東方外鬼譚 《愚神礼賛》が幻想入り 第序章
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♯森の狐と木の実と昼飯

 

 

 ここはとある、マイナーな登山スポット。

もともとなだらかで、それ程高くもない山のため、

わざわざ登りに来る人も珍しく

普段は地元の住民が春には桜を、秋には紅葉を見に来る程度の賑わいだ。

平和で平凡、珍しい物もこれといって無いが、散歩コースにはもってこいの山道であった。

しかし、その日だけは違った――、

いつもは平凡な山道を、異様な男女の二人組が会話もなく歩いてゆくのだ。

男は死に装束のような白い和服姿に…、なぜか狐のお面を被っている。

女のほうは眼鏡に、シックな色合いの地味な服装、

図書館で詩集でも読んでいそうな――真面目で、上品そうな雰囲気だ。

どちらも、とても散歩に来たようには見えない格好をしている、

それどころか男に至っては、靴ではなく草履だ――、

いくら高くないとはいえ山は山…、足元が不安定な事に変わりは無い。

しかし二人とも、ふらつくことも無く確かな足取りで歩を進めている、

山慣れした者の歩き方とはまるで違う、跳ねるようでもあり、滑るような――、

一目見れば、この二人が普通ではない事を理解させられる。

しかし、そんな場違いな格好をした二人組と、

既に何人もの散歩客がすれ違っている。

にも関わらず――誰ひとりとして彼らに視線を向けない。

まるで、そんな二人組みは存在しないかのように。

場違いな二人がすぐ横を通り抜けても散歩客は、

怪訝な顔一つせず愉しげに会話を続けるばかりである。

一見ただ会話に夢中で、その存在に気が付いていないようにも

見えないくは無いが、それにしてはすれ違った全ての人間が

彼らに気が付かないのは、流石に不自然極まりない。

 

山の中腹辺りに差し掛かると、今まで孤面の男の後ろを

付いて歩いていた女が、少し早足に狐面の男より前に進み出た。

女はそのまま本道から逸れると、人が全く通っていないであろう

林の中を、歩調を緩めず迷い無く進んでいく。

孤面の男も、そのがすぐ後に続く。

 

しばらく進むと女は、何もないそこ≠ナ静かに止まった。

「狐さん着きました。ここです」

眼鏡の女は、狐面の男に向き直りながらそう断言した。

狐さん≠ニ呼ばれた男は女の背後、何も無いただ木々が

生い茂る林の向こうを見詰めた。

「………」

男は無言のまま進むと、三歩ほどで立ち止まり目の前の

空間に手を伸ばした。

「『ここです』か、フン。木の実、ここに何かある様には見えないが?」

「そうですね。私も最初はそう思いました」

木の実と呼ばれた女も孤面の男にならい、林を眺める。

「お前の話ではこの結界、存在に気が付けないだけでなく

 通り抜けることが出来ないんじゃ無かったのか?」

孤面の男は、無い顔をしかめながら突出した手を引っ込めた。

「そうですねぇ……。正確には通れるけど抜けられない′糾Eです。

 ここからまっすぐ進んでいっても、たどり着くのはあくまでも

 結界をまたいだ反対側です――。

 どんなに歩き回っても、結界の内側にたどり着く事はありません。

 隠すだけなら私や『呪い名』の人達でも簡単に作れますが…、

 在る事が分りながら抜けられない′糾Eは、原理的に製作不可能です」

少なくとも人間には作れません。――と木の実は付け加えた。

孤面の男は、何もない何か在る≠ヘずの空間をじっと見つめていた。

「『人間には作れません』か、フン。で、結界はどれくらいの広さがあるんだ」

それだけ言うと、返事も聞か無いままに踵を返し、

もと来た道を引き返して歩き始めた。

「正確な大きさは不明ですが、

 ほぼ円形でかなり大規模に展開していると思います」

木の実も答えながら男のすぐ後を追う。

 

しばらく二人は黙々と、本道に向けて歩いていたが

木の実は、今思い出したかのように男に話しかけた。

「そういえば『橙なる種』の拘束がやっと、安定したそうですよ。

 狐さんが連れてきた、時宮時刻の《操想術》のおかげです……」

そこで木の実は言葉を切り、孤面の男を見つめる。

男が声なく笑ったのを、木の実は頬のわずかな動きで感じ取った。

「『時宮時刻』だなんて、いったいどこから連れてきたんですか…?」

木の実はため息混じりにつぶやいた。

「くっくっく――」

孤面の男は、たまらないとでも言うように笑い声をもらす。

つまり、こたえる気が無いようだ。

そんな孤面の男の態度に、木の実はいよいよため息をついた。

二人はそんな話をしながら、獣道でさえない藪の中を

目印も無く本道に戻ってきた。

「木の実、今は何時だ?」

孤面の男は枝葉の間から僅かにのぞく、小さな空を見上げた。

夏は始まったばかりだが、今日も日差しが強く、

天に昇る太陽が男を焦がすように照り付ける。

木の実は自分の華奢な腕に巻かれた腕時計を見下ろす。

「今は…午前11時59分59秒……、午後12時になりました」

「それじゃ、昼でも食いに行くか」

「あのっ、狐さん」

木の実は早々に山を下りようとする、孤面の男を呼び止めた。

「狐さん、拘束は三人がかりでなんとか安定しました―――、

 ですが…、ですが試運転はいったいどこで行うつもりなんですか?」

『十三階段』の二段目。

《空間製作者》の一里塚木の実は孤面の男にそう問い掛ける。

あれほど面白いモノを前にして、以外にも反応が薄かった男の態度に、

言い知れぬ違和感を感じた木の実は問い掛けずにはいられなかった。

「『どこで試すつもりなんですか?』か、くっくっく―――。

 今いい場所が見つかったところじゃないか?」

 

孤面の男――、《人類最悪》西東天はとても犯しそうに笑った。

 

 

 

 

 

あとがき

 

どうも初投稿です。

残念ながら軋識さんは登場しませんでした(謝

一応プロローグのようなモノです。

維新みたいに書いてみようと努力してみたんですが…、無理ですね!!(笑

なので嘘に本当を混ぜるとバレにくいと

よく聞くので、戯言シリーズから所々引用しています。

これで少しはまともは文章になった筈ですが…、どうでしょう?

まだ納得いかない部分もあるので、たまに加筆修正を

おこなうと思います。ご了承ください。

出来るだけ感想などを書いてもらえると、励みにもなりますので宜しくお願いします(座

あと今回、登場した人物の名前のタグを

付けておきましたので、分らない方はそこからイラストの方をどうぞ。

 

 

 

 

説明
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二次創作 東方 幻想入り 戯言シリーズ 零崎一賊 西東天 一里塚木の実 想影真心 

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