勇神伝説 第2章 運命神サンフォーチュン
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 暗く浮かぶ宇宙の中、青い星を見つめる、一人の老人がいた。

「勇気神アラシードか……」

「きゃはは! 何千年も前にも、私たちの邪魔をしたよね?」

 老人の後ろにいた少女はおかしそうに隣の青年を眺めた。

「ふっ……正確には我々の始祖の邪魔だがな?」

 青年は腰まである長い髪をふさっと靡かせ、首を振った。

「関係ない! あんな奴、俺の力にかかればイチコロよ!」

 ムキッと無駄に筋肉を盛り上げる大男に少女は呆れたようにため息を吐いた。

「じゃあ、今度はアンタが出れば……もっとも、筋肉馬鹿じゃ、負けるのが見えてるけど……」

「なんだと!?」

「よさぬか!」

 二人の間を割って入り、老人は筋肉質の男を見た。

「そこまで言うなら試させてもらうぞ? ゲイジャード?」

「任せろ!」

 ゲイジャードと呼ばれた男はまた、筋肉を盛り上げ、大声で笑った。

 もっとも、そんな無駄な行為に隣にいた少女はなにも言うまいと首を振った。

 

 

第二章『運命神サンフォーチュン』

 

 

「朝刊です!」

 気持ちのいいくらいの大声でポストに新聞紙を放り込むと吉永は歩道を走り抜けていった。

 最後の吉田と書かれた家のポストに朝刊を放り込むと吉永は晴れ晴れとした顔で伸びをした。

「よしっ! これで、全部、配り終わったぞ!」

 ふぅ〜〜と顎に伝った汗を拭い、吉永は腕につけた腕時計を眺めた。

「さて、残りの時間は、イザちゃんの所でのんびりさせてもらおうかな?」

 

 

 ガチャっと家のドアを開けると吉永は静かに玄関へと入り込み、挨拶をした。

「お邪魔しますよ?」

 まだ寝入っているであろう、イザナギを起こさないよう静かに家に入ると吉永は居間へと、上がりこんだ。

「……少し、寝るかな?」

 綺麗に整えられたソファーの上に寝転がると、吉永は眠たそうにまぶたを閉じた。

 ふと昔ことを思い出す……

 中学の時にイザナギと出会い、友達になったあの頃……

 正直、一目惚れでもあった。

 あの乱暴なまでに気の強いところも好みだが、一番は全てを包み込む包容力に惚れた。

 家の事情を知り、なにも言わず、自分を居候として、この家に招きいれてくれたのも彼女だ。

 あと何年続くかわからないこの生活に吉永はかすかな不安を覚えた。

 いつ終わるかわからない、このこの幸福な生活を失うことに……

 

 

 味噌汁のいい匂いが吉永の鼻腔をかすめた。

「うぅん……」

 そっとソファーから起き上がると吉永は自身にかけられたシーツを眺め、目を瞬かせた。

「……これは?」

「あ、吉永くん……起きたんだ?」

 キッチンから顔を出す少女に吉永はマヌケな顔でシーツを指差した。

「シーツかけてくれたの?」

「まぁね……あのままにしておくのも寒そうだったし?」

 どこか、恥ずかしそうに返事を返すイザナギに吉永はふと微笑んだ。

「……ありがとう、イザナギ?」

「う、うん……」

 顔を真っ赤にし、食事の用意をするイザナギに吉永の顔が急に変わった。

「でも、やっぱり寒いな……イザちゃんのその豊かな胸で暖め……ブベッ!?」

 見事な左回し蹴りに吹き飛ばされた吉永は泡を吹いて倒れた。

「もう少し寝てなさい!」

「ひ、酷い……」

 

 

「あ〜〜まだ首の辺りがコキコキと痛いよ?」

「自業自得……反省なさい!」

「うぅ〜〜……」

 涙目で自分を睨む吉永に、イザナギは少し困った顔で項垂れた。

 確かに少し、やりすぎた感はある……

 でも、これが日常だし……

「まったく……どっちが悪人かわからないじゃない?」

「いきなり、暴力で物事を解決するほうが悪じゃ……」

「当然の報いよ! 殺されないだけ感謝なさい!」

「ひ、酷いよ、イザちゃん!」

 本気で泣き出しそうにな顔をする吉永に、イザナギも少しかわいそうな気になってきた。

「仕方ない……」

 一瞬、顔を真っ赤にし、イザナギは意を決したように吉永の頬に自分の唇をくっつけた。

 ちゅっ……

「ッ!?」

 キスをされた右頬を撫で、吉永は言葉を失い、顔を真っ赤にした。

「……」

 イザナギも顔を真っ赤にし、走りながら吉永にベーをした。

「今回だけだからね?」

 そういい、イザナギは恥ずかしそうに学校へ走り去ってしまった。

「あ……」

 一瞬で見えなくなったイザナギに、吉永はキスされた頬をスリスリ撫で、ニヤけた。

「えへへ……」

「よぅ、吉永……締りの無い顔をして、どうしたんだ?」

 ポンッと後ろから肩を叩く大助にも気付かず吉永は不気味な笑顔を浮かべ続けた。。

 

 

《ほう、ここが学校というものか……初めて見る》

「アラシード……いきなり話しかけるな?」

《良いではないか? この前は慌しく、まともに学校を見ることができなかったからな?》

「だから、いきなり喋るな! 頭の中に響くんだよ、お前の声!」

《ふっ……小物め!》

「てめっ……」

「大ちゃん、なにぶつぶつ言ってるの?」

「あ……いや、なんでもない」

 慌てて首を振る大助にクルミは怪訝そうに彼の額に自分の手を乗せた。

「熱はないみたい……」

 そっと手を離し、クルミは心配そうに大助の手をとった。

「なにか悩み事なら、クルミに言ってね……クルミ達、幼馴染でしょう?」

「ほ、本当になんでもないんだ……先に学校に入っててくれ?」

「……本当に相談してね?」

 懸念そうに学校に入るとクルミは、何度か、大助の顔を見て、学校に走り去っていった。

《なかなか、いい娘じゃないか……どこまでいった?》

「お前の声は俺にしか聞こえないんだ……変な奴に思われただどうする!」

《隣に、すでに変な奴が一人いるが?》

「うん?」

 隣を見ると大助はゲンナリした顔で頭を押さえた。

「えへへ……」

「吉永……」

 未だに右頬をスリスリしている吉永にアラシードはゾッとした声でいった。

《正直、気色悪くってかなわん》

「こいつの変は今に始まったことじゃないからな……」

《私には耐えられんのだ》

「俺に言うな……」

「えへへ……」

「……」

 不気味に笑う吉永の後頭部を蹴り飛ばし、大助はガシッと彼の髪を鷲掴みにした。

「いくぞ?」

「えへへ……」

 血まみれで笑い続ける吉永に、さすがの大助も顔を真っ青にした。

 

 

「ねぇ、イザナギちゃん……吉永くんとなにかあったの?」

「え……?」

 クルミのズバッとした質問にイザナギは顔を真っ赤にした。

「い、いきなり、なに言い出すの……クルミちゃん?」

「だって、今朝から吉永くん、みょうにご機嫌だし? イザナギちゃんは吉永くんと顔を合わせると、すぐ逃げるし……」

「……」

 クルミのニヤニヤ笑いにイザナギは心の中で動揺を隠した。

 クルミとて、十七歳、女子高生……

 よく回りから、子供っぽいといわれるが、人並みの恋には興味がある。

 ましてや、他人の色恋など、テレビのワイドショーよりも面白いものはない。

「ねぇねぇ……どうなの?」

「そ、それは……」

 なんとか、言葉を濁せようとするイザナギに後ろから妙に気の抜けた声が聞こえてきた。

「クルミちゃ〜〜ん……訊いて訊いて? 俺、今日、イザちゃんにちゅ……」

 強烈な拳が吉永の顔面にヒットし、宙を浮く吉永の身体をイザナギは蹴り飛ばした。

 ドゴンッと吉永の身体が教室の壁にめり込み、追撃するように彼の鳩尾に強烈な飛び蹴りを当て、最後に華麗な着地をした。

「余計な事を言わなくっていいの!」

 ガシッと胸元を掴み、吉永の身体を床に叩きつけた。

「……まったく」

 クルリと振り返り、イザナギは爽やかな笑顔でクルミを見た。

「それで、なんの話だったけ?」

「う、うぅん……なんでもないよ。十分、わかったから……」

「そう……!」

 真っ青になったクルミの顔に、イザナギは満足そうに微笑んだ。

 

 

「さて、ここが地球か?」

 地球につくと、ゲイジャードは雲仙と立ち並ぶ街並みを眺め、笑った。

「ちんけな星だぜ……こんなの一日もあれば滅ぼせる?」

 ゲイジャードは右手の指をポキポキと鳴らし、舌なめずりをした。

「さ〜〜て……勇気神を呼ぶには、人暴れするのにかぎるな?」

 ゲイジャードの手の平から光が集まり……

「おらよ……」

 撃ち放つと、一瞬で街の中心から、巨大な大爆発が起こった。

「ぐきゃきゃきゃ……いつ見ても、街の吹き飛ぶさまは笑えるぜ?」

 廃墟と化した街並みに着地し、ゲイジャードは叫んだ。

「さぁ、来いよ勇気神! じゃねーと、街がもっと吹っ飛ぶぜ!?」

 

 

《っ!?》

「どうした、アラシード?」

《破滅の光を感じた!》

「ついに復活したのか!?」

《違う……これは光滅四天王だ!》

「四天王?」

《破滅の光の復活を導くもの……我々の敵だ!》

「でも、授業中だぜ?」

《世界の危機と、単位とどっちが大事だ!》

「どっちも大事だよ……」

 情けなく返事を返す大助に黒板に立っていた先生は戸惑うようにいった。

「大助……保健室に行ってくるか?」

「はい……」

 教室に失笑が漏れ、大助は情けなく教室を後にしていった。

「ばか……」

 その姿を見つめ、クルミも恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 

 

 廊下に出ると、アラシードの声が弾んだ。

《さぁ、これで堂々と外に出れるぞ……どっちにしても、この授業は落ちたのだからな?》

「お前のせいだろう!」

《そういうな……さっさと、出るぞ!》

「わかったよ……」

 スッと右手の親指に中指をかけ、大助は高々に頭上に振り上げた。

「来い、シードマシン!」

 パチンッ……

 

 

 まだ原型の残っている建物や木々を破壊しながら、ゲイジャードはズシンズシンと廃墟の中を歩いていた。

「げきゃきゃきゃきゃ……どうやら、勇気神は俺に恐れをなして逃げたらしいな!」

「そぅ決め付けるな……」

「なっ……!?」

 突如、ゲイジャードの身体が強い衝撃によって吹き飛ばされた。

「グハッ……」

 なにもない更地に身体を打ち付けられ、ゲイジャードは目の前のパトカーを睨んだ。

「貴様……」

 光に包まれたパトカーの上空からジェット機が飛び込み、変形するように合体していった。

「勇気合体!」

 爆発するように光が弾け飛び、アラシードの大声が響いた。

「勇気神アラシード!」

 壊滅した街並みを見て、アラシードはふつふつと沸き起こる怒りをゲイジャードに向けた。

「ゆるさん!」

 アラシードの怒りに燃えた目に、ゲイジャードはいやらしく笑った。

「久しぶりだな、勇気神? いきなり攻撃とは、ご挨拶な?」

「ゲイジャード……貴様は、また無益な破壊行動を繰り返して、なにが楽しい!?」

「楽しいじゃねーか……物がバンバン壊れるのはストレスの解消になるしな?」

「貴様にストレスがあるとは思えんがな?」

「ほざくな!」

 ゲイジャードの拳を受け止め、アラシードはゲイジャードの腹を投げ飛ばした。

 ドンッ……

 ゲイジャードの身体が強く大地に叩きつけられ、アラシードはバカにするようにいった。

「どうした……自慢なのはその無駄な筋肉だけか?」

「貴様〜〜〜〜」

 鼻息を荒くし、ゲイジャードは立ち上がり、アラシードに向かって飛び掛ってきた。

「甘い!」

 アラシードの左回し蹴りが、ゲイジャードの右顔にめり込み、ゲイジャードの身体が吹き飛ばされた。

「グハッ……」

 大地にまた身体を叩きつけるゲイジャードにアラシードは一歩、身を引き、手を天空へかかげた。

「勇気剣!」

 アラシードの振り上げた右手に両刃の大剣が握られ、ゲイジャードに向けた。

「力任せの馬鹿じゃ、私には勝てないぞ……一気に勝負を決めさせてもらう!」

「こ、この……」

 襲い来るアラシードにゲイジャードはなんとか立ち上がろうとした。

 しかし、アラシードの剣の動きのほうが早かった。

「とどめだ! 必殺、大光……」

 アラシードの剣がゲイジャードの頭上を切り裂こうとした。

 しかし……

「悪いけど、このバカ返してもらうよ?」

「なにっ!?」

 アラシードの剣を受け止め、女性の姿をしたロボットはアラシードの横腹を蹴り飛ばした。

「グァァァァッ……」

 アラシードの身体が遠くに蹴り飛ばされ、大地に叩きつけられると、驚愕した声を出した。

「お前はアルティミスタ……生きていたのか?」

「キャハハ……覚えててくれたんだ? 知ってのとおり、あたしには生きる目的があるの! それまで死ねない……例え、あたしの創造主を裏切ってもね?」

「まだ、あの事を後悔しているのか?」

「あなたには関係ないでしょう?」

 ギロッと睨みつけるアルティミスタにアラシードは慌てて叫んだ。

「私は、お前とは戦いたくない!」

「あら、奇遇? あたしも今のあなたと戦う気はないの……」

 ガシッとゲイジャードの腕を掴み、アルティミスタは愉快そうに空を飛んだ。

「今回はこのバカを連れて帰るんのが仕事だから……じゃあね?」

「待て……アルティミスタ!」

「そうそう、置き土産に宇宙獣を二匹ここに置いとくわね?」

「なっ!?」

 いつの間にか自分を取り囲む二匹の宇宙獣にアラシードは信じられない気持ちで剣を握りなおした。

 

 

 吉永は嫌な胸騒ぎを身体全体に感じていた。

 それは今朝、イザナギにキスされたからとは違う心のうずき。

 まるで、大切なものを失うような物悲しさすら感じていた。

 これじゃあ、勉強する気にならなかった。

 心の中で自嘲し、吉永は机に頬杖をついた。

 そういや、最近、変な夢を見るな。

 地球に破滅の光がどうのこうのって……

 妙に生々しい夢なんだよな……

 物思いに吹け、吉永は不意に顔を赤らめた。

 出来れば、イザちゃんとよろしくやってる夢を見たいぜ。

《なにを馬鹿なことを言っている?》

「っ!?」

 バッと立ち上がり、吉永は辺りを伺った。

「どうした、吉永……体調が悪いのか?」

「せ、先生……今、変な声が聞こえませんでしたか?」

「なにを言っている……お前も保健室に行ってくるか?」

「……」

《そうさせてもらえ? もう、授業も終わりに近い。単位の心配もないだろう?》

「誰だ!?」

「吉永……保健室、行ってこい」

 かわいそうな目で自分を見る先生に吉永は疲れた顔で教室を出て行った。

 その姿を見守りながら、イザナギも少し反省したようにうずくまった。

「蹴りがききすぎたかしら……」

 顔を曇らせ、イザナギは苦笑した。

「今日の晩御飯は吉永くんの好きなものにしてあげよう……」

 

 

 ふらふらと廊下に出ると吉永は苛立った声でつぶやいた。

「誰だ……俺の中で語りかける奴は? なんで、俺に話しかける?」

 自分の心に語りかける吉永に謎の声も快く答えた。

《私の名前は運命神サンフォーチュン。先日、お前が見たアラシードの盟友だ》

「アラシードの盟友? ああ、なんだか、だんだんと思い出してきた?」

 頭を押さえながら、吉永は唸るように呟いた。

「お前、毎晩、勝手に俺の夢に出てくる奴だろう?」

《まともに話をする時間は寝てるときが一番だからな? 大体の用件は掴めてるだろう?》

「身体を貸せっていうんだろう……どうせ、断っても勝手に使う気だろう?」

《物分りがよくって助かる……念のため、返事を聞きたい》

「皆まで言うな……」

 バッと右手を挙げ、吉永は指を鳴らした。

「カモンッ! デスティニーマシン!」

 

 

「この!」

 突進してくるサイの宇宙獣の身体を受け止め、アラシードは後ろにいる蛙の宇宙獣に向かってサイの宇宙獣を投げ飛ばした。

「今だ!」

 激突する二匹を見て、アラシードは右手の手の平からレーザー銃を取り出し、引き金を引いた。

「アラシード・レーザマグナム!」

 銃から撃ち放たれ光が、二匹の宇宙獣を包み、爆炎を吹かすとアラシードは銃を持ってない左手を握り締め、ガッツポーズをとった。

「やったか……!?」

 爆風に包まれた二匹の宇宙獣を見て、アラシードは目を疑った。

「こ、これは……」

 まるで融けるように一体化していく宇宙獣を見て、アラシードは声を震わせた。

「宇宙獣が融合するだと……!?」

 姿を変えていく宇宙獣にアラシードは首を横に振った。

「グギャァァァァァァァァァァッ!」

 巨大なトリケラトプスへと変わった宇宙獣にアラシードはグッと身構えた。

 ドスンッと、重い突進がアラシードを吹き飛ばした。

「ぐっ……」

 大地に伏せたアラシードを見て、宇宙獣は、その太い尻尾をなんども打ちつけた。

「……ぐぁ!」

 なんども振り下ろされる尻尾の連打にアラシードはなんとか立ち上がろうと、身体を回転させた。

 しかし、攻撃力の違う、新しい宇宙獣の攻撃にアラシードは確実に体力を失われつつあった。

「くっ……ここまでか?」

 気を失いかけるアラシードの頭上に三つの影が下りた。

「情けないぞ、アラシード!」

「っ!?」

 訊き馴染みのある叫び声にアラシードは驚いたように起き上がった。

「あれは……?」

「ぐぉ……?」

 上空から三機のスペースシャトル、ジェット機、ジャンボジェットが現れ、凄まじい光を溢れさせた。

「運命合体!」

 光が弾け飛び、三機の飛行機が一体のロボットへと姿を変えた。

「運命神サンフォーチュン!」

 雄々しく宇宙獣を睨むサンフォーチュンの姿にアラシードは安堵したように呟いた。

「来て……くれたのか?」

「ああ……」

 地面に着地すると、サンフォーチュンは手をヒラヒラさせ、宇宙獣を挑発した。

「さあ、来い……この私が相手だ!」

「グ……グォォォォォォッ!」

「ンッ!」

 突進してくる宇宙獣を受け止め、サンフォーチュンはバカしたように呟いた。

「どうした……その程度の力で、私を倒すつもりだったのか?」

「グ、グォォォォォォォォォォォォッ!」

「お、少しはやるな?」

 グッグッと押され始めているサンフォーチュンは嬉しそうに笑い声を出した。

「いい力だ……だがっ!」

 ガシッと動きが止まり、宇宙獣は驚いたように目を見開いた。

「その程度の力で力自慢を名乗るようじゃ……」

 宇宙獣を力任せに大空に投げ飛ばし、サンフォーチュンは両腕を胸の前にクロスさせ、一気に開いた。

「覚醒形態!」

 サンフォーチュンの身体が淡い緑色の光に包まれ、大きく右手を振り上げた。

「運命剣!」

 手の平に現れた巨大な剣を握り締め、サンフォーチュンは飛び上がった。

「天空一閃輪廻爆光剣!」

 宇宙獣の身体が縦一文字に引き裂かれ、光があふれ出した。

「輪廻転生の理、来世で自分の運命をやり直せ!」

 運命剣を鞘に戻すと宇宙獣の身体が大爆発を起こした。

 

 

「お前いつ頃から、俺の中にいたんだ?」

《アラシードがここに来てすぐにだ……私のパートナーはお前しかいないと思った》

「いったい、どうして、俺しかいないと思った?」

《インスピレーションだ。運命を感じたといっていいだろうな?》

「……なんともいい加減な。うっ……」

 ふらっと膝を突き、吉永は荒い息を吐いた。

「なんか、疲れたな?」

《合体は体力を使うからな……早く帰って飯にしよう。イザナギの飯はうまいからな?》

「お前、なに、イザちゃんを呼び捨てにしてる……?」

《細かいことだ》

「細かくない!」

《それよりも家に着いたぞ……早く入ろう》

「まったく……」

 ぶつぶつ文句を言いながら、吉永はイザナギの家のドアを開けた。

「イザちゃん……ご飯まだ?」

「もぅ、出来てわよ? 早く、食べにいらっしゃい!」

「うん……」

 吉永はそっとイザナギの家に入ると砕けた笑顔で叫んだ。

「イザちゃん、今日の晩ご飯、なに!?」

「吉永くんの好きなから揚げやタマゴスープよ?」

「やりぃー!」

 

説明
ラブコメ大好きなんです。
でも、基本は一対一の正統派かな?
別にハーレムが嫌いじゃないけど、男は一途が一番だと思うんです。
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平和に勝るご褒美なし!争いに勝る愚行なし。(スーサン)
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