星と龍
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潮の匂いが龍の子の鼻をくすぐる。

ざざんざざんとゆったりとした音。

まるで母様に抱っこされているようなその感覚に、龍の子はしばし眠気を覚えた。

しかし、ふりふりと首を振ると、やがて来る戦いを思い、龍の子はため息を吐いた。

そんな彼の元に、奇妙な足音を立てながら、何者かが近づいてきた。

彼は星の子と言って、この世界の遥か天空より来たらしい。

確か宇宙と言ったか・・・宇宙、一体どんな場所なのだろうか。

龍の子の・・・いや、文明がさほど発達していないこの世界の住人では感じることも出来ない。

遠い、遠い場所だ。

 

「龍の子、元気ない、ダイジョブか?」

 

そう言うと、星の子は心配そうにこちらの顔を覗き込んできた。

 

「うん、ダイジョブ、龍の子元気だよ」

 

「そうか」

 

龍の子の返答に満足したのか、星の子は踵を返してその場を去ろうとした。

しかし、やはり龍の子が気になったのか、もう一度振り返り、今度は龍の子の隣に座る。

ここはややアルニに近いオパーサの浜

子供たちが騒ぐ声が、少し遠くの方から聞こえる。

何故この二人がここにいるかというと、全てはヤマネコ(と化したセルジュ)の指示だ。

しばらく別行動隊として、アルニ村付近で待機して欲しい。

その一言に、龍の子と星の子、後もう一人イシトというパレポリ軍人がアルニ村で待機しているのだが

イシトは弾丸の調達にと、どこかへと消えてしまった。

 

「・・・龍の子、寂しいか?」

 

急に沈黙を破ったのは、またも星の子だった。

 

「なんでそんな事聞く?」

 

「龍の子、たまに寂しそうな顔する、星の子心配だゾ」

 

そうか、自分はそんな顔をするのか。

しかし、その質問に龍の子は少し悩む。

 

「んー、ソレ難しいな、寂しくないけど、寂しい」

 

「??? どういう事だ、星の子、意味分からんゾ」

 

うーん、としばし一匹と一人(?)は首をひねった。

少し経ち、龍の子はうん、と何か納得すると、再び口を開く。

 

「例えば、星の子とヤマネコと、皆といる時、龍の子寂しくない」

 

「うん」

 

「でも、時々母様とか父様とか姉様とか兄様の事考えると、寂しくなる」

 

「何でだ?」

 

「龍の子の家族、どこに行ったか分からない・・・だから、もしかしたら会えないかもと思うと・・・」

 

「そんな事ないゾ!」

 

その一言に、星の子はぶんぶんと首を振った。

そして、龍の子の手をそっと握り、もう片方の手で水平線を指さした。

 

「龍の子、知ってるか、世界は丸いんだゾ」

 

急な真実に、龍の子はぽかんと口を開けた。

龍の子は世界は真平らで、世界の端ではどうどうと滝が流れているものだと思っていた。

或いは、どこまで行っても海原が続くだけだと思っていたのだ。

しかし、星の子の言葉に嘘は無いと龍の子は確信した。

彼の持つ技術力は重々承知だし、この世界に来る時、空より高くから見ているはずだ。

彼の言う事は間違い無いだろう。

 

「ぐるぐる探す、きっとどこかで会えるゾ! だから悲しい考え、するな!」

 

少し乱暴な励ましに、龍の子はにっこりと笑った。

 

「うん、龍の子、元気出た!」

 

「ほんとカ?」

 

「ほんと!」

 

そう言うと、二人とも顔を合わせてにんまりと笑った。

 

「星の子、ありがとっ、龍の子、いつか家族に会えるよね」

 

「おう、必ずだゾ」

 

海は、彼ら二人をただただ見つめた。

彼らの行く末に、何が待ち構えていようとももう大丈夫だろう。

そう思うと、ざざんざざんとその身を揺らした・・・。

説明
クロノクロスより、星の子と龍の子のちょっとした一時。
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クロノクロス 星の子 龍の子 

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