ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎 #2 温泉郷の事情
[全3ページ]
-1ページ-

(前回の問題部分)

 

(文章)

カオリ立つハスの花の茎に集まるは

スズを付けた花咲くオトメ。

今、マナビヤに通った日々を思い出す。

彼女の想い人は同じ村のウミンチュ。

二人が寄り添う砂浜に波音、再びメグル。

 

(スタンプカード)

 

ハンコ欄

1→2→3→4→5→6→7

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

 

ハンコ所持者

咲音 女威子 ハンコ→@

巡音 瑠香 ハンコ→A

鏡音 鈴 ハンコ→B

神威 学歩 ハンコ→C

工藤 海斗 ハンコ→D

鏡音 蓮 ハンコ→E

-2ページ-

<ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎 第2話 温泉郷の事情>

 

(ミクの部屋)

 

ミクはしばらく、文章が書かれた紙と“にらめっこ”していた。ノートPCを使えず、いつもの『ググる』が使えないため、頭をフル回転させていたのだった。

 

ミク:うーん・・・ミクミクミクミク・・・うむむ・・・ミクミク・・・むむむ・・・ミクミクミク・・・

レン:すいません、あのミクさん? その“ミクミク“ってなんですか?

ミク:ミクミク・・・あ、これ? これね、私が考えたり仕事モードになると出る『口癖』なの。気にしないでね

レン:はぁ(気になるよな、やっぱり・・・)

ミク:ミクミク・・・う〜ん・・・ミクミク・・・

 

そしてしばらくすると、いつも持っているメモに色々書きながら、色々文字を書いては“名刺”と“並んでいる6人”とを見比べて、メモにどうやら最終的な解答を書き終わったのだった。

 

ミク:ふ〜、謎は全て解けました。これから1つ1つ説明しながら解答を作っていきます

メイコ:(さーて、お手並み拝見)

 

ミクの解答編が始まった。

 

ミク:まずワードの抽出ですが、これはもうこの文章で一番気になる、「漢字で書けるのにカタカナで書いてある7個」に限定しました。ちょうどハンコを押すところも7個ですし

ルカ:なるほど

 

ミク:1つ目のワードは『カオリ』。これは漢字では前後関係から『香り』と書くのが妥当だと思います。だから漢字で『香』が付く方は、『巡音 瑠香』さん。そしてこの『ルカ』さんは、最初に玄関で自己紹介したあなた、女将さんです!

ルカ:私なのね。では、はい、2番のハンコ

 

ポチ

 

Aのハンコが1番目の欄に押された。

 

ミク:次に行きます。2つ目のワードは『ハス』。これも同じく『蓮の花』と考えられるので『蓮』と考えるのが妥当な選択。この字がついているのは、『鏡音 蓮』さん。この『レン』さんは、最後に自己紹介したあなた、経理担当の方です!

レン:なるほど、ボクなんですね。はい、6番のハンコ

 

ポチ

 

ミク:次は3つ目のワード。これは『スズ』。前後の文脈から考えて、『鈴を付けた』が妥当。だから『鈴』です。この字が名前にあるのは、『鏡音 鈴』さん。これは、玄関で自己紹介したあなた! 若女将さんです!

リン:次は私なのね。はい、3番のハンコ

 

ポチ

 

ミク:4つ目のワードは『オトメ』。これはもう『乙女』しかないでしょう。『乙』はないから、『女』で見てみると、該当者は、『咲音 女威子』さん。つまり大女将さん、あなたです!

メイコ:私なのね、はい、1番のハンコ

 

ポチ

 

ミク:5つ目のワードは『マナビヤ』。これはちょっと思い出すのに時間がかかったけど、漢字では『学舎』。つまり『学』の文字で調べると、『神威 学歩』さん。つまりあなた、夕食で自己紹介した、板長さんです!

学歩:わたしなんですね、はい、4番のハンコ

 

ポチ

 

ミク:残り2つです。6つ目のワードは『ウミンチュ』。これは琉球方言で『海人』と書きます。海がキーワードなので、該当者は『工藤 海斗』さん、デザートの説明で自己紹介したパティシエのあなたです!

カイト:ボクなんだね、はい、5番のハンコ

 

ポチ

 

ミク:最後の7つ目のワードは『メグル』。これは文脈から『巡る』しかありえません。そして7つ目で初めて『重複のハンコ』が出てきます。該当者は『巡音 瑠香』さん、つまり1番目と同じく、女将さんです!

ルカ:また私なのね、じゃあ、最後のハンコ。2番よ

 

ポチ

 

ミク:これで終了です。答えは、『AEB@CDA』です!

 

メイコ:・・・・・・素晴らしい知識と推理力、そして並はずれた記憶力と洞察力。そう、正解です

ルカ:あんなにさらっと自己紹介していたのに、覚えているなんて・・・・

ミク:記者って、職業柄、何気ない事にも気を配っているんですよ。良くも悪くも、ね

カイト:でもそれだけではない。なかなか肝が据わっていると思うよ。こんな不躾な事されたら、怒って帰るのが普通だからね。実際、今まで来た記者の半分以上がそうだったから

リン:そして残り半分は、“記憶力の欠如”のため、間違った人物を選んでしまうか、推理その物も間違えて、失格となったのよ

学歩:あなただけが、唯一の合格者だ。おめでとうございます。これでこの温泉郷の『本当の謎』に挑めますね

 

ミク:実は最初から不思議だったんですが、こんな事してまで、この温泉郷の『本当の謎』は「知られたくない」ことなんですか?

メイコ:「知られたくない」というより、「仕事としての取材だけの目的で、謎を解くつもりがない、いわゆる、興味本位や遊び半分で挑んで欲しくない事」なんです。なにせ、『お金』と『人の死』が絡んでいる事ですからね

ミク:ちょっっっ! それって“警察沙汰”なんですか!?

ルカ:違いますよ。殺人じゃなくて、『人の永眠』と『遺産相続』の事なんです。だから警察は一切関係ないですし、事件になるような事も起こっていません!

リン:その道の専門家でも処理できない、ちょーーーっと、難しい問題が出て来ちゃいましてね。それであなたのような方を捜していたのですよ

ルカ:詳しくは明日の朝食の後、午前9時に、この街の主要メンバーを揃えて談話室でご説明致します。今日は色々お疲れだと思いますから、ごゆっくりお休みくださいませ

 

メイコ:それと今日、いらっしゃってからの当方側の不躾な対応、本当に失礼しました。理由の方、ご理解頂けたようですが、改めてお詫び申し上げます

 

ミク以外の全員が頭を下げた。

 

ミク:ま、まぁ、理由はわかりましたから。では、これから休ませていただきます。まだちょっとドキドキしていますが、とりあえずゆっくり寝させて貰います。それでは明日を楽しみにしてます

メイコ:今日はご協力有り難う御座いました

 

そうして、宿の6人は退室した。

 

(ミクの部屋)

 

ミク:許可は下りたから原稿書けるけど、それにしても“遺産相続”・・・。こういう謎解きが関係する事って・・・やっぱ、アレしかないわよね。まぁいいわ、推理映画みたいな展開だけど、やるしかないわ! あ〜でも、もう疲れたから、やっぱ今日はもう寝ようっと

 

こうして電気を消した後、セットされていた布団に寝転がって、少しうだうだしていたが、それから程なくして、ミクは寝てしまった。

 

(スタッフルーム)

 

各自、なにやら電話をしていた。

 

メイコ:あ、アルさん、ついに謎を解いてくれそうな人、見つけたよ! 明日説明するから、午前9時にウチの談話室に来てね。店は臨時休業にしておいてよ、やっとこ見つけたんだから

ルカ:ミリアムさん!? 例の件、謎解けそうな人見つけたから、明日午前9時にうちの談話室集合ね! 休憩所は臨時休業ね

リン:あ、レオン! やっとこ謎解きの許可が下りた人が見つかったのよ! 例の件だから、明日午前9時にうちの談話室集合ね!店は臨時休業にしておいてよ!

レン:あ、大三軒のアンさん!? やっとこ例の件の人、見つかりましたから、明日午前9時にうちの談話室集合です! プリマさんとローラさんにも伝えて置いてください! それとお店は臨時休業にしておいてください

 

学歩:これで関係者は全部か。いやはや、なんとも。見つかったら見つかったで、それなりに大変ですな

カイト:でもやっとこ謎に挑める人が見つかったんだ。なんとかしてくれる事を祈ろう

メイコ:『記者』ってのが引っかかるけど、まぁ仕方ないか。探偵ですら投げ出した案件だしね

ルカ:これ以上、ここの悪い噂が噂として広まるのは、どうしても避けたいですからね。だめだった記者連中、遠回しに相当悪く書いているみたいだから

メイコ:とりあえず私たちは片づけしたら寝ましょう。明日はお客さん入っていないから、臨時休業ね。本格的にアノ謎に取りかかりましょう!

メイコ以外一同:はい!

-3ページ-

(2日目・朝・ミクの部屋)

 

ミク:ふぁーーーーーーあ、よく寝た。あーあ、今日は本当の謎の公開なのよね〜。まぁ朝ご飯食べよ

 

ミクは着替えて、支度してから、電話で朝食の用意をお願いした。暫くしてから朝食が運ばれてきた。

 

ミク:へえ〜、『豪華な定番』なのかな。麦飯、とろろ、味付け海苔、お新香に、長ネギのみそ汁。あ〜なんか食事だけは少なくても幸せだわ〜。いっただっきまーす!

 

パクパクパクパク

 

食欲は安定して旺盛なミクさんだった。

 

***

 

(2日目・午前9時・談話室)

 

昨日のメンツと、昨日スタッフが連絡をしたメンツ、そしてミク、全員が揃った。

 

メイコ:では、この温泉郷の『例の謎』をミクさんにご説明致します。今日からの参加組の皆さん、宜しいですね?

アル:あの問題を完全解答したんだ、問題あるまい

ミリアム:異議なしよ

レオン:同じく

アン、プリマ、ローラ:意義なーーーーーし!

 

メイコ:では

 

そういうと、大きめの紙切れ1枚を漆塗りの木箱から出して、談話室のテーブルに広げた。紙はボロボロではないのだが、新しくもないような外観だった。

 

***

 

遺言

 

温泉郷の皆、これまでよく頑張ってくれた。その最後の感謝の意を表す意味で、以下に示すとおりに、私の財産を分与する。

 

但し、以下の内容を完全に説明でき理解した者が現れるまでは、私の遺産には一切、公私共に手を着けてはならないものとする。

 

きのこ温泉郷 領主    咲音 望日郎

 

内容

 

いつもは右から左へ眺めていたが、今日は、左から右へ大地を眺めてみる。“花 又や 朝 変わらん”

いつもは上から下に目線を動かすが、今日は下から上へ空を見上げてみる。“青い上”だ

 

をンウワインイご ねむるもせンウ えワインイい゛へえ るむワイここ ろンウワエへ ワイみ

 

ねれ゛ヤエら゛さ よンウらす ワエへい゛へさンウく

 

みれワエへす まりい゛へさンウく

 

むへワエへす るちンイい゛へさンウく

 

るちンイい゛へさンウくな あれさワウ゛ちへワウたンインエへさゆせご るへかンイす ねろみ

 

るちンイい゛へさンウくな くちンイれむたンイむて げンウワエへろ゛へ お るいワイみ

 

ンウれさゆをす ワウ゛ちンイえくい゛へさンウくワイ゛き るいワイみ

 

るちンイろンウワウ゛た かんそ

 

ゆてろ゛やさて ンエみ

 

ろ゛ンオヤイて えりめり

 

さらきけえワインイえ あ゛るへえ゛らす ンウもた

 

***

 

ミク:ミクミクミク????・・・こ、これ、日本語なんですか??

メイコ:ひらがなカタカナ、あとちゃんとした文章部分で構成されているのですから、日本語なのでしょう。ちなみにこの当人である“咲音 望日郎”(さきね ぼうかろう)は私の祖父です。ちなみに両親は、私が幼い頃に交通事故で亡くなりました

ルカ:親戚に当たる、私、そしてリンさんレンさん姉弟が、学校に行きながらも協力してくれているんです

リン:こういう境遇でありながら、何故、望日郎様は、こんな内容の遺言を残したのか、まずそこから解らないのです。確かに遺産はそれ相応の額になると思われます。でも、わかるまで分けるなというのは、いくら何でも・・・・

 

ミク:とにかく、今の段階では『全部意味不明』ですし、これは遺言の原文です。この内容をメモしていいですか?

メイコ:構いませんが、お解りの通りこれは遺言ですので、原文を、ネットに繋がったパソコンなど一般公開されてしまう危険性がある所に絶対に打ち込まないでください。メモ用紙など、必要なものは私たちが用意します

ミク:わかりました

 

こうしてミクは、この意味不明の遺言を、《正確に》メモに書き留めた。

 

ミク:(ミクミク・・・しかし、なんてわけがわからない文なのかしら・・・)

 

ミク:書き終わりました。これから解明に入りたいと思うのですが、この方の情報をある程度教えていただけると、ありがたいのですが

 

メイコ:そうですね、私の祖父は意外にもパソコンを使えました。特に表計算などは経理知識の関係で、晩年よく使ってましたね。それと老化防止等の意味合いなのか、パズルが好きでした

ミク:あー、だから謎掛けの遺言を残されたとも考えられるのですね

ルカ:それと若い頃、軍の暗号解読担当をしていたとも仰ってました。だからパズルが好きだったとも言えます

ミク:なるほど、それも関係しますね

メイコ:あ、それと、幼少の頃の『学問』には厳しくて、宿の手伝いをしながらでも、読み書き等は厳しく教えられました。幼稚園くらいの年齢の時の『ひらがなカタカナの50音表』は、知らないと宿の仕事は出来ないということで、しっかり教えられましたね

ミク:なるほど、50音表ですか

 

ミクは望日郎の情報を事細かにメモしていった。

 

ミク:(ミクミク・・・暗号解読・・・ひらがなカタカナの50音表・・・なんかひっかかるな・・・)

 

ミク:他にはありませんか?

 

ミリアム:えっとこの宿以外のここのメンツは、子供の頃遊んで貰った程度の思い出なので、『人となり』までは・・・。でも子供が好きでしたね。ここの全員が幼少の頃に遊んで貰った思い出を持ってますよ

レオン:そうですね。うちのコリントゲームとか射的の技術なんかは、考えてみれば、その頃の望日郎おじさんに教えて貰ってましたね

ミク:なるほど、子供が好きで、皆に愛された人物だった・・・と

メイコ:いかがでしょうか? 何かヒントに繋がる事でもありましたでしょうか?

ミク:まだ情報を色々解析していないので、なんとも言えませんが、たぶん、これらは何かに関係していることだと思います。ただ時間がかかりそうですね。取材期間までに終わるかわからないのですよね、困ったな

メイコ:あ、それなら大丈夫です。あなたから頂いた紹介状に書かれてあった上司様にお電話を差し上げまして、取材期間を長めにしてもらうように伝えておきました。帰りのチケットはこちらで払い戻しして、その払戻金はあとでお渡しいたします

ルカ:あと、当然の事ですが、普通に宿泊していただくレベル、つまり内容と期間になりますが、食事と宿泊費はこちら持ちとさせていただきます。あと、情報を内密にしたいので、ミク様がいらっしゃる期間は宿泊予約をお取りしませんので、ご安心を

 

ミク:(さすが、プロ。というか、そこまでしてこの謎を解いて欲しいのね)

 

リン:ただ、これまでの探偵さん等、結局解けなくてお帰りになってしまう場合は、遡及して代金を上司様にご請求いたしますので

ミク:ははは、さすがちゃっかりしてますね。まぁ解りました。こちらも一応取材費を用意してますから大丈夫です。では早速、これから部屋に戻って、解析を始めたいと思います。あ、そういえばネットの使用の事ですが・・・

メイコ:先ほどの事を守っていただければ、無線LAN環境で繋げられますので、ご利用くださいませ

ミク:なんか、《進んだ》宿ですね。ネット環境もあるんですか

メイコ:先ほどの通り、祖父はパソコンが使えたので、晩年は温泉関係の情報などをネットから得る事もしておりました。これも祖父のアイデアなんです

ミク:凄いおじいさまだったんですね・・・

 

こうして『謎に関する説明会』は解散となった。任を得たという責任感から、ミクは早速自分の部屋に入り、謎の解明に入ることにした。部屋には既に、お茶とお茶菓子が届いていた

 

ミク:さすが宿のプロね。さーて、どこから手を着けて良い物やら・・・・・・ミクミク・・・

 

(続く)

 

***

 

CAST

 

<雑誌“ゆけむり”編集部>

温泉雑誌の記者・初音ミク(ミク):初音ミク

 

<温泉宿“巡咲庵”(じゅんしょうあん>

大女将・咲音 女威子(メイコ):MEIKO

女将・巡音 瑠香(ルカ):巡音ルカ

若女将・鏡音 鈴(リン):鏡音リン

板長・神威 学歩(がくぽ):神威がくぽ

経理担当・鏡音 蓮(レン):鏡音レン

パティシエ・工藤 海斗(カイト):KAITO

その他のスタッフ:全部、はちゅねさん

 

<きのこ温泉郷>

休憩所“透音”の主・透音ミリアム(ミリアム):MIRIAM

土産物屋“亜瑠”の主人・大場 亜瑠(アル):BIG・AL

射的&コリントゲーム屋“迫楽”の主・迫楽レオン(レオン):LEON

中華料理屋“大三軒”の3人娘・赤の服アン、緑の服プリマ、白の服ローラ:Sweet・Ann、Prima、LOLA

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第3作目の” ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎“シリーズの第2話です。  ☆今回は推理物です ○雑誌記者ミクが取材で訪れた温泉郷で起こる謎解きミステリー!
○序盤の謎解きです
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
342 336 0
タグ
Vocaloid ボカロ小説 初音ミク 鏡音リン 鏡音レン 巡音ルカ KAITO MEIKO 神威がくぽ 海外組 

enarinさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com