遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第一章・二十二話
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荒れ果てた大地の上

駆けて行く、騎馬の大軍

 

“五胡”

 

彼らは今、自分たちの状況が理解できないでいた

 

何故ならば彼らは、“気付けば此処にいたのだから”

 

故に正気に戻ってすぐ、彼らは一目散にその場から駆け出した

まずは、状況を把握すべきだと・・・そう判断したのだ

 

 

「しかし・・・」

 

 

駆けながら、一人の男

この集団の長である男は考える

 

 

「あの街・・・随分と、ボロボロだったな」

 

 

あの街とは、先ほどまで彼らがいた街

“天水”のことである

その街の惨状を思い出し、男は不気味な笑みを浮かべていたのだ

 

 

「あれならば、上手くいけば・・・」

 

 

“奪えるかもしれない”

男は、考える

まずは自分たちの土地へと帰り、それから準備をしようと

“戦の準備を”、である

 

 

 

「ム・・・?」

 

 

そんな時だった

馬を走らせる男の視線の先

その瞳が、何かを捉えたのだ

 

 

「アレは・・・人、か?」

 

 

それも、たった一人

黒き外衣を纏い、顔を隠した何者かが自分たちの進路上に立っているのだ

 

 

「まぁ、イイか・・・」

 

 

“このまま、踏み潰せばいい”

男はそう思った

避けるのも面倒だ

なによりも、自分たちの敵である国の人間にそのような気を使う必要などない

そう判断したのだ

 

 

 

 

 

「アカンなぁ・・・」

 

 

そんな男を・・・そして、五胡の大軍を前にして

黒衣の人物は小さく呟く

 

 

「アンタら、そらアカンやろ・・・」

 

 

呟き、背負っていた“モノ”を握る

やがてその人物が構えたのは・・・“黒き偃月刀”

 

 

「折角の、ハッピーエンドやで?

それを邪魔しようなんて、お天道様が許しても・・・ウチが許さへんわ」

 

 

“んなワケで・・・”と、駆け出した黒衣の人物

 

“バサリ”と、はためく外衣

そして露わになった素顔

 

彼女・・・“王異”こと、“張遼”は嗤っていた

その瞳に、その笑顔に

 

恐ろしい程の“狂喜”を滲ませながら・・・

 

 

 

 

 

「アンタら皆・・・生きては帰さへんよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第一章 二十二話【次なる欠片】

 

 

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「ふぁ・・・」

 

 

間の抜けた、心底気が抜けてしまいそうな

そんな欠伸が聞こえた

その欠伸の主である夕は、シバシバとする目を擦り深くため息を吐きだす

 

 

「疲れたな・・・」

 

「ですね〜」

 

 

夕の、心底疲れたような声

それに応えたのは、スヤスヤと眠る美羽を背負った七乃だった

因みに、夕はというと・・・これまた同じように眠る、一刀を背負っている

 

 

「よく寝てるな・・・」

 

「そうですね・・・一刀さん、寝顔がとっても可愛いです」

 

「お前の背負う美羽もな」

 

 

言って、二人は笑った

それから見上げた空

もう虹は見えないが・・・それでも、星たちは未だに美しく輝いている

 

 

「色々あったなぁ・・・ホント」

 

 

そう呟いて、夕はチラリと自身が背負う青年を覗き見る

それから、僅かに表情を歪めた

 

 

「“天の御遣い”・・・か」

 

 

“天の御遣い”

その名を、彼女も聞いたことはあった

無論、七乃もである

だからこそ二人は、複雑な心境の中・・・こうして、トボトボと帰路についているのだ

 

そんな2人とは、まったく対照的な人物がいた

 

 

 

「さぁって、帰ったらまずは酒じゃっ!!!!」

 

 

 

祭である

彼女も皆と同様、疲れ果てていたはずなのだが・・・今や、この通り

帰ったら酒が飲めると、何とも清々しい笑顔で言うのだ

これにはもはや、二人はあきれ果てることしかできない

 

 

「祭・・・お前、よくそんな元気でいられるな?」

 

「はっはっは!

お主こそ何を言っとるか、夕よ!

長年の胸の“しこり”が取れたというのに、辛気臭い顔をしおって」

 

「痛い痛い!!

おまっ、叩くんじゃない!

傷に響くだろうが!!?」

 

 

“バンバン”と、彼女の尻を叩き言う祭

そんな彼女の行動に、夕は涙目で言い返す

 

 

「まぁ、儂だって驚いておるわい

まさか一刀が、天の御遣いだったとはのう・・・」

 

 

“しかし・・”と、祭は微笑みを浮かべる

その笑みは、夕の背中

心地よさそうに眠る一刀へと向けられていた

 

 

 

「“納得”してしまったんじゃよ

こやつが、天の御遣いであるということに・・・儂は、妙に納得してしまったんじゃ」

 

「納得、した?」

 

「はっはっは!

まぁ、気にするでないわ!

難しいことなら、後で考えたらよい!

今はホレ、早く帰ろうではないか

“儂らの家”へと、な」

 

 

言って、笑う彼女

その一言を聞き、二人は一瞬驚いた後・・・同じように笑った

 

 

「ああ、そうだな」

 

「です、ね」

 

 

言って、三人が見あげた空

星は、飽きることなく輝き続ける

その美しい星々に見守られ、彼女達は歩いていく

 

 

 

 

「帰りましょう・・・“私たちの家”へ」

 

 

 

街の外れ

他の家に比べ、少し小さな

だけど・・・大切な場所

 

彼女達、“家族”が住む家へと・・・

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

『おはよう・・・北郷

いや、正しくは“おやすみなさい”かな』

 

 

ふと、聞えた声

それが目の前に立つ女性・・・秋蘭の声だと気付いた時、彼は自分のいる場所が何処なのかを理解した

 

 

「“約束の草原”・・・」

 

『ああ、そうだ

お前はあの後、疲れて眠ってしまったんだ

そして、此処に来た』

 

「そっか・・・」

 

 

言って、彼は思いだす

彼女と共に戦った、あの戦いのことを

そして、真夜中の虹の下

 

託された・・・大切な“欠片”のことを

 

 

 

「“欠片”・・・俺の、“記憶”」

 

『ああ・・・失くしてしまった、大切な想い

まずは、一つ取り戻したんだ』

 

 

“やったな”と、彼女は笑う

その笑みに、笑い返そうとして・・・彼は、気付いた

 

 

「秋蘭・・・体、が」

 

 

目の前で微笑む、愛しい女性

その体が、微かに透き通っているのだ

 

 

『はは・・・もう、時間がないみたいだな』

 

「時間って・・・」

 

『私は所詮、お前の記憶の中にいる“仮初の存在”

想いこそは本物だが、な

むしろ今まで、こうしてお前と話せていたこと自体・・・奇跡だと言ってもいいだろう』

 

 

そう言って、苦笑を浮かべた彼女

彼女はその手を、ソッと彼の胸元へと置いた

 

 

『お前が、私を愛していてくれたから・・・かもしれない』

 

「秋蘭・・・」

 

 

聞こえた声

同時に、抱きしめた彼女の体温が伝わってくる

 

 

『私はいつも・・・お前の傍にいる

例え、もうこうやって話すことが出来なくても・・・私は、常にお前と共に在る』

 

「ん・・・」

 

 

頷き、見つめた彼女

その姿は、もうすぐ光りに溶けてしまいそうなほどだった・・・

 

 

『一つ、お願いがあるんだ・・・』

 

「なに?」

 

『いつか・・・いつか、そう遠くない未来

“私”のことを、今みたいに抱き締めてやってくれないか?』

 

 

そう言って、微笑む彼女

だがしかし、彼女はすぐさま思い出したように“おっと”と言葉をつぐむ

それから、ニッコリと笑いながら言ったのだ

 

 

 

『私だけじゃないな・・・』

 

 

 

言って、視線をうつした彼女

その視線を追い、彼が見つめた先

“彼女達”はいた

 

 

 

 

『秋蘭様ばっか、ズルいよ』

 

『そうです、不公平です』

 

 

 

 

そう言って、不満げに頬を膨らませる二人の“少女”

彼は、その二人を“知っていた”

 

いや・・・“思い出したのだ”

 

 

 

『ボク達のことも、抱きしめてあげてね』

 

『はい、ずっと待ってたんですから』

 

 

そんな彼の様子に気づいたのか、二人の少女は微笑んだ

それから、伸ばした手

その手が、彼の手にソッと重なる

 

 

『ボクらは秋蘭様みたいに、“力”になることは出来ないけど』

 

『それでも、ずっと見守ってますから』

 

 

重なった手

温かな手

 

伝わってくる・・・“懐かしき日々”

 

 

 

 

『だから、頑張って・・・“兄ちゃん”』

 

『私たちはずっと、“兄様”と一緒にいますから』

 

 

 

 

大切な存在

掛け替えのない想い

 

 

「“季衣”・・・“流琉”」

 

 

彼はまた一つ、思い出したのだ・・・

 

 

 

 

 

「約束、する・・・必ず、皆を迎えに行くって」

 

 

 

 

 

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『まずは“一つ”

うん、順調な滑り出しだね』

 

 

一転

さながら、テレビのチャンネルをいきなり変えたかのように

“少年”はそこにいた

先ほどまでいた三人の姿はなく、此処にいるのは彼と少年の二人だけ

だが不思議と、驚きはしなかった

“此処がそういう場所なのだと、彼は理解していたからだ”

そんな彼の心の内が見えたのか、少年はニッコリと笑い軽く手を振った

 

 

 

『やぁ・・・また、会えたね』

 

 

 

言って、歩み寄る少年

そのたびに、少年の身に纏う白き衣服が太陽の輝きを反射し輝いていた

 

 

『秋蘭、季衣、流琉・・・まずは、三人のことを思いだしたんだね

いや、“取り戻した”って言ったほうが正しいかな?

とりあえず、まずは“おめでとう”と言っておくよ』

 

「ん・・・」

 

 

頷き、見つめた先

少年は、腕を組みニッと笑みを浮かべる

 

 

『さて、それじゃぁ彼女達と同じで・・・俺からも、一つ言っておくことがあるんだ』

 

「言っておく、こと?」

 

『ああ・・・これから先の道へと、君を導く為の助言さ』

 

 

 

そう言って、見つめる先

青年の瞳を真っ直ぐに見据えながら、少年はゆっくりと言葉を紡いでいく

 

 

 

 

 

『“蜀”

そこに、次の欠片が眠っている』

 

「“蜀”・・・?」

 

 

“ああ”と、頷く少年

少年はそれから、愉快そうに笑い空を見上げた

 

 

 

『そこで君は、“2人の愚かな王”に出会うだろう

本当に愚かで、だけど愚か故・・・何とかしてあげたい、二人の王がね』

 

「愚かな・・・王」

 

『そのうちの一人が、欠片の持ち主だ

さて・・・』

 

 

 

 

 

 

≪君は、どうしたい?≫

 

 

 

 

 

 

 

少年の言葉

彼は一瞬、答えに躊躇ってしまった

その胸の内・・・“家族”の姿を、思い浮かべながら

 

 

『まぁ、迷うのも無理はないよ

此処からでもわかる・・・あの家は、居心地が良いもんね』

 

「ん・・・」

 

『ま、ここからどうするかは・・・君が選ぶんだ

だってこれは、君の物語なんだから』

 

「俺の・・・物語」

 

 

呟き、見あげた空

“蒼天”

この遥か彼方・・・自分のことを、待っている人がいる

 

 

 

 

「俺は・・・」

 

 

 

 

ゆっくりと・・・だが、迷いのない目で紡がれた言葉

その言葉が聞こえたのは、目の前に立つ少年と

その言葉を、この空の彼方まで届かせようと・・・吹き抜けていった、風だけだった

 

 

 

 

-5ページ-

★あとがき★

 

一章も残すところ、あとわずか

ほのぼのまた〜りしながら、更新していきますw

 

 

 

 

さて、次回

夢の中・・・約束の草原

告げられた、次なる目的地

“蜀”

彼は、どのような選択をするのか・・・

そしてその頃、魏国にも新たな動きがあった

それは・・・

 

 

 

 

『待っている・・・人が、いるから』

 

 

 

〜次回

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第一章 二十三話【それぞれの道】〜

 

 

 

『待ってるだけなんて・・・もう、嫌だから』

 

 

 

 

 

それでは、またお会いしましょう♪

説明
こんにちわw
早くも、二十二話公開しますw
一章も、残すところあとわずか

それでは、お楽しみくださいw
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コメント
既に言ってるかどうかは不明だけれど、『やぁ・・・また、会えたね』 このセリフだとP3F思い出すわw(Alice.Magic)
さすが姐さん!仕事が御早いことでw(サイト)
samidareさん<麗羽さんも活躍しますよwwww (月千一夜)
黒部さん<どうなるでしょうね?w (月千一夜)
劉邦柾棟さん<一人は正解ですwwもう一人は、たぶん皆さんの予想とは違いますw (月千一夜)
YTAさん<霞は本作のもう一人の主人公と言っていいくらい、良い意味でも悪い意味でも活躍しますww (月千一夜)
悠なるかなさん<あざっすw頑張って書いていきますww (月千一夜)
愚かな王、麗羽であってほしいかな。 そして麗羽は一歩踏み出せるようになってほしい(samidare)
愚かな王って桃香と麗羽の事だよなwww。 二人のうちのどちらが一刀の記憶の欠片を持っているんだろう? そして遂に忠犬凪が行動を起こすんですね。 次回が楽しみです。(劉邦柾棟)
相変わらず更新早い!気が付いたら、三話も進んでました……orzしかし、霞はこう言うところで冴えますな。雪蓮とかもそんな雰囲気があるけど、汚れ役の美学と言うか、そう言うものを感じます!(YTA)
ついに魏国sideですか 楽しみです 次の欠片で取り戻すのは誰なのか そして美羽たちはどうするのか 次回作待ってます(悠なるかな)
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