恋姫をやったことない人が書く恋姫(仮)
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―――どこだ、ここは?

 

そう思うのも無理はない。

ここは見渡す限り何もなく、ただ白い空間が広がっているだけの場所。

自分が立っているのか、横になっているのかさえ良く分からない。

勿論、どっちが上で前で下で横で後ろなのかも分からない。

強いて言うなら「無重力」が一番近い表現かも知れない。

 

???「確か、オレは・・・アレクセイと戦って、怪我を負って、ザウデ不落宮から落ちて・・・っ!!」

 

と、記憶を辿ってみて思い出したかのように自分の体を見てみる。

しかし、重症だったはずの怪我は無く、それ以外にも途中の戦いで負った軽傷なども全て回復しているようだった。

気分的にも悪いところはない―――このよく分からない空間にいる、ということ以外は。

 

(一体何だってんだ・・これもヨームゲンみたいにフェローの仕業なのか?それにしちゃ違和感を感じるが・・)

 

過去の体験からこの状況に当たりを付けてみるが、どうもしっくりこない。

しかし、ようやく現在の状況を確認しようとする冷静さを取り戻した彼は、とりあえず周りを見渡してみる。

するとある方向に何か感じるものがある。

別に特別な能力などを持っているわけでは無かったが、戦闘においても理詰めではなく勘などを頼りに戦う彼には、

そのなんとなくでも十分に行動する理由にはなった。

 

???「ふぅ・・・とりあえず行ってみっか。」

 

そう、ひとりごち何かを感じた方向に向かっていった。

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彼の名はユーリ・ローウェル。

テルカ・リュミレースという世界の青年だ。

元々は帝都ザーフィアスの騎士団員であったが、その体制に疑問を抱き、騎士団を辞め、同じ帝都の下町を自分の居場所とし、日々を過ごしていた。

当時は下町の人々を守ることを生業としていたが、その行動の一部は帝国から見れば帝都への反逆でもあり、実際に軽微ではあるものの、指名手配や牢屋に入れられたことも何度かあった。

しかし、それでも彼は自分の生き方を変えず、変わらず下町を守る為に尽力し続けていた。

そんなある日、下町で起きた事件を追う内に帝都を出るはめになり、今までに無かった長い旅路に着くことになった。

その旅路の中で、仲間と出会い、様々な事件と遭遇し、ギルドと呼ばれる組織に所属することになったりするうちに、一連の事件の黒幕が帝国騎士団長のアレクセイであることが分かり、アレクセイを止めるべく戦いを挑んだのだ。

戦いの場は、アレクセイが復活させた古代の魔導器・ザウデ不落宮という空飛ぶ建築物の上で行われた。

結果としてアレクセイを止めることに成功したが、その直後、とある確執によりユーリは深手を負い、ザウデ不落宮から海に落下してしまったのだ。

 

 

ここまでがユーリ自身の記憶で、気づいたら先ほどの空間にいた、という訳だ。

普通に考えたら死んでもおかしくない、そうでないとすれば助けられたということになり、気が付くのはベッドの上などのはずだ。

 

ユーリ「まぁ死んだことないから分からないけど、あまり『死んだ』って感じはしねえなぁ。どっちかつーと『生きてる』って感じがするし。

でも助けられたにしてもこの場所はおかしすぎるだろ。・・・リタの変な実験にでも巻き込まれたか?」

 

何も分からない現状にあっても、本人が居ないのをいいことに冗談を言えるくらいには余裕が生まれてきたようだ、この辺りは完全に彼の性格だろう。

楽観、というわけではないが、何事も飄々と捉える彼は冷静さを取り戻すのも早ければ、状況に慣れるのも早い。

まぁ少々大胆なところはあり、面倒臭がりでもあるのだが・・・つまりはそんな人間だ。

でも決して仲間を裏切ったり、困っている人を放っておけない、等の面も持っているので彼を良く知る人で彼を嫌いな人はいないだろう。

 

そんなギリギリ好青年の彼が勘を頼りにしばらく歩いていると、ふいに気配を感じた。

その気配に気付くなり臨戦態勢を取ろうとしたが・・・

 

ユーリ「うおっ!剣がねぇっ!」

 

自分の獲物である剣がないことに気付いた。

 

ユーリ「ま、まさか、それじゃあっ!?・・・良かった、武醒魔導器はあるか。」

 

武醒魔導器というのはテルカ・リュミレースにおける兵器の一つで、装備者に身体能力などの面で様々な恩恵を授けてくれるものである。

一般の人間が手にすることは難しいが、ユーリは騎士団を辞める際に、「餞別代わりに」と勝手に騎士団から持ち出していたのであった。

そんな来歴はともかく、これが無いと普通の人間はともかくモンスターなどと渡り会うのは不可能になるくらいに戦力に差が出てしまう。

逆に武器が無くともこの武醒魔導器さえあればそれなりの動きは出来るのでモンスター程度なら戦うなり逃げるなりもどうにかなる、ということがほとんどなのだ。

 

魔導器の確認をした彼は武器に関しては取りあえず仕方無し、と剣無しでも即座に動けるように魔導器だけ発動させ構えを取る。

神経を研ぎ澄まし、周りに集中を向ける。

こんな空間ではどこから攻撃が来てもおかしくない、

常の戦いとは違う緊張感に包まれながらしばらくすると

???「・・・・・あぁぁっっ!」

 

ユーリ「ん?」

 

どこからともなく声のようなものが聞こえてきた。

その声は遠くからの声がやっと届いた、といった感じの大きさで、少なくともその声の主が近くに居ないことは分かる。

 

???「・・・・るああぁぁぁっっ!!」

 

ユーリ「な、何だ!?この禍々しい声はっ!?」

 

次第にその声が大きくなってくる、つまり声の主が近づいて来ている、ということだ。

その事実に先ほどよりも集中して声の発生源を特定しようと試みる。

―――どうやらさっきから感じていた「何かがある」方向から聞こえているようだ。

そしてその方向を見据えていると、いきなり白い空間にヒビの様な亀裂が入り、その向こう側から

 

???「ぶるああああああぁぁぁっっっ!!!!」

 

と今までで一番大きな声が聞こえてきた。

そしてそれと同時に亀裂が大きくなり、その向こう側から何者かがこの空間に飛び出してきた。

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そして勢いのままユーリの頭上を飛び越した何者かは、丁度その空間の割れた場所から見てユーリの後方に着地?した。

すぐさまユーリは方向転換して飛び出してきた何者かに向き直る。

そして、それが何者なのかを量る為に観察するように見てみると・・・・

 

???「あらん?どちら様?」

 

彼の常識の範囲では明らかに人外であるはずの容姿の何かが、人の言葉で話しかけてきた。

なぜ人外かというと、ガチムチ筋肉ボディにモミアゲのところから短いおさげが左右に一本ずつ、そしてそのボディを隠しているのはピンクのビキニパンツただ一枚という、

まぁいわゆるソッチ系の人の、更に頂点に君臨していそうなモノだったからである。

 

ユーリ「・・・・」

 

???「あらん?いやだ、よく見ると私の好みじゃないのぉ。もしかしてぇ、私の踊りに虜にされてしまったファンの子かしらん?

こんなところまで追いかけてくるだなんてぇん♪もう、私ってばぁ、罪なオ・ン・ナっ!うふっ」

 

そういって体をくねらせながらウインクと投げキッスをしてくる人外のモノ。

呆気に取られていたユーリだが、本能の成せる技か、投げキッスの射線上から避けるように飛びのいた。

 

ユーリ「あ、危ねえなぁっ!何すんだよ、いきなり!?」

 

???「うっふ〜ん♪そんな照れなくてもいいのよ〜ん。私が可愛がってア・ゲ・ル♪」

 

ユーリ「照れてねえっ!!んなことより一体アンタは何者なんだ!?」

 

???「あらん?私のファンの子かと思ったんだけどそうじゃないみたいねん。それなら自己紹介をしておこうかしらん。

私の名前は貂蝉。大陸一の踊り子で花も恥じらう漢女よん♪あなたは?」

 

ユーリ「(乙女?何か字が違う気がするが・・)あ、あぁ。オレはユーリ。ユーリ・ローウェルだ。とりあえず話は出来るみたいだな。」

 

貂蝉「あら〜ん。良い名前ねぇん。ユーリちゃんが望むなら一晩中だって話し相手になってあげるわよん。」

 

ユーリ「い、いや、そこまでしてもらわなくていい。それより、色々怪しい点はあるが・・・取りあえずオレと敵対する意思はないんだな?」

 

貂蝉「うふん、そんなの当たり前じゃないの〜ん。ユーリちゃんが良い男だってことは置いておいても、せっかくのお客様なんだからぁん。」

 

ユーリ「お客様?ってことはここはアンタの家・・・みたいな場所なのか?」

 

貂蝉「うふん、そうねん。そういうモノと思ってもらって構わないわよん。・・・それでぇ。お客様なのに申し訳ないのだけれど、ユーリちゃんは一体どうやってここに

来たのかしらん?あんまり詳しくは話せないけど、ここは普通には入ってこれない場所のはずなんだけどねぇん?」

 

ユーリ「そうなのか?・・・実はオレも良く分からないんだが、ある所から海に落ちて、気づいたらここに居たんだ。」

 

貂蝉「あらん、そうなのぉ・・・気の毒にねぇ(どういうことかしらん?ここは私たち管理者か、その呼び出した者しか来れないはずなのに・・・?

卑弥呼や左慈・于吉も誰も呼んでないはずだったわよねん?)」

 

ユーリ「まぁオレのことはいい、それよりここから出るにはどうしたらいい?アンタの家みたいなモノなら分かるだろ?皆心配してるかもしれないしな、早く元の場所に戻りたいんだが。」

 

貂蝉「う〜〜〜ん。ユーリちゃん、ごめんなさい。確かに家のようなモノとは言ったし、ここから出る方法は分かるのだけれど、少なくとも今は元の場所に戻ることは出来ないわねん。」

 

ユーリ「・・・どうしてだ?」

 

貂蝉「・・・そうねん、それを説明するために、ユーリちゃんにも簡単にこの場所のことなんかを説明しておこうかしらん♪

まずこの場所は正史と外史の狭間とも呼べる場所で、分かりやすくいうと異空間ってとこかしらん?」

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ユーリ「異空間?」

 

貂蝉「そうよん。信じるかどうかはともかくとして、ユーリちゃんが居たところとは別の世界っていうのがあるのよん。ここはそのユーリちゃんがいた世界と別の世界の間の世界なわけ。」

 

ユーリ「街と街を繋ぐ街道みたいなものってことか?」

 

貂蝉「ん〜〜ちょっと違うけど、概念はそんな感じねん。まぁ私たちみたいな管理者以外には関係無い場所だからあんまりどういう場所かっていうのは気にしなくてもいいわよん。」

 

ユーリ「分かった。んで、正史と外史ってのは?」

 

貂蝉「正史っていうのは言ってしまえば根本となる世界よん。そうねぇ、例えばユーリちゃんの世界にも物語とかってあったわよねん?

その物語っていうのがいわゆる外史に当たるわけ。つまり大本の世界を正史、その正史の人々の想いや想像から生まれた世界を外史って言うのよん。」

 

ユーリ「なるほど、そんな世界があるのか・・・。まぁいい、後アンタのことらしい管理者っていうのは?」

 

貂蝉「あらん?ユーリちゃんったら、私に興味津々ってわけぇん?私のことならこの話が終わったらベッドの中でゆっくりと

『いいから話せ』

まぁっ!ユーリちゃんってばせっかちさんなんだからぁん。でも私は早い人でもきちんと受け止め

『双牙掌!!』

ぶるはぁぁっっ!!な、何するのよん、ユーリちゃんってばぁん!?」

 

ユーリ「これでも結構急いで何とかしようと思ってるんですけど・・・ねぇ?」

 

そう言って不敵な笑みを浮かべ、早く話をするように促そうとすると

 

???「ぬっふっふっふっふ!初対面とは言え、オノコの心一つ掴めないようでは、漢女道継承者は任せられんぞ!貂蝉よ!」

 

どこからともなく聞こえてきた禍々しい声パートU。

 

貂蝉「あらん?この声は卑弥呼じゃないのよん。いつの間に戻っていたのかしらん?」

 

と、いきなり聞こえてきた禍々しい声パートUに返事を返す貂蝉。

嫌な予感を感じたユーリが貂蝉に

 

ユーリ「な、何だ?知り合いか?」

 

貂蝉「そうよん。私と同じ管理者であり漢女でもある卑弥呼よん。」

 

そう貂蝉が説明すると、貂蝉の時と同じように近くの空間が割れ、何者かが飛び出してきた。

 

卑弥呼「ぬっふっふっふ、そう!儂は謎の巫女、卑弥呼!漢女道亜細亜方面前継承者にしてそこにいる貂蝉の師匠!

ユーリと言ったな・・・なるほど良いオノコではないか。ぐふふふふ・・・」

 

貂蝉「卑弥呼ったらん!ユーリちゃんは私が先に唾つけたのよ、師匠と言えど簡単には渡さないわよん!」

 

ユーリ「つけられてねぇし、どっちの物になる気もねぇっ!!」

 

どうやらこの卑弥呼という人物?も貂蝉と同類らしい。

漢女という、ユーリからすればただのオカマなのだが(それを言うとロクなことにならないと感じているので口にはしないが)、身に着けているものも似ているし、正直あまり関わりたくないのだが、この状況においては仕方ないだろう。

 

卑弥呼「中々厳しいオノコじゃのお。まぁ良い、それで管理者について話していたのであろう?それは儂から話そうではないか。」

 

ユーリ「・・・あぁ頼む」

 

卑弥呼「うむ。言葉通りではあるのだが、平たく言うと『外史が正史に影響を及ぼさないように管理する』という者達じゃ。

正史で生まれた強い想いが外史を生む、ならばその逆も然りなのだが、外史が正史に影響するというのは本来あってはいけないこと。

また、外史が別の外史に影響するのも好ましくないのでな、そういうことが起きないように監視などをしている、というわけだ。」

 

貂蝉「そういうことね、それで最初の質問に戻るのだけれど、ユーリちゃんが元の場所に帰れないのはこの場所に法則があるからなのよん。」

 

ユーリ「法則?」

 

貂蝉「そうなのよん。まずここには本来私たち管理者か、その管理者に呼ばれた者しか入ることは出来ないの。

そして私たち二人はユーリちゃんを呼んではいないし、後2人いる別の管理者も呼んではいないはずなの。

つまりユーリちゃんはここに迷い込んでしまった、ということねん。」

 

卑弥呼「そうだ。そしてこの場所は様々な外史と繋がっていて、その出入りは出来るのだが、正史に関しては別なのだ。

正史からこの狭間に来ることは出来るのだが、狭間から正史に戻ることは出来ないのだ。」

 

貂蝉「そう、そしてユーリちゃんはどうやら正史の人間らしいからここから直接元の場所に戻ることは出来ないのよん」

 

ユーリ「なっっ!じゃあオレはずっとここに居るしかないってのか!?」

 

貂蝉「いいえ、そんなことはないわよん。さっきも言ったけど『少なくとも今は』帰ることが出来ない、だけ。

結論から言うと元の世界に帰る方法は二つあるわ。

一つはユーリちゃんがどうやってここに来たのかを調べて、その逆をするっていう方法ねん。

でもこれは調べるのにどのくらいかかるか分からないし、来た方法によっては完全に一方通行の場合もあるから、その場合はダメになっちゃうわねん。」

 

卑弥呼「もう一つは『外史で正史に影響を及ぼす程の人物になる』ことだ。」

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どうやら帰る方法はあるらしい。それが分かったユーリは安心するが、話を聞いて疑問が生まれた。

 

ユーリ「ん?一つ目は分かった。それに確実性が無いことも含めてな。・・・でも二つ目はどういうことだ?アンタ達の敵になるってことか?」

 

貂蝉「あら頭もいいみたいねん、ホント私の好みよん。そうねん、立場上はそういうことになるけど、別に本当に敵対なんかする必要はないわよん。

ユーリちゃんと敵対なんかしたくないしねん♪詳しく説明すると、私たち管理者は確かにこの狭間の世界の出入りなんかの特別な力を持ってはいるけど

基本的にはか弱い漢女なのよう。だ・か・ら、本当はユーリちゃんの為に色々なことをしてあげたいのだけれど、そうもいかないの。」

 

卑弥呼「じゃが、ある条件が揃った時だけ我らに使える特別な力がある。それは『強制送還』と言って、明らかに外史から正史に影響を及ぼすほどの力を持ち、またその者が故意に

正史に影響を及ぼそうと意識した時に使える力なのだ。

そしてそれの効果は・・・

 

ユーリ「『強制送還』・・・つまり強制的に元の世界に還すってことか。」

 

貂蝉「そういうこと♪さすがはユーリちゃん、私が選んだだけのことはあるわねん。」

 

そう言って、またも体をくねらせながら少し上目使い気味にユーリを見上げる貂蝉。

 

卑弥呼「貂蝉よ、攻めるばかりがオノコの心を掴む方法ではないぞ。時には引かねばならぬこともあるのだ。

特にこの様なあまり異性に対して興味の薄いオノコは、愛情ではなくまず友情から攻めるのだ。」

 

貂蝉「あらん、そう?・・・確かに今まではどの男も私のカラダの前にすぐ堕ちていったのにぃ、ユーリちゃんは中々靡かないのはそういうことだったのかしらん?」

 

(堕ちたっていうより落ちた、んだろうなぁ・・・)

 

卑弥呼「そうじゃ。良いか貂蝉、まずは友好的な態度を取り、体ではなく心の扉を開いてからじゃ。

心が開けば少しずつ体の扉も開いていくというもの。そうなれば後は『・・・聞こえてるぞ、お前ら』

うおっほんっ!どうしたのじゃ、ユーリよ?何をそんなに怒っておるか?」

 

ユーリ「・・・今のは聞かなかったことにしといてやるから話を進めてくれないか?」

 

貂蝉「あらん、ごめんなさいね、ユーリちゃん。そうね、今はユーリちゃんがどうやって元の世界に帰るかって話だったわねん。」

 

卑弥呼「うむ、まぁ簡単に言うとだな。どこかの外史に行って、かなり有名になれ、ということだ。

そして正史に何か影響を及ぼすようなことを考え、それを儂ら管理者が危機だと感じるくらいになれば『強制送還』を発動することが出来る。」

 

ユーリ「それは分かったが・・・有名になるなんてどうすりゃいいんだ?王様にでもなれってか?」

 

貂蝉「そうねん・・・ユーリちゃんは得意なことっていうとやっぱり戦いかしらん?さっきの一撃も私を弾き飛ばせるなんて中々だったわよん。」

 

ユーリ「あぁ、まぁそうなるかな。ちなみにさっきの結構本気で、並のモンスターなら一撃で倒せるくらいだったんだけどな・・・」

 

卑弥呼「ぬっふっふ。ユーリよ、漢女道継承者を甘くみてはいかんぞ。あのくらいあの時の失恋の痛みに比べれば・・」

 

ユーリ「あーもうそういう話はいいから。なんかいい方法があるなら教えてくれ。」

 

(卑弥呼ったらぁん。自分で攻めてはダメって言ったのにぃんっ!)

(ぬぅ、思ったよりユーリは焦っているのかものぉ)

 

貂蝉「うふん、それならちょうど良い世界があるわん。ねぇ卑弥呼、確かご主人様が結構ピンチだったわよねん?」

 

卑弥呼「おお、あの世界か。確かにあそこなら人も集まりやすいし、武力で身分を高められるからのぉ。」

 

貂蝉「決まりね。というわけでユーリちゃんには、三国志の外史の世界をお勧めするわよん。」

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ユーリ「三国志?」

 

貂蝉「三国志というのはある世界の物語で、簡単に言うと三つの国が覇権を争う物語よん。

基本的には武力がモノを言う世界だし、ユーリちゃんみたいな性格の人には案外向いてるかもしれないわねん。」

 

そう貂蝉が説明するが、ユーリはその説明の「争う」と「武力がモノを言う」という二つの言葉から複雑な思い

を感じていた。

 

ユーリ「戦争ってことか。・・・ってことはやっぱり人を殺したり殺されたりとかの世界なのか・・・?」

 

そう、『殺し、殺される』ということ。争いの中にあり人は同じ人に対し、そういう結果を与えることがある。

そしてそれこそがユーリの感じた複雑な思い。

ついこの前に自身の思いを貫く為に選び、行動に移したあの行為。

 

貂蝉「あらん・・・・」

 

卑弥呼「・・・そうじゃ。黙っていても仕方ないからの、先に言っておいたほうがいいだろう。

儂らはユーリの世界がどんなところかは知らんが、そういうことは無かったのか?」

 

ユーリ「人と人ってのは・・・な。だが暗殺とか、そういう殺人ってのは当たり前にある世界だし、オレも・・・」

 

そこまで言って言葉を途切れさせるユーリ、その表情は憂いにも後悔にも諦観にも見えた。

貂蝉と卑弥呼はその表情を見て気付いた。

ユーリは人を殺したことがある、そしてそれを受け入れ、割り切っている。

そして、それを「罪」として背負う覚悟をしていることも。

 

貂蝉「ユーリちゃん・・・ごめんなさいね。貴方の事良く知りもしないのにこんな世界を勧めてしまって・・・」

 

ユーリ「・・・何言ってんだ。動機はどうあれ、協力してくれてることは分かってるつもりだ。

だから別に謝る必要なんかない、どうせ宛ても無いんだ。お前らがここが一番良いってんならそこに行くさ。」

 

卑弥呼「・・・良いのだな?他の世界を選ぶ時間もあるんだぞ?」

 

ユーリ「いいさ、正直良く分かってないしな。それに武術を生業とする以上、人を傷付けたりは当たり前だし、

今までだってモンスターを殺してきた。あいつらだって生きる為に人間を襲ってたわけだしな。

オレはオレの生き方を貫くために人の命を奪う覚悟、そしてその罪を背負って生きる覚悟を決めた。

そして既にそれを選び、実行してしまったオレは、一生この生き方をしなきゃいけない義務がある。

だから、それが別の世界だろうとなんだろうと、それが一番の道ならオレはそこから逃げちゃいけないんだよ。

・・・だからオレはその『三国志』の世界を選ぶ、そして元の世界に帰る。」

 

貂蝉「・・・分かったわん、ユーリちゃんがそう決めたなら私はもう何も言わないわ。

その代わり出来る限りのことはしてあげるわねん。」

 

卑弥呼「うむ、そうじゃの。オノコの決意を黙って見守る。それもまた漢女道よ!」

 

ユーリ「何、帰る方法を教えてくれた。それだけでも十分だ。最後の『強制送還』でまた世話になるみてーだしな。」

 

貂蝉「そうねん、でも時々様子を見に行くわよん。頑張ってね、ユーリちゃん。」

 

卑弥呼「そういえばユーリよ、お主武人の割には何も武器を持っていないようだが、素手で戦うのか?」

 

ユーリ「いや、俺は基本的には剣だな。斧とかも使えないこともないが。」

 

貂蝉「あらん、そうなの?私もてっきり素手で戦うのかと思ってたわよん。

でも、そういうことなら早速力になっちゃおうかしらん。」

 

ユーリ「お、剣があるのか?」

 

貂蝉「そうよん。無いよりはあった方がいいでしょ?ちょっと待ってね、すぐ取り出すから。」

 

と言っておもむろに後ろを向き剣を取り出そうとする貂蝉―――取り出す?どこから?あいつが身に着けているのはビキニパンツ一枚のみ・・・ということは?

 

貂蝉「はい、ユーリちゃん♪」

 

ベシッ!!

 

と、手渡してきた貂蝉の手を弾くユーリ。

 

貂蝉「な、何するのよっ、ユーリちゃんってば!?」

 

ユーリ「す、すまん。なぁ貂蝉、アンタその剣どっから出したんだ?」

 

貂蝉「あら、やだん。そんなこと私の口から言わせる気ぃ?」

 

ユーリ「卑弥呼、すまない。すぐにオレを三国志の世界に連れていってくれ。」

 

貂蝉「ああん、ユーリちゃんったらん。ちょっとした冗談じゃないのよう。」

 

ユーリ「じゃあ何故わざわざ後ろ向いてオレから見えないように取り出したっ!?」

 

卑弥呼「まぁまぁユーリよ、漢女ジョークというヤツではないか。」

 

ユーリ「オレは漢女とやらじゃないから知らんっ!」

 

貂蝉「んもうっ!ユーリちゃんったら可愛いんだからっ!

ほら、よく見て。こ〜んな風に取り出したのよん。」

 

そう言って虚空に貂蝉が手をかざすと2人が登場した時のように空間に亀裂が入り、2人の時よりも小さいサイズの穴が開いた。

そこに手を入れ何か変な声を出しながら穴の中をまさぐる貂蝉。

正直見たくない。

でも見てないと股間から取り出したイメージが離れない。

そう思い、仕方なく一連の作業を見守るユーリ。

とにかく取り出したのが股間からでないことが分かった。

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貂蝉「と、いうわけで、ハイ。これ持っていって。」

 

ユーリ「まぁ色々言いたいことはあるがもういい。この剣はありがたく使わせてもらう・・・ってこれ随分良い剣じゃないか?」

 

卑弥呼「ふむ、たしか『ラストフェンサー』とかいう武器だったな。」

 

貂蝉「そうねん、でも今度会う時はもっと良いのを持っていってあげるからねん。」

 

ユーリ「正直これで十分なんだが・・・」

 

貂蝉「ダメよん、言い忘れていたけど三国志の世界には武将と呼ばれる普通の人間とは遥かに力量差がある人たちが居るわん。

その武将たちはその身体能力もさることながら一流ともなればその武器も強力なものばかり。

確かにその武器はその中でも強力だけれども、そういった武将達の武器と何度も衝突すれば破壊されたりする恐れも出てくるわよん。

だからユーリちゃんも機会があれば向こうで新しい武器を手に入れたりも考えておかないとダ・メ。

そうね・・・可能であればそういった人たちと戦う時以外は向こうで入手しやすい普通の武器を使った方がいいと思うわよん。」

 

ユーリ「そうなのか、分かった。なるべくそうしてみる。」

 

卑弥呼「うむ。それでは最後に三国志外史のどこに送るかだが・・・希望はあるか?」

 

ユーリ「希望って言われてもその物語をオレは知らないからな、まぁでも有名になるならその三国のどっかに行って手柄を立てるのが早いんじゃねーの?」

 

貂蝉「そうねん、それじゃあ三国について簡単に説明するからどこかを選んでちょうだいね。

と言っても今から送るのは時間的にはまだ三国は成立していないの。だから当主である三人の説明とその理想を言うからそれで決めてみたらいいんじゃないかしらん?」

 

ユーリ「そうだな・・・経験があるから分かるが、理想が自分と一致してないところに所属しても苦痛なだけだ。実際はどうなるか分からないが取りあえず聞かせてくれないか?」

 

貂蝉「わかったわよん。じゃあまずは劉備玄徳が率いる蜀ね。劉備玄徳は大徳と言われるほどの人物で武術はからっきしだけどその理想に多くの民が付いてきて、ついには国を建てるほどになるのよ。

理想としては『大陸に生きる全ての人々を笑顔にしたい』と言ったところねん。」

 

卑弥呼「次は曹操孟徳が率いる魏じゃ。曹操孟徳は『覇王』と呼ぶに相応しい人物で、王としての器は三国一だろう。

理想としては『この大陸に平和を』じゃが、従わぬ者には容赦はしないという無慈悲さはある、しかし逆に従うものには最大限の慈悲を与え、戦いも正々堂々と行い、

その信念と行動に民は大きなカリスマ性を感じ、心酔しているものも多い。」

 

貂蝉「最後は孫策伯符が率いる呉ね。彼女は自由奔放とでもいうのかしらねん。武力に関しては王の中では一番ね。でも彼女達の理想は大陸とかではなく、自分たちの呉を守ることを

一番に考えているわ。呉の為ならば鬼にも悪魔にもなれる、ある意味では曹操孟徳よりも危険な人物ね。

でも普段は一番女の子に近いかしら。多分ユーリちゃんと一番気が合うのは孫策ちゃんね。」

 

貂蝉「あ、それとねん。実はこの外史には私たちが送り込んだ別の正史の人間がいるの。

本当はその人がこの外史を良い方向に導くはずだったんだけどイレギュラーが起きてしまってそれが困難になってしまったのよん。

ユーリちゃんを送るのは、実はその人の助けをしてほしいっていう意味もあるのよん。」

 

ユーリ「そのイレギュラーってのは?」

 

貂蝉「そうねん、行けば分かると思うけど、どこからともなく怪物が多数現れて人々を襲うようになったの。

まぁそのほとんどは個別に戦えば武将達の敵ではないのだけれども、その異形の姿や、数、またどこにでも現れるという理由から

かなり問題になっていて、強い人が一人でも多く欲しいってわけ。」

 

ユーリ「そうか、まぁ人間と戦うよりは気が楽だな。案外そっちばっかを倒して名を上げるのもいいかもな。」

 

卑弥呼「名を上げる方法はお主に任せる。ところでどの国に行くかは決まったか?」

 

ユーリ「あぁ、そういう事情ならその別の正史の人間がいるところに送ってくれ。とりあえずそいつの手伝いから初めてみるさ。

お前らの名前を出せば話しも早そうだしな。」

 

貂蝉「あらん、私のお願いを聞いてくれるっていうのねぇん。そんなことだったら、もっと大胆なお願いしておけば良かっ『蒼破刃!』

ぶるはあぁぁっっ!!ユーリちゃんったら、早速剣を使うなんてっ!!」

 

ユーリ「うん、いい剣だ。貂蝉サンキュな。じゃあ卑弥呼頼む。」

 

貂蝉「ああんっ!また?またなのっ!?」

 

卑弥呼「もういいであろう、貂蝉よ。では送るぞ、ユーリよ。」

 

そう言って卑弥呼は両手を虚空にかざす。するとやはり先ほどの貂蝉と同じように空間に亀裂が入り始める。

 

卑弥呼「貂蝉よ!いつまでもいじけてないでお主も手伝わんか!」

 

貂蝉「わ〜かってるわよう。ユーリちゃんの門出を、貴方だけに任せるわけにはいかないわっ!」

 

(門出って・・)

 

復活した貂蝉が卑弥呼と同様に手をかざすと亀裂が大きくなる。

 

貂蝉「ぶるあああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

卑弥呼「ぬぅっっはぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

2人がこの世のものとは思えない奇声を発すると、その亀裂が完全に割れ、空間に人一人通れるくらいの穴が開いた。

その向こう側から眩い光が溢れてくる。

そしてその光がまるで生き物の様に、ユーリを包むように向かってくる。

ユーリはその光に引っ張られるかのように穴に向かって進んで行く。

 

卑弥呼「さぁ行くがよい!」

 

貂蝉「頑張ってね、ユーリちゃん。」

 

ユーリ「あぁ、行ってくる。二人とも色々ありがとな。

・・・そういえばその別の正史のヤツはなんて名前なんだ?」

 

卑弥呼「おお、そうであったな。あやつの名は」

 

貂蝉「うふ、私のご主人様の名前は」

 

卑弥呼・貂蝉「本郷一刀(だ)(よん)」

 

そう2人の漢女が言ったのと同時に光は消え、穴は閉じていった―――

説明
え〜どうも、初めまして。
題名通り恋姫はどの作品もやったことはないのですが、皆さんの恋姫小説を読むうちに自分でも書きたくなってからの見切り発車です。
一応、アニメの方は全部見ましたが、言葉使いや出てくるタイミングなどははっきり言って・・・めちゃくちゃです!!

んで、ユーリに関してですが、元々書き始めた時に一刀以外を誰か出そうと思ってクロスオーバーは予定していました。
他にも色々考えたのですが、恋姫の世界にそのまま入っても書きやすそうなのが彼だったわけです。
テイルズ系主人公は全員考えましたが、一番しっくり来たのはユーリでした。ロイドもアリだったんですけど既に書いている方を見つけたので却下としました。

冒頭にも書きましたが色々とめちゃくちゃですし(特に恋姫方面)、地名なんてほとんど分かりません、一応出すときは他の作品を参考にさせてもらったりしながら辻褄を合わせるようにしますが、まぁ多分間違えるでしょう。
気付いたら指摘して頂けるとうれしいです。

まだ先のことも少ししか決めていませんが、完全な自己満足で書き連ねていこうと思っています。
生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
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コメント
いいと思いますよww自分の作品なんか設定最悪ですから参考になりますww(勇心)
>勇心さん コメありです^^正直武器の設定は未だに良かったか悩んでます・・・(ロンダリング)
ユーリの設定結構好きですww(勇心)
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