異聞〜真・恋姫†無双:三
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「さよう、四周じゃよ。わしが訪れたのは、始皇帝や項羽、劉邦の時代じゃな」

「・・・ハイ?」

「なんちゅー顔をしとるか、一刀。お前が三国の世界を巡ったのなら、

わしとて、似たような経験をしていても構わんだろう?」

「どういう理屈だよ・・・」

「・・・まさかと思うのだけど、忠能殿が知っている、始皇帝も項羽も劉邦も、女性だったりしない?」

「かっかっか、さすが孟徳殿じゃな。その通りじゃよ」

 

豪快に笑う爺ちゃん。話についていけない俺。

一人、納得した風の華琳。なぜか優しい目でこちらを見ている貂蝉。

あれ? 俺だけ置いてけぼりですか?

 

「一刀、落ち着いて考えてみればいいのよ。

貴方は華琳と呼ぶけれど、忠能殿・・・お爺様には、私は真名を明かしていないでしょ?」

「そうねん。外史の管理者である私が、真名を迂闊に呼ばないのは当たり前。

だけど、忠能様も当然のように真名に触れず、かつ、気にする素振りもないのは、妙よん?」

「あぁ、そういうことなのか・・・」

 

つまり、爺ちゃんも天の御使いとして、始皇帝や項羽、劉邦を統一へと導いた・・・ということだ。

北郷家の血の仕業とすれば、なんていう因果な家系だよ・・・。

 

「まぁ、わしも四回も繰り返したということは、後悔の積み重ねみたいなもんでな」

 

爺ちゃんは掻い摘んで説明をしてくれた。

 

最初に始皇帝の統一を手助けしたが、始皇帝が早世して、後継者争いの果てに世が乱れたこと。

次に項羽の元に舞い降りて、統一を達成するものの、御使い否定派の剪定者たちに外史から弾き出されたこと。

さらに劉邦の元で再度統一を果たすものの、始皇帝や項羽の命を救えなかったこと。

 

「そして、最後に。始皇帝の元に大陸を統一した上で、彼女が存命であるうちに、

劉邦を次期皇帝として、漢帝国を樹立した。項羽にも協力体制を築かせた上で、わしは外史から離れたのだ。

・・・とまぁ、たいぶ端折りはしたが、わしの御使いとしての流れはこんなところじゃ」

「その時の戦友の一人が、この私よん♪」

「史書には目を通しているけれど、あまりに始皇帝から劉邦への禅譲が鮮やかすぎるとは思っていたわ。

ただ、古の賢人を美化するために、誇張して描かれているのだと判断していた・・・」

「まぁ、わしの存在は後世に残すな、と劉邦、項羽には厳命した故にな。約束を守り通してくれたのか、あいつらは」

 

爺ちゃんの声色には、懐かしさ、喜び、愛しさ・・・いろんなものが混じっていた。

どれほどの想いがこもっているのか、それは爺ちゃんにしか判らない。

俺が、三国〜特に、魏の皆への気持ちを、一言で言い表せないのと同じで。

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「さて、老人の独白は一先ずこれまで。後はお主たちの今後じゃ」

「一度、終わりが決められたはずの外史を、絆からとはいえ、

捻じ曲げてしまったご主人様たちには、いずれ、歪みが襲ってくるわ」

「孟徳ど・・・」

「華琳、でいいわ。忠能殿、いえ、先代の『天の御使い』である貴方に、私なりの敬意のつもりよ」

 

爺ちゃんの言葉を遮り、華琳が不意に真名を許す。

一瞬驚いた顔をしたものの、爺ちゃんはどこか嬉しそうに微笑んだ。

 

「・・・あいわかった。では、華琳殿が経緯はどうであれ、こっちに引き込まれたということは・・・」

「正確な時期は予想できないけど、修正力が働いて、二人共もう一度外史に招聘される。

捻じ曲げた因果を修正する役割を与えられて、ね」

「責任を取れ、ってこと、か。三国の平定を途中で投げ出す形となったのは事実、だものね」

「もちろん、一緒に行くよ。華琳と共にいれるのなら、御使いだろうがなんだろうが、

神輿だろうが、喜んで演じてみせるさ」

「およそ、一年。あくまで予測だから、ズレは出ると思うわ」

「この世界での仮の住居や立場は、わしが手を回す。貂蝉、お主は出来る限り正確な跳躍時期を」

「えぇ、調べが付き次第、また顔を出すわん」

 

細かな部分と、爺ちゃんと貂蝉が詰めていく中、俺と華琳は顔を合わせて、静かに頷き合う。

 

「一年で、この世界の理を修められる限り、修めてみせるわ」

「いや、さすがに華琳といえど、一年では流石に短い。あまりに範囲が膨大すぎるし、

専門的過ぎる知識は手に入れるのにすら、莫大な手間と費用がかかるんだ、この世界は」

「じゃあ、力づくで・・・」

「捕まるからね!?」

「冗談よ。とりあえず、この世界の常識を学ぶ所から始めましょう。

できれば三日ぐらいで身に着けてしまいたいものだけど・・・」

 

思考の海に沈んでいく華琳に苦笑いしながら、俺は半年振りに、心から満たされていた。

この幸せを手にしたまま進んでいけるのなら、心が折れる事は無いんだと・・・。

説明
現代編。再び外史に舞い降りる前のお話。
次回から、外史との並行視点が入り交じり始めます。
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コメント
>320i様 爺ちゃんの、一刀に残した格言からの的確さから、裏設定を考えました。天の御使いの先代として、何気なく伝えようとしていたのかな、と。(通り(ry の七篠権兵衛)
>根黒宅様 はい、爺ちゃんの奥方にも、設定があります。次回か次々回辺りで触れることになるかと思います。(通り(ry の七篠権兵衛)
>hokuhin様、jonmanjirouhyouryuki様 悩んでおります。再魏か、蜀か。内から魏を変えていくのか、外から正していくのか。(通り(ry の七篠権兵衛)
連コメもしわけない。もしかしてばあちゃんもどっかのループの項羽とか?(根黒宅)
↓じつに面白い展開になりそうでその意見に賛成。(根黒宅)
そういえば蜀√は記憶に出てなかったけど、再魏ルートが蜀の代わりなのか、それとも・・・?(hokuhin)
タグ
真・恋姫†無双 華琳 魏アフター 北郷家の因果 

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