双子物語-9話-
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 暑い日も徐々に少なくなり、葉も色がつき始める秋が訪れた。

 

 給食の時間内に早いうちに食べ終わり、私は雪乃がいる教室へと足を運んで

話をしていると、後から春花も教室に入ってきてキョロキョロ探していると

私たちを見つけ、近寄ってくる。すると、嬉しそうにニコニコしながら両手を

後に回している。

 

彩菜「どうしたの、嬉しそうだね」

春花「ふふっ、実はね」

 

 ジャーンと見せびらかすように、何かの紙を数枚差し出してきた。なんだろう

と一枚見せてもらうと、それは野球のチケットだった。しかも一番高いヤツ

らしきチケット。

 

雪乃「観戦チケット…?」

春花「そうよ、親戚のおじさまからもらってね」

 

 でも、お嬢さまに野球のチケットをプレゼントってどうだろうとか思う。

 

春花「彩菜が好きだと思ってね。わたしはあまり興味ないけど…」

彩菜「ああ、うん。でも私も見るよりはやる方が好きなんだけどね」

 

春花「あっ、そうなの…」

 

 とんだ予想はずれだったのか、すごくションボリしている春花。

そんな表情をされると罪悪感を感じるから不思議。せっかくもらった

のに悪いから、私は笑顔で答える。

 

彩菜「じゃあ、みんなで見に行こうか。ちょうど、休みの日だし」

雪乃「私、全くわからない…」

春花「うん、別に雪乃のためのものじゃないから無理して来なくてもいいよ?」

 

 少し毒気のある言葉を漏らしていたが、雪乃は全く反応せず、そのチケットを

ジッと見つめていた。チケットは全部で5枚。あと一人は…と考えていると。

春花が先に口に出した。

 

春花「小学生だけじゃいけないから、保護者必要よね」

彩菜「誰にしようか」

 

春花「この面子なら、一人しかいないでしょう?」

 

 チッチッと指を横に振りながら、口で音を鳴らす春花。誰だろうとみんなで

予想をしていると、春花はガマンできずに口に出す。その間、10秒早すぎるって。

 

春花「お二人のお母様よ」

彩菜「え、ママ?」

雪乃「お母さん?」

 

 こういう場合は、春花のママが行くのが定番なんじゃないかと思ってそのことを

聞いてみると少し顔を曇らせて小声で私たち3人に言ってきた。

 

春花「実はね、私のお母様はもうお空の星になっちゃったの」

3人「ええっ…!?」

 

春花「嘘だけど」

 

 嘘と言われてガクッと3人とも囲んでいた机に向かって突っ伏す動きを見せた。

でも言っていいことと悪いことがあると、春花に注意をするが聞いているのかいないのか

春花はにこにこして私の顔を見ていた。

 

春花「私のお母様は仕事仕事で家にもロクに帰ってこなくてね。だから無理なのよ」

彩菜「あっ、そうなんだ…」

 

 つとめて、明るく言う春花だったけど。どこか寂しいんじゃないかと思えた。

私は自分に置き換えてそのことを考えていたら、どこか寂しさを感じていた。

 他に代わる人がいないのなら、仕方ないとその場で4人は頷いた。

ターゲットは、私のママだと。そして、放課後。春花は携帯電話でお家に

連絡をした後、4人で私たちの家におしゃべりしながら向かう。

暑かったのが終わったからなのか、涼しい風が心地よく私たちの間に

吹いてくる。

 玄関までついた私は思い切りドアを開けて声を張り上げた。

 

彩菜「ただいまー!!」

??「おかえりー」

 

 どこかで聞いたことのある声だが、ママの声ではない。ということはあと家に存在

するのはパパだが、パパだとどう声色を変えても女の人の声にはならないと思う。

ということは、知らない人…!?

 一瞬、その場で固まる私たち4人。声は聞こえたけども、一向に中に入ってこない

私たちに業を煮やしたのか、中にいた人がこっちに向かってきて笑いかけてきた。

その人は学校ではよく見るけど、家の中には完全に存在しない人だった。

 

県「どしたの?」

彩菜「なんで、先生がここに…」

雪乃「不法侵入?」

大地「ふほうしんにゅう?」

春花「警察に電話ですわ」

 

県「ちょっ、ちょっ、まっ…!!」

 

 春花の強烈なジョークに慌てる県先生。その様子に私は思い切り笑ってしまった。

仕事が思いのほか速く終わって、授業も少なかった日だったせいもあって。早々と

家に戻って着替えてから散歩をしていたらママに捕まったらしい。プリント柄の黄色の

Tシャツにホットパンツというラフないでたちで慣れたようにくつろいでいたらしい。

 しばらくしてから、ママが家に戻ってくるとさっそく交渉する私に、ニコニコしながら

話を聞いて頷くママ。その傍でそわそわしているのが県先生で、いつも言いたいことを

ビシバシと遠慮なく言ってくるのに、変に大人しいのが逆に怖い。

 

菜々子「そうね…。行きたいのはやまやまだけど、明日はクギが甘い台が…」

県「?」

 

 ママはちらっと先生の顔を見ると、満面の笑みを浮かべて先生の手を握った。

 

菜々子「先生におまかせしてしまおうかな」

県「い、いいのですか?」

 

菜々子「いつもお世話になってることだしね」

 

 すると、先生の瞳は子供のようにキラキラと煌いていた。その後、私たちに向かって

握手を求め、どうやらプロ野球が大の好物であり、好きなチームの対戦カードだった

そうな。

 

 そして、当日。私は動きやすいように、膝上の短パンに深緑のトレーナーを着て

外へと出た。後ろから愛しの雪乃が淡い青のワンピースに上から白のカーディガン

を羽織って私の近くまで歩いてくる。帽子は今回は他の人の邪魔にならないように

キャップを被ってきていた。ウサギキャラのマークがついた可愛らしい白の帽子。

 ほどなくしてから、ワゴン車が目の前に停まった。中ぐらいの席から窓を開けて

顔を出したのは春花。運転席には先生がいるのがわかった。先生の運転をするのを

見るのが初めてだから少し不安なんだけど。そんな、私の気持ちを考えず

雪乃はスッと私の横をすり抜け、とっとと車の中に乗ってしまった。

 ママは先にパチンコ屋に行ってしまったから、私が鍵がかかってるか確認をして

から車の中に入った。雪乃が入ってから入れ替わったのか、雪乃と私を挟んで

春花がいるような状態になっている。ちなみに、助手席には大地くんが座っていた。

 あらかじめ乗っていた二人が笑顔で迎えてくれていたので安全運転できていた

のだろうと、安心して座っていると車から変な音が聞こえた。

 

県「あ、悪い。エンストしちゃった」

彩菜「…」

 

 本当に大丈夫なのだろうか…。

 

球場まで行くので時間がけっこうかかるから、気長に行こうと先生の提案。それぞれ

好きな音楽の入ったCDを持参して様々な曲を楽しみながらパーキングエリアへと

辿り着いた。途中、トイレに行きたくならないように此処で用を足すことにした。

 

県「なんか欲しいものない? 先生なんでも奢っちゃうよ〜」

 

 普段、先生の太っ腹な姿はあまり見ないけどこういうイベントのときとかには

財布が緩むんだなぁと、少しいつもと違う姿を見て私はびっくりした。その隣で

雪乃も同じような気持ちでいたに違いない。無表情だけど。

 少し休憩した後に再び車に乗り込む子供4人・大人1人。何気なく大事に

しまっていたチケットを取り出しチーム名を眺める。広島対宮城

テレビは見ないし、やる方が楽しい私にとってイメージができなかった。

敢えて挙げるとするなら、色が赤いのと青っぽいのってくらいで。

 

彩菜「先生はなんで、そんなに楽しそうなの?」

 

 音楽も聴き尽くし暇になって会話を求めた私はその疑問を雪乃や春花、大地君に

聞くが全く知らないことがわかり、一番興奮しそうである先生に聞いてみると。

やはり先生はチームを頭に浮かべながら興奮して話し始めた。

 

県「私ね、この組み合わせ。子供の頃から弱くってねぇ、なんでこんなに弱いの!?って」

春花「あははっ、先生の子供のころってこの二つのチームなかったんじゃ」

 

県「…」

春花「ははっ…ごめんなさい」

 

県「よろしい」

 

 年のことになると、謎の部分に突っ込むみたいで。子供たちや先生達からは

タブーとなっているらしい。そういえば、保育園のころからいるから、いきなり

小学校の先生になっても、前からいる先生たちが頭上がらないってなんか

すごいなぁと思えてきた。

 

春花「あわわ…。黒いオーラが私を取り囲むよ」

彩菜「大丈夫だって、黒いオーラなんて…。ねぇ、雪乃?」

雪乃「…」

 

彩菜「!? あからさまに視線外さないで! 逆に怖い!」

大地「あははっ」

 

 春花の精神的具合が落ち着くと、先生が今度は冷静に話し始めた。やっぱり

子供のころからで、春花の台詞は嘘だったけど。先生はしみじみしながら

すごく優しい眼差しで運転をしながら話してくれた。

 

県「高校生の頃かな。野球ならどこの球団でも楽しめる親父と行ってさ。ちょうどそれが

  万年最下位のチームだったのよ、相手は常勝軍団で。どっちかがこの1試合で優勝が

決まる、こりゃ勝てるわけないって。そう思うでしょう?」

彩菜「まぁ、そうだよね」

 

県「しかも、一人一人の実力の差も大きかったのよ」

 

 あからさまに負けるパターンだって楽しそうに言う先生。だけど次の瞬間「でもね」

というと、後からでもわかるような喜びの気みたいなものが私にも伝わってきた。

 

県「勝ったのよ。そして、見事に優勝。あの瞬間、私はアホみたいに口を開けたまま

 ずっとその瞬間にクギ付けになって、それから弱いチーム見ているとまた、あの

奇跡を再現してくれないかなぁって。でもそうそう見れないけどね」

 

 チームワークってすごいわよね〜って、先生はそれっきり運転に集中するようになった。

確かにすごい、話の結果は見えていたけれど、実際聞くともっとすごさがわかった気がす

る。でもね、あまり興味のない話を聞くと当然眠くなるわけで、雪乃たちも寝ていたから

私も寝ることにした。ごめんね、先生。でも、話はちゃんと聞いたよ…。

 そうして、私も眠りについた。

 

「ほらっ、早く起きな〜」

 

 あれ、なんか声が聞こえる。誰だっけ? ああ、そうだ。今やってるゲームのキャラの

声だ…。どんなんだっけ、そういえば。村人を食べつくしちゃって暴れてる…。鬼の

ようなお婆さん姿で食べ…食べ!?

 

彩菜「鬼ババー!」

 

 ゴンッ!!

 

県「ふもっふっ…!」

 

 無意識に起き上がった私の頭が先生のどこかにぶつかったらしく、変な奇声を上げなが

ら先生は車の外でしゃがみこんで苦しんでいた。あれ、先生だったのか。アレ。

 でも、先生は鼻をさすってから、私の無意識の言葉を無視できずに私の頬を両手で

つまみながらハンターの目つきになっていた。怖い。

 

県「だれが鬼ババーだってぇ?」

彩菜「いひゃいっ…ひょめんにゃはい…」

 

 痛くて目に涙がうっすら溜まってきて、すぐに謝ったらあっさりとつまんでいた手を

離してくれた。ひりひりする頬をさすりながら私は車から出た。どうやら仙台スタジアム

付近についたようだ。時間もけっこう経っていてあと、1時間30分くらいで試合が

始まる予定に迫っていた。

 

県「せっかくここまで来たんだから、どっか美味しい店でもいこっか」

春花「ワリカンなんて言わないでね」

 

県「あったりまえでしょ。子供から金巻き上げる大人がどこにいる」

 

 春花と先生が身長差を気にせず額をぐりぐり擦り合わせている。片や背伸びで

片や膝を曲げながら…。見ていたらなんだか楽しそうに見えてきた。なんだか私も

やってみたくなってしまい、雪乃にやりたい視線を送ると。

 

雪乃「先生、時間はすぐ来てしまいます。やることあるなら、迅速に行動しましょう」

県「へーい」

彩菜「うう…」

 

 がっくりきたところに私の傍に大地君が近寄ってきて「僕でよかったらやろうか」

を子犬のような眼差しで申し出てくれたけど、私は雪乃とやりたかったんであって、

大地くんとやりたい気はそう、無い。だから丁重に断っておいた。

 うなだれる大地君をほっといて歩き始めた先生たちの後ろを追いかけた。

そうしたらすぐに大地君も走って追いかけてきた。それはそうだ、見知らぬ場所で

はぐれたが最後、交番のおまわりさんのお世話になってしまうのだから必死だ。

 いつも見慣れたファミリーレストランへと足を踏み入れる私たち。しかし、ここへは

あまり来たことがない。だって、ねぇ。と、私は心の中で納得しながらチラっと

雪乃の横顔を見つめた。

 

県「さぁ、好きなだけ食べていいわよ」

 

 先生、子供だからって甘くみないでよね。約一名がとんでもないから。

そして、みんな食べたいものを一品ずつ挙げていく中、雪乃だけ10品くらいの

名を連ねていった。その中で、雪乃の胃袋を知らないのは先生だけ。

当然、先生は絶句してこそこそと財布と相談を始めたのでした。

 

 1時間後

 

県「よくもまぁ、そんだけあったのを。一人で平らげたものだわ…」

雪乃「あれ、知りませんでしたか?」

 

 きょとんとした表情で先生を見る雪乃。さすがに食べ過ぎたのか、少しお腹が

出っ張っていた。いや、それもカワイイんだけどね。そうして、残りの時間を

話ながら過ごして、店を後にした。

 

県「うおー、燃えてきた。もうすぐ始まるわ」

 

 一番ノリノリな先生の後ろからそこまではしゃげない子供たちが歩いていく奇妙な

光景があり。でも、なんだかんだいって、私も少しドキドキしてきたみたいだ。

周りのすごいざわめき、人の多さ、そして既に応援するような声がちらほらを

聞こえているからだ。みんなの気持ちが私にうつったようなそんな気持ち。

 

           なんだか楽しくなってきた。

 

 先生の意気込みに少しダルそうだった春花たちも、ファンたちの勢いに押されて

表情が少し固くなっていた。既に私たちの席は特等席と決まっている。春花のおかげで。

そう考えると、今日ここにきてよかったのかもしれない。興味なさそうな雪乃も

いつもより少し勇ましい顔つきで今から行われるであろうフィールドを見つめていた。

 

 私たちの声がかき消されるほどの大声が放たれた。プロ野球選手の入場である。

来る前に聞いた今日の試合は一年間の2つのリーグで優勝したチーム同士で戦い。

そこで勝ち残ったチームが日本一に輝くというファンだと手に汗握る感じなんだろう。

どこのファンでもない私でさえも、その迫力に呑まれて実際手に汗握っちゃってる。

 

 プレイボールの掛け声で試合開始。攻撃側のチームの応援が辺りに響き渡る。

ジャン、ジャン、ジャンジャンジャン!小気味いいリズムから始まり、選手によって

違う曲が鳴り響き、何か歌ってる。それに応えるかのように、バッターも思い切り振る。

守備に回ってる人たちもボールの動きを敏感に感じて飛び込んでボールをとる。

遠くて表情は見えないけど、その動きや間の空きかたで緊張しているのがわかる。

 

           面白い。

 

それは私だけではなく、みんな思っていたはずだ。この場にいて面白くないわけがない。

みんながんばっている。こうやって見入っているとすっかり7回裏。まだお互い0点。

更に場は重苦しい空気が強くなり、応援の音が強くなっていく。ふと、隣にいる雪乃が

気になって横を見ると、いつになく真剣な眼差しで見入っていた。

 

 だけどいつまでも、そんな緊張感に浸れるわけではない。9回の裏、宮城の4番

バッターが構える。ランナー無し、2アウト、フルカウント…! 辺りに響く

怒声、応援、野次が入り混じる。そんな中で、その選手は甘く入ったスライダーに

反応してジャストミート。瞬間、球場は静かになった。うるさかった中でひときわ

高い音でカーンという音が聞こえて外野席の方へ綺麗な軌道で入っていった。

 落胆と歓声の声が入り混じった、その空間は敗者と勝者の区分けがはっきりと

わかるように、負けた方を応援していた人たちが帰っていくのがわかる。

その間にも選手たちが監督を胴上げしているのがとても印象的で、その表情は試合には

なかったとても清々しい笑顔をしていた。胴上げされている監督もとても嬉しそうだ。

ファンとの交流を含めて、しばらくして球場には人気がなくなっていった。それに

合わせて私たちも帰ることにした。すごい試合だった。

外に出て涼しい風にあたりながら、まだ試合の熱がとれない私はボーっと歩いていると

先生が私の背中を軽く叩く。

 

県「どうだ、面白かったろう?」

彩菜「うん…」

 

 先生、あのさ。と、少し時間を空けてから先生に聞くと、先生は笑顔で返してくる。

 

県「なに?」

彩菜「負けた方はどんな気持ちなんだろう」

 

県「そりゃ、悔しいだろうさ。でもね、負けても楽しかったと思えるときだってある」

 

 ほら、見てごらん。と、駐車場に向かって歩いている負けたチームのグッズを持って

いる親子に指を差すと、その親子は満足した表情で「来年こそは」とか「ここまで

これただけすごいよ」とか、その負けたチームを褒め称えていた。

 

県「こういう人もいるわけよ」

彩菜「そうか、よかった」

 

 勝負事だから、悔しい思いとか嫌な気分とかなるのは仕方ないけど、せっかくだから

みんな楽しめればいいなと思っていたから、そういうのが見れてよかったと思えた。

駐車場まで辿り着くと車の中で私たちは眠気に襲われた。現在、夜で辺りは真っ暗。

良い子の私たちはもうそろそろ、おねむの時間。声援を送ったわけでもないのに

疲れが少しある気がする。でも、嫌な疲れじゃなかった。

 今度は座る位置を変えて私は隣で寝ている雪乃の肩に頭を預けて目を瞑った。

 

 

数日後

 

 すぐに感化する子供っていうのはけっこういる気がする。例えば警察官の服が

着たいから警察官になる。ケーキが好きだからケーキ屋さんになるとか。

だからって、こんな身近にいるとは思わないじゃん。

 

大地「僕、野球選手になる!」

 

 放課後の帰り道、大地くんは声高らかにそう宣言をしていた。なるといって簡単に

なれるものではないと思うけど。特に大地くんみたいな弱い子供は。

 

彩菜&雪乃「無理」

大地「ダブル!?」

雪乃「だって、あまりがんばらないじゃない。大地は」

 

 ちょっと突かれるとすぐに頭を抱える大地くんには荷が重いと思う。今まさに頭を

抱えて唸っている。ほんっとに蚤の心臓というものだろうか。それでも今回の大地くんは

少し違っていたのは。すぐに立ち直ることだった。

 

大地「ん、まぁ。少しやってみたいんだ。ってことで、県先生に頼んだら近くのリトル

   のチームを紹介してあげるって」

雪乃「へぇ、すごい。先生」

彩菜「ほんとに顔が広いね。先生」

 

大地「ねぇ、僕に対しては!?ねぇ!?」

 

 でも、この間の試合見ていたら私も体がうずうずしてきて野球がやりたくなって

きていたところだ。おろおろしている大地くんの背中をバンバン強く叩きながら

顔を近づけて言った。私も一緒に野球やらせて、と。

 

大地「う、うん…」

 

 顔を赤くしながら俯く大地くん。風邪でもひいたのかな? まぁ、なんにしろ

これで運動の楽しみがひとつ増えたわけだ。学校の同じクラスの子だと

何をやるにしろ、弱くて物足りなかったところだった。

 

彩菜「よおし、じゃあさっそく。案内してもらおうじゃないの」

大地「うぇ、ちょっと待って…!」

 

 大地くんの腕を引っ張りながら私は前に進む。どこにあるかわからないけど

そのうち、着くだろうと気楽に歩き始めた。大地くんの案内を受けてその場所に

辿りついて、少し早い来訪に驚いたそのチームの監督に。私と大地くんは

一言元気にこう発した。

 

『よろしくお願いします!』

 

 陽が少しおちてきた空に練習の元気な声が吸い込まれていった。

 

 

説明
ここから野球も話しにちょいちょい加わります。野球好きな書き手の趣味がもろに出た内容です(´・ω・`;)昔に書いたものをそのままにしております。読みづらさ注意
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