沙都子誕生日記念誰が一番沙都子を愛しているかライトノベル対決っ!
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沙都子誕生日記念誰が一番沙都子を愛しているかライトノベル対決っ!

 

 

「悟史きゅん。今日は沙都子の誕生日ですよね?」

 北条悟史が自室でアルバムを整理していると、園崎詩音が話し掛けてきた。

 詩音は悟史の顔を覗き込みながら、自慢のFカップバストを強調して寄せている。

「そうなんだむぅ。今日はこの世界で最も聖なる日なんだむぅ」

 悟史は視線をアルバムから移さないまま答えた。

 アルバムに収録されている写真には全て沙都子が写されている。詩音メインの写真は1枚もない。

「それで、悟史くんは沙都子の誕生日をどうやってお祝いするつもりなんですか?」

 詩音は暑い暑いと連呼しながらブラウスを脱ぎ始めた。

 悟史の眼前に惜しげもなく晒される黒いブラ。

「それが問題なんだむぅ」

 悟史は視線を1ミクロンたりともアルバムから移さずに唸ってみせる。

「1年に1度のお祝いですもんね。最高のお祝いをしたいですよね」

 詩音は更に暑い暑いと言いながら黒いミニスカートを脱ぎ捨てた、

 悟史の眼前に惜しげもなく晒される黒いセクシーショーツ。V字の鋭さが半端ない。

「今までの沙都子誕生日は、誰が沙都子を一番愛しているかを拳を通じて確かめ合って来たんんだむぅ。でも、沙都子はそれを嫌がるんだむぅ」

 沙都子誕生日。それは沙都子への愛を示す戦いの日でもあった。

 圭一、豆腐、金髪アロハシャツ、メガネ医者など、沙都子を狙う不届きな雄たちが散っていく日。そして最後は結局、悟史、詩音、梨花が三竦み状態となっている間に1日が終わってしまう。

 沙都子に色目を使う卑しい男たちを葬れるのは悟史的にはそう悪くはない。しかし、沙都子はその惨劇を喜んではくれない。

 そして、殺し合いにマンネリ傾向を感じていたのも事実だった。

「という訳で、今年の誕生日ではこの私、北条詩音ちゃんが新企画を用意しました」

 アルバムと悟史の間に身を乗り出し、胸を強調しながら語る詩音。

 “北条”詩音の部分を強調しているが悟史の興味を髪の毛の太さほども惹けない。

「題して、誰が一番沙都子を愛しているかライトノベル対決っ! です〜♪」

 どこから出したのかよくわからないフリップボードを叩きながら熱く述べる詩音。

「3ヶ月前にも同じ企画をした気がするんだむぅ」

 悟史の指摘を詩音は軽くスルーして、更に熱く語る。

「気のせいです。テーマは『沙都子の愛らしさ』です。沙都子の愛らしさを今年は拳ではなく、ペンで表してもらいます」

 ボードには『テーマ 沙都子の愛らしさ』と書かれている。

「圭ちゃんや梨花ちゃまたちには既に御題を伝えてあります。悟史くんも早く書いてください。沙都子が到着したら発表ですよ」

 悟史は詩音の言葉に微妙な危機感を抱いた。

「むぅ。沙都子はいつここに到着するんだむぅ?」

「1時間後です」

「むぅ〜! 沙都子の為に原稿用紙5000枚の大作を書こうと思ったのにもう時間がないんだむぅ」

 悟史の絶叫が室内に木霊する。

「それでは悟史く〜ん。執筆頑張ってくださいね〜♪」

 ニッコリと微笑む詩音。

「僕が長すぎる作品を書かないように嵌められたんだむぅ」

 悟史が悟った時には全てが遅すぎた。

「話は済んだので悟史きゅ〜ん。こっちを見てくださ〜い。ウッフ〜ンですよぉ〜♪」

「さて、執筆に取り掛かるんだむぅ」

 セクシーポーズを取って悩殺を図る詩音。

 詩音に欠片も目を向けず原稿用紙とにらめっこを始める悟史。

 いつも通りの2人だった。

 

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「お久しぶりですわ、に〜に〜♪」

 1時間後、悟史は愛する妹と再会していた。

「会いたかったんだむぅ〜♪」

 最愛の妹をこの手に抱きしめる。

 離れ離れにならなければならなかった悲劇の兄妹の感動の再会。

 悟史は久しぶりに妹の抱き心地を確かめ涙していた。前に抱きしめた時より身体の色々な箇所が成長していることをmm単位で確かめながら。

「よぉ、久しぶりだな悟史」

 感動の再会を果たしている兄妹を邪魔する男が1人。

「圭一には用がないんだむぅ。むしろ今すぐ死ぬべきなんだむぅ」

「まあまあ、悟史くん。抑えて抑えて」

 詩音が宥めるので悟史パンチはとりあえず封印しておく。

「ではさっそく、『沙都子の愛らしさ』小説を発表してもらいましょう〜♪」

 梨花ちゃん、オリキャラの豆腐くんも家に入って来る中、悟史たちの小説発表会が始まった。

 

「では、トップバッターは誰から行きますか?」

「僕から発表するんだむぅ」

 悟史は自信満々な表情だった。

 圧倒的実力の作品を先に見せつけ、他者が発表する気を削いでしまう。

 他の参加者が辞退となれば、悟史の優勝が自動的に決まる。

 悟史の一番槍はそれを考えてのことだった。

「ではでは、悟史きゅ〜んどうぞ〜♪」

 そして悟史は自分の小説を朗読し始めた。

 

 

魔法少女沙都子☆マギカ

 作:北条・むぅ・悟史

 

 ある所に沙都子という世界一プリティーで健気で天真爛漫なごく普通の女の子がいたんだむぅ。

 そんな沙都子が通う学校に、ある日、梨花ちゃんという長い黒髪の美少女転校生が現れるんだむぅ。

 梨花ちゃんは文武両道才色兼備な上に沙都子に対して「この先何が起ころうとも自分を変えようだなんて決して思ってはダメ。でなければ、あなたの大切なもの、全て失うことになるわ」と謎な言葉を放つ電波系だったんだむぅ。

 沙都子は梨花ちゃんに興味を惹かれつつも怖さも感じて近づけないんだむぅ。

 そして、その日の放課後、親友のレナと一緒に買い物をしていた所、脳に美少女の声が響いてきたんだむぅ。

 助けを求めるその声に導かれて行くと、梨花ちゃんが『あぅあぅ』という小動物系少女を殺そうとしていたんだむぅ。

 2人は慌てて梨花ちゃんを追い払ったんだむぅ。

 でも、すぐその後に2人はこの世に絶望を撒き散らす悪い魔女のテリトリーに足を踏み入れてしまい、絶体絶命のピンチに陥ってしまうんだむう。

 そこに現れたのが無駄に胸の大きな魔法少女魅音だったんだむぅ。

 命を助けられた2人は、魅音の魔女狩りをお手伝いするようになるんだむぅ。

 それは2人が魔法少女になるかどうかのテストでもあったんだむぅ。

 魔法少女になればどんな願いでも1つ叶えられる。けれど、おっかない魔女と死ぬまで戦わないといけない運命を背負うことになるんだむぅ。

 そして、魔女退治のお手伝いにも慣れ始めてきたある日、悲劇は起きたんだむぅ。

 油断した魅音が頭から魔女にボリボリグチャグチャもっきゅもっきゅと食べられてしまったんだむぅ。

 魔女は梨花ちゃんが倒したので2人には怪我がなかった。だけど、魅音の死により心には大きな傷を負ったんだむぅ。

 そして沙都子は怖くなって魔法少女になることを放棄したんだむぅ。

 沙都子は非日常から日常に帰ることを選んだんだむぅ。

 そして沙都子は大好きなお兄さんと2人で幸せな一生を送ったんだむぅ。

 めでたしめでたしなんだむぅ。

 

 

「我ながら完璧すぎる小説だったんだむぅ」

 悟史は額の汗を拭った。

「自分が物語のヒロインになると流石に恥ずかしいですわ」

 沙都子は照れ笑いを浮かべていた。

 魅音がグロい死に方をしたことはこの大会の参加者にはどうでも良い要素だった。

 別にそれは日常のことでもあったのだし。

「やはり悟史くんはそう来ましたね。予想通りです。フッフッフ」

 ニヤリと笑って見せる詩音。

「何ぃっ!? なんだむぅ!」

 驚愕の表情を見せる悟史。

 悟史はこの1時間で小説を急遽書き上げた。

 しかもその内容は誰にも知らせていない。

 にも関わらず詩音は、その小説の内容を悟史が書き始める前に既に予測していたのだという。

 詩音の能力に驚愕する悟史。

 何故、この少女にそんなことが可能なのか少しも予測できない。

 悟史には詩音のことがまるでわからない。興味も大して無い。

「ならばお見せしましょう。詩音ちゃんの究極の傑作をっ!」

 詩音は自信満々に自作小説を朗読し始めた。

 

 

魔法少女沙都子☆マギカ 2nd Season

 作:北条詩音

 

 沙都子は悟史くんと幸せで平穏な生活に戻ったはずでしたが、お姉の凄惨な死を忘れることができませんでした。沙都子の気分は滅入っていく一方です。

 そんな沙都子よりも心に深刻な傷を受けていたのがレナさんでした。

 レナさんはお姉の死によるショックに加えて、片想い相手の圭ちゃんが重度の雛見沢症候群に掛かり、社会復帰が不可能と診察されたことに大きな絶望感を覚えました。

 そしてレナさんは、あぅあぅちゃんと契約して魔法少女になったのでした。

 レナさんは人々を魔女から救い、圭ちゃんの病気を治した自分を誇らしく感じていました。

 けれど、レナさんが自分を肯定的に考えることができたのはほんの短い間に過ぎませんでした。

 レナさんは段々とこの世界に魔女から救うだけの価値があるのか疑問を抱くようになりました。

 自分が清廉潔白であろうとするほどに、守るべき対象に、自分自身に汚さを見出してしまうのでした。

 更に自らの生涯を賭けて救ったはずの圭ちゃんがレナさんに靡くことはありませんでした。

 圭ちゃんは沙都子に惹かれていったのです。

 失恋はレナさんの心をおかしくしました。

 レナさんは、流れの魔法少女である詩音ちゃんや謎多き梨花ちゃんという同業者の忠告にも耳を傾けず、無茶な戦い方を繰り返して自身の内部に穢れを溜め込んでいきました。

 レナさんにはもう沙都子の言葉も誰の言葉も届かなくなってしまったのです。

 そして遂にレナさんの体内の穢れは許容量を越えてしまいました。

 レナさんはL5状態に突入し、我を忘れて破壊の衝動に走るようになってしまったのです。

 そう、魔女とは、魔法少女が絶望に陥ってL5状態に変貌してしまった存在だったのです。

 魔女とは魔法少女より生まれるものだったのです。

 心優しい詩音ちゃんは沙都子と共にレナさんに元に戻るように必死に説得を試みます。

 しかし、魔女と化してしまったレナさんにはどんな言葉も通じません。

 レナさんの攻撃により傷付く詩音ちゃんと沙都子。

 詩音ちゃんは沙都子を後から駆けつけた梨花ちゃんに託します。そして「いいよ。一緒にいてやるよ。……独りぼっちは寂しいもんな」と自爆してレナさんと心中することを決意します。

 けれど、自爆しようとしたまさにその時、(・3・)と化したお姉がひょこひょこと脇を歩いているのが詩音ちゃんの目に入りました。

 詩音ちゃんは(・3・)をレナさんに向かってひょいっと放り投げて、遠隔操作で爆発させました。

 吹き飛ぶレナさんと(・3・)

 友達になれたかもしれないレナさんを失った悲しみを、詩音ちゃんは悟史きゅんと結婚することで癒したのでした。

 めでたしめでたしです。

 

 

「どうですか? 私の最高傑作は!」

「むぅ! まさか僕の作品設定が完璧に先読みされていたとは……」

 悟史は詩音の小説の設定が、自分の小説を完璧に踏んでいることに驚愕していた。

「でも、あんまり沙都子が出てこないんだむぅ。それにどうしてラストで急に詩音と悟史が結婚することになったんだむぅ? ワケがわからないよだむぅ」

 悟史は人間の感情が理解できないと言わんばかりに大きく首を傾げた。

「もぉ〜悟史きゅんたら〜♪ 最後の1文の為にそれまでのストーリーがあったんじゃないですか〜♪ きゅんきゅん♪」

 詩音はご機嫌で悟史の疑問を全く取り合わない。似た者同士の2人。

「フッ。甘いわね、2人とも」

 悟史と詩音の2人を居丈高に見下ろしながら介入してきたのは梨花だった。

 梨花はオリキャラの豆腐くんを四つん這いにさせて踏みつけることで悟史たちよりも視線を高くしていた。

「悟史の話は生ぬるいし、詩音の話には沙都子への愛が不足しているわ」

 王者の貫禄で悟史たちを見下す梨花。

「本当の小説っていうものを見せてやるわ!」

 梨花は豆腐を激しく踏み付けて恍惚とした表情を浮かべながら自身が用意した小説を朗読し始めた。

 

 

魔法少女沙都子☆マギカ 3rd Season

 作:古手・にぱ〜☆・梨花

 

 沙都子は魅音に続いて親友のレナまで失ってしまった。

 そして、悟史は詩音という泥棒猫女が担いで持ち去ってしまった。

 心に大き過ぎる傷を負った沙都子。

 そんな彼女の心の傷を癒せるのは梨花しかいなかった。

 沙都子に理解されなくても暗に陽に彼女を守り続けてきた梨花。

 そんな梨花の正体は、沙都子を守ろうと何度もループを繰り返してきた時間転移能力者だった。

 最初の世界で、梨花は魔法少女となっていた沙都子に命を助けられた。

 それから梨花は沙都子のお手伝いとして魔女退治を手伝うようになった。

 だが、最強の年増魔女ワタナガシの夜との戦いで沙都子は死んでしまう。ついでに魅音は何の役にも立たずにあっさりと死んでいた。

 沙都子の死に顔を見て梨花は泣きながらあぅあぅに誓った。「私は沙都子との出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守れる私になりたい」そう願った。

 そして梨花は魔法少女となり、沙都子と出会う前の時間に時間移動した。

 だが、梨花を守るという誓いはその達成が容易なものではなかった。

 魔女ワタナガシの夜の力は強大で梨花と沙都子がタッグを組んでも倒せなかった。

 更に問題だったのが魔法少女同士の不和、反目だった。

 梨花、沙都子、魅音、レナ、詩音の5人の魔法少女が力を合わせて戦うというケースは存在しなかった。

 いつも誰かが誰かを憎み、恨み、傷つけていた。魔法少女の命を魔法少女が奪うという事態が当然のように繰り返された。魅音の死亡率は100%だった。

 その結果、梨花は誰にも頼らずに一人で沙都子を守り抜こうと心に決めた。

 また、魔女の正体が魔法少女が絶望と共に変貌したものだと気付いてからは沙都子が魔法少女になるのをやめさせるように奔走した。

 けれど、何度時を繰り返しても梨花は沙都子を守ることができない。けれど、それでも梨花は諦めない。

「私は何度でも繰り返す。同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る。貴方を絶望の運命から救い出す道を」

 沙都子を救い出せる運命を求めて戦い続ける梨花。

 そしてこの世界で沙都子はようやく気付くの。梨花がどれだけ自分の為に苦労を重ねてきたのかを。それが愛情によるものだということを。

 沙都子は梨花の愛情を受け入れて2人は恋人同士になるの。そして、2人は魔女とか世間とかみんなうっちゃって駆け落ちするの。

 そうしてようやく梨花は沙都子と幸せな暮らしを手に入れたのよ。

 めでたしめでたしだわ。

 

 

「どうかしら?」

 梨花は鼻高々ににぱ〜★と笑っている。

「まさか、私の設定まで先読みされていたなんて……」

「梨花ちゃん、恐ろしい女なんだむぅ。だけど沙都子を幸せにできるのは僕だけなんだむぅ。だからあの小説はフィクションに満ちているんだむぅ」

 詩音と悟史は冷や汗を垂らしながら梨花を見ている。

「確かに古手の小説はよくできています。でも、北条を無理やり自分の分身とくっ付けようとする願望が強すぎて奇妙なラストになってしまっているのです」

 メガネがメガネを光らせた。

「沙都子、この少年は一体誰なんだむぅ?」

「存じ上げない方ですわ」

 北条兄妹は首を捻った。

「オリキャラね」

「オリキャラですね」

 梨花と詩音は納得したように頷いて見せた。

「何を言っているんですか? 僕は鬼隠し編から登場している北条の由緒正しいクラスメイトにして、祟り殺し編では北条のお弁当を支援する為に懸命に戦った、その名も富──」

「オリキャラの名前なんてどうでも良いから、早く読んで欲しいんだむぅ」

 悟史は話を途中で打ち切った。

「クゥ。僕の大作を見て、腰を抜かさないでくださいよぉ」

 

 

魔法少女沙都子☆マギカ Final

 作:■■大■

 

 魅音、レナ、詩音を失い最強の敵ワタナガシの夜に1人で挑むことになった梨花。

 沙都子を避難させ、自身はたった1人で魔女に戦いを仕掛ける。

 けれども、魔女は強く、万全の準備をして挑んだはずの戦いにも関わらず劣勢を強いられる。

 そしてその敗北が決定的なものとなり、梨花の身体から闘志が、気力が消失し、沙都子を救うことはできないのだという絶望が彼女を包み込んでいく。

 梨花が魔女になりかけたその時だった。

 沙都子があぅあぅを伴って梨花の元へと駆けつけたのだ。

 そして沙都子はあぅあぅに願い事を唱えて魔法少女となった。

「全ての魔女を生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女をこの手で……」

という願いと引き換えに。

 その願いはひとつの宇宙を全て書き換えてしまうほどの強大な力を秘めたものだった。全ての因果律が崩れ、宇宙さえも消し去ってしまわないほどの強力な願い。

 そしてそれは沙都子の存在を、宇宙さえ消し去ってしまうほど強力な魔女に変えてしまうほどの絶望のエネルギーを伴うものでもあった。

 そんな絶望のエネルギーを浴びれば沙都子は魔女になってしまう。だが、沙都子は「全ての魔女を生まれる前に消し去りたい」という願いの中に自身も含めていた。沙都子は「わたくしだって絶望する必要なんてありませんの!」と述べながら、魔女と化そうとする自身を消し去った。

 そして、沙都子は実体を消し去って魔女を消し去る概念へとその領域をシフトさせた。

 魔女がいなくなった新しく構築された世界で沙都子を覚えている者はいなかった。ただ1人、古手梨花を除いて。

 そして梨花は今も魔法少女として戦い続けている。沙都子が守ろうとしたこの世界を守る為に。

 魔女の代わりにこの世界の敵となった、魔獣からこの世界を守る為に。

 了

 

 

「どうですか、僕のこの超格好良い締め方の小説は?」

 メガネはメガネをキラリ〜ンと光らせている。

「むぅ〜。悪くはないんだけれど、設定が何だか厨二チックなんだむぅ」

「色んな矛盾を熱さで誤魔化している感じですよね」

「沙都子が概念になっちゃったら、沙都子に娘を産んでもらおうという梨花の願いはどうなるのよ?」

「概念になればいつでも美少女のお風呂でも覗き放題ってことか。俺も概念になりたいぜ」

 だが、メガネの期待に反してまともに評価しようという者はいなかった。

 だってメガネはオリキャラとしか認識されなかったから。

「じゃあ最後は俺だな。お前らの話には徹底的に欠けたものがある。それを今から俺が見せてやるぜ」

 小説合戦、最後を務めるのは同人作家を父に持つ少年前原圭一だった。

 

 

ソフプリ

 作 前原・ビッグ・圭一

 

 俺は美少女女子中学生が集うソフトテニス部の顧問をしている前原圭一だぜ。

 今日も女子中学生のパンチラやらポロリを楽しみに放課後を待つぜ。

 そして、放課後、ソフトテニスの技術的なことはどうでも良いから、とにかくサービスシーンの連続を目指すぜ。

 不自然なパンチラ、不自然な全裸こそ俺の望むもんだっ!

「け、けけ、K1さん……スクール水着でテニスなんては、恥ずかしいですわ」

「全身で風を感じる為の大事な練習だ。恥ずかしがるんじゃない」

 どんなに部員にセクハラしても、サービスで済ませられる最高の環境。

「教え子に手を出しても視聴者サービスできっと許されるんだぜぇ」

 指導するフリをして沙都子の年齢の割りにナイスバディーなお尻を撫でる。

「きゃ〜♪ K1さんのけだものぉ〜♪」

 こうして俺は、沙都子や他の部員たちにセクハラし放題、テニスのことは片手間でやりながら幸せな顧問生活を送ったのさ。

 めでたしめでたしだぜ

 

 

「消え失せろ、この変態なんだむぅ」

「うわらばぁああああああぁっ!」

 悟史の手により圭一は“転校”してしまった。

 

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「さあ、沙都子。誰の小説が一番素晴らしかったか発表して欲しいんだむぅ。遠慮せずににーにーのが最高でしたわって言って良いんだむぅ」

「フッ、甘いですね。こと創作に関しては私に一日の長があります。遠慮なくねーねーの小説が最高でしたと言って下さい」

「何をほざいているのかしら? 所詮、悟史の作品も詩音の作品も私の小説を彩るためのプロトタイプでしかないと言うのに。さあ、沙都子。遠慮なく私を愛していると言って良いのよ」

「さあ、北条。僕と幸せになろうよっ! って、誰も聞いてないぃいいいぃっ!」

「え〜とぉ、そう言われましても……」

 優勝者の発表を3+α名に迫られる沙都子。

 3人の鬼気迫る表情は、自分以外が選ばれた場合、優勝者をどう処遇するかわからないという決意が見え隠れしていた。

 即ち、優勝者に待っているのは死。

 それがあからさまにわかるので沙都子は答えることができない。

 そして、沙都子は焦りながら、こんなこともあろうかと準備していた秘策をここで遣うことにした。

「優勝者の発表は、わたくしの書いた小説を披露してからにしますわ」

 そう言って沙都子は後ろ手に隠していた原稿用紙の束を取り出して見せた。

 

 

僕の妹がこれで最終回なわけがないんだむぅ

 作 北条・プリティー・沙都子

 

 沙都子はトラップ技術に更に磨きを掛ける為にアメリカに渡りました。

 ところが、アメリカに行って以来、何の連絡もありませんでした。にーにーや圭一さんたちが連絡を送っても一切の返信はありませんでした。

 そうして数ヶ月が経った頃のことでした。

 にーにーの元に沙都子から1通のメールが届きました。そのメールには沙都子の残していったトラップを全て捨てるように書いていました。

 にーにーは心配になってねーねーに相談しました。

 するとねーねーは、強い口調でにーにーに今自分がすべき行動を躊躇せずに行うように迫ったのです。

 実はねーねーはにーにーに愛の告白をしようとしていたのです。でも、自分の気持ちを引っ込めて、にーにーが行動に移れるように後押ししたのです。

 そしてにーにーはすぐさまにアメリカへと飛んだのです。

 アメリカに着いたにーにーはすぐに沙都子の元に行きました。

 けれど、沙都子は頑なで、何故あんなメールを送ったのかすぐには喋ろうとしませんでした。

 そこでにーにーは沙都子に『部活』をやろうと提案しました。

 にーにーの後ろから出て来るねーねーと梨花と圭一さん。

 にーにーだけでなく、沢山の人が急に現れたので沙都子はビックリしてしまいました。

 にーにーたちは、魅音さんに掛けられていた保険金を使ってアメリカまで来たのです。

 魅音さんは特に事件性は見られないただの鬼隠しに遭ったのだと、血で全身を汚したねーねーと梨花が答えてくれました。

 そして行われた部活。

 その楽しさに沙都子の頑なな心は溶かされていったのです。

 そして沙都子はメールを送った理由を語ったのでした。

 アメリカでは自分のトラップ技術が通じなかったのだと。そして、自分の甘さを消し去る為に、トラップでこのアカデミーの生徒たちに勝つまで日本の仲間とは連絡を取らないと決めたのだと。トラップを捨てるようにメールを送ったのは自分を追い込む為だったのだと。

 それを聞いて、にーにーは泣きながら沙都子に一緒に日本に帰るようにお願いしました。

 ねーねーも梨花も圭一さんも泣きながら沙都子に帰るようにお願いしました。

 みんな沙都子と一緒にいたかったのです。

 その涙に心打たれて沙都子は日本に帰ることにしました。

 そして、帰る間際に『部活』パワーで強豪をみんなトラップで負かしたのです。

 日本に帰った沙都子は、にーにー、ねーねー、梨花、圭一さんと大切な人に囲まれて楽しく生活を送ったのでした。

 めでたしめでたしですわ。

 

 

「沙都子が優勝なんだむぅ〜っ!」

 悟史は沙都子の話を聞きながら泣いていた。

「ええ。これはもう沙都子の優勝しかないとねーねーも思います」

 詩音もまた両目からボロボロと涙を零していた。

「創作における最も大事な“愛”を、素人から教わることになるなんてね。完敗だわ」

 梨花は横を向きながらソッと涙を拭った。

「よっしゃぁっ! みんなで沙都子を胴上げするぜっ!」

 “転校”から帰って来た圭一(額にクローンの文字付き)が沙都子の胴上げを提唱する。

 沙都子を囲んで持ち上げる4人。

「あの、ちょっと?」

「「「「ワ〜ショイっ! ワ〜ショイっ!」」」」

 沙都子の静止を聞かずに胴上げが始まった。

「あのぉ、このインテリメガネのこの僕が北条の小説でも、今、この場においてもスルーされている気がするのですが?」

 オリキャラが何か言っているが、そんなものに構っていられるほど現代人は暇じゃない。

「沙都子、誕生日おめでとうなんだむぅ〜♪」

「「「おめでとう〜♪」」」

 沙都子の胴上げは続く。

「せっかくの誕生日。みなさんには争わずに仲良くして頂きたいというわたくしの願いが叶ったようですわね」

 沙都子は胴上げされながら微笑んだ。

 誕生日を、大切な人々とのひと時を心から喜んでいる笑顔だった。

 

 何の事件性も見られない鬼隠しに遭って保険金で沙都子たちの旅費を捻出した魅音が大空から笑顔で沙都子たちのことを優しく見守っていた。

 

 

 

説明
沙都子誕生日記念作品。内容は題名まんまです。


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コメント
月野渡様へ いえ、インテリメガネが選ばれた場合は即”転校”しますので、もう1度選び直しになりますな。だって存在しないのですから(枡久野恭(ますくのきょー))
>3人の鬼気迫る表情は、自分以外が選ばれた場合、優勝者をどう処遇するかわからないという決意が見え隠れしていた。  つまりオリキャラでありいてもいなくてもどうでもいいインテリめがねを選べば全てが丸く収まると言うわけですね?(月野渡)
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