「そうですか。では、幾つか質問をしてもいいですか?」

 

「うん、いいよ」

 

「では、まずあなたの素性を教えて下さい」

素性か…これって正直に答えていいものなのか?この時代に日本って認知されてたっけ?

 

ま、問題ないか。

 

「ええと、姓は北郷、名は一刀。育ちは東京の浅草。聖フランチェスカの二年。素性で言えるのはこれくらいかな?」

 

「北郷一刀さんですか。字は無いんですね。それに、とうきょうのあさくさ?ですか。すいませんが聞いたことがありません。異国ですか?」

 

「う〜ん、たぶんここから海を越えて東にずっと行けばあると思うんだけど」

 

正確に言えば浅草予定地になるのか?

 

「そうですか。では。次の質問です。北郷さん、何で昨夜はあんな所に倒れていたんですか?」

 

「えっ、何それ?俺って変な所に倒れてたの?」

 

「覚えてないんですか?」

 

そこで女の子は昨日、俺に何があったのかを簡単に教えてくれた。

 

 

 

 

「……という訳で、北郷さんは今この館にいるんです」

 

「はあ、よく分かりました。つまり、何で俺が光と共に現れたのか知りたいってことね」

 

「まあ、要点はそこですね」

 

「と言ってもなぁ、俺もチャリ漕いでたら急に眩暈がして、気付いたらここにいた訳だし…」

 

「つまり、自分でも分からないと?」

 

「悪いけどそうなるね」

 

そう答えると女の子は俺の瞳をズイッと覗き込んできた。

 

「…分かりました」

 

30秒ぐらいしただろうか、そう言うと女の子は座っていた席から立ち上がり、そしてゴホンと咳ばらいを一つする。

 

「北郷さん、どうやらあなたは妖の類ではないようですね」

 

「えっ!?妖って、そんな目で見てたの?」

 

これは軽くショックだ…。まさか人間扱いされてなかったとは。

 

「ごめんなさい、登場の仕方が仕方だったもので。けど、安心してください。今までの会話で何となくの人となりは分かりましたから。少なくても妖の類ではないと私は判断しました。それに、孫権様にはちゃんと人間だと伝えますので」

 

「あ、ああ。頼むよ」

 

けど、妖って……。実は俺ってスゴイ綱渡りなことしてたんじゃ?

そう思うと冷や汗の一つも垂れてきた。

 

「では、私はこれぐらいで失礼します。また夜ぐらいに訪ねさせてもらいますね。何かありましたら外に侍女が居りますのでお申し付けください。あと、くれぐれもこの部屋から出ないようにして下さいね。妖の疑惑が晴れたといってもまだ素性がはっきりとした訳ではないんですから」

 

そう言って彼女は部屋から出て行こうとした。

 

「あ、ちょっと待って!」

 

そんな彼女を俺は思わず押し留める。

 

なぜなら、

 

「最後に名前を教えてくれないかな?」

 

そう、俺は彼女の名前を聞いていなかったからである。

現状、唯一の知り合いだ。聞いておいた方がいいだろう。

 

「あ、そういえばまだ名乗ってませんでしたね。私の名は諸葛瑾、字は子瑜です。では北郷さん、また後ほど」

 

そう言って少女――諸葛瑾は部屋を後にした。

 

へー、諸葛瑾っていうんだ。ふーん。

 

…………………。

 

って、嘘だろ!?え、マジなの?

諸葛瑾ってあの諸葛瑾?

孔明の兄で呉の重臣だろ!?

なのに何で女の子なの?

最後にでっかい爆弾落としていきやがった!!

詳しく聞こうにももう居ないし。

 

 

 

 

でもま、タイムスリップしている訳だし今更だよな。

諸葛瑾が女だから何だってんだ。

もう何が来ても驚かないぞ。

 

そう思うと頭がスッキリとすると同時にお腹も空いてきた。

 

……とりあえず飯でも食うか。

俺は外で待機していた侍女さんに何か食べ物を求めるのであった。

 

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そして気づけば左腕にしている時計の針は七時を指していた。

辺りは完全に日が沈んでしまっている。

もう少しで俺の運命が決まるのか。そう思うと柄にもなく緊張してきた。

 

そして、朝のように唐突にガチャリと扉が開くのであった

 

まず最初に入ってきたのは諸葛瑾さん。見知った顔で安心する。

だが、続いて入って来たのは知らない人だった。

肌は褐色で、腰よりも長いピンクのロングヘアーに扇情的過ぎる服。

そして何よりもその容姿に俺は目を奪われていた。

 

だが、ずっと見てるわけにはいかない。

もしかしなくても俺の運命が決まるかもしれないのだ。失礼の無いようにだけはしとかないと。

後に続く人はいない。どうやら訪ねてきたのは二人だけのようだ。

 

「……北郷一刀だったな?」

 

最初に口を開いたのは新しく来た女性だった。

 

「うん、いや、はい。北郷一刀です。失礼ですがあなたは?」

 

まずは名前を聞いておこう。

諸葛瑾さんの時みたいに最後の最後で驚きたくないし。

 

「私か?私は孫権、字は仲謀だ」

 

「ええーっ!?孫権?」

 

前言撤回。驚きました。

いや、ある程度は覚悟してたけどさ。いざ目の前で女の子が孫権って名乗ってるのはまた違う訳でして…。

 

「な、何だ?私の名がどうかしたか?」

 

孫権さんが怪訝な目で俺を見てくる。

 

「いや、ちょっとこっちにも色々事情がありまして…」

 

「そ、そうか」

 

本当に大丈夫なのか、と諸葛瑾さんに耳打ちしているのが聞こえてきた。

なんかもう、すいません。

 

「北郷一刀、大体のことはそこの子瑜から聞いている。勿論、お前が妖ではないということもな。では改めて問おう、北郷一刀。お前は何者なのだ?」

 

鷹のような鋭い目線でこちらを見てくる。

これが歴史に名を残す英雄の眼力ってやつか。

下手な嘘はつかない方が良さそうだな。

 

「驚かないで聞いて欲しいんだけど、俺はこの時代。この世界の人間じゃないっぽいんだ」

 

 

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「「この世界の人間じゃない?」」

 

孫権さんも諸葛瑾さんも同じようにキョトンとした顔をしていた。

無理もないか、俺もそっちの立場だったらそうしない自信ないし。

 

「詳しく説明してくれるか?」

 

孫権さんのその言葉から、俺は分かる範囲で説明を開始した。

 

 

 

 

 

「つまり、北郷さんは1800年ほど未来の人間で、さらに私たちは歴史に名を残しており、しかも男性だったと」

 

「うん、そんなところ」

 

よかった、何とか伝わったみたいだ。二人の理解の早さに助けられた部分もあったけど。

 

「俄かには信じられない話だな」

 

「う〜ん、やっぱりそうだよね…」

 

孫権さんは腰に腕を当て困った顔をしている。

察するに、信じがたい話ではあるけど、嘘だと断じることもできない。そんな所だろうか

 

「何か未来から来たという証拠みたいなのは無いのか?」

 

証拠ね……何かないかと考えたらすぐに思いついた。

携帯を使えばいいんだ。

だけど、使ったはいいけど妖術呼ばわりされて殺されたりしないよな?

だが、このままだと処罰されてしまう可能性もある。

となるとやるしかないか。

腹を括って孫権さんに話しかける。

 

「ええと、これは携帯電話と言って俺の世界では誰でも持っている道具なんだ」

 

そう言ってポケットから携帯を取り出す。

 

孫権さんも勿論、諸葛瑾さんも興味津々と見える。

 

「これを使えば人の声が録音できるんだ」

 

ここで俺がチョイスしたのは携帯の録音機能。

カメラやビデオカメラでも良かったんだけど、説明の手間を考え録音機能にしておいた。

 

「ろくおん?」

 

孫権さんが首をかしげる。

ああそっか、録音って言葉がないのか。

 

「まあ、実際に使ってみれば分かるよ」

 

そして俺は携帯を操作し、録音を開始する。

 

「はい、孫権さん。何かしゃべってみて」

 

「しゃ、しゃべれ?急にそんなこと言われても困る」

 

「いや、今ので充分だよ」

 

俺は再び携帯を操作し、今録音したものを再生する。

 

『はい、孫権さん。何かしゃべってみて』

『しゃ、しゃべれ?急にそんなこと言われても困る』

 

「っ!?」

 

孫権さんが目を丸くして驚いている。ついでにその脇にいた諸葛瑾さんも。

 

「まさか妖術か!?」

 

呆気にとられていた孫権さんがいつの間にか剣に手を掛けていた。

えええ!?ここまできて切られたんじゃたまったもんじゃない。慌てて俺は弁明をする。

 

「いやっ違うよ!これはこの道具を使っただけであって俺の能力じゃないんだ!操作の仕方を覚えれば誰でもできるんだよ!」

 

「それは本当ですか?」

 

思わぬところから助け舟が入った。

 

「うん、本当だよ」

 

「それじゃあ、私にもできるんですね?」

 

「ああ。何ならやってみる?」

 

俺は諸葛瑾さんを手招きし、操作の仕方を教える。

さすがというか呑み込みは早かった。

 

「では、やってみます。私の名は諸葛瑾、字は子瑜といいます」

 

そこで録音を止め、再生にうつる。

『私の名は諸葛瑾、字は子瑜といいます』

 

「うわー、できました!これは面白いですね!」

 

楽しそうにはしゃぐ諸葛瑾さん。

その横で孫権さんは諸葛瑾さんを羨ましそうに見ていた。

 

「もう一度孫権さんもやってみる?」

 

「なっ!?いや、まあ、どうしてもと言うのならやってやってもいいぞ?」

 

まったく、孫権さんも素直じゃないな。

 

「はい、孫権様。どうぞ」

 

諸葛瑾さんの手から携帯を渡され操作の仕方を教わっている。

その横顔は未知の物に対する好奇心に溢れるいい笑顔であった。

 

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一通り操作をし、満足したのか程なく携帯は俺の手元に返ってきた。

 

「これで、俺が妖術師でも何でもないことが分かってくれたかな?」

 

「ああ、どうやらそのようだな」

 

孫権さんはにこやかに答えてくれた。

 

良かった何とか無事にいけそうだ。

だが、そんな俺の安堵はすぐに吹っ飛ぶのであった。

 

 

 

「これでお前を天の御使いとして迎え入れることが出来るな」

 

 

 

は?天の御使い?何それ?

 

 

「え?何ですか、それは?」

 

「何だ、てっきり子瑜から聞いていると思ったぞ。最近、管輅という占い師が新しい予言をしてな。何でも、乱世を鎮めるために流星に乗って天の御使いがやって来るそうだ」

 

「…で、その天の御使いというのが俺だと?」

 

「察しがいいな。子瑜から聞いていると思うが、お前が現れた状況は占いの通りだ。それに未来…いや、天の国から来たという確認もさっきとれた。お前を天の御使いと見なすのも自然の流れだろう」

 

自然の流れって……昨日までどこにでもいる学生にそんな大役務まるのか?

 

「いや、けど俺なんかにそんな大層な役務まるとは思えないよ?自慢じゃないけど、勉強も運動も人並みだぜ?」

 

「まあ、確かに全くの能無しでは困るが、この場合必要なのは説得力だ。幸いお前は見たことのない天の服を着ている。あとはこちらでうまくやるさ」

 

天の服か。確かにこの世界じゃポリエステルの制服なんて世界に唯一だろうしな。

それと要は御輿になれってことか。けど、学も力もない俺でも出来ることがあるのは幸せなんじゃないのか?

それにここを追い出されたら命の保証もないし…

答えなんて分かり切ってるよな。

 

「分かったよ、孫権さん。天の御使いの役、謹んで受けさせてもらうよ」

 

「そうか、それはありがたい!」

 

孫権さんの本日二度目となるいい笑顔。

最初はきつい人かと思ったけど案外良い人なのかな?

 

 

「では、北郷一刀。私はお前を天の御使いと認めた。そこで、お前に私の真名を預けよう」

 

「真名?」

 

聞きなれない言葉に思わず反応してしまう。

 

「真名を知らないのですか?」

 

すぐに諸葛瑾さんから真名の説明がされた。

この世界も独自の文化というものがあるみたいだ。

 

「でも、いいのですか、孫権様?」

 

「かまわん、私が決めたことだ」

 

そう諸葛瑾さんに告げると孫権さんは俺の方に向き直った。

 

「改めて名乗ろう、姓は孫、名は権。字は仲謀。真名は蓮華だ。これからよろしくね、一刀」

 

「ああ、よろしく。孫け…いや、蓮華」

 

そう言いながら握手のために右手を差し出すが、蓮華は一瞬の躊躇の後、握り返してくれた。

うーん、まだまだ信頼が足りないのかな?

 

そして、すぐに諸葛瑾さんが俺の前に歩み出る。

 

「では私も真名を預けましょう。諸葛子瑜、真名は蒼里(あおり)といいます。頑張っていきましょうね、一刀君」

 

「うん、よろしく」

 

こうして俺の異世界での長い初日は幕を閉じるのであった。

 

そして、翌日から俺の乱世での生活が始まることとなる。

 

 

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はじめまして、ジャイロといいます

 

ふと思いついてしまったので、思い切って投稿してみました

 

とりあえずは週一の更新を目指します

 

あと、オリキャラの蒼里ですが、謝謝無双の妄想朱里を思い浮かべてくれればいいと思います

 

 

 

 

 

 

 

説明
真・恋姫の二次創作です

主人公は北郷一刀のまま、能力は原作準拠です
オリキャラは数人出てきます
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コメント
シャオ視点からのスタートって未だに無いよね(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
おぉ〜 何時もとは違う、連華視点からのスタートとは次回が楽しみです。^^(トトクロ)
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真・恋姫無双 北郷一刀  

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