想い石
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ある日、青年が小さな石を拾った。

特段汚いわけではないけれど、とてもダイヤのように輝きを見せるわけではなく、小さな石。

親指くらいの大きさしかないその石は綺麗な淡い青色をしたものだった。

何故拾ったのか、と問われたら特に理由はあるわけではない、だけれど何となく、惹かれるものがあったのかもしれない。

最初は土が付いてちょっと小汚い感じだった。

持ち帰った日の夜、青年は土埃を払ってみた、石は意外に綺麗な石だった。

青年はその石を飾ってることにした。

別にそんな目立つものでもなかったけれど、何となく、寂しい部屋に色がついたようにも見えた。

次の日の夜、青年が仕事が終わった後に家に帰った時にその石が目に止まった。

「磨いたらもっと綺麗になるかな?」

そんな他愛も無い理由、青年は使っていなかったナプキンを取り出して水をつけ、吹いてみた。

そうすると石はとても綺麗に輝いているように見えた。

青年は次の日も、その石を磨いた。

何となく習慣のようなものになった。

青年はその次の日も石を洗った。

青年はそのまま何度も使うと汚いと思いしっかりナプキンを洗ってしっかり丁寧に磨くようにした。

そんなことをしているうちに、次第にナプキンにもこだわるようになり、拭きやすく汚れの取れるナプキンを選び、毎日新しいナプキンでその石を拭くようになっていた。

青年にとっては別に深い気持ちは無く拾った石だったけど、青年にとってそれは大切なものになっていた。

そしてそれと同時にその石は、淡い青色に不思議な光のような、宝石とは違うまた見たこともないような変わった輝きを見せるようになった。

そう、まるで「輝く自分を見て欲しい」そう言っているような。

その石は部屋を大きく輝かせるものとなった。

ある日、親戚のある程度の大きさの会社の社長が家にやってきた、理由は仕事の相談だった、ぜひ自分の会社にこないか?という誘いの話だった。

そんな社長は青年が大切にしている石に目を止めた。

「この石、何の宝石かね?」

「拾った石です、毎日磨いていたらとても綺麗になったもので」

親戚の社長はそれを聞いて驚いた、宝石のようなとても美しいその石は拾った石だと言うのだから。

「買い取らせてはくれまいか、金額はそうだな…」

その人から出てきた額は下手をすると新築の家を一件買えてしまえるような金額だった。

青年は迷わず断った。

「私にとってこの石はまるで家族のように大切なものです、お金をいくら積まれても決してお渡しすることはできません」

そう言った日からより一層、青年は自分の心に気がついたかのように石を大事に、大事に磨きました。

やがて、その石に変化が現れました。

一年くらいある日、微かにその石にいい年頃の綺麗な青い髪の娘の姿がそばに見えるようになりました。

最初はあまり見えず、声も聞こえませんでしたがとても可愛らしく元気な子で次第に声も交わせるようになりました。

少女はその小さな石に宿った神様でした。

青年が石に込めた想いが形となって小さな神様を生み出しました。

人に言わせたらとても力が小さく、神様というより精霊と言ってしまえるような弱々しいものでした。

青年は少女と毎日、たくさんの声を交わしまし、石も毎日磨き続けました。

その日々は青年にってとても楽しく、掛け替えの無いものとなり同時に青年は少女に恋をしました。

少女も青年に恋をしました。

誰にも邪魔することのないとても美しく永遠の愛を二人は交わしました。

ある日、それは突然のことでした。

青年はうっかり、石を落としてしまいました。

石に傷が付きました。

普通の石ならどうってことのない傷、けれどどんな石よりも輝いて綺麗なその石にはとても、とても大きく深い傷でした。

そして、少女も見えなくなりました。

青年は毎日、毎日泣きながら石を磨きました。

また少女が戻ってくるように、またあの日々が過ごせるように。

けれど磨いても磨いても、少女は戻ってくることはありませんでした。

一ヶ月後、青年は石を磨くことを辞めてしまいました。

仕事も辞め、死んだ目のような顔をしてずっと外へも出ることはありませんでした。

それから何ヶ月も経ち、青年は何もせず過ごしていました。

けれどふとしたある日、その石にまた目に入りました。

青年は何となく、優しく拭いてみることにしました。

もう、少女を失った時のような気持ちにはなれず、新しく石を見つけた時のようなそんな気持ちで。

するとどういうことか、少女が再び見えるようになりました。

あの頃よりもとても綺麗な輝きを放ち、青年以外の誰にでも見えるように。

少女は言いました。

「あなたは私に優しい気持ちで祈ってくれたから私は生まれました、だからまたあの頃のようにまた祈ってくれたからこうして会うことができました」

青年はとても笑い泣き、少女もまた笑い泣きました。

周りも二人を祝福し、やがて青年と少女は結婚し、とても幸せに暮らしました。

 

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