異聞〜真・恋姫†無双:十三
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「次に来る時は、桂花や季衣たちが合流してるんだろうなぁ。

なんか、顔を出すのが楽しみなような、おっかないような・・・」

 

「まぁ、もがれる程度で済むわよ。問題無いわ」

 

「それは確定なのっ!?」

 

陳留を後にして、いざ幽州へ。三国鼎立の要の一つである、劉玄徳とよしみを通じるために。

ただ、始まりは義勇兵って聞いているから、どう接触したものかな。

 

こちらの華琳とは、定期的に文や援助物資のやり取りをすることになっているので、

旅をすること自体に困ることは当面無さそうだ。ありがたやありがたや。

 

「私が主だけでなく、劉元徳どのに仕えていた時の記憶も残っていれば良かったのですが・・・」

 

「それを言うなら、星ちゃん。私たちが知ってても話せないのと一緒だわん。気にしちゃ駄目よん」

 

馬と同じ速さで、地面を軽快に駆けながら、普通に会話に混じる貂蝉。

この身体能力の高さは、変態ながら認めざるを得ない。

于吉は俺たちと同じく、騎上の人だ。純粋な身体能力だと、俺と同等か、むしろ下回るかも・・・との主張。

星の見立てでも、同じようなものらしい。

 

ちなみに、貂蝉が街などを歩くときは、于吉に服を着ているように見える幻術をかけてもらっている。

ただ、本人を元々知っている人には通用しないような、効果の大変薄い術なんだそうで。

『貂蝉に私の術力を必要以上に割く必要を全く感じませんので』とは于吉の弁。

このブレなさは見習うべきところかもしれない、とちょっぴり思う。

 

「おおよその流れなら、私や稟ちゃんが当時集めた情報で十分でしょうし〜」

 

「えぇ、その通りです、星。まずは公孫賛の元へ向かう方向で十分でしょう」

 

「ん? 皆さん、索敵用の式が反応しました!・・・賊が旅人を狙っているようです。北東へ約半里!」

 

「・・・行こう! 全力で走れば二分足らずで駆けつけられる!」

 

「私は先行致しますぞ!」

 

「頼む、星!」

 

一斉に馬の腹を蹴る俺たち。その中でも馬術に長ける星が、みるみる間に俺たちとの差を広げていく。

霞や翠までとはいかなくても、星の馬術はきらめく将の中でも、抜きん出ているだろう。

 

「私が跳躍すれば、一発だけどぉ?」

 

「旅人が驚きのあまりに突然死するから却下!」

 

「あまりに私の魅力が溢れているからって、それはないわよぉ!」

 

「とやかく言わずに走れっ! お前ならついてこれるだろ、貂蝉!」

 

「ご主人様の信頼には必ず答えるぅ! それがわぁたぁしぃ!」

 

騎馬の全力疾走の早さに、息を切らせずに身体一つでついてくる。うん、左慈と普通にやり合うだけあるよなぁ・・・。

爺ちゃん曰く、龍をも倒した実績があるって言ってたっけ・・・。

 

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「へっへっへ、細身の身体でよく逃げたもんだが、限界みてぇだな」

 

「大人しくしなよ、嬢ちゃん」

 

「あ、あきらめるんだな・・・」

 

「あ、あわ・・・わ・・・、朱、朱里ちゃん、ご、ごめんね、私、もう・・・」

 

必死に逃げようとしていたものの、息も絶え絶えになりつつある旅人を、賊たちは取り囲んでいた。

先行した星が辿りついたのは、まさにそんなギリギリの場面。

 

「・・・待てぃ!」

 

「あんっ!? なにもんだてめぇ!」

 

「ふふふ、貴様らごときに名乗る名はないが、どうしてもというなら教えてやろう!」

 

「あんだとぅ!」

 

「・・・可憐な花に誘われて、美々しき蝶が今、舞い降り・・・あいたっ! 何をするのです、通りすがりの旅の方よ!」

 

「その仮面をさっさと取ってください、星。第一、それはどこで用意したのですか・・・」

 

「わ、私は星という名前などでは・・・」

 

「変装するなら、服装から変えることです。それでバレないと思う辺りが・・・」

 

時間稼ぎだったのか、本気だったのか判らない星への突っ込みは稟に任せて、

続けて駆けつけた、俺と華琳は賊たちと旅人の間に割って入る。

旅人の正体は一目見て判ったんだ。こんな荒野に一人でいる理由はわからないけど。

あんな魔女っ子帽子、味方陣営になったことが無いとはいえ、忘れるのが難しい。

 

「大丈夫、怪我は無い?」

 

「は、はぃ・・・大丈夫でし・・・」

 

「(でし?)・・・それなら良かった。って、あれ? お前たちって確か」

 

「また、あなたたちなの? しつこい連中ねぇ・・・」

 

華琳の呆れた声に賊連中をちゃんと見れば、外史に降り立った時に襲い掛かってきた、あの三人組じゃないか。

懲りずにまだ追い剥ぎやってたのか!

 

「げ! あの時の妙な服着た、妙に強い二人組!」

 

「それだけじゃないわよぉぉぉぉぉん!」

 

「そうなのです〜。神妙にしやがれなのですよ〜」

 

貂蝉の肩の上に腰掛け、飴を突きつけるように腕を伸ばしながら、男たちを見る風。

なんか得意げだ。表情はいつも通りに見えるけど、よく知る者にしか判らないぐらいに、頬が少しだけ緩んでる。

つーか、乗ってた馬は・・・あ、稟が手綱預かってるのか。

 

この大陸の常識ではあり得ない、規格外の連続に、あの三人組が哀れに見える。

あ〜、魔女っ子もとい、鳳統さんも目をくるくる回してる。ただ、気を失わないだけでも十分立派だ。

 

「やべぇ! こりゃ逃げるぞおまいら!・・・ってなんでこんな人数に囲まれてるんだぁ!」

 

友達百人出来ましたばりに、周りを囲む白装束たち。慌てふためく黄色頭巾の三人組を見て、于吉は楽しそうに笑ってる。

この笑いはよぉく知ってる。華琳と同系統のモノだ。

 

「・・・味方にすると頼もしいことこの上ないなぁ。あっという間にこの人数召還するのか」

 

「ふふふ、白装束百人召喚など造作もありません」

 

「ば、化け物めっ!」

 

「だぁれが出会えばすぐに狂気の沙汰に陥り、同志討ちを引き起こす風貌の化け物ですって!!」

 

あーあ。どす黒いオーラというか、漢気を漂わせた貂蝉は止められない・・・。

 

「てめぇじゃねぇ! っていうか、んなこと言ってねぇぇぇええええええ!!!!!」

 

俺と華琳に倒された時より、三人組はひどい目に遭うことになったが・・・詳しく語る必要は無いだろう。

 

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「あ、あの! 本当にありがとうございまひた! 天の御遣いさまたち!」

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。誰も取って食べたりしないから」

 

鳳統さんは朱里と同じ系統の感じがする。軽い男性恐怖症というか。ならば、接し方は心得ているつもりだ。

わざと地面に胡坐をかき、すぐに動けない姿勢であることを示し、目線を合わせ、ゆっくりと話しかける。

 

「は、はひ!」

 

華琳に念のため、すぐ傍にいてもらって、貂蝉や于吉を含めた他の連中は十歩程度離れたところで待機。

一時の混乱から抜けつつある彼女が我に返れば、周りに男が増えれば増えるほど、

まともに話すことが出来なくなると予測してのことだ。

 

しかし、よく噛むもんだなぁ。狙ってやってるのかな、とすら勘ぐってしまう。

 

「というか、天の御遣いって断定するんだね。確かに妙な組み合わせの一行とは思うけどさ」

 

「むしろ、不審者ご一行様、って考えるのが普通かもしれないわね」

 

華琳の自嘲気味の突込みが入るが、内容は至って真っ当なことを言っている。はたから見ればその通りだ。

 

「その・・・服の素材、です。光を反射するような生地というのは、私の知る限り、この大陸には存在していません。

それに、著名な占い師・管路の予言にある、陳留近辺で天から流星が流れたのが丁度、一月ほど前」

 

帽子の広いつばに半ば隠れているが、怯えの中にしっかりとした知性を宿した瞳が見える。

鳳雛か。臥龍と相対するように、この娘も軍略に類まれなる才を秘めているのだと、そう思えた。

 

「君も、見ていたのか。その流星を」

 

「大事な友達と一緒にですけど・・・今は、はぐれてしまいました」

 

・・・朱里。心の中で、その真名を呼ぶ。

その小さな身体で、国を富ませ、戦う為の軍を作る為、

軍略、内政全てに秀でた才を持つがゆえに、過労気味と思えるほどに働いていた、頑張り屋さんを思う。

 

「・・・その人は自分の身を守れる武を持っているの?」

 

「いえ、私と同じで、あんな人たちに襲われたら、ひとたまりもありません」

 

瞑目する。会えば、聡い彼女は思い出してしまう気がする。一緒に歩めないのなら、それは残酷なこと。

ただ、今回に関しては。愛紗に鈴々がいるように、朱里にもこの子がいる。

 

「わかった。・・・俺は北郷一刀。字は無い。もし、良ければ、名を教えてほしい」

 

「・・・私は安蘭樹。一刀と同じく、字は無いわ」

 

「わ、わたひは、姓を鳳、名を統、字を士元と申します」

 

「士元さん、俺は君の友人を助けたい。もし、良ければ、どの辺りではぐれたのか、少しでも情報が欲しい」

 

「・・・御遣いさま!? で、でも、そんな、危ないところを助けて頂いたばかりか、

朱里ちゃんまで探してもらうなんて。今の私じゃ、何もお返しも出来ないでしゅ・・・」

 

鳳統さんの口から、答えが出た。迷うことはない。今は動くだけだ。

ただ、華琳が包み込むようにそっと俺の手を取ることで、無意識に拳を強く握り締めていた、ということは自覚できた。

 

「変に無表情ぶらないの。辛いなら辛い、そう顔に出してくれた方が、私も嬉しいから」

 

「・・・ごめん。本当は、心配でしょうがない、かな」

 

「あ、あの、御遣いさま? 大丈夫ですか?」

 

俺の様子の変化に、鳳統さんも心配そうに、こちらの様子を伺うように見つめている。

 

「大丈夫だよ、士元さん。ただ、俺たちのことを、御遣いって呼ぶのは勘弁して欲しいかな。

どうも、そんな風に呼ばれると、むずむずして仕方が無い」

 

「は、はぃ・・・じゃあ、北郷さま、蘭樹さま」

 

「お返しはいずれ、何倍にもなって返してもらえると思ってるから。今は、君の友人と合流することを考えて、ね?」

 

「あわっ!?」

 

これ以上、緊張させないように、と笑顔で話しかけてみたものの、

妙な叫び声と『ぼふんっ!』という妙な擬音が聞こえ、鳳統さんがうつむいてしまった。

 

やばい、またヘマこいたのかな・・・。

 

「・・・士元、強烈でしょ。無意識でこれだから、こちら側で慣れるなりするしかないわよ?」

 

「は、はひ・・・これは反則です・・・」

 

華琳が優しげに、鳳統さんの肩をぽんぽんと叩く。あぁ、俺の代わりに励ましてくれてるんだな。

さすが、この辺りはお手の物だなあ。

 

彼女の相手は華琳に任せ、俺は手を上げ、他の仲間を呼ぶのだった。

説明
前回のあらすじ:ガチホモが二人仲間に加わった。一刀の貞操の危機が跳ね上がった。華琳たちの警戒心も跳ね上がった。
一刀たちの不審者っぽさも跳ね上がった。つまりは通常の三倍である。(コメント名言集より抜粋)


まずは、雛里から。真名取得へのカウントダウンが始まる・・・。
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コメント
>320iさん ほんま種馬さんは天然ジゴロやでぇ・・・(通り(ry の七篠権兵衛)
>jonmanjirouhyouryukiさん うpした後で見直すと別の意味で恥ずかしい作者ですwww(通り(ry の七篠権兵衛)
>mokiti1976-2010さん 定番であっても!幸せになれる恋姫たちを見れるのなら!俺は書くのを!やめないっ!(通り(ry の七篠権兵衛)
ぬぉ!雛里がオチた!そして朱里と合流→朱里、記憶を取り戻す→やはりオチるという流れか!!(mokiti1976-2010)
>shirouさん 書いていても違和感が無いんですよ・・・さすが種馬さんは格が違った・・・(通り(ry の七篠権兵衛)
息を吸うように口説きご飯を食べるように落とす・・・・種馬さんだなぁw(shirou)
>闇羽さん そこで貂蝉ですよ、あとはわか・・・りたくないなぁ、うん、ほんと想像して気持ちが悪くなりましたwww(通り(ry の七篠権兵衛)
もごうと思って近づいてきたところを種馬力で返り討ち、足腰立たなくさせるような気がするw(闇羽)
>きのさん どの辺からもいでしまいましょうかwww(通り(ry の七篠権兵衛)
>シグシグさん 両腕は残すと思うんですね。抱きしめてもらう的な意味で。雛里が真名を許すのは次回か次々回でしょうか?(通り(ry の七篠権兵衛)
色々もがれちまえw(きの)
逆に四肢をもがれて挿入人形の可能性も・・・。それにしても雛里も瞬殺かwww(シグシグ)
>アロンアルファさん むしろ恋姫たちからすると足がもがれていて、息子が無事なことが大事な気すらしてきますね。(通り(ry の七篠権兵衛)
よかったな一刀もがれる程度で済んでw五体満足なだけ良いじゃないかww(アロンアルファ)
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