ようこそ! きのこ駅前商店街へ! #final ルカ
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<第9話 末文より>

 

(自我の世界・玉座の間)

 

回転椅子が回転して、女の子はこちらを向いた。

 

ルカ:え・・・・・・・そ・・・・・・・・そ・・・・・・・そん・・・・な・・・・ことって・・・・

 

女の子:私の名前は、『巡音ルカ』よ

 

***

 

<ようこそ! きのこ駅前商店街へ! 最終話 ルカ>

 

(自我の世界・玉座の間)

 

ルカ:な・・・なんで・・・張本人が・・・ワタシ・・・・なの・・・

メイコ:“驚かない“方が難儀よね

少女ルカ:私はあなた。これは曲げられない“事実”。ここへ“全てを知る覚悟”ができて来たんじゃないの?、あなたは

ルカ:・・・・・・・・・・・・もう後戻りは出来ない、そうだったわね。わかった。じゃあ、教えて貰うことにするわ、全ての真実を

 

遂に真相公開の時となった。

 

ルカ:まず、なんで私そのものじゃなくて、“子供の頃の私”なのか、それから行くわ

少女ルカ:私は10年前に、元の世界が“地の世界と天の世界”にスプリットした時に、自我の世界側に生まれたルカだからよ。そして自我の世界では歳を取らない。だから10年前の“少女のあなた”のまま、今に至っているの

ルカ:!! や、やっぱり、世界をスプリットさせたのは、あなたなのね!

少女ルカ:私の話をちゃんと聞いていたのか? わかった、説明を詳しくしよう。世界がスプリット“した”時に出来たのが、元のルカからスプリットした”地の世界のあなた”と“自我の世界の私”だ。では確認のために私からおまえに訊く。世界をスプリットした人物は誰だ?

 

ルカ:・・・・・元の世界にいた、私とあなたに『分けられる前』の10年前の少女である『巡音ルカ』・・・・

少女ルカ:そう。そして、“分けた記憶”や“分けてやりたかった意志”を受け継いだのは“私”で、おまえは何が起こったかも解らずに普通に継続して生活していた

ルカ:聞きかじりの知識だけど、“パラレルワールド”が発生する時の“条件”を『因果律』っていうらしいけど、この地と天の世界をそれぞれのパラレルワールドにした『因果律』が、『10年前の少女・巡音ルカ』、というわけなのね

少女ルカ:そう。ではここで、もう1回質問をする。この因果律であり張本人である10年前のルカの“原罪”を受け継いだのは、私? あなた?

ルカ:・・・・・・・・・・・片方だけではないわ。記憶の有無に関わらず継承するから、私とあなた、二人が一生背負っていく“罪”だわ

少女ルカ:少しは話が分かってきたようね。そう、分けた記憶を受け継いだ私だけではないの。あなたもその罪を被ることになる。同じ“罪人・ルカ”から生まれたからね

 

ルカ:それはわかったわ。そして、あなたは“分けた記憶”と“意志”を受け継いだワケだから、“こういう天の世界”を作ったのだと思う。ここで質問。“彼女の意志”、というか“分けた理由”と“分けた後に何をする意志”があったのか、ちゃんと教えて!

 

少女ルカ:そもそもの“起点”は10年前ではないの。あなたは覚えていないかもしれないけど、15年前、幼児だったルカが、この街に家族で初めて立ち寄った事が始まりなの

ルカ:私がここへ家族で立ち寄った?

少女ルカ:正確には、元の世界の15年前には“あった”木之子駅と、小さな商店街、つまり木之子駅前商店街に、幼児・ルカは家族旅行の途中で立ち寄ったのよ。小さいながらも活気溢れる商店街、乗降人数は少ないけど、電車も通っていた駅。幼児・ルカは子供の“無垢なる思い”で、その全てをその眼をキラキラさせて眺めていた。“素敵な街”だと

ルカ:・・・・・・

少女ルカ:来たときの商店街は“秋祭り”の真っ最中だったの。そしてその“お祭り”が目的で立ち寄ったんだけどね。商店街のお店で、サービスで貰った“水飴”、木之子神社のテキ屋で買って貰った“リンゴ飴”や“綿飴”。彼女にとってそこは純粋に“天にも昇るほどの素敵な世界”だったのでしょう。そして祭りが終わった後に、家族は帰宅した。それっきり、家族はそこに行くことはなかったが、幼児・ルカの記憶には、その“素敵な商店街”が刻み込まれていた。そして10年前、ある事がきっかけで因果律が発生した。“「廃線」による木之子駅の解体工事と商店街の再開発工事”

ルカ:つまり、そのことを報道したニュースを、ルカはTVで見てしまった。その時のルカはニュースの報道の意味を一応わかる年齢だった

少女ルカ:ブルドーザーやクレーン車やショベルカーで破壊される駅舎、取り壊されるアーケード。リポーターが歩いていく光景に映し出されている“水飴を貰ったお菓子屋”の解体工事、勿論テキ屋はないが、ひっそりと人もいない状態になった荒れ果てて寂しい神社。幼児・ルカが見て記憶していた“あの世界”が、跡形もなく破壊されていた。そして起こった“世界のスプリット”が

 

ルカ:『私のあの駅と駅前商店街を自分で取り戻す』、と

 

少女ルカ:そう。そうして、世界は、彼女の希望を叶えるための世界“天”と、普通に生活する世界“地”に分けられた。しかしその因果律になる“対価”が存在した。希望している彼女本体をそのまま“天”の世界に持っていく事が出来なかった。対価は、“意志だけの存在”のみ、天の世界に第3者的に関与できる“自我の世界”に送ることが出来、人間の存在である、“人間・巡音ルカ”は、分離した部分を取り除かれた形で、普通に地の世界での生活を続けることになった

ルカ:でも、あくまで第3者的にしか関与できないため、自分の手で物も人間も作っていくことが出来ない。だから天の世界と同時に作られていた、リンさんとマスターに支配世界のあのエリアで指示を送った。だが当然それでも人間を作る事は出来なかったから、地の世界からフロンティア精神を持つ人間をここへ誘導してきて、記憶操作し、商店街を作っていって貰った

少女ルカ:天の世界と自我の世界を繋ぐ“駅舎と駅前道路”は天の世界が創世した時点で作られていた。が、ココにいる、というか、天の世界が“駅舎と駅前道路と商店街だけしかない世界”と知られるわけにはいかない。だから“商店街を出るな”、“張本人の事を詮索するな”という事も律に盛り込んだ

 

ルカ:壮大な意志だけど、まさかこんな平和な世界が出来上がるとは思っていなかった

 

少女ルカ:そう、だいぶ前だけど、“商店街の成長の方法”に息詰まった私は、地の世界からここに直接、人間を一人持ってきた。記憶操作も何もしないのに、その人物は私だけでは思いもつかない事を次々提案して、時には“スパイ”として、天の世界にも行ってくれた

ルカ:ま・・・・・まさか・・・・それは・・・・

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少女ルカ:そう、それはメイコさん。私の大事な右腕ですよ

メイコ:大事な右腕は褒めすぎですよ

少女ルカ:いや、それでも言葉が足りないと思っていますよ。で、そして、メイコさんからの助言もあり、今の天の世界を創ることが出来、更なる高みに登ろうとしていた。まぁ勝手にやってきた、地の世界の守護神“がくぽ”は計算外だったが、それほどの因子にはならないと判断して無視したけどね

 

ルカ:じゃあ、それに関連する質問をするわ。普通の住人達、メイコさん、勝手に来たがくぽさんはともかく、どういう理由があって“私”を地の世界からこっちに持ってきたんですか?。そもそもこの天の世界に関係するルカは、あなたがいるから、私は必要ないんじゃないですか?

 

少女ルカ:・・・・私自身も、自我の世界じゃなくて、あの平和な天の世界で生活したかった。でも私は“商店街を創る”というだけの存在であり、創った所で暮らすことが出来ない。だから“私のもう片方が平和に生活しているのを見る事“で我慢することにしたのよ

ルカ:そ・・・そんな理由で、私はこっちに送られたの・・・・・?!

少女ルカ:こちらでの生活で見せるあなたの“笑顔”を見るだけで“我が事のように”とても嬉しかった。でも“あなたが気づいたこと”で“嬉しさ”は無くなった

 

ルカ:だったら何で“私を天の律に従わせる”ように、あのときメイコさんに言わなかったの? 私はメイコさんのモニターを見て知っているのよ。天の律に従ったら、あなたが不安に思った“私が気づいた”事は消去され、“私に真実を気づかせる”因子である、がくぽさん関連の物は全て消去される結果になることを。これなら、あなたの要望全てに答えられるじゃないの! 私が選んだ“自我の世界へ私を入れる“という選択肢は、あなたから考えれば”同じ世界に二人のルカがいる“っていう事だし、律でいうなら最も大きな”矛盾“を抱える事になるわ!!

 

少女ルカ:違うの。天の世界の律を元に戻して、あなたの平和な生活を元に戻し“あなたが平和に生活しているのを見る嬉しさ”を取り戻したい、という事を思う前に、『違う欲』が生まれたのよ

ルカ:『違う欲』?

少女ルカ:『チャンス』だと思ったの。『私が創った天の世界で自分が生活できるチャンスかも』って欲が。あなたを天の世界に連れてきた時に考えていた事とは全く違う『我欲』

ルカ:つまり、自分の片割れである“私”が平和な生活をしているのを見る“代替の嬉しさ”ではなく、誰もが思う“純粋で当たり前の欲”って事ね。事情があったとはいえ、あなたのその“代替案”を聞いたときに“違和感”を感じていたのよ。やっぱり“無理な代替案”だったわけね。“自分が創った平和な世界で自分自身は生活できない”、こんな事をずっと守っていられるのは、相当の『賢者』よ

少女ルカ:その通りよ。あなたが“気づく前”までの条件では、私はそれでも“代替案”を守っていなければ行けなかった。でも今は違う。天の世界の律は大きく揺れていて、片割れであるあなたは“世界の律にとって特別な存在”になり、そして大きな“選択肢”を選ぶ事にすらなった。これは私にとって大きな『チャンス』だったのよ。あなたを無理なくこっちの世界に導けば、『私が天の世界に戻って律を戻して、自分が創った平和な世界の住人』になれる、そういう、今まで“アイデアすら浮かんでこなかった“ような大きなチャンス

 

ルカ:2つ訊きたいことがあるわ。1つはそれは誰の差し金だったか。もう1つは私をここに導いた後、何を行ったら、あなたが天の世界の住人になれるのか。あなたにはちゃんと答える義務があるわ。私の片割れとして

少女ルカ:そう、やっぱりわかっていたの、“違う欲が生まれた“って上手く回避しようと思ったんだけど・・・。まぁいいわ。その我欲を生み出した”アイデア“をくれたのは、メイコさんよ

ルカ:やっぱり。メイコさんの“知恵”でしたか。自分事で悪いけど、私にそんな“策謀”を建てられる策士のスキルはないと思っていたからね

メイコ:うーん、天の世界で“単なる陽気な酒飲み”ってイメージを植え付けたと思ったんだけど、あの2つのモニターのイベントでばれちゃったのかな。でも仕方ないわ、あれは絶対にやらないと“策”が進められない事だったからね

 

ルカ:1つ目は“確認”出来たわ。じゃ、肝心のもう1つの質問。『どうやって』あなたが天の世界で生活できるのか? 答えて貰うわよ

少女ルカ:・・・・・・・・・・メイコさん、これを私が答える事は、あなたの策に入っている?

メイコ:・・・ルカさんが知っても、“どうすることもできない”、と判断してます。答えてもいいですよ

少女ルカ:じゃあ答えるわ。“自我の世界の律に従った上で、あなたの存在を消して、私があなたになる”、それだけよ

ルカ:!!!・・・・・・・・では、“自我の世界”を制御しているルカはいなくなるわね。どうするつもり?

少女ルカ:あれだけ平和な世界になっていて、リンとレンが天の世界で制御しているわ。もう私が“住人の誘導”をする必要はないわ。ここはもう“いらない世界”なのよ。そもそもここは地と天の両方の世界とは違う世界だから。無くなってもそれぞれの世界の律に影響を与える事はないわ

ルカ:当たり前の律、“世界に同一人物は二人いない”に従い、私がいなくなれば、確かに、ルカはあなた一人だけ。自我の世界が無くなる方向に動くのなら、世界にいる“ルカ“は、”私の姿“という人間で安定する事になる。よって、あなたはおそらく私を受け継ぎ、一気に成長して、”私”、に成り代わることになるわけね。今だって、元のルカから受け継いだ物が違うという“僅差”があるおかげで、私とあなたが同一世界に存在している。だから“一人だけになる”方向に話が進むのは必然だから、“私はどうすることもできない”、そういうことね。さすがメイコさんの策

メイコ:それを見抜けるあなたも、さすがと言いたいわ。正直、消すのが惜しいわ

少女ルカ:大丈夫よ、消しても私が受け継ぐから

メイコ:・・・・・

 

少女ルカ:さて、正直、あなたが見抜いた“僅差で保っているが当たり前の律に従っていない”、余波は出てきているみたいね

 

ゴゴゴ・・・・・

 

ルカ:『自我の世界』が、揺れ始めている!

少女ルカ:さて、そろそろ最後の仕上げをするとしましょうかね

 

そういうと、少女ルカは、ルカが持っている物と同じ、“柄だけの刀”を取り出して、両手で持ち構えた。

 

少女ルカ:あなたが持っている物と同じ“錬気刀”よ。あなたの“身”を斬って物理的に消去する方法はNG。それでは“存在を消去した”事にはならないのよ。“分霊と封印”により、魂をこの刀に封じ込め、身から引き剥がす事で、魂を持った人間のルカは“存在しない”事になり、本当の意味の“消去”が完了する

 

ルカも同じように錬気刀を構えた。

 

ルカ:あれだけの事が出来た場所、簡単に、ここのコンソールとかで“存在消去”とか1ボタンでなんでやらないのよ

少女ルカ:ここの装置は“誘導”は出来ても“消去”はできないのよ。そんな“自我の律”に反するようなことは出来ないようになっているの。だから、私が直接、“行う”、しかないの

 

ギギギ

 

少女ルカの錬気刀の柄を握る手に力がこもる。

 

ジャキッ!

 

ルカも刀を持つ手に力が入る。

 

ルカ:私だって“消えて無くなる”なんて選択肢、絶対に取れないわ!!

 

ゴゴゴゴ・・・・

 

この空間が大きく揺らぎ始めた。

 

少女ルカ:もう残り時間が少ない! とっとと決着をつけないと、あなたやメイコだけでなく、私までひっくるめて自我の世界と共に“消去”されるわ。“ルカはいなかった”なんて結果になったら、天と地の両方の世界に多大な影響を及ぼすことになるのよ! あなたはもう“自分の消去”から逃げられない! だから! さっさと消えなさい!!

 

少女ルカはルカに刀で襲いかかった!

 

ジジジジジジ

 

お互いの刀に“オーラ”の刀身が現れ、鍔迫り合いを起こしていた!。ルカは信じられないほど機敏に対応し、オーラの刀身を作って対応できた

 

ルカ:くぅっ・・・がくぽさん・・・リンさん・・マスター・・・感謝するわ・・・・

 

少女ルカ:ぐぅっ! なんて素早い動き・・・それにお前の刀も“オーラ”の刀身を作れるんだったな・・・・。どうしても消えるつもりはない、そういうことか!

 

ギギギ!

 

ルカ:当たり前よ!!

 

ギギギギギギギギギ!

 

少女ルカ:消えろ!

ルカ:いやよ!

 

シャキーーーーーーーーーーーン!!!!!

 

錬気刀と思われる柄だけの刀の“刀身のあるはずの部分”が、二人の体を横に横断していった。

 

少女ルカ:え・・・・

ルカ:な・・・なんで・・・・・・

 

メイコ:錬気刀は、あなた達だけの専用アイテムじゃないのよ。そして、私の策は、これで完結するの。分霊し封印せよ!

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少女ルカとルカはその場に倒れ、青白い霧1個と霊魂と思われる2つのモノが、メイコの錬気刀に吸い込まれていった。

 

バタッ! バタッ!

 

二人はその場に倒れ込んでしまった。魂が抜けたのだから当然といえば当然だ。だがメイコの行動はそれだけではなかった。持っていた錬気刀を掲げて叫んだ!

 

メイコ:守護神・無垢の『コス・モス』はそのまま封印! 残りの2つのルカの魂よ! 融合せよ!

 

そう叫び終わると、メイコの錬気刀の周りに2つの青白い光球が出現し、刀身のあるべき所を上に向かって回転しながら登っていき、刃先のあるべき所で合体して、1つの青白い光球に変わった。

 

そして同時に、少女ルカの体とルカの体が半透明になり、近づいていき、そして、1つの“少女のルカ”に変わった。目つきから判断して、あの少女ルカではなく、10年前、世界をスプリットさせた張本人の“少女のルカ”だった。

 

メイコ:これで最後よ! 霊魂注入!!!!!!

 

メイコは光球が付いたままの錬気刀の刀身があるはずの部分を倒れている少女のルカに突き立てた! 光球だけが少女のルカに吸い込まれていく。

 

少女のルカ:う・・・・・・・うーん

 

少女のルカは目を覚ました。

 

少女のルカ:あの、えっと、お姉ちゃんは誰?

メイコ:大丈夫よ、ルカちゃん、これは夢よ。だからちょっとだけ目をつむっていてね

少女のルカ:うん

 

少女のルカが目をつむると、体が半透明に変わった。

 

メイコ:神社のモニターの皆さん、これでわかったでしょ、全ての事が

 

1つのモニターが天の世界の木之子神社を映し出していた! そこにはリン、レン、がくぽ、め〜こ人形がいた。実は、自我の世界に入ってから、ずっとモニター1つが、全ての映像を神社の隠しモニターに映し出していたのだ。

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(木之子神社)

 

リンは泣いていた。

 

リン:えっく、えっく・・・・ルカさん、やっぱり戻ってこられなかった・・・・約束破った・・・・

レン:やっぱりおまえが最後の黒幕だったか

がくぽ:一体どこで“錬気刀”を手に入れたのだ・・・

 

メイコ:もうこっち側の世界の律が無くなりかけているの、手早く説明するからよく聞いてね! まず私の策は“二人のルカを元の少女のルカにし、10年前まで全てを戻す”事。そのために、黒幕になって二人のルカを騙していた事になるけど、世界のスプリットを阻止するためなんだから、もう良いわよね

がくぽ:致し方ないだろう。それが最前の策だ

メイコ:この子は、10年前のスプリットする手前の少女のルカ。この子の決断が全ての始まりだったから、この子に力を与えた守護神・無垢の『コス・モス』は錬気刀に封印したわ。これで“世界のスプリット”は起こらない。そして世界は10年前に戻り“スプリットしないまま継続された世界”に変更されるわ。そこにいたルカとあなた達以外の人々はそこで展開される歴史に近い形でやってきてその商店街を作っていく事になります。時間軸に関しては10年の年月が急速に経過することになるわ

 

レン:では我々は当然、“人間として存在しない”事になるわけだから、消えるのか

メイコ:いえ、あなた達だけが“事件の事を覚えている生き証人として、今のままの人間の姿で、その商店街で暮らすことになります。これ以上、このルカちゃんのような人間を生み出さない”管理者“として、生きて欲しいのよ

 

リン:じゃあそのルカちゃんはどうなるのよ!

メイコ:10年前のスプリットする直前に戻します。この子がどう生きるかは、私にもわからないけど、10年後の今、あなた達とまた同じように会えることを祈ってます

 

がくぽ:ところであなたはどうなるのだ?

メイコ:私はこれからすることや、この錬気刀を使った対価として、存在が消滅します。それが、自我の世界の律との約束。でも大丈夫、そっちには“私の分身”である、め〜こ人形がいます。彼女が新しい“メイコ”になって、生活してくれます

レン:寂しくなるな

リン:ここまでの事をしてくれて、本当に有り難う

がくぽ:私からも礼を言う。有り難う

め〜こ人形:あ・・・あちし、ほんとうのメイコさまになれるように、がんばるのだ!

メイコ:お願いね。じゃ、そろそろこの子を10年前に送るわ。モニターもここまで。じゃあね

 

そうしてモニターは消えてしまった。メインストリートを歩いていた沢山の歩行者や店先の人物、建物もどんどん消えていった。そして神社の4人と喫茶店「LEO」、刀剣屋、鏡音建設、リキュールショップMEIKOだけになった。どうやらこの4人とその関連のものだけ残り、あとはいったん10年前に戻るようだった。

 

レン:これから始まるのか

リン:そうね、『本当』のきのこ駅前商店街の歴史が始まるのよ

 

***

 

(自我の世界・玉座の間)

 

自我の世界の声:ではメイコよ、汝の存在を使い、この少女を10年前の実家に戻す事にする。いいか?

メイコ:お願いします

自我の世界の声:ではいくぞ!

 

メイコと眠っている少女のルカの姿が消え、そして、自我の世界も消えていった。

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(10年前・ルカの実家)

 

ルカの母:ルカ! 起きなさい! 食事の途中で寝ちゃダメでしょ!

少女のルカ:う〜ん、あ、お母さんごめんなさい

ルカの母:もう、ちゃんとご飯食べるんですよ

少女のルカ:はーい

 

TVのアナウンサーの声:別路線への吸収が決まった元・木之子電鉄の始発駅“木之子駅”の解体と改築、及び、駅前商店街の再開発が始まりました。駅は栗布団電鉄の駅として再利用され、大手路線への再編に伴い、商店街の再開発は、地元住民だけでなく、各地域からも“商店街再生”を掲げて集まってきているそうです

 

少女のルカ:お母さん、この駅、前に行ったことあるよね、お祭りの時だったっけ?

ルカの母:ああ、木之子駅ね、よく覚えていたわね。そうよ、旅行の途中でお祭りの時に寄ったわよ。あなたお店の人に水飴貰ったり、神社の出店でいっぱい食べ物買っていたわね〜。凄い食いしんぼさんだったわよ?

少女のルカ:そうだったの、えへへ。でも、ここ“解体”されちゃうんだね。寂しいな

ルカの母:あ、でも、大きい電車会社さんが駅を買い取ってくれて、新しい“木之子駅”として作り替えてくれるそうよ。商店街も昔のお店はいったん全部店じまいして解体されちゃうけど、新しい“駅前商店街”として再開発が始まるみたいね。地元の人だけじゃなくて、いろんな所から、ここの再開発に参加してくれるみたいよ

少女のルカ:ふーん、じゃあ、木之子駅とお店、無くならないんだ。よかった

ルカの母:ルカも大きくなって独り立ちしたら、ここに住みたい?

少女のルカ:うん! そしたら、また新しいお店の人に水飴貰うんだ!

ルカの母:あらまあ、ふふふ、ルカはやっぱり食いしんぼさんね

 

この“前にスプリットした”出来事のこの瞬間、今回は無垢の『コス・モス』がいないため、世界のスプリットはされずに歴史は進み始めた。どうやら“スプリットする原因の事件”そのものも変更されたらしい。前は“木之子駅は無くなった”ということだったが、“木之子駅は大手電鉄に吸収されて、改築された”に変わっていたからだ。

 

TVのアナウンサーの声:では、木之子駅前にいるリポーターさん! そちらはどういった感じなんでしょうか?

リポーター:はい、こちら改築途中の木之子駅前です! 現在工事途中と言うこともあり、駅舎には入れませんが、駅前商店街の方の再開発は急ピッチで進められております。では・・・あ、あの男性に聞いてみることにしましょう。あの、ちょっと宜しいでしょうか?

男性:あ、いいですよ

リポーター:あなたはここの再開発に参加するお店の人ですか?

男性:おおそうさ! ここで不動産屋始めるんですよ! 全国の皆さん! “亜瑠不動産”を宜しくお願いします!。私“アル”と、この美人秘書がお客様をお待ちしております!

横の女性:ローラと申します。今後とも宜しくお願いしますね

リポーター:ははは、元気のいい不動産屋さんでしたね。それでは、今の時点で完成している所をちょっとリポートしたいと思います

 

リポーター:ここは喫茶店ですね。名前は“LEO”ですか。格好いい名前ですね、開店しているみたいなので、ちょっとお邪魔させて頂きましょう

 

カランコロン♪

 

???:いらっしゃいませ

 

リポーター:あの〜○○TVと申しますが、あなたが店長さんですか?

 

レン:はい。鏡音レンと申します。ここの再開発の様子でもリポートしているんですか?

リポーター:はい。ここのお客さんはもっぱらどういった感じなのでしょうか?

レン:ここの工事関係者がほとんどですね。でも商店街が発展していけば、他の地区からのお客さんでごった返すと思いますよ

リポーター:そうですか。で、ここには他にどんなお店が開店しているのでしょうか?

レン:えっと、私の双子の姉である“鏡音リン”が経営しているここの工事の請負元の“鏡音建設”、ちょっと変わったメイコさんが経営している酒屋の“リキュールショップMEIKO”、ストイックな学歩さんが営んでいる刀剣屋“神威”、それと建設が始まっているところでは、アルさんとローラさんの“亜瑠不動産”ってのもありますね。それとお店じゃないですが、銀杏の木で有名な木之子神社ってのもありますよ

リポーター:ああ、あの元気がいい方のお店ですね。あ、お忙しい中有り難う御座いました、それでは失礼致します

レン:いえいえ、こちらこそ

 

バタン

 

レン:(始まったか。確かに地の世界の歴史とも、天の世界の歴史とも違う歴史を歩み始めたのだな。それよりなにより、守護神だった私とリンとがくぽ、人形だったメイコさんの代わりのめ〜こ人形すら、“人間”としての生活を始められたとは・・・。凄い力だな、歴史というのは・・・)

 

ゴゴゴゴゴ

 

レン:なるほど、歴史が“急速に“進んでいくのか。外は凄い勢いで店が建ち並んで、人間も増えているようだな。おそらく我々関係者の店だけ、オミットされて時間が過ぎているようだ。次はあの中の誰がココに来るんだ?

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(時間軸で10年前から4年経過したある時間)

 

カランコロン♪

 

レン:いらっしゃい。って、ミクさんですか

ミク:あの・・・私ここにくるの初めてなんですが、何で名前を知っているんですか?

レン:あ、すみません、あなたによく似た“同名”の知人を知っているもので

ミク:ふーん、世の中にはそっくりの人間は3人いるって聞いたことあるけど、やっぱりそうなんですか。あ、私、初音ミクと申します。今度この商店街に、“初音青果店”って八百屋を開店させていただきました。宜しくお願いしますね

レン:こちらこそ宜しく

 

カランコロン♪

 

レン:いらっしゃいませ

カイト:こんにちは。私、工藤カイトと申します。今度この商店街に建てる、アイスクリームチェーン店“BLUE MUFFLER”の木之子駅前商店街店、の店長を務める事になりました。これからも宜しくお願いします

レン:こちらこそ、宜しくお願いしますね(そうか、こういう流れになるのか)

ミク:あ、私、ミクと申します。この商店街で八百屋を始めるんです。(ぽっ)

カイト:あ、どうも。私、カイトと申します。アイス屋の店長です。これからも宜しくお願いします

ミク:よ、よ、よ、宜しくです!

カイト:?(可愛くて面白い人だなぁ。今度お茶に誘ってみようかな)

レン:(あの歴史とはちょっと違うのか。ミクさん、今度こそ頑張れよ!)

 

ゴゴゴゴゴ

 

(時間軸で10年前から6年経過したある時間)

 

カランコロン♪

 

レン:いらっしゃいませ。こんにちは

プリマ:あ、こんにちは

アン:こんにちはデス! 私、アンと申します。そしてこっちがアイボウのプリマデス!

プリマ:プリマです。宜しくデス

アン:今度、この商店街の英会話教室“E.M.T”で講師として働く事になりましタ! これからも宜しくデス!

プリマ:どうぞ宜しくお願いします

レン:こちらこそ宜しく(この二人は同じか)

アン:それでは、アイサツ回りがありますので、今日はこれデ

プリマ:では

レン:はい、挨拶回りご苦労さんです

 

ゴゴゴゴ・・・・

 

レン:次は何年後だ?。

 

(時間軸で10年前から9年経過したある時間)

 

カランコロン♪

 

レン:いらっしゃいませ。

ミリアム:こんにちは、今度この商店街に、ショットBAR“Clear Voice”を開店しました、私は店長のミリアムと申します。宜しくです

レオン:今度、ここでゲーセンの“レーザーキャノン”っての開店したんだ、俺は店長のレオンだ、宜しくな!

レン:こちらこそ宜しくお願いします

ミリアム:私、今日はまだ何も食べてないので、ちょっと食べてから挨拶回りを続けようと思います。すいませんが、ブレンドのサンドイッチサラダセットをお願いします

レオン:俺っちも同じものお願いね

レン:かしこまりました(ミリアムさんの食欲と、レオンさんの陽気さ、これは変わらないんだ)

 

二人は食事をした後、挨拶回りを続けるため、清算して帰っていった。

 

ゴゴゴ・・・・

 

レン:これでよく知った顔は終わりか。ということは、残りは“彼女”一人。さて、どうなるんだ?

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(時間軸で10年経過した日・喫茶店“LEO”)

 

レンはあらかじめ、リンとメイコとがくぽを店に呼んで置いた。

 

リン:いよいよなのね・・・・

レン:そう、今日は、あの世界で“彼女”が来た日

メイコ:じかんじくどおりなら、きてくれるはずなのだ

がくぽ:さて、あの世界の通りに、ここに来てくれるのだろうか?

レン:正直、確証がないから、ドキドキものだ

リン:商店街の方はほぼアレと同じになったから、大丈夫だと思うけど・・・

がくぽ:だが、元の世界の新しい歴史で動いている関係で、正直、私にもどうなるかわからん

 

カランコロン♪

 

女性:あの〜、すみません、外の張り紙を見て来たんですが、ウェイトレスのアルバイト、面接していただけますか?

リン:!!!!!!

リンは目に涙を一杯に溜めて、女性に抱きついた!

 

リン:お帰り! ルカさん!!!!!!

 

ルカ:あの、確かに私、巡音ルカっていうんですが、失礼ながらあなたとは初対面なんですが・・・・

リン:あ、ごめんなさい、よく似た同名の知人を知っているもので、勘違いしてしまって

ルカ:あ、そうなんですか、それはこちらこそ失礼しました

 

ルカ以外の全員:(そっか、あのときの記憶、やっぱり無いんだ・・・)

 

ルカ:あの、面接・・・

レン:あ、ごめんなさい、じゃあ履歴書見せてね

 

ルカは履歴書をレンに見せた。レンは見ているふりをした。

 

レン:あ、コーポ・オオマにお住まいで、北海道からこちらにいらしたんですか

ルカ:はい。その、幼い頃、再開発する前のココに家族と来て、忘れられなくて。そして10年前の報道を見てから、大学はこっちにしようと思って受験して受かって、この街に来たんです。初めての一人暮らしなので、まずはアルバイトしようと思ってここに来ました

 

レン:(そういうストーリーに変わったんだ。なるほど)

ルカ:それで、どうなんでしょうか?

レン:はい、合格です。すぐに勤務出来る?(まぁ断る理由はないけどね)

ルカ:はい! 有り難う御座います! すぐに入れます!

レン:じゃあ、あのスタッフルームでこれに着替えてね。サイズはボクの見立てなんだけど、合わなかったら言ってね

ルカ:はい!

 

ルカは着替えてきた。

 

ルカ:凄いです! ピッタリです

レン:それは良かった(当たり前だよね。それ、君があの世界で来ていたサイズと同じものだから)

 

がくぽ:よかったな、リンさん

メイコ:よかったですね、リンさん

 

リンは半分泣きじゃくって、答えた。

 

リン:はい。嬉しいです・・・

 

カランコロン♪

 

ミク、カイト、アル、ローラ、ミリアム、レオンが入ってきた。

 

ミク、カイト、アル、ローラ、ミリアム、レオン:こんにちは〜、お! 新顔だね!

 

ルカ:いらっしゃいませ!

 

(了)

 

***

 

たこルカ:えっぐえっぐ・・・遂に最終回です!

はちゅね:えぐぐぅ・・・ルカさんが新しい世界の喫茶店にちゃんと帰ってきてくれました!

 

たこルカ:これでこのお話は終わりになります。それにしても最終回は長くなりましたねー

はちゅね:まぁ、あの展開では、そうなりますね。でも、よかった。ちゃんと終えることが出来た・・

 

たこルカ&はちゅね:それでは皆さん、お付き合い、有り難う御座いました〜! またの機会にお会いしましょうね〜!

 

CAST

 

巡音ルカ(ルカ)&たこルカ:巡音ルカ

鏡音レン(レン):鏡音レン

鏡音リン(リン):鏡音リン

初音ミク(ミク)&はちゅねみく:初音ミク

咲音メイコ(メイコ)&め〜こ人形:MEIKO

工藤カイト(カイト):KAITO

神威学歩(がくぽ):神威がくぽ

 

プリマ:PRIMA

アン:SWEET・ANN

ミリアム:MIRIAM

アル:BIG・AL

ローラ:LOLA

レオン:LEON

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第2作目の”ようこそ! きのこ駅前商店街へ!“シリーズの最終話です。  ☆感動の大団円です! マスターの“レン”、ウェイトレスの“ルカ”が営んでいる喫茶店“LEO”を中心に、ボカロ達の日常が展開・・・していたSDF系ジュブナイルです。
○最後の大勝負です!
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タグ
Vocaloid ボカロ小説 巡音ルカ 鏡音リン 鏡音レン 初音ミク KAITO MEIKO 神威がくぽ 海外組 

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