マジカル・スクールU
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        ――はじめまして――

 

 目を開けるとそこはどこかの病院、保健室だった。消毒液の臭いがしていてもおかしくはなかったのにまったくしなかった。

 吐息がした。僕が寝ていたベットのシーツで女の人が寝ていた。

 体が震えた。少し寒い、だけど少し暖かくも感じる。どうやら春の陽気だ。

外の景色を見てみた。桜が咲いている。春で間違いないようだ。

 「くしゅん!」下を見下ろすと女の人がくしゃみをしていた。僕は背中に着ていたセーターを女の人に被せてあげた。 

 少し寒くなったから女の人が起きるまで少し眠ることにする。

眠れない・・・・・「トイレ」そう言って部屋を出た。

 あることに気づいた。・・・トイレの位置が分からない。

 とにかく歩くことにした僕は、気の向くままに進んでいた。

「人?」進んでる方向からここの教師と思われる人が来た。尋ねることにする。

「おはようございます」挨拶は基本。

「すみません。ものを尋ねたいのですが」そして本題。

「きっ、君は!・・・そうか。で、なんだい?」変な人だ。

「えっと、トイレはどこですか?」

「それならそこの角を曲がって左だよ」

「ありがとうございます」

「はい。お気をつけて」

 あのひとは僕を知っている。・・・まあ、いいや。

 トイレを終えた後、すぐに保健室に戻った。しかし女の人はまだ寝ていた。一体いつまで寝てるのだろう。起こしてあげようかな。

「朝ですよ〜、起きてくださーい!」指が動いた!

「僕のシーツ返してくださーい」指が動いた。

「あなた僕のこと知ってたら教えてくださーい」・・指が動いた

「しかたがない」摘むか。

「えい!」「イタっ!?」強かった?

「誰よ〜!悪戯するの、痛いじゃない・・・の?」

「ルナ君?」「えっ?」

「良かった・・・目が覚めたんだね。心配したんだからね」続けて    「私のこと分かる?知ってる?」、・・・

「あのっ、すみません。僕あなたのこと知りません。自分の名前も覚えていないんです・・・」そして女の人は弱々しく「そうですよね・・そうよね・・・」と言った

 悲しませたみたいだ。きっとこの人にとって前の僕はすごく思われていたのだろう。

「・・・」

「・・・」

 しばらくの間沈黙が続いた。あれからどのくらいの時間が過ぎたかわからないけど、1時間は過ぎていないと思う。

「・・・」

 ・・・・・・・

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「・・・」

 ・・・これ以上この沈黙に耐えられなかった僕はさっきの話、気になった部分について聞いてみることにした。

「あの!さっき僕のことルナ君≠ニ呼んでいましたが、それが僕の名前ですか?」自分の本名が知りたい。さっきこの人が、たぶん、おそらく僕のことを呼んだのだと思う。部屋には僕しか居なかったから。そしてこの人は僕のことをこう言った。

『ルナ君』と。もしかしたら僕はルナ・******なのかもしれない。それが気になった僕は勇気を振り絞ってこの人、僕を知っているかも知れない人に聞いてみた。誰だろうと自分が何者かを知る時は知りたい。でも、もしかしたら悪い人だったかも、人を殺していたかも知れない。そんなことを気にしながら、僕は話し終えていた。

「・・・」

 この人の返答をずっと待とう、たとえ日が暮れようとも待ち続けようと思った。だが女の人の返答は早かった。

「そうだよね。自分の名前知りたいよね」

「はい」

「じゃあ教えるね。・・あなたの名前はルナ。ルナ・フォルミリアリカ」 「ルナ・・・ルナ・フォルミリアリカ・・・ルナ・・・」

 僕はそう何度も、覚えるように口ずさんだ。二度と忘れないように・・・そういえば、なんで人の名前や自分の家。その帰る家の道筋やその他の道筋。たとえばこの学校のことも。どうして忘れているんだろう?

「あの僕記憶が」ないんですけど。とセリフを吐く前に女の人が無視して言った。

「記憶がないんですよね」

「はい。そうです。あのどうして?」言う手間が省けて助かる。

「実は・・・あなたは・・・ここの高校の生徒で私と同じ一年生です。そしてあなたは・・・入学式が終えて私と仲が良くなったあなたは私とクラス表を見て、私とあなたは自分たちのクラスに行く途中あなたは窓から転落し、保健室に運ばれて・・今に至っています。おそらくあなたの記憶喪失は転落が原因でしょう」

「記憶喪失・・ですか」このあと僕はとにかくなんでも聞いてみた。

 そして

「そうですか・・・あのフリルさん」

「なんでしょう?」

「はじめまして」

「え!」

「いえ、ですから前の僕はフリルさんのことを知ってる。でも僕は知らない。だから挨拶をしたんです。いけませんか?」

 彼女は少し悲しい表情をしてから元気に

「はい!こちらこそ、はじめまして」と言ってくれた。このときからかな?彼女の瞳が僕を、僕という存在を見てくれたのは。

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――二人の仲――

 

 あの後、彼女は良く僕に笑顔を見せてくれた―初めて会った頃は困った表情や泣きそう表情、驚いた表情を僕に向けていた。彼女は笑わない。そう思っていた。でも、違った。僕が『はじめまして』と言った時から、彼女は笑顔を向けてくれた。とても可愛かった。ずっと見ていたかった。しかし彼女は、「あっ、先生呼んでくるね☆」と言ってウインクをしながら、保健室から姿を消した。待ってる間、それほど暇ではなかった。僕はさっきの笑顔+ウインクを思い出していた。「天使・・」と思わずぼやいていた。それほど反側的に可愛かったのだ。そう思っていると、彼女と白衣を着た高校では随分若い女性が入ってきた。

「ほら!先生」そう言って彼女は僕を指した。

「あら?本当・・・どこか痛む?」

「いいえ」

「ということは記憶がなくなっているだけかしら?なら念のために2,3日ここで安静にしてください。その間、カーレルさんに看護をしていただきます。お願いできますか?」と彼女に聞く

「はい☆」

「と、いうことですので心配はいりません」黙って頷く

「では、わたしはこれで・・」と言い

「お大事に。何か質問があればカーレルさんにでも。カーレルさん。彼に必要最低限のことを」頼みますね。と言い、今度こそ去って行った。

「もうお昼だからご飯食べに行く?」

 そういえば、まだ何も食べてなかったな。

「行く」

 そう言ってベットからゆっくりと起き上がり、彼女に付いて行った。

 食堂に着いた僕たちは、まず食券を買った。彼女がざる蕎麦を買った。僕もそれにした。彼女は「蕎麦は健康に良いんだよ!」と言って微笑んだ。「気を使ってくれたの?」と聞いたら彼女は顔をピンクに染めてしばらく振り向いてくれなかった―ここまで彼女は笑顔だったのに、急に困った表情を一瞬見せ、僕から顔を隠した。

 あのあと彼女は僕に振り向き「食券渡してくるね」と言って、僕の券と一緒に食堂のおばちゃんに二枚分渡した。その間僕は二人分の席を確保してしばらく待った。すると彼女はざる蕎麦2つを両手で抱えて確保していた席に運んできて、置いた。

「はい、ざる蕎麦。わさび大丈夫?」

「うん。大丈夫?」

 あれ?と思った。おかしい。記憶が無くなっているのなら普通『どうだろ?』と言うのに・・・

「どうしたの?」

「いや。なんでわさびが大丈夫だっていうのが自分で分かるんだろうって」

「べっ」彼女が少しくぐもった声で

「別にいいじゃない!記憶喪失が全部忘れるとは限らないし」

「うん。そうだよね!それよりお腹空いた」

「そうだよ、早く食べてトランプでもしよう?」

「良いね、トランプ」

 そう言って僕たちは蕎麦を食べ終えて保健室に戻った。言い忘れていたが、ここは彼女のおごりだ。

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「まだ食べれたかな?」そう発言したときに

「ダメです☆目が覚めたとはいえ、あなたはまだ患者です。少なくとも、あと2日は腹八分目ですからね☆」・・・カワイイな・・

「わかってますよ。それに食堂代はフリルさんですしね」

「・・・フリルって呼んでくれるんじゃなかったの?」

「えっ!そうでしたっけ?」

「・・・あれ?言ってませんでしたか?それじゃ、これからそう呼んでくださいね☆」うん。可愛い。だけど引っかかる・・別にいいけど〜

「わかりました。フリル」

「敬語もなしで」「はい・・・うん」

 

説明
この作品はフィクションです
実際の登場人物・事件は一切関係ありません。この作品はマジカル・スクールの続編です
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