春告げハネッコ
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 穏やかな春の日のことでした。日差しが柔らかく降り注ぎ、冬の間に縮こまっていた空気が陽光にとかされて行きます。

 そんな春の日にハネッコはふわふわ飛んでいました。ただ、正確に言うと飛ばされていた、でしょうか。今朝ハネッコが目が覚めた時には、既にふわふわそよ風に吹かれていたのです。仲間達とはぐれてしまってハネッコはちょっと困っていましたが、お日様と春風があまりにも気持ちいいのでまぁいいかと思い直して空中散歩を楽しむことにしました。もっとも、それ以外ハネッコにはどうしようもなかったのですが。

 

 ふわふわそよ風に吹かれていると、チコリータとヒノアラシとワニノコが起き出したところを見つけました。ハネッコは3匹に挨拶をします。すると3匹はとてもハネッコを歓迎してくれました。春を知らせるハネッコが現れたのを見て、とても嬉しかったようです。

 しかし、出会ったのが寝起きだったのが災いしました。チコリータがつるのむちでハネッコを引き寄せてくれたのですが、その時ハネッコの葉っぱがヒノアラシの背中の火にかすってしまったのです。急に熱くなった頭にハネッコは慌てふためきます。このままだと焼け焦げっこです。ハネッコはそんなことにはなりたくないですが、自分ではどうしようもありません。チコリータは熱さに驚いてつるのむちを離してしまっています。ぱたぱたぱたぱた、ハネッコははねますがそれだけでは消える気配はありません。

 しかし急にハネッコに勢いよく水が吹きつけられました。ワニノコが水鉄砲でハネッコの火を消そうとしてくれたのです。おかげで火は消えました。しかしみずでっぽうの勢いのままハネッコは飛んで行ってしまいます。チコリータがつるのむちを伸ばしますが、スピードがついているため捕まえられません。ハネッコは、そのまま飛ばされて行ってしまいました。

 

 飛ばされていたハネッコでしたが、今度は急に止まりました。なんだかねとねとする感触だなぁと思ってハネッコが周りを伺うと、ハネッコを止めたものはイトマルの巣のようでした。くっついていて自分では上手く離れられません。イトマルに助けてもらおうにも、今は留守にしているようです。ハネッコは困ってしまいました。イトマルはいつか戻ってきてくれると思いますが、それがいつになるかは分かりません。ふわふわのんびりお散歩するだけの予定だったのに、いつ帰れるか分からなくなってしまったのです。

 そんなことをハネッコが考えていた時のことでした。不意にガサガサと木の葉がざわめいたのです。ハネッコは慌てて声をあげました。その声が届き、エイパムがやってきてくれました。エイパムはハネッコのこんがらがってしまった状況を見ると、イトマルの糸をからはがしてくれました。自力で抜けられなかったハネッコはエイパムにお礼を言います。エイパムは気にしなくていいというと、ハネッコを枝の上に置いてくれました。

 春を教えてくれてありがとう。笑いながらそう言われて、ハネッコはとても嬉しくなりました。ちょうど吹いてきた風に乗りながら、エイパムに春を楽しんでねと伝えます。エイパムは尻尾で枝につかまりながら、ぱたぱたと手を振って別れの挨拶をしてくれました。

 

 ふわふわハネッコが仲間を探しながら飛んでいると、大きな湖が見えてきました。この湖にはハネッコも見覚えがあります。この地域では大きな湖はそれしかないのですから。北の方にあるこの湖はまだこの時期少し寒いことを思い出して、ハネッコはちょっと寒さを感じました。ここから仲間のいるところに向かいたいなと思っても、風向きが反対方向でどんどん湖の方へ飛ばされてしまいます。南に行きたいハネッコは困りながらも、風向きに従って湖に近づいていました。

 そんな風にのんびり風に漂っていると、どうしたの、もうここも春なのかなと下から声がかかりました。ハネッコが下を見てみるともこもこがあったかそうなメリープがいました。いいなぁと思いながらハネッコは、朝起きたら仲間とはぐれていて風に乗ってここまできたことを伝えます。メリープはそれは大変だったねとハネッコに言いましたが、どこか残念そうでした。

春じゃなくて残念だったとハネッコは尋ねます。少しだけ、でももうすぐだって分かったからとメリープはハネッコを追いかけながら答えました。風に吹かれるハネッコとそれを追いかけるメリープ。二人はそこから楽しく春が来たらどうするかを話していました。

 

 しばらく歩くと湖の側に出ました。見晴らしのいいそこには、沢山のポケモンたちが水を飲みにやってきています。ハネッコは誰か南に行く方法を知らないかなと思い、皆に聞いてみることにしました。

 キリンリキやモココに聞いてみたところ、ピジョンに運んでもらうのが一番なのではと言われました。つつかれるのが嫌いなハネッコは少し迷ってしまいます。でも、今まで一緒にいたメリープが僕も一緒に頼みに行くからと言ってくれたので、ハネッコは頑張ってみることにしました。

 ピジョンの巣まではキリンリキがねんりきで運んでくれました。ちょっと怖がっているハネッコを、にべもなく運んでくれます。すぐにハネッコはピジョンの目の前にいました。ピジョンはこの時期この場所では珍しいハネッコに、どうしたのと尋ねます。ハネッコは、仲間とはぐれてしまったこと、南の方に仲間がいること、だから連れていってもらえないかということ、そして、その時なるべくつつかないで欲しいことを一気に伝えました。

 

 ピジョンはそれを聞くとくすりと笑います。そして、加られるのと掴まれるのどちらがいいかをハネッコに尋ねました。ハネッコは迷わず掴まれる方を選びます。慌てふためいたその様子に、周りのポケモンは皆笑いだしました。ピジョンはハネッコの葉っぱを掴むと、痛くないかハネッコに尋ねます。ハネッコが大丈夫だというと、そのままふわりと飛び上がりました。

 

 ハネッコがメリープやお世話になったポケモンたちにお礼をいうと、ピジョンは一気に羽ばたいて空に飛び出します。ハネッコは普段自分が漂っているのとは違う明確な飛行にわくわくしていました。ピジョンはハネッコを連れて南へ南へと進みます。そうして、あっという間にハネッコの仲間達のいる場所に付きました。ハネッコがピジョンにお礼を言うと、ピジョンはハネッコを離します。そうして、ハネッコは仲間たちと無事に合流できたのでした。

 どこに行っていたのとワタッコが心配そうにしているかと思えば、ポポッコは湖まで行ったと聞いて羨ましそうにしています。ハネッコは、もう飛ばされないように仲間のハネッコたちと葉っぱをからめ合うのでした。

 

 

説明
ハネッコかわいいというただそれだけのお話。もっとハネッコ好きが増えますように。
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タグ
ポケットモンスター ハネッコ 

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