双子の吸血鬼 第8章;百年な日々
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 チャチャゼロから名を上げるよう指示を受けたヴァンは、安心して人の住むところで情報収集するために自分達の人相を変えるために年齢詐称の魔術を開発し始めていた。

そんなヴァンは一人この城の一角に設けた自室にて3日前からこもりその開発をしている。

そんな時、トントンとヴァンの部屋のドアをノックする者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「兄さま? 3日ほど前からこもりっぱなしのようですけど お体は大丈夫なのですか?」

 

その人物はエヴァンジェリン、ヴァンの妹だった。

自室にこもり続けているヴァンの事を心配しているのだ。

 

「あぁ、大丈夫だよ〜。もう少しで出来上がりそうだから」

「ならいいのですけど。ちゃんとご飯だけは食べてくださいね」

 

そんなエヴァにヴァンは返事を返す。

それを聞いたエヴァはすこしと息を漏らし心配しながらもその場を後にするのだった。

 

 その日の夕飯時3日ぶりにヴァンはエヴァと共に夕食をとっていた。

今日のメニューはパンとスープ、肉を軽く焼いたものそれと、サラダだった。

 

「それで兄さま?3日間自室にこもった結果はどんな感じですの?」

「あぁ、ついさっき術式が出来上がってね。食べ終わったら かけてみようか」

 

エヴァはそのお肉をナイフで食べやすい大きさに切り租借する。

 

「それはいいのですけれど、もう篭ってやるのはやめてくださいね。

兄さま病気になったんじゃないかと、心配したんですから」

「分かったよ・・・・・・」

 

そういうと、二人はお互い見つめ微笑みあうと談笑しながら食事を続けた。

 

「そういえば、兄さま。吸血鬼になってから本当ににんにくは食べられなくなりましたね」

「あぁ、そうだな。食べても死にはしないけど、匂いとか味とかな・・・・・・」

「兄さまは元々食べられませんでしたけどね。フフフッ」

 

 

 

 夕食も食べ終わり、ヴァンとエヴァで食べたものの片づけをする。

エヴァが、お皿を洗う係りで、ヴァンはお皿を拭く係りだ。エヴァはなんとなくこの新婚感覚なこの時間が好きであった。

そして、皿洗いも終わりヴァンが作り出した、年齢詐称の呪文を掛けるべく、すこし広い大広間まで移動する。

 

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「よし、それじゃこの編み出した魔法を使ってみよう」

ヴァンは部屋の真ん中に行き両手を横いっぱいに広げ上を向きながら言う。

室内なので、空は見えないが今夜は星が見えるよい夜だった。

 

「―――――――---−--」

 

ヴァンは目をつぶりエヴァの方を向いて呪文を詠唱し始める。

その様子をエヴァは何も言わずただ見ている。

ヴァンの短い詠唱が終わりエヴァを光が包んだ。

そして、少し経つと光は収まりそこから、きれいな一人の大人の女性が現れた。

着ていた服も幻術と共に大きく見える。

その姿をみて、ヴァンは顔を赤らめると自分にも同じ魔法をかけ始めた。

エヴァは自分の姿が見えていないのでよく分かっていないようだ

そして、自分の魔法もかけ終え周りには大人の姿に見えるようになって現れると、エヴァの顔が真っ赤になった。

 

「に、兄さま?」

 

エヴァが驚いたような声をあげる。

突然大人の姿になった、ヴァンを見て驚いているのだ。

当のヴァンは、エヴァの方を向くと懐から鏡を取り出して、エヴァに手渡した。

 

「それで、自分の姿を見てごらん」

 

ヴァンは自分の姿に驚いているエヴァに対して言う。

エヴァはヴァンが大人になった事に動揺しつつも、ヴァンに言われたとおり鏡へ写る自分の姿を確認する。

 

「!!」

 

それを見たエヴァはヴァンが大人になったとき以上の驚きようで、口を開け目を大きく丸くしていた。

 

「兄さま・・・・・・私、大人になっていますわ・・・・・・」

 

鏡を眺めているエヴァはまるで、信じられないものを見たかのように言う。

実際問題信じられない事なのだろう、自分が大人になっているということが・・・・・・

エヴァは、その鏡を見ながらさまざまなポーズをとってみる。

一つの動きをするたびに、鏡の中の女性も同じ動きをする。それは、まるで生まれて初めて動く赤子のようであった。

そんなエヴァの後ろにそっと近付くヴァン。

 

「どうだい? すごく綺麗だろう? もう、大きくなることは出来ないけれど、そのまま成長すればこうなるはずだったんだ・・・・・・」

 

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そっと、エヴァの肩に手を添えるヴァン。

それは、傍目から見たら、どこかの気品のある王子様と王女様のようであった。

 

「踊ろうか?」

 

その言葉にエヴァはヴァンの方を向く、今の二人の姿はヴァンが少し背が高いくらいであった。

澄んだ、瞳で見つめあう二人。

そして、エヴァが小さくうなづくとヴァンはエヴァの手を取りその広間で不器用ながらもステップを取っていた。

すると、どこからか流れ出す音楽。

ヴァンがエヴァと踊りながら周りを見渡すと、部屋の隅の柱の部分に光のチャチャゼロがいた。

どうやっているのかは分からないが、どうやらチャチャゼロがこのゆったりとした音楽を流しているようだ。

 

(良い曲だな、あとでどうやって音楽を流すのか教えてもらおう)

 

ヴァンはそう思うと、エヴァとの踊りに気を向かせ踊りの方へと集中した。

その二人の不器用ながらも、美しい踊りはこの光景を見る人がいたならば、たちまちに心奪われた事であろう。

しかし残念ながらこの光景を見る事ができた者はいなかった。

二人はその後も円を描きながら優雅に踊ってゆく。

そして、音楽が一区切りついたところで、二人は動きを止めた。

 

「私、夢を見ているみたいよ・・・・・・」

 

動きを止めたエヴァは手を解き、ヴァンの胸に手を当て寄りかかる。その目はヴァンの顔を見つめていた。

 

「・・・・・・魔法なんだけどね」

「それでもよ」

 

ヴァンはそう言って、寄りかかってきたエヴァに手を回し抱き寄せる。

そしてエヴァを見つめていた。

その距離は限りなく近かった。

 

「大人になったらヴァンはこんな顔になるのね」

 

エヴァはヴァンの胸に当てていた手をヴァンの顔へと動かし、彼の顔の輪郭をなぞる。

 

「期待に添えなかった?」

「そんな分けないでしょ?素敵よ兄さま」

 

不安そうにヴァンは尋ねる。が、しかし杞憂だったようだ。

そう言ったエヴァは更にヴァンに近付こうとかかとを上げる。

その事により二人の距離はほぼ0となっていた。どちらかが、少しでも動けば触れてしまう距離だ。

 

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二人の心臓はすでに破裂するのではないだろうか、というほど高鳴っている。

 

 そして、二人の距離が0になったかならなかったかはそこにいた当人達と側で顔があるならば確実ににやけていただろうチャチャゼロだけしか知りえない事だった。

 

 

 その後、その大人の姿のまま、食事をした部屋に戻りヴァンが念じた事によって現れた椅子とテーブル。

それに、二人は対面式に腰掛今後について話し合っていた。

テーブルの上にはチャチャゼロがいる。

 

「ひとまず、これからどうするかだが とりあえずは名を上げろという事なので ここいらにいる賞金首共を一掃しようかと、思うのだが どうだろう?」

 

ヴァンは二人?にそう尋ねる。

ちなみに、ヴァンは机に両肘をつき、手を結んで口をかくしていた。

対するエヴァは、横向きになり肩肘だけをつき足を組んで、ついた肘の方の手に顔をのせていた。

 

「そうね、私としては今までどおり、賞金稼ぎを狩るだけで名はあがると思うのだけれど兄さまがそう言うならそれでいいわ」

「オレトシテハ ナガアガレバナンデモイイガナ(俺としては名があがれば何でも良いがな)」

 

そして、エヴァはその顔に笑みを浮かべながら、ヴァンの考えに同意の意を示す。

 

「そうか、なら 明日から近くの町にて情報収集をしようと思う。なんにしても情報が無ければ何も出来ないからね」

 

夜独特の冷たい風がヴァンの頬を撫でる。 

 

「よし、もう今日にできる事は何も無いから眠る事にしようか」

「そうね」

 

ヴァンはそういうと椅子から立ち上がり、エヴァも立ち上るのを確認すると念じ椅子とテーブルを消した。

それと同時に自分とエヴァの年齢詐称の魔法も解き、二人寄り添って寝室へと向かった。

 

 

 次の日二人は、城から降りふもとにある。規模としては中くらいな町にやってきていた。

もちろんの事、年齢詐称の魔法をかけてある。

その町に訪れ二人は驚いた。町の整備だけは確かにちゃんとなされているのだが、民達の顔には笑顔というものが無かったのである。

どの者達も痩せており、民の一人一人の顔には何処かしら疲れが見え隠れしていた。

それは、町の全体で見られたが町の外側が特にひどく、内側も外側の民達までとは行かずともひどい物であった。

 

「この町はひどいものね。兄さま、民達に笑顔がないわ。

しかも、内側に行くにつれその傾向は薄まっていっている、つまりはこの町の領主達はあほんだらということよね? 兄さま」

 

大人姿になっているエヴァが言う。

そのエヴァはヴァンの腕に自身の腕を絡めており、楽しそうに見える。

 

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「そうだね。 確かにこれはひどいな、あっ、手配書がある」

 

そう言って、ヴァンが指差す先には確かにエヴァとヴァンの手配書があった。

旧世界と比べわずかに値段は落ちているものの、それでも結構な大金が記載されていた。

 

「こっちだと、私達の懸賞金もこんなもんですか」

 

少し不満そうに、その壁に貼ってある手配書を覗きこみながら言う。

 

「まぁそう言ってやるな。これでも結構な金額なんだぞ」

 

ヴァンも自分の手配書を見て言う。

 

「こんなことより、町の住人に話しを聞きにいくぞ」

 

そういうと、ヴァンはエヴァの手を取り先に行く自分の手配書を見ていてもあまり良い気分ではないからだ。

 

二人は、しばらく歩きどうやら父と子供の二人で経営していると思われる飯やで食事をとることにした。

ついでに情報の収集もやる心積もりである。

ヴァンが腕にエヴァを引きつれ、その店のドアを開ける。

やはりここも辛気臭い雰囲気が流れている。

店の内装はいたって普通でカウンターがありその周りに食べる人用の椅子が幾つかおいてある。

すこし離れた所にある開いたスペースにも、テーブルと椅子がおいてある。

そこの一つにヴァン達は腰を掛ける、エヴァは隣へと座った。

 

「良い店ね。これでもう少し活気があれば最高だわ」

「たしかにね、中々こういうのも好きだな」

 

エヴァがこの店に入っての感想を述べる。

そしてしばらくすると、その店の息子が注文をとりにくる。

 

「ご注文は?」

「オススメのものを二つ頼むわ」

 

それに対応するエヴァ。

それを聞いた店の息子は奥へと戻っていった。

何が出てくるか楽しみである。エヴァであった。

 

「前から思ってたことだけど、そういう相手任せっていうのは一番困るからやめたほうが良いよ」

 

ヴァンがエヴァに前々から思っていたことを注意する。

 

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そう、ヴァンも夕食のときにも毎回エヴァにそういわれるのである。

念じれば何でも出てくる便利な城であるので、なんでも出せるのだがバランスなどを考えなくてはいけないため頭を悩ませているのである。

 

「ふふん、いいではないか。出されればなんでも食べるのだから・・・・・・」

 

そう、出されれば何でも食べてくれるので文句など無いはずなのだが、それでも深く深く考えてしまうヴァンが律儀なのだろうか。

そうこうしている内に料理が運びこまれてくる。

ヴァンが目を向けると、その少年のお盆の上には二つの丼が乗せられていた。

その二つの丼が二人の基へと運ばれる。

その丼にはふたがしてあって中身が分からないようになっていた。

エヴァは待ちきれなかったようで、運ばれてくると早々にその丼のふたを外してしまう。

すると、中から現れたのは普通の親子丼だった。

 

「いただきまーす」

 

エヴァがはしを手に取り、その親子丼を一口たべる。

すると、何か思うことがあったのか二口目からは一口目のような勢いは無くなってしまった。

何故だろうと思い、ヴァンもふたを取り外し一口食べてみるとその理由が分かった。

 

味が無いのである。

 

いや、確かに味はある、しかしこれはここには無いような味がした。

ただ、薄味だというわけじゃない、しかしこの親子丼には一言では言い表せぬ、不味さがあった。

しかし、先ほどエヴァはこの店オススメのものを頼んだはずである。

それが、これとは正直気が抜かれたという感じがするヴァンであった。

それでも、食べられぬ物ではなかったので一言も喋らず、黙々と食べ進めた。

そして、食べ終わりヴァン達は席を立って、カウンターへと向かう。

 

「店主? 私達は旅をしていて、ついさっきこの町に着いたのだけど・・・・・・ここの、領主にはどうすればあえるのかしら?」

 

ヴァンが店主に代金を支払う際にエヴァが聞く。

そしてエヴァが聞いた所によると町の中心にある詰め所に大概いるという事だった。

 

そう話を聞いたヴァン達はその詰め所へとむかう。

その間にも町を見ているがどこもかしこも民の変わらない様子だった。

 

「まったく、こんなにするなんてここの領主はどんな治め方をしているのかしら・・・・・・」

 

憤慨したようにエヴァが言う。

ヴァンはその言葉に同意しつつ、中心地に向けて歩を進める。

すると、詰め所らしき場所が見えてくる。

そして、その詰め所の側に立ち見上げる二人・・・・・・

 

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「ここか・・・・・・」

 

そのヴァンの言葉は少し震るえていた。何を思っているのだろう、その表情からは読み取る事ができなかった。

その隣に立つエヴァはそのつめ所の建物を睨み付けるようにしている。

その詰め所は他の建物と比べ、明らかに大きく、他を圧倒していた。ここにこの町の領主がいるのだ。

エヴァが詰め所から目をはずし、詰め所の近くにある店では、そこの店の店主がなにやら腹が肥えている男に何やら手渡し、媚びへつらっていた。

エヴァはそれを、太っている男がこの町の役人、そして手渡したものは賄賂だと辺りをつけた。

そして、そのことに驚いた。なぜなら賄賂の取引をしているその者達は隠れながらやっているではなく、この昼の街中で堂々とやっているのだった。

周りにいる人たちもその事に対して驚いている様子も無いことから、この事は日常茶飯事的に行われている事だ、と分かる。

エヴァの目が更に鋭くなる。

 

「エヴァ・・・・・・」

 

その時、緊張をはらんだ声でエヴァを呼びかけた。

 

「どうしたの?兄さま」

 

それを聞いたエヴァは顔をその太った役人からヴァンへと移し、返事をする。

するとどうやら、ヴァンは詰め所の上の方のある一角を見ていた。

エヴァは何なのだろうか、と思いその方向を見るとヴァンが固まっている理由が分かった。

 

詰め所の恐らく領主がいるであろう場所から一人の男が顔を出している。

その男をエヴァが確認した瞬間エヴァの頭の中は憎悪でいっぱいになった。

その男の正体・・・・・・それはエヴァとヴァンを真祖の吸血鬼にし、自分の父と母を操っていたあの男だった。

ヴァンはあの男が出てきたときうっかり大規模な魔法をここで放ち、その詰め所を焼け野原にしようかとしたが、しかしあの男からは自分達の故郷の情報がもらえるかもしれないと思

 

い思いとどまった。

しばらく、ヴァンは考えるようにしてそこに止まっている。

そして、何かを思いついたのかエヴァを片腕で抱き、その男がいる場所へと飛びだした。

 

エヴァとヴァンがその男の前に飛び出すと、その男は驚きの声を上げた。

 

「うわぁ!!」

 

しかし、その声が長く発せられる事は無かった。

ヴァンがエヴァを抱き上げている方のとは逆の手でその男の口を塞いだからだ。

ヴァンはその口を塞いだまま無理やり、部屋の中に入り部屋に防音の魔法を掛けるとその手を離した。

 

「くっくっく・・・・・・誰かと思えば化け物兄妹ではないか? その化け物共が私に何のようだ?」

 

その男は自分に掴みかかってきたのがヴァンとエヴァだという事が分かると、先ほどまで驚いていた態度を改め急に得意そうな態度となった。

 

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「貴様、何故ここにいる お前は俺達の故郷にいたのではないのか?」

 

声を荒げ、ヴァンが尋ねる。

 

「くっくっく、おや?知らなかったのか? お前の故郷などとうの昔に悪政で滅んで折るわ」

 

その問いに高らかに笑いながら答える男。

その言葉に逆上し、その男にエヴァは掴みかかり、そしてヴァンは魔法の詠唱を開始した。

 

「私を殺すか? それもいいだろう。だがな、私を殺した所でどうにもならんよ。お前の父親と母親は既に墓の中なのだからなぁ!!」

 

「うるさい、もう死ね」

 

ヴァンがそう言うと、今まで掴みかかっていたエヴァがその男から離れる。

そして、詠唱が終了したヴァンの手のひらから、魔法の射手が放たれる。

それは、あっさりとその男の体を貫いた。

その男の口から血が流れ出す。

 

「ゴフッ、フフフッ私から君への贈り物だ。受取りたまえ!!」

 

そう言うと、その男は倒れその奥にある扉からたくさんの人だかりがあふれてきた。

その中には先ほどヴァン達が昼食をとった食べ物屋の店主達もいた。

そして、その人たちの瞳には一貫して光が宿っていなかった。

そう、この人たちは総じてこの血をはき倒れている男に操られているのである。

しかし、常に操られていた。とは考えにくい、なぜなら理由は簡単そのような事をしては魔力がもたないからである。

だが、このように大人数を一気に操るという事は何かしらこの魔法には秘密があるに違いない。

一人ではこの様な人数を操る事などできはしないからだ。

 

「うおあああああー!」

 

その操られた人の一人が襲い掛かってくる。

 

「逃げるぞ!エヴァ!」

 

ヴァンはエヴァの手を取りお姫様抱っこをして入ってきた窓から飛び立つ、そして下を見るとこの町の人々全員が瞳に狂気を宿し各々その手に持っている武器を振り回していた。

しかし、空を飛んでいるヴァン達に届く事は無くその操られている者達が何か出来るという事は無かった。

 

その時ヴァンの目の前を一つの光が横切る(恐らくは魔法の射手だろう)、もう少し進んでいれば危うくそれに当たる所だった。

ヴァンだけなら当たってしまってもなんら問題は無かったが、今はエヴァをお姫様抱っこ中である。そんな時に当たってしまうものなら後々大変だ。

ヴァンは少し立ち止まりエヴァの顔を覗き込む、もう既に年齢詐称の魔法は解けておりいつもの幼い顔が見えている。

 

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しかし、その表情は自分の故郷が滅んでしまった事を知ったからか、暗く沈んでいた。

ヴァンもある程度予想はしていたので、エヴァほどダメージが大きくは無かったがそれでも故郷がなくなったという事実、両親がなくなったという事実、そして自分達を牢獄から救っ

 

てくれた侍女も死んでいるであろうという事実はヴァンの心に重くのしかかっていた。

そして、ヴァンはその魔法が飛んできたと思われる場所を見る。

すると、そこには幾人かの魔道師が立っていた。

その姿を確認したヴァンは近くの建物の屋根に降りたち

 

「エヴァ、さっきこっちを狙ってくる魔道師達がいたから相手してくるね」

 

そういうと、屋根の上にエヴァを下ろしヴァンはその魔道師がいるところへと向かった。

 

 

 

「お前達、誰だ?」

 

ヴァンは魔道師達の所に降り、そいつらを見据えながら言う。

その間にもヴァンを取り囲もうと魔道師達は陣形を整える。

 

「お前などに教える必要は無い!」

 

その集団の一番格上の人と思われる人物がそのヴァンの問いに答える。

 

「もう一度聞こう、お前達は誰だ?」

 

再度、ヴァンがその者たちへと尋ねる。

 

「だからお前などに教える必要などないといっているだろう! 何故ならお前達兄妹はここで死ぬのだからな!!」

 

が、しかしヴァンはその答えを手に入れることは出来なかった。

 

「そうか、なら死ね」

 

そういうと、ヴァンは詠唱を始めた。

 

「ふふふふふ・・・・・・」

 

だが、その魔道師達は気味悪く笑うばかりであわてる様子が無い。

ヴァンの事を知っているのならばそんな余裕は無いはずだ。

その事を少し不思議に思うヴァンだったが、この者達がおろかなのだろうと気にしなかった。

 

「知らないのかな? 魔法というものはどんなに強力なものでも途中でその詠唱が妨害されれば、発動できない事を!」

 

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魔道師の一人が言う。先ほどヴァンの問いに応えた人だ。

そして、そう言い終えるとその魔道師の後ろからこの町の住人が何人か入ってきてヴァンに向かって殴りかかる。

 

(こういうことか・・・・・・)

 

ヴァンはそう思うと詠唱を中断するを得なかった。

いくら、ヴァンといえど住人達の相手をしながら魔法の詠唱をするような器用な事はまだ出来なかった。

そして、ヴァンが詠唱を中断すると同時に魔道師達が詠唱を開始する。

すると、ヴァン達が立っているしたから魔法人が浮かび上がる。どうやらかなり高度魔法を使うようであった。

 

(くっ・・・・・・住人達が邪魔でどうする事もできない!!)

 

住人達はヴァンを押さえ込むように次々と現れてくる。

 

(そういえば、この人たちを操っている魔法ってどうやったら解かれるのだろうか・・・・・・)

 

ヴァンがそう考えると

 

「ハッハッハッ! そいつらが正気に戻る事はありえんよ!」

 

魔道師の一人がヴァンの考えを読みそう答えた。どうやら、あの者は読心術者のようだ。

そしてどうやら、魔道師達の詠唱が終わったようだ。魔方陣の光が強くなる。

 

(まさか!?住人ごと!?)

 

そのヴァンの予感は当たり魔道師達は魔法を放ってきた。

 

「「「氷爆!!」」」

 

DOOOOON!

 

ヴァンのいる一帯にその魔法が発動される。

ヴァンはそれを避ける事はできなく、住人とともにその魔法をくらってしまった。

 

 

辺り一面に煙が吹き荒れる「これだけすれば吸血鬼といえど死んだだろう・・・・・・」

 

魔道師の一人が呟く。

が、しかし突如魔道師達の付近に火の玉が集まりだした。

 

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「な、なんだぁ!?」

 

そして、それはだんだんと一人の形を作り出して行った。

 

「くっ・・・・・・相変わらず再生するのはきつい」

 

するとそこから、無傷のヴァンガードがあらわれた。

ヴァンは肩を押さえ首を回している。

乳酸菌がたまっているのかゴキゴキと音が鳴っていた。

 

「うわぁああああああ」

 

その姿を見た魔道師達が騒ぎ出し、逃げようとする。

しかし、その中で数人なんらその事態に動じない奴が数人いた。

いまだ、主導権は我らが握っているぞといわんばかりに気味の悪い微笑みをその顔に貼り付けている。

 

(なんだ? あいつらは今のこの状況で笑っている? おかしい。どこにそんな余裕が・・・・・・)

 

すると、住人が幾人かやってきた。

どうやら、その住人達は誰かを取り押さえているようだ。

 

「兄さま!!」

 

すると、その取り押さえられている人がヴァンを見て、叫ぶ。

 

「エヴァ!!」

 

なんと、その人は屋根の上においてきたはずのエヴァンジェリンだった。

 

「これでお前は何も出来まい」

 

魔道師の一人が言う。

しかし、今のヴァンにその言葉は通じなかった。

ヴァンの脳にはエヴァが住人によって取り押さえられている、その事だけが伝えられていた。

住人は操られているだとか、そんなことは考える事ができなかった。

 

「よし、そいつは気絶させて連れて行け!!」

 

魔道師が住人に命令する。そして、その住人はエヴァの鳩尾に一撃食らわせ気絶をさせた。

 

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「かはっ!!」

 

エヴァがその目を閉じる。

もし、ここで連れて行かれたとしたらエヴァにどんな運命が待っているだろうか・・・・・・

懸賞金欲しさに突き出されるか、この魔道師どもの慰み者にされるか・・・・・・

どちらにしろ良い運命が待っているという事は無かった。

が、エヴァが連れて行かれるというような事は無かった。

気絶させられたエヴァを見たヴァンは自分の足に思いっきり魔力を乗せ、地面を蹴りエヴァを取り押さえている者に突進した。

取り押さえている者はその突進で体勢を崩し、エヴァを掴んでいる手の力を緩めた。

その隙にヴァンはそいつから、エヴァを奪い返した。

回りにいた。魔道師達、先ほど笑っていたものも突然の事に目が点になる。

そして、エヴァをその腕に抱きヴァンは空高く浮かび上がる。

手を太陽にかざしラーから得た知識の中で最大級の呪文を唱え始めた。

 

「空高く浮かぶ太陽よ、我が求めに答えその力を我に与えよ、その力我の力となり、我を拒むもの全てを灰へと変えろ 太陽(レイ)!!」

 

すると、ヴァンの手から大きな炎の玉が生成された、それはその名の通り太陽のようであった。

ヴァンは手を振り下ろし、その魔法で作られた太陽をその町へと叩きつけた。

それは地面へと着岸すると、大きな爆発となり、普通ではありえないほどの衝撃波が生まれた。

それはその町全体を覆い隠し、その爆発が終わった時そこにはまっさらな平らな土地が所々焦げ広がっていた。

 

そのあと、二人は足早に城へと戻り自分達の故郷へと向けて黙祷をささげると、二人は簡単に夕食をすまし二人一緒に眠った。

 

「オイオイ コンカイ オレノデバンガネェジャネェカ」

 

抱き合うように眠っていた二人をみてチャチャゼロはそう言ったとか言わなかったとか。

 

 

説明
小説書き素人が無謀にも長編小説に挑戦
今作品は魔法先生ネギま!の二次創作です。
稚拙な文章ではございますが楽しんでお読みいただけたのなら
これ幸い。
では、「双子の吸血鬼 第8章;百年な日々」をお楽しみください。
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