そらのおとしもの  外伝  もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。その3(アニメ仕様)
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もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。その3(アニメ仕様)

 

 

今日は神社で夜の秋祭り。

 

「うわぁ〜、今年も盛り上がってるね〜」

 

着物を着た智樹、そはら、イカロス、ニンフ、カオスもやって来ていた。

 

「綿菓子おいしそう、たこ焼きも焼きそばもいいな〜」

「食いもんばっかじゃねえか」

「いいでしょ、別に」

「あんまり食いすぎるとデブに……」

 

智樹が言いきろうとする前にそはらがチョップ体勢に入る。

 

「いや、なんでもないです!」

 

智樹が慌てて前言を撤回しようとする。

 

「…!」

 

智樹はニンフがリンゴ飴を見ていることに気づく。

 

「あ、なんだ欲しいのか?」

「別に!?」

 

ニンフが顔を赤くして否定する。

 

「おーい、イカロス、何かいるんだったら買ってやるぞ」

 

イカロスがひよこの屋台にいるのを見て声をかける。

 

「マスター、これ…」

 

イカロスの腕にはひよこが数多くおり、溢れそうになっていた。

 

「ダメーーーー! 一匹にしなさい!」

 

イカロスはその答えに思わずしょんぼりする。

 

「智ちゃーん、屋台見ないの〜?」

「今いくよーーー!」

 

智樹達が屋台を見て回っているとカオスが人ごみ溢れている屋台の側にいることに気づく。

 

「カオス、どうしたんだ?」

「お兄ちゃん、あれ」

 

カオスがその人ごみ溢れる屋台の方を指差し、智樹達が見てみるとそこにはハトがたくさんいた。

 

「なんだこりゃ?」

 

ハトたちが一斉に飛び立つとそのハト達がいたところには一人の男と大量の銃が置いてあった。

 

「いらっしゃい」

「……」

「ねえ智ちゃん、なんか変だよこの射的屋さん」

「店には銃ばかりで景品が一つも見当たらない」

 

そこに守形と秋山がやって来る。

 

「射的屋なのに撃つべき対象物がない」

「先輩、来てたんすか」

「秋山さんも」

「ああ」

「美香子に呼ばれてな」

「祭りって〜、な〜に?」

 

するとどこからか美香子の声が聞こえてくる。

全員がその声のする方を向く。すると美香子は神社の階段の中間地点にいた。

 

「祭りって本来町中が一体となって楽しむものではなくて?」

「会長」

「そこで我が五月田根家では、町中が楽しめるようにと思ってプロの夜店屋さんを呼んでみました〜」

「なんか悪い予感がする」

「ルールは簡単、そのコルク銃でサバイバルゲームを行い、最後まで生き残った一人に豪華景品をプレゼント」

「豪華景品って?」

「これよ、現金(げんなま)一千ま〜ん」

 

美香子はどこからか札束を取り出し皆に見せた。

 

『おおおおおおっ!?』

 

全員が現金1千万を見て、驚きの声を上げた。

 

「なるほど、夢させ買える金額、そう言いたいのだな」

 

守形が銃の一つを手に取る。

 

「ちょっ、先輩!」

「なんか面白そうだね、私達もやろうよ智ちゃん」

 

そはらもやる気であった。

 

(確かに…一千万は魅力的だけど、な〜んか嫌な予感がするんだよな……)

 

そして屋台にいた人達も全員境内に集まった。

そんな中ニンフはどこかに行こうとする。

 

「ニンフ、参加しないのか?」

「別に、興味ないもん」

「俺もやめとくわ。俺がやったら勝つの、目に見えてるし」

 

ニンフと秋山はそれぞれその場を去っていく。

 

「あら〜、負けるのが怖いのかしら〜」

 

美香子が秋山を挑発する。

 

「ああ、怖いよ。けど、負けることは今の俺にはまずありえない。だからやめとく」

 

秋山は挑発をそのまま受け取るも、立ち去って行った。

 

「それでは町内のみなさ〜ん、一緒に思う存分撃ちあって、楽しみましょう〜」

 

すると町内の皆が一斉に散らばっていく。

イカロスも急いでその場から離れていき、その場には主催者の美香子と智樹しかいなくなった。

 

「サバイバルゲーム…始め!」

 

智樹は始まりと同時のコルク弾の嵐に巻き込まれる。

しかし何とかすべてを避けて逃げようとするが……。

 

「待て〜、智坊!」

「公民館のおばちゃん!」

 

智樹はそのあと、八百屋のおばちゃん、魚屋の兄(あん)ちゃん、クラスメイトの女子数名など多数の人間に狙われてしまう。

おまけに……。

 

「お兄ちゃん、待て待て〜〜」

「カオスまでーーーーーー!」

 

カオスも智樹を狙ってきたのだ。

 

「はあ……はあ…、ここまでくれば……」

「甘いわ、智坊〜〜〜!」

「しまった!」

 

公民館のおばちゃんに回り込まれていた。

 

「打ち取ったりーーー!」

 

智樹ももはやこれまでと思った時、どこからかコルク弾が飛んできて公民館のおばちゃんを撃ち落す。

 

「ばっちゃん!」

 

そしてクラスメイトの女子達も撃ち落される。

 

「スナイパーだ!」

「お兄ちゃん!」

 

智樹を狙っていた人達は休戦となり、スナイパーの存在を警戒したが、魚屋のお兄さんが撃たれた。

撃ったのは木の上にいた守形であった。

そして次に八百屋のおばちゃんを狙おうとした時、どこからか別の場所で撃たれた。

 

「! 俺以外にもスナイパーがいるようだな」

 

守形は別のスナイパーが美香子であるとすぐに気づき、お互い隠れた場所を見つけ出す。

二人はまずライフルで互いの弾を撃ち落す。

それが決戦の火蓋を切る形となり、二人は木から降りて一気に接近する。

 

「ひぃいいい!」

「お兄ちゃん、危ない!」

 

カオスが小さい身を挺して智樹をかばう。

守形と美香子は拳銃を用いた格闘術での戦闘に入る。

 

「やるな、美香子」

「あなたもね、英君」

 

二人は接戦を繰り広げる。

 

「腕は互角と見た」

「ならこれで勝負よ」

 

二人は拳銃を捨て、美香子はベアナックル、守形はフォークとナイフを取り出す。

 

「こんなことなら大人しく商店街の人にやられておくんだった〜」

 

智樹がそんなことを漏らした時であった。

 

『きゃああああ!!』

 

突然マシンガンのごとくコルク弾が発射され、参加者全員を巻き込んだ。

 

「お兄ちゃん!」

「美香子!」

 

カオスが先ほどよりも深く智樹を覆い、守形も美香子を庇う。

 

「この世の終わりじゃ、神が儂らを滅ぼしに来たんじゃ〜」

 

その犯人はイカロスであり、イカロスは空から少し大きめのマシンガンで撃ってきたのだ。

イカロスは倒れている人達の山へと降りる。

 

「こら!」

 

イカロスが降りると同時に智樹はイカロスを撃つ。

 

「やりすぎだ! やりすぎ! お前はもういいから、おとなしくしてろ!」

「はい、マスター」

「それじゃあ私も待ってるね、お兄ちゃん」

 

それぞれ撃たれたため、イカロスとカオスはその場を去っていく。

 

「しかしイカロスのおかげでかなり人が減ったな〜」

 

智樹の周りにはイカロスに撃たれて倒れる人ばかりであった。

 

「これってホントに狙えるんじゃないの? 一千万! よーし、いっちゃえーー!」

 

智樹は本気で1千万を狙うことにした。

それと同じころ、イカロスとカオスは邪魔にならないように少し離れた場所に飛んで移動していた。

飛んでいると大きな木の下にはエンジェロイド服になっていたニンフがいた。

 

「ニンフお姉様」

 

イカロスとカオスがニンフの側に降りてくる。

 

「ふ、どうだった? 地上を派手に攻撃した気持ちは?」

「ニンフお姉様!」

「懐かしかった?」

「え?」

「しょうがないな〜、記憶も思考もプロテクトされてるんだっけ〜。

だったら私が思い出させてあげる。ウラヌス・クイーンと恐れられ、シナプスを震撼させた貴様の真の姿を!」

 

ニンフはイカロスの腹部に蹴りを入れる。

イカロスは吹き飛ばされて木に激突する。

 

「イカロスお姉様! ニンフお姉様! なんで?」

「なんでって今言ったでしょ。思い出させるためよ。

どう? 何か思い出したかしら? ウラヌス・クイーンさん」

「私は…愛玩用エンジェロイド…タイプα」

「愛玩用? 笑わせないで」

 

ニンフがイカロスに近づいてイカロスの顔に足を押し込める。

 

「っ!」

「お姉様!」

「カオス、あんたも命令されてるでしょ。アルファーをシナプスに連れて帰るようにマスターに…」

「……!」

「落し物は持ち主に帰るべきなのよ、アルファー」

「それだったら落とし主が直接取りに行くのが筋だろ」

 

そこに秋山がやって来る。

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「秋山……邪魔しに来たの?」

「何度も言ってるだろ。俺が邪魔する気はない」

「そう、だったらこのままアルファーをいたぶるわよ!」

 

ニンフはイカロスを蹴り倒す。

 

「イカロスお姉様!」

 

倒れたイカロスに駆け寄るカオス。

 

「私は電子戦用エンジェロイドタイプβニンフ、そこにいる第二世代型エンジェロイドタイプεカオスと共にあなたを迎えに来たのよ。ウラヌス・クイーン」

「私は愛玩用……」

「まだ言うの!? しつこいわね!」

 

ニンフがイカロスの髪の毛を掴もうとした時、つかもうとした手をカオスが止める。

 

「なんのつもり? カオス」

「ニンフお姉様、もういいでしょ。これ以上、イカロスお姉様を傷つけないで…」

「何言ってるの、カオス。まさか私の邪魔をする気? 私の邪魔をすると言うのはマスターの命令に背くと言うことなのよ」

「………」

 

カオスはニンフの手を思わず離してしまう。

そしてニンフはイカロスを再び木に叩きつける。

 

「ちょっとお仕置きが過ぎたかしら、うふふふ」

「私は…愛玩用エンジェロイド……」

 

イカロスは未だに自分が愛玩用だと言い張る。

 

「いいわ。私のハッキングシステムで記憶(メモリー)プロテクトだけ解いて……」

 

ニンフはそうしようとした時、秋山のある言葉を思い出す。

 

『お前のそれ、失敗するからな』

 

秋山があの時言った言葉はニンフがイカロスを連れて帰ることに失敗すると言う意味である。

 

(あの時、あいつは確かにそう言った。でもなんで? なんで私がアルファーを連れて帰るのに失敗するの?

カオスがいたから? 違う、カオスはデルタが来た後に来たと言っていた。つまりはカオスが原因じゃない。

……原因は………これだ!)

 

ニンフは自分が今しようとしていることがイカロス奪還に失敗したことに繋がると悟った。

 

「(そういうこと……)秋山」

「うん?」

「感謝するわ。私は危うく、私自身の手でウラヌス・クイーンを完全に目覚めさせるところだったわ!」

 

ニンフはハッキングをやめ、イカロスを再び蹴りだす。

 

(ヒントを与えていたとはいえ、気づくとはな……)

 

秋山も少し誤算だったと思った。

しかし秋山はそんな状況にも関わらず余裕であった。

 

(とは言っても別の誤算もあるようだけどな…)

「どう? まだ思い出さないの? ウラヌス・クイーン!」

 

ニンフが何度目かの蹴りをしようとした時、カオスが止めた。

 

「カオス……あんた……命令を無視するの?」

「命令がすべてじゃない……」

「は?」

 

カオスは震えていた。

 

「命令が全てなんかじゃない!」

 

カオスはニンフを投げ飛ばした。

 

「きゃっ!」

 

ニンフは転がりそうになるのを羽を使って体制を整える。

 

「あんた……」

「お兄ちゃんが言ってた。私達には自由に生きてほしいって」

「あんたバカなの? エンジェロイドにとってマスターの命令を聞くのが絶対であって存在意義なのよ!」

「もう嫌なの! 命令だからって、お姉様達が傷つけあうの……見たくない!」

 

カオスの目から涙が流れていた。

 

「カオス…」

(やはりいい子だな)

 

秋山は思わず感服した。

 

「いいわ、あんたが邪魔をするんだったら、あんたを破壊してやるわ。カオス」

「私は…イカロスお姉様を守る!」

 

ニンフとカオスはそのまま空へと飛びあがる。

カオスはエネルギー弾を炎の弾へと変える。

 

「!」

 

カオスは炎の弾をニンフに向けて投げ飛ばす。

 

「甘いわね」

 

ニンフは小規模なハッキングフィールドを展開し、自分に近づいてきた炎の弾を操り、その炎の弾をカオスに返す。

 

「!」

 

カオスは何とか返って来た炎の弾を防ぐ。

 

「じゃあ、これはどう?」

 

カオスは羽を操って、ニンフに向けて刺そうとする。

しかしニンフは再び小規模なハッキングフィールドを展開させ、羽がギリギリ当たるところでハッキングし、羽の攻撃を避けた。

そしてニンフはそのままカオスに近づいた。

 

「え?」

「この程度なの? 第二世代と聞いてあきれるわ」

 

ニンフはカオスを蹴り飛ばし、カオスは地面に落ちる。

 

「カオス!」

「俺の知ってるニンフより戦闘力があるな。いくらカオスが戦闘経験低いと言っても一人であそこまでやるとはな…」

「もう終わり? それだったら、アルファーのところに…」

 

ニンフが降りてイカロスの方を見ると、イカロスは涙を流していた。

 

「え? な、なんであんた涙を流してるのよ。私はプロテクトは解いてないわ! 記憶も! 思考も! 何もかも!」

「お前気づいてたはずだぞ」

 

動揺するニンフに声をかける秋山。

 

「気づいてたって何を?」

「イカロスお姉様のウラヌス・クイーンモードのプロテクトが弱まってたことに……」

 

カオスが立ち上がる。

 

「プロテクトが弱まってる? 確かに少しはその傾向が見られたけど、何も突然…」

「突然なものか。智樹を助ける際にも使ったし、学校に転校生として来た時もラブレター見た時も一瞬だけどなったじゃないか」

「けど、あれは完璧なウラヌス・クイーンじゃ…」

「確かに不完全なものだ。けどなそんな不完全なものは何かの拍子で完全なものとなる。

よくあることさ。今回の場合はお前とカオスの戦闘を見て、その不完全なものを完全にしたんだろうぜ」

 

そしてイカロスの目は赤く染まった。

 

「!」

「記憶(メモリー)プロテクト100%解除、思考(エモーショナル)プロテクト100%解除、可変ウイングプロテクト解除進行中」

「まさか……」

「完全なんてあり得ない。俺も完全じゃないからな」

「自己修復プログラム開始、機能プロテクト解除進行中……」

(完全に目覚めるわ。ウラヌス・クイーンが!)

 

イカロスが翼を広げるとその羽は青く光っていた。

 

「イカロスお姉様…」

「ニンフのハッキング無しで自力解除、やるな」

「自己修復完了、ターゲットロックオン、『Artemis(アルテミス)』発射」

 

イカロスはニンフをターゲットとし、羽からArtemis(アルテミス)を発射させる。

ニンフはすぐにArtemis(アルテミス)を飛んで避けようとする。

Artemisはニンフを追う。

 

「(なぜすべてのプロテクトが解けた? たったあれだけのことなのに……。

奴は目覚めてしまった…)ハッキングフィールド!」

 

ニンフが先ほどよりも少し大きなハッキングフィールドを展開させ、Artemisのコントロールを奪い、ひとまずArtemisを回避することにし、爆破させた。

しかしニンフの気づかないうちにイカロスはまだ1基残していた。

 

「しまった!」

 

ニンフはその1基により地面に落とされる。

 

「……はあっ!」

 

ニンフは地面に落ちた際に顔が泥まみれになったことに気づく。

 

「泥が…私の顔に泥がついてる! いやああああ! 汚い! 汚い! 汚い!」

「そんなもん拭けばいいだろ!」

 

秋山が叱る。

 

「うるさい! おのれ……粉々にしてやる」

「どうぞ」

「パラダイス=ソング!」

 

ニンフの口からパラダイス=ソングが放たれるもイカロスはaegis(イージス)で防ぐ。

 

「aegis……」

「知ってたよな、あれがあること…。冷静さを失ってる証拠だな」

 

そしてイカロスはある矢を召喚する。

 

「あの矢は…。『APOLLON(アポロン)』!」

 

APOLLON、それはイカロスの持つ最強の武器であり、その威力は一国を滅ぼすとされている。

 

「くそ! ああなるのは分かってたとはいえ、やっぱまずいよな! ダーーーークフィーーーールド!!」

 

秋山が急いで自身の体内からフィールドを広範囲に形成する。

 

「これで万が一撃たれても衝撃が漏れることはないが…」

 

しかしもし撃たれたとしたら秋山以外はただでは済まない。

 

「イカロスお姉様! やめて!」

 

カオスがニンフの前に立つ。

 

「カオス……」

「カオスの言う通りよ! 正気か、貴様! この国ごと吹っ飛ばすつもりか!?」

「大丈夫、あなたに着弾したら防御圏aegisを全開にして地上を守るから…」

「そういう問題じゃねえ!」

「そうだ! 撃ったとしたら、貴様もただでは済まない!」

「私はマスターのところに戻る。私は愛玩用エンジェロイドタイプαイカロス……お願い…退いて、ニンフ」

 

イカロスは構えながらも悲しい顔をしてニンフに忠告する。

 

「分かったわよ」

 

ニンフがステルス機能で撤退しようとしたが……。

 

「行くな!」

 

秋山がニンフの手をつかむ。

 

「何よ! 放しなさいよ!」

「放すかよ! お前がこの後、どんだけ今以上の酷いめに遭うか分かっているのによ!」

「今以上の酷いめ……」

「俺の記憶をお前に流してやる!」

 

秋山が自身が体験したこことよく似た世界の記憶をニンフの頭に流す。

 

「! 嘘……こんなの嘘よ…」

 

ニンフはその場で膝をつく。

 

「本当に起こったことだ。こんなことで嘘をついても俺達に得なことなんてない」

「秋山お兄ちゃん?」

「……イカロス!」

 

秋山がイカロスに声をかける。

 

「お前はニンフが退かないのならそいつを撃つつもりか?」

「……はい…」

「けど、俺はニンフがこの後どんなに酷いめに遭うか知ってる。知ってる以上見過ごすわけにはいかない。

だから俺はニンフを退かせる気はない。それにここでニンフがいなくなったら智樹達が心配する。

そんなの、お前だってとっくに分かってるだろ」

 

秋山がニンフに振る。

 

「分かってるわよ……けど……」

 

ニンフはこう言いたいのだ。

 

『エンジェロイドにとってマスターの命令は絶対』

 

しかしそんなことは秋山も何度も聞いている。

 

「イカロス撃てよ!」

「え?」

「お前の気が済まないのなら撃てばいい。俺が既に俺の防御フィールドを張ってあるから、俺達がいる半径20メートル以内にしか爆発の被害は起きない。

だから心置きなく撃て!」

「でも……」

「お前が心の中じゃニンフを撃ちたくない気持ちは分かってる! けど、撃ちたいと言う心もある。違うか?」

「……」

「イカロスお姉様…、ニンフお姉様……」

「カオス、お前は少し離れてろ。イカロス、撃て!」

「!!!」

 

イカロスはAPOLLONの矢をニンフ目がけて放つ!

 

「!」

 

ニンフは秋山に手を掴まれていたため逃げることは出来ない。

しかし着弾する寸前で秋山がニンフを突き飛ばす形でニンフを離す。

 

「え?」

 

そしてニンフのいたところに瞬間移動をし、APOLLONの矢は秋山に直撃した。

APOLLONの爆発はすさまじいものであったが、なぜかその爆発は秋山のいた半径1メートル内でしか起こっていなかった。

 

「なんで?」

「これって…」

「秋山お兄ちゃん!」

「なんだ?」

 

APOLLONの爆発の煙が晴れるとそこには血まみれながらも平然と立っていた秋山がいた。

 

「秋山さん!」

 

イカロスも秋山の元に降りてくる。

 

「気が済んだか?」

「……はい」

「ならこれで終いだ。とにかく……ニンフ。お前も残れ」

「なんでよ、私は…」

「お前もカオスも俺達の友達だ。朋友(ぽんよう)だ」

「朋友って…一体いつの中国の言葉よ」

「さあな。カオス、お前もいいだろ?」

「カオス……」

「私も……お兄ちゃん達と一緒に居たい。良いんだよね?」

「ああ」

「ありがとう」

 

カオスが思わず涙を流しながら笑顔を振舞う。

 

「とりあえず智樹達のところに戻るか」

「あ…でも……」

 

イカロスがあたりを見てみるとArtemisで周りが少し壊れていた。

 

「マスターに大人しくしてろと言われてたのに……」

「何、気にすることはない」

 

秋山が指を鳴らすと壊れたものはすぐに修復された。

 

「これって…」

「俺の力だ。これくらい直したって問題なしだ。それよりそろそろ戻らんと智樹がやばいぞ」

「マスターが?」

「どうして?」

「本物の拳銃で撃たれそうになるからだ」

「「「え?」」」

 

秋山の言葉に一瞬何のことか分からなくなったイカロス、ニンフ、カオス。

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「ねえ、おっちゃん、あと何人くらいかな? 俺もう疲れたよ…」

 

智樹はコルク弾の補充に戻っていた。

 

「ねえ、おっちゃん聞いてる?」

 

夜店のおっさんは黙って一つの拳銃を取り出し、智樹に向ける。

 

「うわああああ!!」

 

夜店のおっさんは拳銃を上に向けて発砲する。

するとその銃から発射された弾は木の枝に直撃し、木の枝が落ちてくる。

 

「おっちゃん、それってもしかして……!」

「ああ、本物(モノホン)混じってた」

「ひょげええええ!!」

「もう一丁くらい混じっててもおかしくねえけどな」

「智ちゃん、み〜っけ」

「!」

 

そこにはなんとそはらがいた。

 

「ずっと探してたんだよ。なのに智ちゃん、どこにもいないんだもん。置いてけぼりだなんて、つまんない!」

 

そはらが持っている拳銃を智樹に向ける。

 

「ひぃいいいいい!!」

 

智樹は先ほどのことがあったのでひどく怯える。

 

「おっちゃん! まさか、あれじゃないよね?」

「ああ、それよ」

 

そはらが撃つも弾は外れる。しかし撃たれた床が壊れた。

 

「あはははは、すごい。最近のおもちゃってよ〜く出来てるね〜」

「そはら、待て! 落ち着けーーー!」

「あははははは」

 

そはらは智樹に置いてけぼりにされた寂しさ+1千万でやりたいことを考えていたために現実逃避に近い状態であった。

そはらは発砲しながら智樹を追いかける。

 

「そはら、その銃絶対におかしいだろ!」

「私、このゲームに絶対勝ちたいの。優勝して一千万もらうんだ」

「やめてーーーーー!」

(もしも一千万もらったら……あんなこともこんなことも……)

 

そはらは妄想に浸り、ますます現実逃避状態になっていった。

そしてそはらは智樹を境内に追い込む。

 

「智ちゃん、他に残ってる人いなかったら、私が優勝だよね」

「そんなに優勝したいのか……一千万もらってどうする気だ〜〜!?」

「それは……それは………いや〜〜〜恥ずかしくて絶対言えない! 智ちゃんのエッチーーーー!!」

 

そはらの撃った弾はまっすぐ智樹目がけて飛んでくる。

 

(誰か、助けて……)

 

智樹がそう願った時であった。

 

「「「トモキ(お兄ちゃん)(マスター)!!」」」

 

智樹の前にニンフ、カオス、イカロスが並び立ち、弾はイカロスの額に着弾する。

 

「「!!」」

 

二人はイカロスが倒れたことに絶句する。

 

「嘘だろ……」

「あ…あ……あ……」

「イカロスーーーーーー!!」

「イカロスお姉様」

「アルファー、起きなさい。あんたこのくらいじゃなんともないでしょ」

「はい」

 

イカロスは普通に起き上がった。

 

「ええええええええ!?」

 

智樹は思わずずっこけた。

そしてイカロスの額にひとまず絆創膏を貼った。

 

「たく、どういう体してるんだお前は…心配させやがって…」

「私達エンジェロイドは拳銃で撃たれたくらいじゃ怪我もしないわよ」

「どんだけ丈夫なんだよ…」

(拳銃で撃たれるよりニンフに蹴られる方が怪我になるって、普通に考えるととんでもない身体能力だよな……)

 

秋山は冷静に分析する。

 

「マスター…あの…皆さんにも後でお話が……」

「え? ああ…」

(言うつもりか?)

「時に、優勝は誰になるんだ?」

「そうだ! 一千万!」

 

残っていたのは智樹とそはらだけ。と思いきや実は夜店のおっさんも参加者であり、智樹と夜店のおっさんの一騎打ちとなったが、夜店のおっさんの勝利で終わった。

 

(ここんとこは変わらないな)

 

少し苦笑いした秋山。

 

「それで、イカロス、話って?」

「はい…」

 

智樹、そはら、守形、美香子の前に立つイカロス、ニンフ、カオス。

そして全員の横に立つ秋山。

 

「実は私……皆さんに…マスターに嘘をついていました」

「嘘?」

「はい…私は…戦略エンジェロイドタイプαイカロス…マスターの嫌いな兵器です」

 

イカロスの言葉に一同が絶句した。

 

「アルファーを責めないで」

「ニンフ」

「アルファーもさっき思い出したばかりなの……」

「だがお前達は知ってたのだろ?」

「う……」

「うん……」

 

守形の言葉に思わず言葉を詰まらせるニンフとカオス。

そこに……。

 

「知ってたさ」

「え?」

 

智樹が知ってたと発言した。

 

「お兄ちゃん、いつ? やっぱりイカロスお姉様がお兄ちゃんを助けようとした時?」

「まあ確信したのはその時だけど、兵器だろうなって思ったのは正直初めて会った時かな……」

「初めて会った時から……」

「けどさ、お前見てて、思うんだ。お前みたいな優しい奴が兵器だなんて悲しいだろ」

「………」

 

イカロスの目から涙が流れていた。

 

「イカロス、お前……」

「アルファーは今までメモリーだけじゃなくて、感情にもプロテクトがかかってたの。

けど、アルファーは自分でそのプロテクトを解いたの。アルファーは元々感情制御は低いけど、泣くことはもう出来るわ」

「そうか……」

 

智樹がイカロスに近づき、涙を拭いてあげる。

 

「女の子の泣いてる顔を見てこんなこと言うのは変だけどさ……よかったな。泣けるようになって」

「はい……」

「これからも俺達と一緒に居てくれよな」

「はい………」

 

イカロスが涙を流し続ける。

 

「お前達もだからな」

「え?」

「お兄ちゃん、いいの?」

「ああ」

「「ありがとう(お兄ちゃん)」」

 

ニンフが顔を少し赤くし、カオスも涙を流してお礼を言う。

 

「これでめでたし、なのかな?」

「いや、まだ話は続くさ」

 

そはらの言葉を否定すかのように秋山は空を眺める。

 

「新大陸か…」

「ああ」

 

秋山の言動で空にある新大陸から何かがあると悟る守形。

 

(次はハーピーだな。もしかしたらアストレアが先に来るかもな……。

とりあえずハーピー達の件がつくまでこの世界にいてみるとするか……)

説明
この話はアニメ『そらのおとしもの』の話を基に「もしもニンフよりも先にカオスが来ていたら」を考えたものとしています。
しかしカオスの性格は作者解釈により原作やアニメとは少し違う性格となっている部分が見られます。そのことをご了承ください。
また作者(BLACK)の分身のオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てきます。
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コメント
変化が大きくなってきました。だからこそ各原作イベントを書く時に、誰のどういう変化を見せる為のイベントなのか更に強調して書くとよりイベントの持つ意味がはっきりしてくると思います。原作をなぞるのではなく、原作との違いを明確にする方がより重要でしょうから(枡久野恭(ますくのきょー))
色々と変化が激しくなってきたなぁ。それにしても、シナプスのマスターは何故早々にカオスを送り込んだのかが気になります。こんな結果を予想できていなかったのか、いやまさか…(tk)
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